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4爆発オチの恋模様
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王城の奥、普段は静謐な魔法実験室。壁一面に書棚と魔導書、机の上には試薬と魔力増幅装置が並ぶ。突如、文官のセリーヌが記録係として駆り出されていた。
「殿下、実験は安全でしょうか……」
セリーヌは慎重に歩きながら、机上の試薬の色を確認する。真面目な顔でリスクを分析するその姿は、舞踏会の時以上に硬派だ。
「もちろん。君が怪我をしないよう、俺がついている」
カインが、少し不器用に手を差し伸べる。
だがその言葉を、セリーヌは「殿下の安全確認の義務」と解釈してしまう。
「承知しました。殿下の任務を妨げぬよう、慎重に参ります」
ぴしっと背筋を伸ばすセリーヌ。カインの心は沈みかけた。
「……(違う、そうじゃない)」
◇
魔法実験は、王城では一部の若手魔導師しか扱わない高度なものだ。炎や光、そして予測不能な爆発が常に隣り合わせ。
セリーヌが慎重に魔力を制御しながら試薬を混ぜる。カインは傍らで彼女の手を軽く支える。
「右手の角度を、あと少し上げて」
「はい、殿下……」
指先の距離がほんのわずかに触れた。カインは鼓動が早くなる。
だが、セリーヌはただ数字と比率に集中し、視線をカインに向けない。
「(こ、これじゃ……想いは届かない……)」
カインの心はもどかしく沈む。
しかし、突如として実験台の一部が光を放ち、爆発の前触れとなる青い炎が瞬く。
「危ない!」
カインは即座にセリーヌを抱き寄せ、炎の直撃を避けさせる。思わず二人の体は近づき、胸が触れ合うほどの距離になる。
「……っ!」
セリーヌは驚きと恐怖で目を大きく見開く。
観察力は常に鋭いが、この瞬間のカインの表情を読み違えた。
会場ならぬ実験室で、二人のハートビートは文字通り炸裂寸前。その距離に、護衛や魔導士たちは「次こそラブラブ成立」と思わず期待を高める。
だが、セリーヌは真面目に礼をし、口を開いた。
「殿下、申し訳ございません! 次は私が盾となります!」
「えっ……?」
カインは、驚愕と焦燥で声が出ない。
セリーヌは、爆発を自分が受け止めることで殿下の義務を守ろうとしているのだ。
「違う、違う、そうじゃない……」
カインの叫びは、爆発音にかき消される。
◇
翌朝、王城の奥深く。
昨夜の魔法実験室の大混乱の余韻がまだ残る会議室に、王太子アレクシス、第二王子レオルド、第四王子ユリウス、そして王妃が集まった。
第三王子カインは当然のごとく不在。国王陛下も依然執務室で書類と格闘中だ。
「では、『第三回カインとセリーヌのラブラブ大作戦』の反省を始めよう」
議長役のアレクシスは、昨夜の魔法実験室の破片写真を前に、羊皮紙に赤い文字で“爆発”と書き込む。
「うむ……爆発の演出としては、予想以上にリアルだったな」
アレクシスの言葉に王妃は目を輝かせる。
「素晴らしいわ!カインが庇った瞬間、セリーヌ嬢の心臓が止まりそうになったでしょうね」
「物理的にね」
「母上……これ、反省会です。褒めてどうする」
アレクシスが眉をひそめる。
「問題はセリーヌ嬢の反応だ」
レオルドが冷静に報告する。
「カインが庇ったのに、彼女は“次は私が盾になります!”と言い出しました」
「……違う、そうじゃない」
ユリウスは机に突っ伏し、顔を覆う。
「完全に逆効果だな。カインの頑張りが全て無駄になる瞬間を見た」
「でもあの真面目さも……愛らしいじゃない?」
王妃は頬を染め、うっとりと語る。
「義娘になれば、危険管理も完璧!恋愛はともかく、城内の安全は保証されるわね」
「母上……だから違います。恋愛の話です」
アレクシスが小さく溜息をつく。
「カインは、やはり言葉が足りなさすぎるな」
レオルドが眉をひそめる。
「“守る”だけでは、彼女には“殿下の義務を全うせよ”としか伝わらない」
「もっと、こう……直接的に“好きだ”と言えれば」
アレクシスが頭を抱える。
「無理だな」
ユリウスが断言する。
「あいつは根っからの不器用。学院時代から変わらん。今回も見事に台無しにした」
沈黙が流れる。会議室の空気が重くなりかけたその時、王妃がぱっと笑顔を見せた。
「そうだわ!第四回作戦は、稀に見る災害を想定した危機回避訓練形式にしましょう!」
「は?」
「危険な状況で庇い、セリーヌ嬢が自ら“殿下を守らねば”と行動する……まさに理想の恋愛シミュレーションよ!」
レオルドは眉をひそめる。
「母上……また故意的に危険を…?」
王妃はにっこり笑うだけで答えない。
「危機は恋を育むのです」
堂々と宣言する王妃に、アレクシスはため息をつき、ユリウスは机を指先で叩いた。
「……もう、兄上だけの努力で十分じゃないか」
「いや、まだやる。第四回ラブラブ大作戦、舞台は危機回避訓練!」
アレクシスが羊皮紙に力強く書き込み、会議は決定された。
「賛成」
「異議なし」
「……やはり我が家は平和すぎる」
ユリウスのぼやきに、全員が思わず笑った。
もちろん国王陛下だけは、この陰謀を知らず、別室で書類の山に埋もれたまま。
「家族がやたら楽しそうにしている……国家の大事か?」
疑問を抱きつつも、答えは誰も教えてくれなかった。
こうして、王家の総力を挙げた「ラブラブ大作戦」は、今日もまた着々と進行していくのだった。
「殿下、実験は安全でしょうか……」
セリーヌは慎重に歩きながら、机上の試薬の色を確認する。真面目な顔でリスクを分析するその姿は、舞踏会の時以上に硬派だ。
「もちろん。君が怪我をしないよう、俺がついている」
カインが、少し不器用に手を差し伸べる。
だがその言葉を、セリーヌは「殿下の安全確認の義務」と解釈してしまう。
「承知しました。殿下の任務を妨げぬよう、慎重に参ります」
ぴしっと背筋を伸ばすセリーヌ。カインの心は沈みかけた。
「……(違う、そうじゃない)」
◇
魔法実験は、王城では一部の若手魔導師しか扱わない高度なものだ。炎や光、そして予測不能な爆発が常に隣り合わせ。
セリーヌが慎重に魔力を制御しながら試薬を混ぜる。カインは傍らで彼女の手を軽く支える。
「右手の角度を、あと少し上げて」
「はい、殿下……」
指先の距離がほんのわずかに触れた。カインは鼓動が早くなる。
だが、セリーヌはただ数字と比率に集中し、視線をカインに向けない。
「(こ、これじゃ……想いは届かない……)」
カインの心はもどかしく沈む。
しかし、突如として実験台の一部が光を放ち、爆発の前触れとなる青い炎が瞬く。
「危ない!」
カインは即座にセリーヌを抱き寄せ、炎の直撃を避けさせる。思わず二人の体は近づき、胸が触れ合うほどの距離になる。
「……っ!」
セリーヌは驚きと恐怖で目を大きく見開く。
観察力は常に鋭いが、この瞬間のカインの表情を読み違えた。
会場ならぬ実験室で、二人のハートビートは文字通り炸裂寸前。その距離に、護衛や魔導士たちは「次こそラブラブ成立」と思わず期待を高める。
だが、セリーヌは真面目に礼をし、口を開いた。
「殿下、申し訳ございません! 次は私が盾となります!」
「えっ……?」
カインは、驚愕と焦燥で声が出ない。
セリーヌは、爆発を自分が受け止めることで殿下の義務を守ろうとしているのだ。
「違う、違う、そうじゃない……」
カインの叫びは、爆発音にかき消される。
◇
翌朝、王城の奥深く。
昨夜の魔法実験室の大混乱の余韻がまだ残る会議室に、王太子アレクシス、第二王子レオルド、第四王子ユリウス、そして王妃が集まった。
第三王子カインは当然のごとく不在。国王陛下も依然執務室で書類と格闘中だ。
「では、『第三回カインとセリーヌのラブラブ大作戦』の反省を始めよう」
議長役のアレクシスは、昨夜の魔法実験室の破片写真を前に、羊皮紙に赤い文字で“爆発”と書き込む。
「うむ……爆発の演出としては、予想以上にリアルだったな」
アレクシスの言葉に王妃は目を輝かせる。
「素晴らしいわ!カインが庇った瞬間、セリーヌ嬢の心臓が止まりそうになったでしょうね」
「物理的にね」
「母上……これ、反省会です。褒めてどうする」
アレクシスが眉をひそめる。
「問題はセリーヌ嬢の反応だ」
レオルドが冷静に報告する。
「カインが庇ったのに、彼女は“次は私が盾になります!”と言い出しました」
「……違う、そうじゃない」
ユリウスは机に突っ伏し、顔を覆う。
「完全に逆効果だな。カインの頑張りが全て無駄になる瞬間を見た」
「でもあの真面目さも……愛らしいじゃない?」
王妃は頬を染め、うっとりと語る。
「義娘になれば、危険管理も完璧!恋愛はともかく、城内の安全は保証されるわね」
「母上……だから違います。恋愛の話です」
アレクシスが小さく溜息をつく。
「カインは、やはり言葉が足りなさすぎるな」
レオルドが眉をひそめる。
「“守る”だけでは、彼女には“殿下の義務を全うせよ”としか伝わらない」
「もっと、こう……直接的に“好きだ”と言えれば」
アレクシスが頭を抱える。
「無理だな」
ユリウスが断言する。
「あいつは根っからの不器用。学院時代から変わらん。今回も見事に台無しにした」
沈黙が流れる。会議室の空気が重くなりかけたその時、王妃がぱっと笑顔を見せた。
「そうだわ!第四回作戦は、稀に見る災害を想定した危機回避訓練形式にしましょう!」
「は?」
「危険な状況で庇い、セリーヌ嬢が自ら“殿下を守らねば”と行動する……まさに理想の恋愛シミュレーションよ!」
レオルドは眉をひそめる。
「母上……また故意的に危険を…?」
王妃はにっこり笑うだけで答えない。
「危機は恋を育むのです」
堂々と宣言する王妃に、アレクシスはため息をつき、ユリウスは机を指先で叩いた。
「……もう、兄上だけの努力で十分じゃないか」
「いや、まだやる。第四回ラブラブ大作戦、舞台は危機回避訓練!」
アレクシスが羊皮紙に力強く書き込み、会議は決定された。
「賛成」
「異議なし」
「……やはり我が家は平和すぎる」
ユリウスのぼやきに、全員が思わず笑った。
もちろん国王陛下だけは、この陰謀を知らず、別室で書類の山に埋もれたまま。
「家族がやたら楽しそうにしている……国家の大事か?」
疑問を抱きつつも、答えは誰も教えてくれなかった。
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