異世界に跳べない俺は今日も近所の居酒屋でアルバイトをする。

哀川 羽純

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第1章 タイトルは?

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「らっしゃいませ~」

22:00 居酒屋が混みに混む時間。
そして、今日は金曜日。MAXに混む。

しかも、同僚で同期で同学年の幼馴染のバカが無断欠勤した。
突然だから代えは見つからないし連絡はつかない。
店長も俺も連絡しまくってるンだけど。
あいつ、次会ったらシバく。

「健くん。山千がヤマ!!」

「了解ッス~~」

山千は山芋の千切り。
ヤマは終わったって意味。

店長は山千面倒くさいって嫌いだからなんか嬉々として見える。

「健~~刺身ヤマ! マグロのみ!」

「ういっす!」

刺身も終わりか。早いな。

カウンター客の読んでる本が気になる。
あの客、ナニ読んでる?

本は好き。

最近、異世界転生モノが多くてイライラしてるのも事実。
1冊も読んでなくて文句言うのはウザい奴って分かってるけど、こんだけ量産されると読む気も失せる。
アニメ化、映画化してから本を読むのも嫌い。

まぁ、正確にはラノベからコミカライズしたのは読んだ。
爆売れ何とかだったけど、好まなかった。
うん。

まーさか、アンタも異世界転生モノ?
まぁ、他人の趣味嗜好には口出さないけど。

「健~! C6さんに秋刀魚の塩焼き」

「はーい!」

うしきた。例の客。

「お待たせしました。秋刀魚の塩焼きです」

たまたま、挿絵のページに差し掛かっていた。
チャンス。わかるかも。

「……あ、どうも……」

本に夢中で生返事。
気持ちは分からなくないが、なんか、ねぇ?

チラと見えた挿絵はスタイル抜群のねぇーちゃん。
無理です。わかりませんでした。

空いた皿とグラスを下げる。
飲み物のおかわりを尋ねるとオススメの麦のお湯割りを頼まれた。
オススメの麦……
焼酎そんなに飲まないし。飲むとしたらジンベースの酒かな。

青鹿毛、中々、㐂六、佐藤……
ここら辺が有名どころか?

佐藤は高い。中々でいいか。

湯を湯呑みに注いで軽くカップを温める。
それを1度捨てて、半分くらいお湯をいれ、中々がある棚まで向かう。
この途中に捕まると厄介。
捕まりませんようにと祈りながら棚に向かう。

「お兄さーん!」

げ。捕まった。クソ。

「すみません! 少々お待ち下さいませ」

「1番さんお願いしまぁす!」

「はーい!」

童顔大学生。一応歳上だけど俺のが断然歳上に見られてる。特なんだか損なんだか。
でも、可愛い。フツーにJKって言われても違和感ナシ。

「お姉ちゃん可愛いね! ん? 高校生? 時間大丈夫なの?」

「やだぁ、お客さんお上手ぅ~~! わたし、これでも大学生! 20超えてるからお酒も飲めちゃうよ!」

この、女。怖い。
結構性格ドギツいんだけど、コロコロ変わる態度がコロコロ変わる。

「お、いいねいいね! 何好き? カシオレ? ファジネ? マリブミルク? 1杯奢らせて」

「いんすか!? 真澄!!」

「なに? 日本酒!? イケるくち?」

そう。酒も強い。

そんな会話を背中で聞きながら、中々を入れる。

「お待たせしました。オススメの麦のお湯割、中々にさせて頂きました」

「ありがとう。さっきらすまんね、ちょっと本に夢中で」

「いえいえ、分かりますよ。僕も本好きですし」

題名を聞くチャンス?

「君、何好きなの?」

「僕っすか? 僕は、、長沢樹とか好きっすね、江戸川乱歩とか古いのも読みます」

「へぇ。江戸川乱歩。珍しいね」

「お客さん、何読まれるんですか?」

「これは、友達にゴリ押しされたラノベ。普段はあんまり読まないかな」

ちらと表紙を見せてくれた。

マイナー? 聞いたことない。

「まぁ、知り合いが書いてる本なんだけどね」

「マジすか!!?」

「一応。うん」

このご時勢、誰もが簡単に小説家になれる。
売れるか売らないかは別として。
でも、知り合いが書いてるってやっぱり感心しちまう。

俺も一時期書いてたな。
こまめにUPもしてた時代もあった。
最近は忙しさに流されてかけていない。

本好きなら一度や二度は筆を執った事があるはず。

「詳しく教えて下さい。今度読んでみます!」

「良いよ。何だったらサインでも書かせてくる? まぁ、ファンでもなんでもなかったら邪魔か」

「いや、そんな事は無いっすよ? 本屋とかでも知らない作家とかの本でも"著書サイン入り"ってなってるとつい買ってしまいますから」

「そっか! OK!! またくるよ。兄ちゃんいつ入ってるの?」

「火、水、金、土ですね」

「へぇ……結構入ってるんだ。任せといといて。また、本の話しような」

「けーん!」

「なんすか、あやめさん。俺はケンじゃなくてタケルって何度言えばわかるんですか!」

「漢字は同じだから良いでしょ。それにお前の名前分かりにくいッ!」

「先輩の大好きな俳優も俺と同じ名前っすよ」

「そこも気に喰わんからケン!」

「は!?! ムカつく!」

「2人とも仲良いねぇ」

「「よくないです!!」」

息ぴったり。これじゃあますます揶揄われる。

「ね? 良いでしょ、この2人。俺の推しカプ」

「ちょ、店長? アニメか何かみたいに言わんで下さい」

「ほんとそれ」

「やっぱ、仲良いっすね?」

「でしょ? そのうち付き合い始めるから」

「なわけ」

「店長それセクハラ」

「俺にはパワハラすね」

「はははは。楽しいな。ケンくん? とあやめちゃん? ドリンク1杯飲まない?」

「良いんですか~~? 頂きますう」

「ちょ、俺、ケンじゃなくてタケルです」

「ん?」

「やったね、ケン。ケン呼び増えたじゃん♡」

全くもって嬉しくねぇ!!!!
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