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第2章 忘れてない?
しおりを挟む「タケル! アイツと連絡ついた?」
「まだっす!」
例のサボリーヌとはまだ連絡がつかない。
奴の名前は坂本 悟
サトルのバカ。でも、面白いお客さんと話せたから良しとしてやる。
「ケンくんにあやめちゃんか。俺はね、相沢っていうの。相沢 煜」
「ヒカルさん」
呟いてからどんな字を描くのか頭の中で転がす。
ひかる。ヒカル。HIKARU。
響きが良いな。
タケルと少し似てるかも。なんて思ってもみた。
「漢字、聞いても良いっすか?」
「うん。火曜日の火を書いて、日曜日の日。その下に立つ。で煜」
「綺麗」
「そお? 照れるなぁ」
「なになに? タケル、すっかり仲良しじゃん」
「でしょ? この子俺のお気に入りになった」
店長が割って入ってきた。
呑気に話をしているが相変わらず店は忙しい。
今だって、あやめさんがレジ打ちをしている。その最中にお客さんが横槍を入れるかのように話しかけてくる。
あれは、相当イライラしてるなぁ。俺にはわかる。
あれはイライラしてる時の顔。
美人もこういう時は損だよな。
俺は、別に女性客にめちゃくちゃ話しかけられる訳でもない。
どちらかというと悟の方がモテるんじゃないか?
俺と悟と女の子と3人で仲良くしていても、女の子はいつの間にか悟の事を好きになる。
そして、俺に相談してくる。
俺に相談されてもな、って。
こういう時の悟の返しはいつも同じ。
「そういうのじゃない」「3人で仲良くしたい」「健外しは嫌だ」って、お前なんかゲイみたいだぞ。
LGBTバカにしてるんじゃなくて、ホントに。
影で俺とお前がデキてるって噂流れてンだからな。
あやめさんは彼氏さんがいる。らしい。
なのに、店長は俺とくっ付けたい。らしい。
すべて憶測。
嘘か本当かなんてわからない。
そんな事を永遠考えていると、お客さんに呼ばれた。
「はい、只今!」
そう叫んで向かう。
その前にヒカルさんに一礼するのも忘れなかった。
「生3つと! 枝豆と! 冷や奴!」
「生3つに枝豆と冷や奴ですね。かしこまりました」
店長に枝豆と冷や奴を伝え、俺は急いで生を作る。
最初は難しかったが覚えてしまえば簡単。
最初は泡を捨てた方が良い。
サーバーから出るビールの色が黄金になったらジョッキを突っ込む。
この時の角度がポイント。垂直に入れてしまうと、泡立ってしまい、量が入らなくなる。ちょうど、取っ手の上の部分くらいで辞める。そして、サーバーを反対に押して、泡を乗せる。量作る時は先に全部入れてから最後に泡。でないと泡が消える。
ささっとビールを注ぎ、席へと運ぶ。
生が遅いと怒られる。
まぁ、ドリンクは早くっていうよな。
料理が遅くても文句は来るし。
文句言いたい奴は何に対してもいう。
マジ、メーワク。
一旦、落ち着いたのでバックへ行き、ドリンクを飲む。
そう言えば、ヒカルさんから頂くの忘れてた。
忘れる分には良いんだけど、顔を立てるとか、言わせといて貰わないのは、なんか、失礼。
あの感じだともうちょいいるな、きっと。
悟から連絡はあるか?
こんだけ連絡がないと、不安になる。
今までこんな事無かったから。
メッセージアプリを起動させる。
? 既読ついた?
もう一度送る。
→おい、ヒカル。行きてるか?
既読。
→テメェ、既読無視か? シバくぞ?
既読。
←タケルだよな?
→そうにきまってるだろ。お前今どこ
←わかんない。けど、良いところ
→は?
これは思わず声が出た。
あやめさんがそのタイミングでバックに来たので訝しげな目で見てくる。
「いや、悟から変なメッセが」
「どれ?」
「これっす」
メッセージアプリの画面をそのまま見せる。
あやめさんは更に訝しげな目をして、眉間の皺を増やした。
「私も送ってみよ」
「お願いします」
→悟~!! いまどこ?
既読。
→サボリか? あ?
既読。
←あやめさん!! すみません。僕もちょっとまだ状況が把握できてなくて。
今は、タケルとご一緒ですか?
→把握できない #とは
←マジです!!
「おい、ケン。悟のやつついに頭でも沸いたか?」
「同感っす」
「取り敢えず、店長には連絡取れたって伝えます」
「うい」
「店長~~! 悟と連絡取れたっす。頭沸いたみたい。ちょっと電話するんで後で代わってて下さい~~」
「は? うん?」
店長も混乱してる。
俺だってしてるわ。阿保。悟のアホ。
電話発信。
奴は3コール目で出た。
「お前今どこ」
『わかんない。でも、良いところ』
「は?」
『スタイル抜群のねぇーちゃん達が接待』
「どゆこと?」
『夢? ラノベ? なんか、俺は勇者? 魔法使い? 魔法が使えて、剣を持っている』
「ゲームのし過ぎか? 頭沸いてる? 大丈夫?」
『いや、まじなんだって。TV通話にするから待ってろ』
「いや、俺、バイト! オメェーがサボってるバイト!」
『行方不明の友人を気遣う心は?』
「だって、お前元気そうだもん。それになんかイイトコにいるみたいだし? あ、わかった。キャバクラだな。勇者だなんだって煽てられてるだろ? はいはい。キャバクラハマってバイトサボるとか最低だな?」
『だからキャバクラ違うて!』
「へいへい。TV通話よろ」
『おうよ」
イライラしてきた。
「店長~! 悟はキャバクラです~」
『ちげぇーよ!」
「は? 悟キャバ!? ずるい!どこ? 可愛い子いる??」
「店長サイテー」
あやめさんが冷たい視線を送る。
ヒカルさんも苦笑い。
が、少し表情を変えた。
「そう言えば俺も連絡つかない奴いるんだよな」
マジ? 偶然?
そういえば、とあやめさんも
「あたしも朝から彼氏と連絡取れない」
「え? あやめちゃん、彼氏いたの? 別れてなかったの?」
「まだ、別れられてないですぅ~~」
どうやら、彼女の彼氏は闇らしい。
「あ、なんか来てる。タスケテ? ん?」
写真もある、そう言って写真を開いた。
あやめさんが真顔になった。
やはり、真顔も綺麗。美しい。
『ねぇ、俺の事忘れてない?』
「テンチョー悟の相手して~~」
『おま、テキトーかよ!』
「おう。タケル任せとけ」
店長に押し付けて俺はヒカルさんの所へいった。
こんな偶然あるのか?
まぁ、ある、、、の、か??
「ヒカルさんもお電話されてみては?」
「んー、そうだね。ま、例の小説家先生だから執筆中かもね~~。アイツ、1回ノるとずっとだから」
成る程。
そう言いながらもスマホを操作して、呼び出しからスピーカーにして俺らに聞かせる。
「ねぇ、ケン。これなんだと思う?」
あやめさんが首を傾げながら俺に先程のと思われる写真を見せてきた。
「なんすか、変な写真って。エロいやつ?」
「ケンもサイテー。この居酒屋セクハラ男ばっかりー!!! 辞めてやるううう!!! 今すぐ辞めてやるううう!!!!」
いや、アンタいつも下ネタ連呼してるでしょうに。
とかいうとまた、セクハラなんだかんだ言われるので沈黙。
例のよくわからない写真を見るとする。
「……」
……これは、確かに……
「ね?」
「うん」
『いやだから! 多分これ異世界トリップだって!』
悟が言った。
そうなのかも、しれない。
あやめさんが見せてきた写真は龍? ドラゴン? の写真。
それと、彼氏さん。
なんか、追われてる? みたい?
でも、悟の話だとそんなモンはないが。同じとこに跳んだ? 違う所?
いやいやまて、異世界なんて存在しない。
それはアニメや映画、ラノベの中だけで、最近妙に流行ってるだけで、現実世界の中では不可能であって、並行世界云々いう小説もあったけど、それも、あくまで小説であって!
まてまてまて、俺の知らない間に異世界が出来ていなのか? 行きたい奴は行けるのか?
でも、なんか、あやめさんの彼氏さんはとんでもないところに飛ばされていて?
悟の奴はイイトコに跳んだ?
都合良すぎねぇーか?
でも、あやめさんの彼氏さんは闇らしい。
悟の奴はそれなりに人徳も人望もあるから現実世界でのは加味されてるの?
わけわからん。
いや。違うって、俺は認めん。
「あー、お前今どこ?」
『ヒカルっち? 俺今ね、異世界☆』
「そっか、またね」
そう言ってヒカルさんは電話を切った。
思ったよかドライ。
「アイツも頭沸いてる」
「この人も相当っス」
そう言って、あやめさんの彼氏さんwithドラゴンを見せる。
「はははははははは。笑えねぇ」
「はははははははは。ほんとっス」
『だからね、マジで。あやめさんの彼氏さんも絶対そうだって! きっと、ドラゴンと写真撮ってる』
「惜しい。悟、半分正解。コイツ、もーそろ喰われるところ」
『ほーーらね! 惜しいべ?』
「惜しいべじゃなくて。にして、お前ほんとイイトコいんじゃん」
宮殿? みたいなところの造りが凄く良い。
高そうなキャバ。
ステンドグラスも綺麗……ん?
「おい、悟、ステンドグラスアップにしろ」
『おう?』
これ、本物じゃん。
「キャバじゃねぇーな」
『だからさっきから言ってるじゃん。異世界トリップだって! やったね。ついに俺も異世界デビュー☆ 良かった。スライムになってなくて』
「なに」
『ヒカルっち冷たい。俺、いま、どうぶつの国で猫とお喋り』
「あ、悟とこのヒカルさんのお友達さん話させてみますか」
「ありかも」
「急にこんな3人も頭って沸くものなの?」
「まさか」
何かが、おかしい。
沸いてるのは3人だけ?
もしかしてこれは、地域全体? 日本規模? はたまた、まさかの世界規模?? これは大混乱になる。。。
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