カオスの遺子

浜口耕平

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第一部 エルマの町

第二十七話 合同任務 ゴーレムを討て!

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 部屋内に現れたゴーレムに対して、ロード達は臨戦態勢をとった。
 しかし、リードはここまで来るまでに一人で戦ってきたので、このゴーレムとの戦いは三人に任せて自身は戦うふりに徹することにした。
 「ウゴゴゴゴオオオ!!」
 ゴーレムはうなり声をあげてロード達に何度もパンチを仕掛ける。
 ロード達はこれらの攻撃をよけて、すぐさま反撃の構えに転じるためにロードは近づき、メリナは両手を構え、ニトグリフは持っている弓を構えた。
 ロードは隙の多いゴーレムに簡単に近づいて魔力を取るために両手を伸ばすと、ゴーレムは口から岩弾を吐いた。
 もろに食らって吹き飛ばされたロードをゴーレムは追撃する。
 「風斬撃クラリスッ!」
 メリナは魔法を放ち、ロードを助けようとするがゴーレムの外装の堅牢さの前には日々鍛えている魔法でも傷一つ与えられない。
 「なっ?」
 「どいてメリナ! これでも食らいなさい!」
 ニトグリフの魔法蒼穹の五矢そうきゅうのごしは一本から五本までの段階に別れ、本数が多くなるほど威力もスピードも格段に大きくなるが、放つまでの時間と魔力消費も大きくなる。
 ニトグリフが放った三本の矢はゴーレムの左足を吹き飛ばすと、ゴーレムは体制が上手く取れずに地面に崩れ落ちた。
 「今よ! 早くとどめを!」
 ロードはゴーレムが倒れこんだすきにジャンプして飛び掛かったが、ゴーレムは破壊された足を再生させるとロードを腕で捕縛し、握りつぶそうと締め上げる。
 「うああああ」
 悲鳴を上げるロードを見て、メリナはは腕を落とそうと漸氏雷撃ロゼを放ち攻撃を仕掛けた。
 しかし、少し離れているためメリナの漸氏雷撃ロゼは空を切って後ろの壁に命中した。
 あと少しで潰されそうになったロードをリードが槍を投げて助けると、治療するために自身の傍に寄せた。
 「油断するなよ。ゴーレムはのろまだが脅威的な再生能力と再生速度をほこるダンジョンの番人だ」
 「お前らも聞け、ゴーレム相手には攻撃しても再生されるのが関の山だ。だから、メリナとニトグリフ、お前ら二人が奴の動きを止めろ。その間にロード、お前がとどめを刺せ」
 「そこまで言うなら見てないであなたも戦ってよ」
 メリナがリードに文句をつけた。
 「俺が加勢したらお前らなんか必要ないぞ。それに、ここまで俺一人が戦ってきたんだからここはお前たちが対処しろ」
 「うぅ、、 いいわ私達で倒しましょう!」
 「ぐぬぬ~、やってやろうじゃない。コイツを倒せなきゃ、宝物殿にはたどり着けないんだから!」
 「みんな頑張ろう! あいつを倒して早くみんなのところに!」
 「フフフ、その意気だ」
 三人の腹は決まってゴーレムへと向かって行き、その様子をどこまでやれるのか微笑みながら見ていた。
 メリナは今度は外さないように近づいていくが、ゴーレムは危機を察知して口から無数の岩弾を放った。
 それをメリナは風斬撃クラリスを放って防ぐが、やはり近づくことは容易ではない。
 (まずいわ、、 このままじゃ私の魔力はジリ貧になってしまう…)
 「漸氏雷撃ロゼッ!」
 メリナが漸氏雷撃ロゼを放つと、岩弾を軽く粉砕して威力は落ちたがそのままゴーレムの顔面に食らわせ、顔の右半分が粉々になった。
 「ロード! 右から狙って!」
 メリナはロードに死角になった右方向から近づくように指示を出し、ロードはそれに従い右方向からゴーレムに近づこうとする。
 だが、ゴーレムは自身に近づかせないため四人の位置を常に把握することを意識しており、ましてや今までずっと接近しようとしてくるロードを見失うことは非常に危険だ。
 そのために、ゴーレムは右目を再生している間に他の三人への視線を全てロードに向けるように、残った左目で死角となった部分を顔を動かせた。
 「ゴオオオオオォ」
 思った通り近づいてくるロードを発見したゴーレムは、今までに見せたことのないような俊敏な動きでロードに攻撃を仕掛ける。
 「うわ! 何、いきなり?」
 「でも、このくらい兄さんやザクレイと比べたら楽勝だもんね~」
 驚いたロードだったが、逃げるのと躱すのは得意だから隙ができるまでゴーレムの攻撃をかわし続けることにした。
 「待っててロード、今助ける」
 メリナは動いているゴーレムに向かって漸氏雷撃ロゼを放った。
 今度は体全体にあたって外装がボロボロと地面に落ちた。
 「やった! 今よロード、、」
 喜ぼうとしたのもつかの間、メリナは自身が放った漸氏雷撃ロゼがゴーレムの外装を破壊したことによって、そのうちにあるゴーレムの本体の姿を見てしまった。
 外装を破壊されたゴーレムは、一回り小さくなったとはいえそれでもまだ巨大で四メートルほどの巨体をほこっている。
 しかし、それ以上に変化したことは白い岩の外装の中からは黒曜石を思わせる鋭く、どこまでも黒ずんだ本体である。
 「オオオオオオォッ!!!」
 ゴーレムは今までにないぐらい大きな雄叫びを上げると、今度はメリナに向かって飛び掛かっていった。
 「は、速い!」
 外装が取れこれまで以上に俊敏になったゴーレムは少し油断していたメリナにパンチを食らわせると、メリナは吹き飛んで壁に打ちつけられ、ゴーレムはとどめを刺そうと地面に横たわったメリナに近づく。
 「かはッ、かはッ」
 「メリナッ!!!」
 壁に打ち付けられて呼吸も上手くできず動けないメリナを助けるために、ロードは大急ぎで走ってゴーレムの前に立ちふさがった。
 ゴーレムは目の前に現れたロードに標的を変え顔に拳を振り降ろすが、ロードはそれを躱し流れるように両手に魔法陣を展開して、ゴーレムの魔力を少し奪い取った。
 「ウゴゴゴゴオオオ!!」
 魔力を吸い取られて怒り狂ったゴーレムはロードにこれまで以上に執拗に攻撃をする。
 ロードは常にカウンターを意識して少しづつゴーレムの魔力を奪い取っていく。
 業を煮やしたゴーレムは魔法陣を展開して自身の周りに岩を生成させ、それを意のままに操って猛攻撃に転じた。
 ゴーレムの拳への対処は、最初はその速さに対処が遅れたが、今はカウンターを合わせられるほどまでに順応し、徐々にゴーレムの魔力を無くしていった。
 しかし、ゴーレムの周りに浮かんでいる岩は、軌道が読めない、数が無尽蔵などといった不確定要素を含んでいるためにロードは一転して逆に追い詰めれてしまった。
 岩に何度も打たれてボロボロになりながらも、ロードは諦めずに向かって行く。
 「はあはあ、はあ、、」
 ついにロードが力尽きて倒れそうになった瞬間、ニトグリフがいた方向が光りだした。
 「ありがとうメリナ、ロード時間を稼いでくれて。ちょっと時間がかかりすぎたけど、、 これで倒せるわ!!」
  ニトグリフが持っている矢は神々しく光って五本の矢はすべてを貫くような大きさと高密度の魔力が込められている。
 「食らいなさい! これが私の最強の魔法よッ!」
 そう言って放たれた五本の矢はよけようとするゴーレムを追尾して襲い掛かる。
 よけられないと悟ったゴーレムは、これを受けるために岩を生成して矢にぶつけるが、矢はそれらを貫通してゴーレムの体に命中した。
 「ゴゴオオオ!!」
 五本の矢を必死に受け止めようとするゴーレムだが、矢の威力に徐々に体が崩壊し、仕舞に体を保てなくなって朽ち果てた。
 「ふん! どんなものよ」
 「ようやく終わったか」
 ゴーレムが再生しないのを見て、リードはケガをした二人の治療にあたるため二人に駆け寄る。
 「しっかし、再生能力の高いゴーレムをこうも粉砕するとは、、 なかなかの威力だな」
 「まあね、でもこれじゃあカオスの遺子たちとはまだ戦えるほどの威力じゃないから、もっとがんばらなくちゃ」
 「お前もカオスの遺子と戦いたいのか?」
 「当り前よ、奴らは我々人間の最大の敵なんだから。奴らを倒さないとこの世界はいつまで経っても平穏にならないわ」
 「そんな単純なことじゃないだろうに…」
 「何か言った?」
 「いやなんでもない」
 リードがニトグリフと談話しているうちに二人の治療を終え、これから脱出しようかという時にまたもや轟音と共に大きな扉が出現した。
 「何あれ? もしかしてあれが出口?」
 「いや、多分あそこが宝物殿だ」
 「どうしてわかるのよ?」
 「ゴーレムはダンジョンの番人だ。奴らは何人たりとも立ち寄らせないようにある部屋を守っている」
 「ということは、さっきの奴は宝物殿の扉を守っていちゃわけね。じゃあ、みんな早くいきましょう!」
 今度こそ本当の宝物殿の扉だと分かった三人は急いで扉を開けて中に入った。
 宝物殿には部屋を埋め尽くすほどの金銀財宝が溢れてまばゆい光を放っている。
 「わあ、きれい」
 「そうでしょうロード、これが財宝の輝きよ」
 「にしてもこの量はすごいわね。一体いくらになるのかしら」
 「きっと一生分のお金ぐらいだよ」
 「アホもっとだ。子も孫も何十世代先までも遊んで暮らせるぞ」
 「ほんとう!? わーい大金持ちだ!」
 一面に広がる財宝の前にロード達がはしゃいでいると、財宝の山から声が聞こえた。
 「おいお前ら! ここは俺たちが先に見つけたんだから俺たちのもんだ! 早く消えろ!」
 聞き覚えのある声に一同は声のする方向に目をやった。
 
 
 
 
 
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