22 / 22
里帰り→Next Level
しおりを挟むロワイヤルとエレーネアのヤツ… いくら金が
欲しいからってさぁ、あんなメチャクチャすぎる
アイデアを出すこたぁないだろって感じだわ。
ともかく、俺は漫画家をマジで応援してます!
それはそうと… アイツら、俺に気を遣って
くれてはいるみたいだけど、あの様子じゃあ
いつかわかっちまうのかなぁ…。
あぁいやいや!なんでもないマジでなんでもない
こっちの話!というわけで、マジで
今回も張り切ってスタートだ~!
「ウミギロン、もうダイジョブかしら」
「あ~?2週間くらい経ったんだ。
もうダイジョブだろ。つかオリンピアスでも
そこまで引きずりはしねぇだろ」
「そうね…。まぁ、ああいうのは悪役やる上では
避けて通れない道だし?あたしだって、
ロワイヤルだって、みんなそう」
「あぁ。でもやらなきゃならないんだよ。
俺達の願い… 夢のためにもな」
「森羅万象全てを統べ、真に平和な世へ
導くこと… そのためには、悪役稼業、
やらなきゃなんないワケ。…だよね?」
「んだなぁ…」
開幕早々、会話文が長引いて申し訳ナス。
俺… コズモル・ロワイヤルと我妻、
コズモル・エレーネアは大事すぎること…
どれくらいかというと俺達の生き甲斐って
いうか… 俺達みたいな悪役が生きてる、
存在している理由を言い合いながら、
熟年主婦のように身を寄せ合った。自分でも
言うのもアレだが、いつもは新婚ホヤホヤみたいな
ラブラブバカップルな俺等ふたりだけど、
実際の俺等の年齢的に たまには
そうしたっていいだろう。え?ウミギロンに
何があったのって?…ん~、ここで説明するのも
めんどくさいから、詳しい話は第18話、
『まつりばやしの夏』を見てくれ!
「いやいや、シリアスで重苦しい雰囲気
出してますけど、その恰好はなんです?」
扉が開く音がしたから誰かと思いきや、
背後から聞こえてきたその声はグリーネア。
「恰好?え~、おかしい~?」
「似合わない…?」
「いや似合う似合わないじゃなくて!!
その珍妙な格好でシリアスされても!!」
いやいや、それが俺等ふたりなんだからさぁ。
ちなみに、俺がしている今の格好は
黒いボールの着ぐるみ。ボールに
手と足が生えて、そのボールの
中央部分から顔が出ている。
エレーネアの方はというと、なんと!
長ネギのコスプレ。俺と同じく
長ネギから手と足が生えている。
「正直 俺よりセンスいいよエレーネア」
「でしょ~?ありがとロワピ~♡
グリーネアも、野菜好きなはずでしょ~?」
「いやそーゆーことじゃなくて!!
…まぁ、いいでしょう。それより
ロワイヤル君とエレーネアさんに
折り入って、頼みがあるんです」
「「頼み…?」」
グリーネアのシンケンになった口調を察し、
俺達は着ぐるみを脱ぎ、いつもの格好に
戻った。正直言うと 暑かったからなぁ…
じゃあなんで着てたって?気分だよそりゃあ。
「んで、なんだ 頼みって…」
「えっと、実はその…」
グリーネアは少し言い淀んだ後、
すぐさま決意を固めた目になり、
俺達にこう言ってきたのだ。
「実家に帰らせてはくれませんか!?」
その瞬間、俺達ふたりの間に凄まじい衝撃が
走った。まるで、イエーネアの最大出力の
雷撃を浴びせられたのと同じくらいの。
「じ、実家に帰る!?」
「ど、どうして!?今の待遇じゃ
ダメだった!?それとも給料!?」
「まさかお前、デモール家との戦いを前に、
未知なる脅威に恐れをなしてか!?」
「…あの、何の話ですか?私はただ…」
「いやだってお前、実家帰るって
コズモルチーやめちまうんじゃ…」
「あぁ いえいえ!!全然そういう事では
なくて!!ただ単に実家に里帰り
したいんで、休みが欲しいってだけです」
その言葉を聞いた瞬間、俺とエレーネアは
深い溜息をついた。もちろん安堵の意味で。
「よかった~…。今大事な状況だから、
1人でも人手がなくなったら困るからねぇ~」
「あぁ、とりあえずお前の気持ちは
痛いほどわかった。でも申し訳ないが、
今すっごい大事な状況だかんな~…」
「そうよぉ、グリーネアもコズモルチーの
聖将。欠かすワケにはいかないのよ~…」
悪いが、今この状況で1人でもジャークネスから
離れさせるワケにはいかねぇ。もし、グリーネアが
いない時に、もしくはグリーネア自身になにか
あったら大変だ。もちろん、俺達もグリーネアも
大抵のことは切り抜けられるカモだが、万が一と
いうことも想定して、なるべく誰一人 欠けて
ほしくないのだ。それを言おうとした瞬間、
グリーネアはヌッと俺達に険しい顔を向けた。
「里帰り、許してくれないんですか…!?」
「…い、いや。そーゆーことじゃ… なぁ?」
「う、うん。あのねグリーネア、あたし達は」
「許してくれないなら…!!」
怒った時に出すようなドスの効いた声を
出しながらグリーネアは下を向いた。
怒ると怖い生命体ってのは、俺達ですら
怒らせたら何をしでかすかわからない。
思わず俺達は、何が来るんだと身構える。
そして次の瞬間…
「泣きます!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
イノチガゲデェェェェヘッヘッヘェッ!!!」
なんとビックリ!グリーネアは子供じゃあ
あるまいのに、デカい声で泣きじゃくったの
だった。目からは凄まじい量の涙を流して。
そしてその3分後、またビックリ!
グリーネアの流した涙は俺達のいる
司令室の半分を水浸しにしたのだ。
「あきませんか?」
水中から顔を出した、号泣が収まった
グリーネアがそう尋ねる。
俺は黒い浮き輪の中に、エレーネアは
その浮き輪に掴まりながら言った。
こんなことをされちゃあ、
もう俺らはこれしか言うことがない。
「「い、一週間なら、うん…」」
「あ、ありがとうございます!!
そうと決まれば早速 行ってきます!
この埋め合わせはいずれ!!」
そう言いながらグリーネアは水中へと
潜っていった。そして、グリーネアは
司令室の自動ドアを開ける前、指パッチンと
共に、涙の海を消滅させて去って行った。
パッと消えたので、水位の高いところ、
すなわち 地面より上にいた俺達は
一瞬にして墜落していった。
「イタタタ… アレも魔法かぁ?」
「いや、水浸しになってっからホンモノよ。
それにしても、あんなことされちゃあねぇ…」
「あぁ、まだまだ甘いよなぁ 俺達も…」
まぁ、デモール家の連中は積極的に
現れやしねぇだろ。あん時のギランだって
顔見せ程度だったし。…けど、
なんだか嫌な予感が、俺にはした。
気のせいならいいんだけどさ…
ジャークネスの会議室。ぼく…
ブルース・アオイヤルは、腕を組みながら
薄暗い中、2ヶ月前の戦いの映像を見ていた。
ジャークネスに惑星ひとつを半壊させる威力を
持つ爆弾を内蔵している蟲を撒き、それをネタに
この作品を最終回にしろなどと強請ってきた存在、
『デリィーハ・ニアッチン』。トラキーネちゃんと
手を組んだのか、あるいは知らぬ間に変えられた
のか、スコルトンに姿を変えてぼく達と戦った。
まぁ詳細に関しては、第12話、
『ギリギリファイナル!さらばコズモルチー』を
見てほしい。って、メタいし宣伝やめろや!
…と、いつもだったらぼくがツッコむが、
まぁでも、たまにはぼくの方も宣伝したって
イイ… かなぁ?しょうもないことで悩みそうに
なった矢先、扉が開く音がした。
「これは… デリィーハの時か…!」
その声は、ブルーネアちゃんか。
ぼくは入ってきた彼女の方を見ずに言う。
「先週、スコルトンが出て来てたでしょ?
だからそれでデリィーハのこと 思い出してさ…
原点に立ち返れば、何かわかるかもしれないと
思ったけど、なんもわかんないんだよなぁ。
まるで…、頭にモヤがかかったみたいで…
無理に考えたら、頭が痛くなり出すくらいで…」
「原点… 確かに、デモール家との存在を
知ったのは、デリィーハとの戦いが
キッカケだったね。ある意味、原点だ」
デリィーハが変貌した巨大スコルトンを
圧倒するゼノン・デストロワイヤルの映像を
見ながら、ブルーネアちゃんがそう言う。
デリィーハは最終的にはゼノン・デストロワイヤル
に敗れ去ったが、死の間際にデモール家の存在を
示唆し、ぼく達に言いしれぬ感情と記憶を
呼び覚まさせた。最も、その矢先に
トラキーネちゃんのスコルトンに
仕掛けられていた手回しによって
惑星 ロスティアに飛ばされてしまったんだけど。
「…今考えてみれば、アイツもデモール家の
ことを知ってたんなら、無闇に殺さないで
捕縛でもしとけばよかったのカモしれないねぇ…」
「それ、ロワイヤルのやつも昨日言ってたよ。
でもそれは仕方ないって!死に際に初めて
言って 知ったんだから、無理もないよ…」
苦々しい声で言うブルーネアちゃんに
ぼくはそうフォローしながら 指パッチンをして、
映像を消した。
それと同時に、部屋の電気がつき始める。
「正直、デモール家についてはまだわからない
ことが多すぎる。コズモルチーの歴史において、
こんなにも解明が長引いたのは初めてだよ…」
「歴史って、それほどでも」
笑い混じりにぼくは返す。
敵に勝つにはその敵を徹底的に知ること…
それが我等 コズモルチーのポリシーの一つ…
なのだけども、情報があまりにも少なすぎるため、
知ろうにしても知りようがないのだ。
今ハッキリしてることといえば3つ。
1つ目はデリィーハはデモール家に与する存在…
でもあまりそれを感じさせなかったから、
大方 末端くらいのエージェントだろうか。
2つ目はオリンピアス君、ロワイヤルと
アカイヤルの前に現れたデモールの苗字を
持つ存在、マッド・ギラン。どんな立場なのかは
まだ不明瞭だが、デモール家の重要な立場である
ことは想像に難くない。そして3つ目、
これだけ情報が秘匿され、解き明かすのも
今までとは違い 決して容易ではない辺り、
デモール家という存在は、おそらくぼくの
想像以上に、宇宙の悪役界隈と裏社会に
おいて 甚大な規模と影響を誇る勢力であること。
…以上が僕らの知りうるデモール家の情報だ。
でも、知ってるのがこれだけだというのは
ぼくとしても納得がいかない。おそらく目の前の
ブルーネアちゃんも同じ考えだろう。
「でも確かにそうだね… まさかここまで
長引くなんて初めてだし、思いもしなかった。
とにかく、時間はかかってもいつかは
全て、必ず解き明かす。それはぼく達、
ビショップ級の矜持でもあるからね…」
「あぁ。ちょっとでも謎を見つければ、
それを全て知る。そして白日の元にする。
それが私たちだ」
ブルーネアちゃんはぼくの言葉に、
凛々しい顔と声をしながら深く頷いた。
こうして彼女がいるだけでも、とても心強い。
…やはり、ぼくにはブルーネアちゃんが
いなきゃなぁ。…ハッ!?い、いやいや!
この感情は同じビショップ級としての
信頼と安心感だからであって!
決してそういうことではないよ!!
ホントマジで!!勘違いすんなよ!?
「どうしたんだい?そんなブンブン頭振って…
それと顔赤いけど… 熱でもあるの?」
「いっ!いやいや!なんでもないなんでもないよ!
ところでさっきから持ってるその書類は…」
どうやら僕は無意識にそんな仕草をしていた
らしい。ブルーネアちゃんの凛々しい
ぼくを心配する顔と、綺麗な手がぼくの額に
触れそうになった矢先、ぼくは慌てて無理矢理
話題を変えた。こんな… なんとぼくらしくない…。
「…あぁ、これかい?グリーネア用に作った、
ようやく完成間近のゾードさ」
書類に写っているのは、白黒のゾード設計図。
まるで、昆虫… 正確に言えば、カブトムシの
ような形をしていて、今までのゾードとは
大いに趣を異にしている。
「あとはグリーネアに乗ってもらって実践テスト
をしてもらいたかったんだけど、いないもんで…」
「なんか里帰りするって話だよ」
「へぇ… なんでまた?」
冷静に返すブルーネアちゃんに、
ぼくはぼくなりの推察を返した。
「もしかしたら、自分と
向き直りたくなったんじゃ… ないかな?」
…自分と向き直る、かぁ。きっと、ぼくたちも
いずれその時が来る。マッド・ギランと再び
邂逅し、真にデモール家と対峙したその時に。
…全く確証はないけど、そんな気がぼくにはした。
葉っぱのような黄緑色のカラーに、手で顔を
おさえた後悔の表情した、私専用のクラウン、
『グリーネクラウン』。3ヶ月前に開発した
ロワイヤル君から支給されたのですが、
なかなか使う機会がなく、そのまま埃を被るだけの
オブジェになるのかと思ったら、こうして
ようやく使うことになって、陽の目を浴びる
ことができて嬉しい限りです。そして、それは私…
キミルド・グリーネアも同じこと。こうして
本格的に語るのは初めてかもしれません。
私の目の前に広がる、無限の星々の海。それを
しばらく見たのち、私は深く息を吸って
瞑想をし始めて… ん?何やら前方の
操縦席から緩やかなブザーのような音が。
あっ!ふと目の前を見てみると、巨大な
虹色に輝く… 輝くといえど、その輝きは
とても歪で、いわゆる混沌を象徴している
かのような惑星が。とにかく目的地に着きました。
私の… いえ、ロワイヤル君とエレーネアさんに
ジイさん、そして私も含む六帝将の皆様の故郷、
アンドロメダ座系の惑星を統括する本星、
『惑星 ベレノイア』に… 大気圏に突入し、
グリーネクラウンはベレノイアの西の方へと
突き進んでいきました。ちょっと早い気が
しなくもないですが、これもコズモルチーの
技術力の賜物だと、只々 感服せざるを得ません。
デモール家という心というか、頭に
引っかかるような謎のワードを聞いて以来、
コズモルチーは全体的に空気がピリついて…
皆さんも、本格的に新たな強さのステージへ
進みつつありました。…でも、私は
どうなのでしょうか。皆さんはただでさえ強く、
それでいて常に全力で前進しているように
思えます。…でも、私だけまるで 大きな壁に
囲まれ、その場から停滞しているように
思えてきたのです。これでは、たとえ
イエーネアさんのイエロアタッカー、
ブルーネアさんのブルバルカーに続く、
私専用のゾードが完成したとしても、
皆さんの足手纏い、お荷物になってしまいます。
そこで私は里帰りをすることで、自分自身を
見つめ直し リフレッシュすることにしたのです。
こーゆーピリついた状況だからこそ、
リフレッシュすることは大事なのです。それに…
アカイヤル君やミドイヤル君みたいに、只管に
強くなろうって一心のがむしゃらな鍛錬の
連続、私にはとても無理そうですし…
何はともあれ、成層圏を超えて 目の前には
広がる森林の海と、その木々に紛れて立つビルの
街が見えてきました。アソコこそ、ベレノイアの
国の一つで、私の故郷・『ウッドデック』。
久しぶりに家族のみんなに会える!
私はすっかり浮き足立ちながら、
グリーネクラウンのスピードを上げました。
でも、会えると言っても 少しだけ、
抵抗感があるのもまた事実なのは、ナイショです…
「いやぁ、無事に目覚めてよかったですよ。
まさか三日も眠り続けるとは…」
「ご心配をおかけして申し訳ありません…
全てはぼくの圧倒的な力不足です」
「いいんですよ!それより久しぶりの
ここのコーラと、オリンピアス様の
快方を願って作った新メニュー、
『マンゴリアンパフェ』はどうでしょう!」
「もちろん!言うまでもなく美味そのもの!
退院してから初めてここに来ますからね…」
今、ボクことオリンピアスはひっさびさに
贔屓にしている喫茶店、『Le nid d' Pigeon』へ
赴き、趣味の一環たるスイーツタイムを
楽しんでいた。ぼくの好物のひとつたる
マンゴーをふんだんに使い、なおかつ
パフェのそこに入っているのは、いつもの
生クリームではなく、チョコのクリーム。
ぼくの好みをよく分かっている…!
マスターにはもう感謝・感激・雨あられなり。
そのうち、なにかしらのお礼をしなくては。
ぼくが眠って二日目に、お見舞いに
来て下さったと 父さんから聞いたからね。
ぼくがマスターへのお礼の品をどうするか
甘いもので癒されている頭で模索していると、
入口のほうから カランコロンと音一つ。
お客様入店の合図だ。
「いらっしゃいませ~…」
「お~っす… おっ!オリンピアスじゃねぇか!」
「ブヘッ!?オ”ッホオ”ッホ…」
「ちょっ、大丈夫!?」
聞き馴染みしかない声で呼ばれ、思わず
コーラが変な器官に入り、むせてしまった。
むせながら振り向くと、そこには
アカイヤルさんとミドイヤルさんが。
ミドイヤルさんとマスターは すぐさま
ぼくの方に寄り、背中をさすってくれた。
そのおかげでむせりが落ち着き、
なんとか喋れるようになった。
「あ、ありがとうございましゅう…」
「マジ大丈夫?」
「らいじょぶれしゅう…」
「驚きのお客ですねぇ…
失礼なことを承知で言いますが、
まさかお二人のような…」
「脳筋がここに来ちゃあおかしいってか?
いいじゃあねぇか、2人で特訓してた時、
ウキウキで歩くオリ坊を見かけてな。
そんで、俺等もたまには ここでメシも
いいかなって話になって、来てみたんだよ」
「…ですが、お二人のお眼鏡にかなう
メニューがあるのか不安です…」
「いいっていいって 特盛くれりゃいいんだから」
「それに、道中である程度 メニュー調べたからさ」
そう言いながらアカイヤルさんとミドイヤルさんは
ボクの右隣の席に座る。瞬時にマスターは
お冷を2つ出し、2人の席に置いた。
「特盛って!!まだお昼までありますよ!?」
「あのねオリ坊、俺達 育ち盛りなんだぜ~!」
「そうそう、特訓でクッタクタだからさ。
マジいっぱい食べたい気分なの!」
アカイヤルさん、ミドイヤルさん。
そしてイエーネアさん、彼らのように、
力に特化している者ほど、よく食べるものだ。
いっぱい食べるキミが好き… ってね。
「では、ご注文をお伺いいたします」
「ビッグマックのセットひとつ」
「じゃあ俺はベーコンレタスのセットを」
「ここは喫茶店です。マックじゃありません」
疲れているのだろうか… それとも
素なのか… 2人が発したボケに
マスターは淡々と正論で返す。
すると2人はあっさりと…
「じゃあ特盛のサンドイッチくれ」
「俺はボロネーゼ大盛で、んで…」
「「コーラふたつ!!」」
アカイヤルさんとミドイヤルさんが
声を合わせて元気よく頼むと、
マスターは「ハイハ~イ」と呑気気味に
返して、奥の厨房の方へと向かった。
ボクがマンゴリアンパフェを食べ終え、
コーラを飲みほそうとしていると、
アカイヤルさんは行った。
「そうだオリンピアス。これ終わってさ、
ヒマなら 俺達と一緒に特訓しようぜ。もし今度、
デモール・マッド・ギランの野郎に会った時に、
お礼参りが出来るようにな!!」
アカイヤルさんが拳を自らの手のひらで
受け止めながら言う。デモール・マッド・ギランと
いう未曽有の強敵のせいで、ぼくは三日も
眠り続ける羽目になった。父さんと母さんの
彼に対する殺意はハンパではない。もちろん
ボクとてそうだ。今度はこの手でぶちのめして
やりたいというのも本音だ。だが、その後ろの
ミドイヤルさんが「えぇ!?」…と 驚かんばかりの
表情を、ぼくは見逃さなかった。しかしぼくが
喋る前に、アカイヤルさんはまた話し出した。
「しっかし、マッド・ギランの野郎…
とんでもねぇ殺気と、今までの奴らとは
比べ物にならねぇくらいの強さだった…。
けどロワイヤルのヤツ、本丸がどうとか
言ってたし、まさかアイツより
強い奴が上にいるんじゃあ…」
本丸がとうとかについて詳しくは、第17話
『地獄のパズルと根性勝負』をご覧ください。
「えぇ、デモール"家"と言っていた以上、
ぼくらと同じ、家族系の悪役である可能性が
高いかと。もしかしたらどこかに… 彼の両親か、
兄か姉か、あるいは妹か弟がいるカモ!」
弟がいるカモ!…と言ったところで
ミドイヤルさんが眼を深く見開いた。
…まさか、ミドイヤルさんは何かを知っている…?
もし知ってるなら、教えてほしい。
父さん達みたいに、気を遣うだとか
遠慮するなんてことはもう言ってられない。
「あの~、ミドイヤルさん?先程から何も
言ってませんけど… まさか…?」
ぼくは咳払いした後、遠慮気味に
尋ねた。いろいろ思いつつも、やっぱり
ココロのどこかでは遠慮してるって
ことなのだろうか。すると、その声を
聞いたであろうミドイヤルさんは
ハッとした後、慌てて立ち上がり言った。
「ファッ!?え、まさかってなに!?
マジでどーゆー意味!?」
「いや… 何か知ってるんじゃないかと…」
「知らない知らない!!俺は
あんな奴ら、マジで知らないから!!」
この剣幕に、ぼくは流石にたじろいでしまい
言葉を失ってしまった。すると、アカイヤルさんが
ミドイヤルさんの肩に手を置き 言った。
「ここであんまでけぇ声出すな。客も
いるし、目の前のマスターがビックリしてんぞ」
アカイヤルさんの言葉通り、周りを見渡して
見ると、まばらに客がおり もれなく全員
茫然とこちらを見つめている。そして、
目の前にいる料理を両手に持つマスターも
ぼくらを茫然と見つめていた。どちらも
全く気がつかなかった… ミドイヤルさんは
スーッと顔面を白くした後、か細い声で
謝りながら、静かに着席したのだった。
「マジ… すいませ~~~ん…」
「なつかしき!!わが故郷!!」
この惑星、ベレノイア全体に共通する
サイバーな近未来の街並みはそのままに、
ビルより高く生い茂る木々、そしてこの国
特有の、エスニック及びアラビアンを
感じさせる街並み… そのウッドデックの
街全体がよく見える高台に立った私は、
深く息を吸った後、そう叫びました。
とても久しぶりに幾度となく来た場所で、
馴染み深い街を見て、その昂ぶりから来る
高揚感故の行動であることは、自分でも
自覚しています。その証拠に、私は叫んだ後
周りをキョロキョロと見渡しました。
もしこんな一面を誰かに見られていようものなら…
まあとにかく、誰もいないので
一安心~と胸をなでおろした矢先...
「わああっ!?」
前方の展望部分に向き直ると、そこには
サングラスをかけた細身の男の人が
立っていて、私は思わず腰を抜かして
しまいました。急にこの人がいつの間に
現れたのもそうですが、それより..!
さっきのアレ、見られてしまったのでは
ないかという不安が脳をよぎり、
私は思わず顔面蒼白になってしまいました。
一体 どんなリアクションをされるのか…
最悪のケースは何かの強請のネタにされるのか…
顔面蒼白の状態で腰を抜かしながら
オロオロしていると、それを見た
男の人がこれまた馴染み深い声と共に、
手を差しのべたのです。
「フゥッ… あいっかわらずビビリだな~。
俺だよ俺。久しぶりだなぁ!我が娘よ!」
私は差し出されたその手をにぎりながら
立つと、男の人はサングラスをとり、
白い歯を見せる、漢らしい笑顔を輝かせました。
「お父様…!!」
サングラスの下は、私とは似つかぬ色黒の肌に
無精髭を生やした、細身ながらも確かな筋肉の
鎧を纏った、全体的にワイルドな風貌の男性。
そう、この人は私の父にして このウッドデックを
治める植縁王の地位を持つ…
「キミルド・プランディだ!!よろしくなっ!」
「ちょ、ちょっと!!肝心なところ
自分で言わないでくださいよ~!!」
「自分を自分で名乗らねでどーすんだよ」
惑星 ベレノイアの国の一つ、ウッドデック。
アラビアンかつエスニックの趣が目立つ
この国は、ベレノイアでも一 二を争うほど…
否。ベレノイア一の有名な魔法大学、
『シャウフル魔法大学』があることで有名だ。
ちなみに、よくあるような魔法学校では
なく、魔法大学なのは 魔法はこの惑星に
おいて、所謂 専門的スキルの一つだからだ。
確かにこの惑星は 小学校・中学校・高等学校の
教育において、魔法も副教科として確かに
存在する。現にこの俺も、モノを浮かせたりと
いった簡単な魔法くらいは使える。だが、
対象者の記憶を操作したり、
対象者を生きたまま岩の玉にして命を搾り取る
といった、より高度な魔法は出来ない。
そういった、より高度かつ専門的な
魔法を学び、己の力とするために
魔法大学というモノが存在するのだ。
「ギラン様… ここは彼女の故郷らしいですわね」
周りに森の生い茂る遺跡のような場所に佇み、
黄昏る俺に、後ろから彼女が声をかけてくる。
彼女の名は、菖蒲色のキッチリと後ろ結んだ髪を
しているデモール家お抱えの技術開発技官、
『ヤメー・ローヒム』だ。
「彼女が里帰りをするということを、
風の噂で聞いてな… 必ずこの国にいる」
「風の噂…?失礼ながらその情報はどこから…?」
「なんだ貴様、ギラン様がそうだと
仰っているのだぞ…!それなのに疑うか貴様は!
全くこれだから三流のゴミは…」
「疑ってなどいないわ!!確証があるのか
少しばかり気になっただけよ。すぐ鵜呑みにする
アナタこそ、三流の虫ケラじゃないのかしら?」
「貴様!!ギラン様の情報は絶対だぞ!?」
「それはわかっているわよ!!
そうやってすぐ突っかかって!目障りなのよ
アナタは!この場で勝負してもいいのよ!?」
はぁ… また始まった。ローヒムと今にも
殺し合いを始めんとばかりに 罵り合いを
始めているのは、同じくデモール家お抱えの
技術開発技官、『シヤー・ユキーム』だ。
眼鏡をかけ、黒髪に白いメッシュが入っている。
ローヒムとは、一応… その頭脳と技術力を見込まれ
デモール家に一方的にスカウトされ、無理矢理
技術開発部門に入れられてから、己の立場を
守るために… そして何より、自分だけが
生き残るために、こんな風に、権力闘争紛いの
争いに 日夜と明け暮れている。無論、
この罵り合いは 上位存在の前でも
たまにあるらしく、それを見て上位存在が
『我等の前で揉めるのか!?ならば
貴様らとて揃ってあの世行きだぞ!!』
…と 一喝並びに恫喝されるのがお約束。
まぁ~、俺はそんな細かいことはどうでもいい、
早くやる事をやってくれと 威圧するかの如き
眼で訴えかけた。すると、その眼圧に気づいたのか
ハッとして委縮する2人。その後はしばらく
何も言えず、恐怖に縛られていたが、
先に口を開いたのはローヒムの方だった。
「と、ともかく!まずはその標的を
誘き出さないことには始まりません!
私の作り出した、この『邪丸』を使いましょう!」
ローヒムがそう言って出したのは、
くすんだグレーの、手のひらサイズの球体だった。
「またくだらんモノを… そんな
小さい球体で何ができる」
「まぁ見てなさい。行くわよ…
ポップアウト!!」
そう行って彼女はその邪丸を、ドラゴンの形を
した石像に向かって投げた。すると、邪丸は
そのドラゴンの像に吸い込まれていった。
そして、ドラゴンの像は揺れたと思うと、
どす黒いエネルギーを発しながら、
徐々に巨大化していく。驚くユキーム。
どうなるのかと見つめる俺。
狂気的な笑みを浮かべるローヒム。
そして、巨大な影は菖蒲色の眼を光らせ、
低い咆哮を響かせた。
このウッドデックは、いわゆる魔法の国。
なので移動手段も箒や絨毯… ではなく、
父が運転する、空を飛ぶ深緑色のスクーターに
乗って、私は実家に向かっていました。
いや!箒や絨毯で移動している人もいますよ?
でも父はこーゆー機械系統が かなりお好きなのです。
「それにしてもどうしたんだ?急に戻って来るなんて。
なんかヤなことでもあったのか?」
「いやぁ… ちょっと自分を見つめ直したくって…」
「ふ~ん… まっ、なんか悩みがあったんなら
いつでも帰ってこい!父さんも母さんも
トロネーマも、受け止めちゃるから… なっ!」
父は後ろに座っている私の方を向き、
ニカッと漢らしい笑顔を見せたのでした。
ありがたいことなんですが、それが ねぇ…
私は少しだけ苦笑いを返しました。
「って!運転中は前見ないと!!」
「あぁ?うわっ そうだったアブねェアブねェ!!」
「って前に木が~~~っ!!」
「ほわぁぁぁーーーっ!?」
そうこうしているうちに、空飛ぶスクーターは
私の実家、『ウッドデック大神殿』へと
向かうのでした…。
気になる。気になる。超気になる!!
現在、俺ことミドイヤルは オリンピアスの
坊ちゃんと手合わせ中なのだが、
正直… 気になってしょうがない!!
グリーネアの奴が、自分を見つめ直す
ために実家帰ると言って、行っちまったが…
自分を見つめ直すってマジなに?…とか、
実家に帰らせていただきますって、
マジはコズモルチーやめちまうんじゃ
ないかってところとか、とにかくいろいろ!!
「…どうしたんだ ミドイヤル?」
「あの…?ミドイヤルさん?」
さっきからうなり続ける俺を見て、
胡坐かいて見てた兄貴と、
オリンピアスが声をかける。
「マ、マジなんでもねぇ…!!」
自分でも驚くほど、めちゃくちゃ低い声が
出た。その声色に軽く怯える兄貴とオリ坊。
「わかってないね~ 君達は。ミドイヤルは
グリーネアちゃんのことが心配なんだよ」
そう言って入って来たのはアオイヤル。
「心配?里帰りするだけなのに?」
「オリンピアス君、彼にとっては
それだけじゃないさ。もしかしたら、彼女が
コズモルチーやめてしまうんじゃないかとか、
もうこの手合わせ終わったら こっそり
ベレノイア星に行ってしまおうとか、
ウッドデック着いて、もしかしたら流れで
彼女のご両親に会ったりしてとか考えて…」
「ちょっと待てぇぃ!!そこまでは
考えてねーよ?何?アイツの
両親に会ったりしてとか?お見合いか!」
「そうか…」
アカイヤルの兄貴が何かを悟った
様子で、俺の肩を叩いてくる。
「な、なに兄貴…」
「おめぇ… やっぱりグリーネアのこと
好きだったんだな」
「ハァ… ハァァァァ~~~ッ!?」
ちょ、マジで何言ってんの兄貴~~~!?
俺は赤面しながら兄貴を振り払う。
「ちょっ!!マジ、そんなんじゃないから!!
ホント マジないからあんなヤツ!!」
「この慌てぶり、そしてこの赤面。おそらく
図星かと。ちょっと父さんと母さんに、
ベレノイアに行かないかって提案してきましょうか」
「そうだな。かわいい弟分の恋路を
見守るのも、兄貴分の務めってモンだ!」
「いやいやいやいやいやいや!!
何勝手に話薦めてんの!?」
「それ以上いけないと思うよ2人とも。
提案するなら早めに行こ、ね?ね?」
アオイヤルは2人を押して、
2人共々、その場から一瞬で消えていった。
そういったテレポート能力のない俺は
マジで全力疾走するしかなかった。
「マジでやめろコラーーーーーッ!!!」
ウッドデック大神殿についた私。
広大な廊下を歩き、居間に近づくに
つれ、不気味な声の呪文が聞こえてきます。
いえ、気のせいではありません…!!
『ズーラーロブンガクバ… ズーラーロブンガクバ…』
「やっぱりやってる…」
「たりめーだろ、でもアイツ曰く、
最近は調子が悪いんだってさ」
「え…?」
これまた広大な居間に着くと、すぐさま
ミントの香りが鼻に広がりました。
どうやら、部屋に漂う煙からのようです。
煙が発生するところを見てみると、やっぱり。
水晶玉に両手を翳し、不気味な声で
呪文を唱える、面妖な姿をした
妙齢の女性がいたのです。…まぁ、
私や父も同じような姿ですけど。
「ズーラーロブンガクバ… ズーラーロブンガクバ…
ズーラーロブンガクバ… ズーラーロブンガクバ…
かーーーーーつッッッ!!!」
久々に彼女の大声を聞き、私はビックリ。
「おう、終わったか?フラワーナ」
「ん?おぉ、プランか。…おぉっ!
グリーネア!おかえり~~~!!
久しぶりじゃの~~~!!」
「…ただいま、お母様」
先程までの不気味な様子から一変。
人懐っこく抱き着いてくる母。なんとも
インパクトしかない登場となりましたが、
彼女こそ私の母にして、ウッドデック
植縁妃の地位を預かると同時に、
ベレノイアの最高議会機関、元老院の
1人でもある、『キミルド・フラワーナ』です。
「なんでも、自分を見つめ直すために
里帰りしに来たみたいだぜ」
「そうか!今夜は宴じゃ~!!
久々に焼肉でも行くか?それか、お主の
好きじゃった、グリーンカレーはどうじゃ!」
「おぉ!久しぶりだなぁグリーンカレー!
コズモルチー入ってからは全然
食べてなかったし… いいカモ!」
「そういや、トロネーマのやつはどこ行った?
せっかくグリーネア帰ってきたのに…」
「あぁ、トロネーマならすぐに…」
母がそう言いかけた時、暗めの黄緑色の
魔法陣が居間に現れ、そこから徐々に、
女性の影が上がって来たのです。
オシャレなハットを被り、これまた
オシャレなマントや服を纏った、私の姉…
このウッドデックのエース級魔導士、
植縁士の地位を持つ、『キミルド・トロネーマ』…!!
「たっだいま帰りました~。ん?
あ~っ!!グリーネア~!
超久しぶりだね~~~!!」
姉は私を見るなり、両手でその手を
握って来ました。母に似たらしい
この人懐っこさ。まぁ、とても久しぶりに
会えたのですから、無理もないことですが。
「お、お久しぶりお姉様…」
出した声はどうにも苦笑い交じり。
そりゃあそうです。なんせ姉は…
「そういやトロネーマ、どこ行ってたんだお前?」
「わらわがちと、元老院として任務を
出してな。惑星 ヴェストと
惑星 ガンダリアの要人を殺して来いと」
「あ~、そういやその惑星 政治家とか
実業家が裏であくどいことしてたって聞いたな~」
「だいたいどちらの惑星も合わせて、
63人は殺ったかなぁ~」
「そんなにいたのかよ。…まぁ、
今までに比べりゃ少ねぇ方か」
「思ったよりずいぶん早く終わったようでなぁ。
流石は、たった一人で数千もの惑星や
異世界を滅ぼしただけのことはあるわい!」
「まぁ、任務は果たしたから。母さん」
黙って聞きながら、私は思わず俯いてしまいました。
やっぱり、私は停滞している…。私はやはり
どうしようもないのか…。姉は本当に優秀で…
魔法でも、悪事でも、文字通りの実力者で。
私はそれが誇らしいと同時に、
怨めしくもありました。そもそも、私が
コズモルチーに入ったのは姉とは違う
領域にいることで、姉とは違う形で、
姉と肩を並べられるくらいの、すごい悪人に
なりたいという思い故。でも… これでは…!
やはり私はお荷物なのか…!
「あぁ、そうじゃ!グリーネアが久しぶりに
帰って来たから、久々に宴でもどうじゃ!
グリーネアの好きだったグリーンカレーを!」
「いいねグリーンカレー!久々に食べるな~~~」
せっかくリフレッシュのために来た里帰り、
でも… 私は私自身の力不足を改めて感じ、
急に用事が入ったとウソの言い訳をして、
帰ろうかとも考え出しました。せっかく
お祝いムードになったのに申し訳がありません。
すると、微かな揺れを感じ 私は辺りを
見渡しました。どうやら皆も同じことを
感じたようで。険しい顔で辺りを
見渡しています。すると、途端に
神殿は揺れ出したではありませんか!
「な、何事じゃ!地震か!?」
「お、落ち着いて母さん!」
「とにかく外に出るぞお前ら!!」
父の号令で大神殿から外に出た
私達は、まるで大神殿が激しく揺れている
光景を目の当たりにしました。それも、
何かから攻撃を受けているような…
「なんでしょうこの揺れ…。
まるで、見えない何かが攻撃を…」
「透明な何かってことか?」
「それなら攻撃してあぶり出すだけじゃ!」
私はローズティッカーを取り出し、
バラのところからビームを発射。
姉は両手から写真状の黄緑色のエネルギーを、
父は右腕から茨状のビームを、母は左腕から
花弁状の攻撃を発射!すると、虚空のハズの
場所にその攻撃が全部 当たり、大きな怪獣の
ような輪郭が現れ出し、ついには その透明が
解け、石像が寄り集まったかのような
巨大なドラゴンが現れ、
私たちの元に飛んできたのです!
「な、なんなのコイツは!?」
「なんにせよ、俺達ウッドデックの王族たる
キミルド家に喧嘩売るたぁいい度胸だ!!」
石のドラゴンは低い咆哮をあげ、私達の元に
凄まじい足音を立てて、向かってきました。
それに身構える私たち。すると、ピンク色の
ビームが石のドラゴンに直撃!ビームが
放たれた方向を見ると、そこには…!
「エレドリーン!ということはエレーネアさん!?」
「おぉ、コズモルチーの皇妃がお出ましか!」
「次期皇妃ちゃん、あんなゾードを…!」
「それと、あの後ろのデカいカブトムシは一体…?」
エレーネアさん専用ゾード、エレドリーンが
飛来してきたのです。しかも、なにやら後ろに
黄緑の大きなカブトムシ?…みたいな
ゾードを鎖で牽引していたのです。
色からして、アレが恐らく私のゾード!
ならば!ここでいいところを見せないと!
しかし、私がそう張り切るあまり 背後から
僅かながら感じる気配に気づかず…
突然、目視が一瞬で黒に染まってしまい、
私の意識もそこで途切れてしまったのです。
オリンピアスとアカイヤルが、ミドイヤルが
グリーネアに会いたいみたいだから
ベレノイアのウッドデックに行こうぜって
提案してきて、じゃあ私たちもちょっくら
里帰りするか!…と、赤面しまくる
ミドイヤルの反抗をよそに決定し、
ベレノイアのウッドデックにやってきてみたら、
グリーネアの実家たる大神殿が
ヘンな石のドラゴンに襲われてた。
一体こりゃあどーゆーことなの!?
ちなみに、後ろにはグリーネア専用の
ゾード、『グリンビートル』を引いている。
ブルーネア曰く、このグリンビートルで
新たなメガゾードが完成するから、
そのために グリーネアが直接操縦する
実践テストのデータが欲しいってことで
牽引されたけど。同じナイト級で、
絶賛 グリーネアのこと好きらしい
ミドイヤルのミドルジェットと同じ件について。
「とにかく!これはエレーネアーク新形態
デビューのチャンスよ!そのためにも
デストロワイヤルやジャックゼノンには
待機してもらってるんだから!」
そう言いながら私はエレーネアークで
石のドラゴンに立ち向かって。よし!
石のドラゴン… コードネーム、
『ブテラクオン』としよう!今つけたやつ。
「エレーネアさん、乗り込みました…
合体できるらしいですねコレ」
突然、前方にグリンビートルに乗った
グリーネアからの通信が入ってくる。
でも、なんか目が死んでるし、
声のトーンも低いような…
「えぇそうよ!やっとグリーネアも
メガゾードデビューできるってこと!行ける?」
「えぇ、早く」
やっぱり声のトーンが低い… でも、
今はそんなこと考えてる場合じゃない!
「よし、行っくよ~~~!!
巨人変形!エレーネアーク!」
エレドリーンはエレーネアーク・ブレイドに変形!
そして~~~!!
「「武甲鎧装!!グリンビートル!!」」
そして、鎖が外れたグリンビートルは
空を飛びまわり、仁王立ちする
エレーネアーク・ブレイドの周りで分離。
胴体は胸に着くアーマー、上翅は
ブーメラン型の武器に、頭部と角は
兜となって エレーネアーク・ブレイドに合体!
そして、コックピットにグリーネアが
来たけど、なんか様子がヘンな気が…
「と、とりあえずこの新形態の名前は
『マジカウッド』なんてどう?」
「いいんじゃないですか、それで」
「よ、よ~~~し!」
「「エレーネアーク・マジカウッド、活動開始!」」
ブーメラン状の武器を振り上げて決めポーズ!
一方、地上でそれを見ていた
キミルド一家の反応はというと…
「おぉっ…!」
「まるで魔術師のような…」
「すっご~い!撮らせてもらいます~!」
あら、トロネーマさん一眼レフカメラ出して
写真撮り出したわ。まぁともかく!
ブテラクオンは低い咆哮をあげ、
灰色の破壊光線を口から発射するが、
エレーネアーク・マジカウッドは煙の如く
シュッと消え、ブテラクオンが困惑しながら
辺りを見回している間に、なんと!?
地底から攻撃!ブテラクオンは吹っ飛ばされ、
すかさずその上に飛んだ
エレーネアーク・マジカウッドはなんと!?
今度は100tの重りに変身!ブテラクオンの上に
乗っかったではあ~りませんか!
その流れで地面に叩きつけられ、
身体中にヒビが入り出すブテラクオン。
「よし!今だ!」
「はい…」
「「アビリティギア全開!!」」
エレーネアーク・マジカウッドは持っている
ブーメラン状の武器に、内部メカに
組み込まれているアビリティギアの
エネルギーを全て込め、そのブーメランを
力いっぱい… 投げたっ!!
「森林魔象!」
「「ウッド・イリュージョンスマッシュ!!」」
黄緑色に包まれたブーメランは
巨大なハンマーに変化し、
ブテラクオンを粉砕☆玉砕☆大喝采!!
ブテラクオンは爆発四散!いつものように
爆発を背にポーズを決めたのだった。
「ではいつも通り、勝利のポーズ!
最光・完璧・オ~~~ルライトっ♡」
「うっ… ううぅぅぅぅぅ…!!」
隣から唸り声みたいなのが
聞こえて 見ると、グリーネアが
何やら苦しそうに蹲っていた。
「グリーネア!?ねぇ、さっきから
様子がおかしかったけど、大丈…」
「うわぁぁぁーーーーーッ!!」
「ああっ!!」
あたしが駆け寄ると、グリーネアは
突然 黒いエネルギーを発すると、
あたしを強引に外へ吹っ飛ばしてしまう。
エレーネアーク・マジカウッドから
降ろされ、地面に投げ出されたあたし。
「いててて…」
同じく飛んで降りてきたグリーネアは
黒いエネルギーのようなものに
包まれていた。明らかにヤバい雰囲気…!
「うぅぅぅぅ…!あああぁぁぁーーーーー!!!」
凄まじい叫びと共に、後ろで結っている
髪を解くと、グリーネアは黒いエネルギーに
包まれ、凄まじい衝撃波を起こす。
そして、しばらくしてそれが晴れた瞬間…
「う、ウソっ…!?」
黒い葉っぱのような帽子、
口元を覆う黒いスカーフ、
暗い黄緑色の和服のような恰好、
アカイヤルと同じようにボロボロに
なったマント… そして、黒く変色した
黄緑のハイライトを残した瞳と、
パッと見では外見、雰囲気ともに
もうほぼ別人とは言っても過言ではないほどに、
様変わりした グリーネアがそこにいたのだ…!
ブルーネアの言ってた新メガゾード、
そしてデモール家の存在… いろいろ
謎はあるけども、まずはグリーネア…!
一体、どうしてこうなった~~~!?
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる