カオスの遺子

浜口耕平

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第一部 エルマの町

第三十七話 応援到着!!

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 ロイド来襲から二日後、ダンタリオンに隣接するベガ地方の隊長グレンとアンタレス地方の隊長ナルザスがエルマの町に到着した。
 町に着いた二人はザクレイに会うためにエレイスの宿舎に向かっていた。
 「いや~何年ぶりだ俺たちが揃うのは?」
 赤茶色の髪と左腕に義手をつけたグレンが黒髪のナルザスに話しかけた。
 「前の御前会議からだから一年ぶりくらいだろ」
 「そう言うことじゃないって!! 俺たちが一緒に任務をするって意味だよ」
 「あ~それなら十三年ぶりかな、隊の隊長、海外派遣、地方の隊長… 俺たちも大分歳をとったな」
 「そうだな俺も最近は子供の世話とかで忙しかったかな。でも、今は若い時に戻ったようでワクワクしてくるぜ」
 「結婚自慢か? 殺すぞ」
 「あ? お前が結婚出来ねえからいけねえんだろ」
 「お前だけ抜け駆けしやがって!! 言ったよな俺たち三人は兄弟のようなもんだって! 一人だけ抜け駆けなんて許さんぞ!」
 ザクレイ、グレン、ナルザスの三人は同じ孤児院で育ち、同時期に軍に入隊、同じ隊の隊員として寝食を共にし、今はそれぞれ地方の隊長となった。
 血は繋がっていないとはいえ、三人は兄弟の絆で結ばれていた。
 しかし今! グレンの結婚により均衡は崩れ、ナルザスは結婚に異常に執着するようになり、結婚自慢はタブーとなった。
 二人がいがみ合っているとウェインが二人を迎えに来た。
 「お二方いらしたのですか! 迎えに来ましたよ!」
 「ウェインお前も結婚したのか~?」
 「何いきなりわけ分かんないこと言ってるんすか!? そんなことより隊長が~! 隊長が~!」
 「ザクレイに何かあったのか!?」
 「はい、二日前、カオスの第十遺子ロイドと交戦、隊長は善戦したのですが、あえなく亡くなってしまいました」
 「「なにぃ~!!」」
 ザクレイの訃報を聞いてすぐさま宿舎へと赴いてザクレイの遺体が安置されている部屋に入った。
 部屋には全身を隠すように毛布が掛けられたザクレイとロード達が悲しそうな面持ちで彼の遺体を眺めていた。
 部屋に入ってきた二人はザクレイの遺体を見ると、急いで遺体に駆け寄って死を悼んだ。
 「おおおぉ~兄弟、どうして先に逝っちまったんだよ~ お前もグレンも抜け駆けなんてずるいじゃないか!」
 「ザクレイ… まさかお前が逝くなんてな悲しいよ。だが! お前の仇は絶対うってやるからな!!」
 ナルザスは大泣きして、グレンも涙を流していた。
 「最後に一目お前の顔を見せてくれ」
 グレンが遺体を覆っている毛布をどけようとすると、死んだはずのザクレイが体を起こした。
 「うおッ!」
 二人はいきなり起き上がったザクレイに驚いて腰を落とした。
 「ハハハハハ! お前ら騙されてやんの~ 最高に笑えたぜお前たちのセリフ!」
 「やっと終わった~ 隊長の茶番につきあうのは楽しいですね」
 なんとザクレイは死んでなどいなかった。
 実際はザクレイが瀕死に陥ってるときにリードが現れて瀕死の身を救ったのだ。
 その後、ザクレイがウェインたちに命令して死を装って二人を騙して驚かそうと準備していた。
 「でもよ、本当に死にそうだったぞ。優秀な回復ヒーラーがいて本当に助かったよ」
 ザクレイが笑いながら喋っていると二人が立ち上がってザクレイの前に立った。
 「お! どうだった俺たちの迫真の演技は? おいどうしてそんな目で俺を見るんだよ」
 二人はザクレイを睨みながら病人である彼を殴り始めた。
 「おいやめろよ二人とも! 今もまだ半殺しになっている状態なんだ」
 「なら残りの半分は俺たちがやってやるよ」
 「俺たちは兄弟だろ!? なあナルザス?」
 「その通りだ」
 「なら殴るのやめてくれ傷口が開いちまう」
 「俺たちの流した涙はお前の流血でチャラにしてやる」
 二人を説得することが無理だと悟ったザクレイは、外野に助けを貰おうとウェインの方を向いた。
 「おいウェイン。こいつらを止めてくれ」
 「みんな、おじさんの茶番は終わったから外食にでも行こうか」
 「わ~い外食だ~」
 「よかったねロード」
 「もちろんお前のおごりだよな」
 しかし、ザクレイの揉め事に関わりたくないウェインはみんなを連れて外食に行ってしまった。
 「薄情者~!!」
 後日、軍へエレイスの宿舎から男性の悲鳴が聞こえるという近隣住民からの苦情が入った。
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