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第三章
拾壱 芝居の如き
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すっかり日は暮れた。行灯のほのかな光がゆらめいていたが志緒の閉じた目には見えなかった。
泊まり客のさざめきや女中の声も耳には入らなかった。
夕餉の後、佐助は番所の近くに様子を見に行き、女将は接客で忙しく志緒は一人だった。思うことは源之輔のことだけである。
明日三島に連れて行かれたら。その時は追いかけて行こう。箱根の関所は西へと向かう女性に対する調べが厳しいと聞いている。もし関を越えられなかったら……。その時は小田原で待とう。きっと夫は戻って来るから。
いや三島に連れて行かれるなどあり得ない。潔白の身なのだから。
「志緒」
とうとう自分はここにいない夫の声を幻に聞くようになったらしいと志緒はうなだれた。幻に心を奪われるとは明鏡止水の境地などとうてい求め得ない。
「志緒」
また聞こえた。これはどうしたことか。はっきりと聞こえた声が幻と思えず。まぶたを開けゆっくりと顔を上げ声のする方を見た。行灯の光に照らされていたのは足袋、袴、袖、帯、単衣そして顔。
「旦那様」
「ただいま戻った」
まるで駒井家の屋敷に帰って来たような顔の源之輔だった。だが志緒はすぐにはお帰りなさいませと口にできなかった。本当に源之輔なのか。これは幻ではないか。会いたいと思う志緒の気持ちが生んだものではないのか。
「まことに」
それ以上言葉が出てこなかった。
「まことの私だ」
その声がわずかに震えていた。
泣いている。志緒は気付き立ち上がろうとしたが源之輔の動きのほうが早かった。
「会いたかった」
声が目の前で聞こえた。その場に膝をついた源之輔は志緒を抱き締めた。志緒は感じていた。この腕の力も汗の匂いも間違いない。源之輔は帰ってきたのだ。
このままでいたいと思った時だった。隣の部屋に客を案内する女中の声が聞こえた。
ここは旅籠である。女将が来るかもしれない。志緒は離れなければと思った。
「すまない。驚かせてしまった」
源之輔は先に離れ志緒の前に端座した。この気遣いはまさしく源之輔のものだった。
「まことに旦那様なのですね」
志緒は姿勢を正した。
「お帰りなさいませ」
「もう何も心配いらない。明日の朝一番に出ましょう」
「はい」
そこへ女将がお茶をどうぞと入って来た。湯呑と急須を置くとすぐに部屋から出て行った。廊下を遠ざかっていく足音は弾むようだった。
「では、女子は相対死にだったのですか」
志緒は源之輔が奉行からじかに聞かされたという話に驚き、しばし夫を見つめた。源之輔はその視線の強さに内心驚いたものの平静を装って話を続けた。
「そのようです。男は女子を斬った後、別の場所で己の腹を切って死んだ。相対死にとわからぬように。だが女子の懐に男の文が入っていたそうです。地蔵堂で会いたいと男の名で。腹を切った男を泊めた宿屋の宿帳に男の名があり二人の関わりがわかったと」
「一体、何故……」
志緒は夫の説明に割り切れぬものを感じていた。好き合っているのなら何故死なねばならぬのか。
「女子は町人、男は浪人とはいえ武家。身の上が違う故、今世では結ばれぬと思ったのでしょう」
そういうことで人は死んでしまうのかと志緒は悲しくなった。この世には幸之助のように生きたくても生きられぬ命があるというのに、女を殺して自らも命を絶ってしまうとは。
旅芝居の一座が城下のはずれに小屋掛けして心中物と言われる芝居をしていたという話を聞いたことはある。絶対に見に行ってはいけないと武家の娘たちは親に言われていた。志緒も当然のように親の言いつけに従った。城に仕える侍の中に身をやつしてこっそり見に行った者がいるらしいという噂を聞き、武家として恥ずべきことだと思った。
けれど本当に芝居のように相対死にをする男女がいるとは。芝居というのは偽りではないのか。
「なんだか芝居のよう」
志緒は素直に感想を述べただけであったが、その言葉に源之輔は困惑した表情を見せた。
「芝居……嘘に聞こえますか」
「はい。でも世の中には私にはわからないことがまだまだたくさんあるのですね」
「私にもわからないことだらけです」
源之輔はそう言って茶を口にした。
運ばれてきた源之輔の夕餉の膳が自分よりも一品多いことに志緒は気付いた。恐らく旅籠の主夫妻の心遣いだろう。いくら番所で昼が出されたとはいえ、その膳が豊かでないことは想像された。だがここで話すことではない。源之輔に番所でのことを思い出させたくなかった。
だが食事の後、湯呑を置いた源之輔の口から出た言葉に志緒は驚かされた。
「物頭の荒垣様の御次男と番所で同じ房になりました」
「え……」
志緒は佐助の話を思い出した。
「私と同じく疑いを掛けられたそうです。無論、すぐに晴れましたが」
「御次男はどのような方なのでしょうか。私は会ったことがないので」
夫に他の男のことを聞くのはどうかと憚られたものの志緒は好奇心を押さえられなかった。
源之輔はそんな志緒の気持ちを知ってか知らずかあっさりと答えた。
「初めて会ったが気さくな方でした。江戸に医術を学びに行くそうです」
「医術でございますか。何故に」
荒垣家に関わりのある家に医者はいないはずである。一体何故に医術をと志緒は不思議に思わずにいられなかった。医者というのは親の後を継いでなるものだろう。城下ではそうだった。
「目の前で死んだ者が何故死んだのか知りたいと仰せでした」
あっと喉まで出かかった声を志緒は抑えた。あの日の幸之助の横たわった姿がありありと思い出された。
「きっと親しい身内の方を目の前で亡くしたのでしょう」
源之輔の言うことがまことかもしれない。けれど、志緒には幸之助のこととしか思えなかった。何故なら若く命の輝きに満ちていた幸之助が突然身まかったのを荒垣銑次郎は目の前で見ているのだ。志緒でさえどうして幸之助がと思い詰めていたのだ。荒垣銑次郎が衝撃を受けて医術を志すようになっても不思議ではない。あの日のことが彼の運命を変えてしまったのではないか。
「そうかもしれませんね」
何故か志緒は己の心に浮かんだことを口にできなかった。駒井の家にいる時は義両親が時折幸之助のことを語ることがあり志緒もそれに合わせていた。同席している源之輔も黙って話を聞いていた。だが二人だけでいる時は法事などの必要があって話す時以外は幸之助のことを語ることはなかった。
もしここで荒垣銑次郎と幸之助の関わりを語ればあの時の志緒の気持ちを語ることにもなる。優しい源之輔は黙って聞いてくれるかもしれないが、内心はどうかわからない。ましてや疑われて番所に囚われた直後である。源之輔に幸之助の死にまつわる話をするのは心に重い荷を背負わせるように思われた。
「江戸まで一緒にと言ったのですが、一人の方が気楽だとか言って番所の前で別れました。中屋敷に住むそうですから江戸でまた会えるでしょう」
源之輔には何のわだかまりもないようだった。銑次郎に会ったらどのような顔をすればいいか志緒にはわからなかった。彼も恐らく志緒に合わせる顔がないと思っているのではなかろうか。江戸ではできるだけ銑次郎と顔を合わせないようにしなければなるまい。
ふと佐助のことが気になった。荒垣銑次郎のことをすでに源之輔に話したかもしれない。
「そういえば佐助は」
「番所の前で待っていてくれました。昼も来てくれたのですね。そうそう、佐助は荒垣殿のことを知っていたんですね。江戸に行くと言ったら驚いていました。あまり近づかないようにと佐助が言ったのには驚きました」
「どうしてでしょうか」
「どうしてでしょうね。少し風体が変わっているからよく思っていないのかもしれません」
「どのような姿なのですか」
「それが月代を剃らずにうなじの辺りで馬のしっぽのように髪を結んでいるのです。医者に弟子入りすれば髪を剃るでしょうから今だけのことだと思いますが」
どうやら佐助は幸之助のことまでは話していないようだった。
そのほうがいいと志緒は思う。今になって幸之助の死を蒸し返すのは源之輔にとっていいこととは思えなかった。
江戸でのこの先の源之輔の明るい前途に幸之助の死という影が差すのは不吉に思われた。荒垣銑次郎が医術を学ぶ理由を思い志緒は佐助と同じ考えになっていた。
「変わったお姿なのですね」
微笑む志緒を見て源之輔も微笑んだ。
「気さくな方ですからいい医者になるでしょう。気難しい顔の医者だと治るものも治らないような気がします」
「でもあまり砕け過ぎた医者というのも。限度があるかと」
「確かに中庸は徳の至れるものと言いますからね」
そう言って源之輔は湯呑の残りの茶を飲み干した。
志緒はその喉元の動きを見つめた。命の動きだと思った。源之輔は生きている。今、志緒の傍にいる。その幸せだけで十分だった。
江戸に出れば荒垣銑次郎のことで気をもむかもしれない。けれど今はこのひとときの幸せを味わおう。
泊まり客のさざめきや女中の声も耳には入らなかった。
夕餉の後、佐助は番所の近くに様子を見に行き、女将は接客で忙しく志緒は一人だった。思うことは源之輔のことだけである。
明日三島に連れて行かれたら。その時は追いかけて行こう。箱根の関所は西へと向かう女性に対する調べが厳しいと聞いている。もし関を越えられなかったら……。その時は小田原で待とう。きっと夫は戻って来るから。
いや三島に連れて行かれるなどあり得ない。潔白の身なのだから。
「志緒」
とうとう自分はここにいない夫の声を幻に聞くようになったらしいと志緒はうなだれた。幻に心を奪われるとは明鏡止水の境地などとうてい求め得ない。
「志緒」
また聞こえた。これはどうしたことか。はっきりと聞こえた声が幻と思えず。まぶたを開けゆっくりと顔を上げ声のする方を見た。行灯の光に照らされていたのは足袋、袴、袖、帯、単衣そして顔。
「旦那様」
「ただいま戻った」
まるで駒井家の屋敷に帰って来たような顔の源之輔だった。だが志緒はすぐにはお帰りなさいませと口にできなかった。本当に源之輔なのか。これは幻ではないか。会いたいと思う志緒の気持ちが生んだものではないのか。
「まことに」
それ以上言葉が出てこなかった。
「まことの私だ」
その声がわずかに震えていた。
泣いている。志緒は気付き立ち上がろうとしたが源之輔の動きのほうが早かった。
「会いたかった」
声が目の前で聞こえた。その場に膝をついた源之輔は志緒を抱き締めた。志緒は感じていた。この腕の力も汗の匂いも間違いない。源之輔は帰ってきたのだ。
このままでいたいと思った時だった。隣の部屋に客を案内する女中の声が聞こえた。
ここは旅籠である。女将が来るかもしれない。志緒は離れなければと思った。
「すまない。驚かせてしまった」
源之輔は先に離れ志緒の前に端座した。この気遣いはまさしく源之輔のものだった。
「まことに旦那様なのですね」
志緒は姿勢を正した。
「お帰りなさいませ」
「もう何も心配いらない。明日の朝一番に出ましょう」
「はい」
そこへ女将がお茶をどうぞと入って来た。湯呑と急須を置くとすぐに部屋から出て行った。廊下を遠ざかっていく足音は弾むようだった。
「では、女子は相対死にだったのですか」
志緒は源之輔が奉行からじかに聞かされたという話に驚き、しばし夫を見つめた。源之輔はその視線の強さに内心驚いたものの平静を装って話を続けた。
「そのようです。男は女子を斬った後、別の場所で己の腹を切って死んだ。相対死にとわからぬように。だが女子の懐に男の文が入っていたそうです。地蔵堂で会いたいと男の名で。腹を切った男を泊めた宿屋の宿帳に男の名があり二人の関わりがわかったと」
「一体、何故……」
志緒は夫の説明に割り切れぬものを感じていた。好き合っているのなら何故死なねばならぬのか。
「女子は町人、男は浪人とはいえ武家。身の上が違う故、今世では結ばれぬと思ったのでしょう」
そういうことで人は死んでしまうのかと志緒は悲しくなった。この世には幸之助のように生きたくても生きられぬ命があるというのに、女を殺して自らも命を絶ってしまうとは。
旅芝居の一座が城下のはずれに小屋掛けして心中物と言われる芝居をしていたという話を聞いたことはある。絶対に見に行ってはいけないと武家の娘たちは親に言われていた。志緒も当然のように親の言いつけに従った。城に仕える侍の中に身をやつしてこっそり見に行った者がいるらしいという噂を聞き、武家として恥ずべきことだと思った。
けれど本当に芝居のように相対死にをする男女がいるとは。芝居というのは偽りではないのか。
「なんだか芝居のよう」
志緒は素直に感想を述べただけであったが、その言葉に源之輔は困惑した表情を見せた。
「芝居……嘘に聞こえますか」
「はい。でも世の中には私にはわからないことがまだまだたくさんあるのですね」
「私にもわからないことだらけです」
源之輔はそう言って茶を口にした。
運ばれてきた源之輔の夕餉の膳が自分よりも一品多いことに志緒は気付いた。恐らく旅籠の主夫妻の心遣いだろう。いくら番所で昼が出されたとはいえ、その膳が豊かでないことは想像された。だがここで話すことではない。源之輔に番所でのことを思い出させたくなかった。
だが食事の後、湯呑を置いた源之輔の口から出た言葉に志緒は驚かされた。
「物頭の荒垣様の御次男と番所で同じ房になりました」
「え……」
志緒は佐助の話を思い出した。
「私と同じく疑いを掛けられたそうです。無論、すぐに晴れましたが」
「御次男はどのような方なのでしょうか。私は会ったことがないので」
夫に他の男のことを聞くのはどうかと憚られたものの志緒は好奇心を押さえられなかった。
源之輔はそんな志緒の気持ちを知ってか知らずかあっさりと答えた。
「初めて会ったが気さくな方でした。江戸に医術を学びに行くそうです」
「医術でございますか。何故に」
荒垣家に関わりのある家に医者はいないはずである。一体何故に医術をと志緒は不思議に思わずにいられなかった。医者というのは親の後を継いでなるものだろう。城下ではそうだった。
「目の前で死んだ者が何故死んだのか知りたいと仰せでした」
あっと喉まで出かかった声を志緒は抑えた。あの日の幸之助の横たわった姿がありありと思い出された。
「きっと親しい身内の方を目の前で亡くしたのでしょう」
源之輔の言うことがまことかもしれない。けれど、志緒には幸之助のこととしか思えなかった。何故なら若く命の輝きに満ちていた幸之助が突然身まかったのを荒垣銑次郎は目の前で見ているのだ。志緒でさえどうして幸之助がと思い詰めていたのだ。荒垣銑次郎が衝撃を受けて医術を志すようになっても不思議ではない。あの日のことが彼の運命を変えてしまったのではないか。
「そうかもしれませんね」
何故か志緒は己の心に浮かんだことを口にできなかった。駒井の家にいる時は義両親が時折幸之助のことを語ることがあり志緒もそれに合わせていた。同席している源之輔も黙って話を聞いていた。だが二人だけでいる時は法事などの必要があって話す時以外は幸之助のことを語ることはなかった。
もしここで荒垣銑次郎と幸之助の関わりを語ればあの時の志緒の気持ちを語ることにもなる。優しい源之輔は黙って聞いてくれるかもしれないが、内心はどうかわからない。ましてや疑われて番所に囚われた直後である。源之輔に幸之助の死にまつわる話をするのは心に重い荷を背負わせるように思われた。
「江戸まで一緒にと言ったのですが、一人の方が気楽だとか言って番所の前で別れました。中屋敷に住むそうですから江戸でまた会えるでしょう」
源之輔には何のわだかまりもないようだった。銑次郎に会ったらどのような顔をすればいいか志緒にはわからなかった。彼も恐らく志緒に合わせる顔がないと思っているのではなかろうか。江戸ではできるだけ銑次郎と顔を合わせないようにしなければなるまい。
ふと佐助のことが気になった。荒垣銑次郎のことをすでに源之輔に話したかもしれない。
「そういえば佐助は」
「番所の前で待っていてくれました。昼も来てくれたのですね。そうそう、佐助は荒垣殿のことを知っていたんですね。江戸に行くと言ったら驚いていました。あまり近づかないようにと佐助が言ったのには驚きました」
「どうしてでしょうか」
「どうしてでしょうね。少し風体が変わっているからよく思っていないのかもしれません」
「どのような姿なのですか」
「それが月代を剃らずにうなじの辺りで馬のしっぽのように髪を結んでいるのです。医者に弟子入りすれば髪を剃るでしょうから今だけのことだと思いますが」
どうやら佐助は幸之助のことまでは話していないようだった。
そのほうがいいと志緒は思う。今になって幸之助の死を蒸し返すのは源之輔にとっていいこととは思えなかった。
江戸でのこの先の源之輔の明るい前途に幸之助の死という影が差すのは不吉に思われた。荒垣銑次郎が医術を学ぶ理由を思い志緒は佐助と同じ考えになっていた。
「変わったお姿なのですね」
微笑む志緒を見て源之輔も微笑んだ。
「気さくな方ですからいい医者になるでしょう。気難しい顔の医者だと治るものも治らないような気がします」
「でもあまり砕け過ぎた医者というのも。限度があるかと」
「確かに中庸は徳の至れるものと言いますからね」
そう言って源之輔は湯呑の残りの茶を飲み干した。
志緒はその喉元の動きを見つめた。命の動きだと思った。源之輔は生きている。今、志緒の傍にいる。その幸せだけで十分だった。
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