とある探偵事務所の探偵業務~ラーメン事変~

哀川 羽純

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第6章 貴様はアホか

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「おはようございまーす! 店長」

そう、愛のすごいところ(怖いところ)は"相手によって態度を変えるのはおかしい"といっておきながら豹変するところだ。(いってなくても怖いが)

「おはよう愛ちゃん。今日は宮田の兄ちゃんも一緒じゃないか!」

「宮野です」

あぁ、なんでたから屋メンバーは揃いも揃って俺の名前を間違えるかなぁ……

「あぁ、宮野くんね、ごめんごめん」

「んじゃ、今日からよろしくお願いします!」

「おう! こちらこそな」

え、俺は?

新を完全無視して店長は愛を連れてバックヤードへと消えてく、
それを新は慌てて追いかける。

。・*・:♪

「厨房のバイトやった事はあるか?」

「えぇ、イタリアンレストランですけども」

これも内偵調査だけどね。

と、新は心で思った。

いま、2人は休憩室にいる。
へぇ、たから屋こここんなところあったんだ。

「厨房の使い方はやりながら説明するから。んで、ホールはホール担当の人が教えてくれる。宮野の兄ちゃんはホールやった事はあるか?」

「えぇ、ファミレスですか」

愛と同じイタリアンレストランでもやっていたがいらぬ誤解を招かないようにする為に敢えて別の場所を言う。
もちろんファミレスも内偵の為。
まぁ、新がバイトしていて濡れ衣を着せられるところを愛が救ったわけだ。

「了解です」

「わかりました」

「あぁ、因みに時給は厨房が1500円でホールが910円ね」

「え? この前は1000円って言ってませんでした?」

「いーの! いーの! フツーの人は1000円だけど、愛ちゃんだから1500円」

あぁ、このオヤジシタゴコロ丸出しだな。みっともない。
愛さん、気付かないもんなー。

まぁ、愛さん截拳道できるしいざとなったら俺もいるし……

って、絶対俺よが愛さんのが強いよなぁ
いろいろ逆だよなぁ、俺ら。

「やったね! 新。本業より時給いいぞ!」

愛の働いていることになっている書店の時給は910円の設定だ。

「こりゃ、解けても働いてた方が得するな」

新の耳元で愛がそっと囁く。

「え?」

「冗談だ。さぁ、真面目に働くんだな」

「じゃあこれ愛ちゃんの制服。こっちは宮野の兄ちゃんの制服」

「更衣室はこの先に男女別であるから着替えたら2人とも取り敢えずホールね」

「はーい」

愛は返事をして鞄を掴んで女子更衣室へ向かった。

「ちょ、置いてかないで下さいよ~」

。・*・:♪

「なかなか似合うじゃないか」

愛は白い割烹着のような格好。
新はズボンにTシャツ。ラーメン たから屋のロゴ入り。

「よし、じゃあ愛ちゃんはこっち。おーい。上田、指導してやれ」

「ういっす!」

吉田と呼ばれた男が小走りでこっちち向かってきた。

「宮田くん? だっけ?」

「宮野です!」

あぁ、もうたから屋嫌い。
なんでみんな間違えるの?

「ごめんごめん。宮路くん」

「だから!」

「宮野くんだよね? わかってるって。大丈夫。俺、怖くないからよろしくな。じゃあ、さっそくお客様がきたら……」

と、真面目に教えてくれている。
怖くないから。とは彼の見た目が金髪で、 鼻ピアスで、耳にも沢山穴が空いていて、拡張されているからだろうか。

でも、チビだし……

怖くねぇーな、と愛は思っていた。
まぁ、怖い人は怖いのかなぁ、

「じゃ、愛ちゃんはこっち! いやぁ、助かったよ。厨房は3人でまわしてるからてんてこ舞いなんだよ」

店長。
あンた、何か隠してるんだろ?
阪田に隠し通せてもあたしには隠し通せないぜ?

さぁ、何故、味が変わった?

。・*・:♪

「はい、塩ラーメン。3番さんな」

「え? 愛さんなんて?」

「だから、塩ラーメン! 3番!」

「え?」

「宮野くん、耳悪すぎ。塩ラーメン! 3番テーブル!」

あ、了解です。

と、新はラーメンを持って3番テーブルへと向かった。

「はい。塩ラーメンです」

「あ、ども」

このお客さんは初めてのお客さん?

初めてじゃなかったら気づくかな?
俺は気付かなかったけど、
味覚なんて自信ないし。

だか、料理はできるという矛盾。

「はい、新! 次は醤油ラーメン。さっきのところ」

「了解です!」

やはり、ランチタイムは忙しい。

あーもー。皆んな、暑いんだから冷たいのでも食ってろよ……
ラーメン屋なんかこないでさぁ……

隣に蕎麦屋さんあるでしょ?

「はい、新! 5番テーブルに冷やし中華!」

「はい!」

冷やし中華も置いてあるのかよ。
うわ、しかも美味そう。
賄いってなんでも良いんだよね? 
冷やし中華にしよう。
うん。

「あー、愛ちゃん、ホールに冷やし中華は残1って伝えて!」

「はい!」

「新! 吉田さん!」

「はい!」

「冷やし中華残1ね」

「了解です!」

え、ちょっと、まって、まって。
ザンイチってなに?

「吉田さん、ザンイチってなんスか?」

「え?」

「だからザンイチ!」

「すいませぇーん!」

お客さんに呼ばれてしまった。

「はーい!」

「冷やし中華1つと、塩ラーメンね」

「あい!」

熟年夫婦だ。

「了解です!」

「店長~! 冷やし中華入りました。山ですね」

「おぅ!」

「え、ヤマってなんスか」

「そこの兄ちゃん! 冷やし中華3つね」

土木関係者だろうか?
作業服を着ている。土で汚れている。

「はい!」

愛さんに伝えなきゃ。

「愛さん! 冷やし中華3つ入りました」

「ハァ!? 冷やし中華は残1といったろ」

「そしてその後、俺は山って言ったぜ?」

吉田がチラッと言ってまた、呼ばれたのでお客さんのもとに行く、

「だからそのヤマとかザンイチってなんすか!」

「貴様はアホか」

「え?」

愛がキレる一段階手前の言葉だ。

「もういい、後で説明する。新は注文取らずに食器の片付けや会計、あたしが達が渡したものだけ出してろ」

幸いにもその日はホールは4人いた。
新を含めて。
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