転生した世界は滅びていました。えっ、これを救えって……?

改札口を盾にUターンしてください。

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君と手にする明日は血の色

魔術習得

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『村にはもう行ったのかい?』
「行った」
『転生してから何日が経った?』
「1日……かな?」

『古代魔術の話は聞いたかい?』
「聞いてない。そもそも、言葉が解らないんだ」

 オルドが自我を思い出してから、俺は質問責めだった。
 体感でおよそ3時間。
 なんとなく、目には見えないオルドの表情がわかってきた。
 そうだな。
 こいつは今、驚愕の顔を浮かべているはずだ。

『……君、言葉が分からないのかい……?』
「ああ。おかげで怖い目にあった」

 あの男の言葉。【まっちょべりのろ! ぽんぽん!】が脳内で再生される。
 アレは本当に意味不明で怖かった。

「なあ、この世界について教えてくれよ。右も左も上も下も、東西南北も、さっぱり分からん。
 言葉が解らないんじゃ、生きるに生きていけない」

 思い出し恐怖で身を震わせていると、オルドがアハッと笑ってこう言った。

『ごめん、それ、僕のミスだ。どうやら、精神崩壊者の言葉しか分からないようになっているみたいだね!』
「……ミス?」

 こ、この野郎……!
 言葉も分からない世界で、独りぼっちで、俺がどんなに寂しくて怖かったことか!

『そんな怒らないでよ。今からでも術式を組み込んで、言語を理解できるようにすればいいじゃないか。いやあ、危うく何もかもブチ壊しにするところだった』

 え? できんの?

『さあ、未来の英雄が言葉も解らないんじゃ話にならない! まずは祭壇に向かってくれ!』
「誰が未来の英雄だ! 俺は人殺しはしないからな。術式はやってもらうけど!」

 俺の言葉に、オルドはフゥーッと声をもらす。

『やれやれ。わがままな人だ。まあ、最初はそれでいいよ。……さ、それじゃあ行こうか』

 俺の左手は大剣の柄を握ったまま、離れない。
 オルドに急かされ、右手を軸に、右手だけで起き上がる。
 左手が使えないことが、こんなに不便だとは思わなかった。バランスが取りづらい。つーか剣でかすぎ。

 完全に起き上がると、少しだけ目眩がした。
 立ちくらみ、というやつだ。
「…………っ……」
 と言ってもそれだけだ。特に気分が悪いとかではない。

『どうした?』

 オルドとは感覚を共有してはいないのか、立ちくらみには気づいていない様子だ。
「なんでもない。……それで? 祭壇とやらはどこにあるんだ?」
『北東に向かって歩いてくれ』

 …………ふざけんな、それで分かるか。

「具体的に、どういう道順で、どこを目指せばいいって?」
『……具体的に、まずは丘を降りて、そのまま直進してくれ。目指すは、君が目を覚ましたところだ』



――――――――――

 さすがは現地ガイド付きだ。目的地にはすぐに着いた。

 最初に目覚めた場所、祭壇に、俺は立っていた。
 最初と違うのは、俺の左手に大剣が握られていることだ。

 見た目ほどの重さはないが、それでもやはり、重さはある。
 まるっきり疲れてないといえば嘘になる。

 というか、大剣で足が切れないかとヒヤヒヤもんで、うかつに油断して歩けない。
 とにかく俺は、大剣を握って、祭壇にやってきていた。

『まずは祭壇の上に……もう少し右……そう、そこだ』
 なんでも、ここで術式を発動すれば、この世界の言語が分かるようになるそうだ。
『次に目をつむって、手のひらを真上に向けて……』
 オルドの言葉通り、俺は右手を開いて、頭上高くに掲げる。

『いいかい? これは魔術だ。一言一句、間違えるなよ?』
「……間違えると、どうなる?」

 メンテが始まるのさ、とか言ってほしかったが、オルドはそんなこと言ってくれなかった。

『間違え方によるとしか言えない。あるときは、何も起こらない。
 あるときは、もっと良い結果になる。勿論、その反対もあるけどね。……怖いなら、止めるかい?』

「止めても言葉が解らないんじゃどうしようもない。いいよ、間違えなきゃいいんだろ? やるさ、大丈夫だろ」

 俺の言葉に、オルドがニヤリと笑う。
 そうこなくちゃ、という言葉が伝わってくるような笑い方だった。

『じゃ、言うよ?』
 その言葉に、目をつむったまま頷く。

『ラニャン・ドゥエルファラ・ヴェ・ヴォルフォトム』
「ラ、……ラニャン・ドゥエルファラ・ヴェ・ヴォルフォトム(知識を共有する)」


 そう言い終えると、掲げた右手が手のひらの中心から、カッと熱くなった。
 まるでトロトロとした液体をかけられているかのようだ。
 熱い何かは、手のひらから腕、肩、腰へと、俺の体を伝うようにして広がっていく……。体が火照る。息が上がる。

『この魔術は、ローリスク・ローリターンだ。実用性は低い魔術だけど……言葉を理解するだけなら、これで十分だろう。……ああ、もう腕を下げても良いし、目を開けてもいいよ』
 その言葉を聞いて、恐る恐る目を開ける。

「うおッ?」
 青い肌をもつ俺の右腕に、赤い線が無数に走っていた。
 これは、アレに似ている。もっと多く、もっと中二っぽいけど。
「血管か? どうしてこんなに浮き出てんだ?  きもちわる」

『魂と血を結びつけてるんだ。初めて魔術を使うと起こる現象だよ。もしくは、自分に見合わないハイリスクな魔法を使うと、こうなる。君は前者だから害はないし、放っておけば治まるから安心していいよ』
「お、おう……。そうか……」

 でも、これで言葉が分かるようになったんだよな? やべーな、魔術。
 簡単に多言語習得が可能じゃんか。

『それじゃあ、早速町に行こうか。あまり行きたくはないけど、そうも言っていられない。儀式の日は近いんだ』
「儀式?」

『この世界は、もう終わっているんだ。君に救ってほしい未来は、過去にあるのさ』
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