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君と手にする明日は血の色
説明くせえがしょうがねえな!!!!
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『日が落ちるまで、あと4時間ってところか』
道場を出るなり、オルドが呟く。
「どうして分かるんだ?」
『16年の経験則だよ。さあ、昼飯を頂くんだろう? 急がないと、時間がなくなるよ』
オルドに急かされ、舗装もされていないジャリ道を歩き始める。
やがて俺は、例の夫婦の家に着いた。
確か、奥さんの名前はプレテニアだっけ? 違う、プラトニアだ!
娘の名前はネルフィだっけかな。
「場所は、ここでいいんだよな?」
『多分ね』
「もう入っていいのかな? それともまだ待った方が良いかな?」
なんだか不安になってくる。
『良いから入れよ、もう!』
イラただしげに、オルドが唸る。
短気なヤツだ。でも、言いたいことも分かる。
「……よし、じゃあ入るか」
一言呟いて気合を入れてから、俺はドアを押し開けた。
「ふざけないでっ!」
途端、怒りに溢れた罵声が聞こえてきた。若い女性の声だ。
プラトニアさんの声に似ているが、それよりも若く、幼い。
「なんで敵と馴れ合うのッ? 信っじられない!」
「い、いや。ネルフィ。これはお詫びも兼ねてだな、その…………。あ」
どうやらまだ早かったらしい。
1度出直そうとドアを閉めようとしたところで、しかしプラトニアの夫さんと目が合ってしまった。
ダメだ。こんなにもガッツリと合わせられたら、もう逃げられない。
「あー」
覚悟を決めて、1歩目を踏み出し、口を開く。
どうにか、どうにかしてこの気まずい雰囲気を打開しなければ!
そんな俺の必死の思いを、しかし彼女がぶち壊す。
「帰って! 入ってこないで!」
「…………。なあオルド、お前、あの子に何かしたのか?」
『はあ? 何かってなんだよ、失礼な。何にもしてないよ』
それにしては反応が過激だ。
オルドを信じるなら、じゃあ、一体なにが原因だろう。
「アナタもアナタよ! なにご馳走になろうだなんて甘ったれた事言ってんの? 聞いたわよ、儀式の第6になったそうね! 一体なにが目的なのッ? 抜き身の剣なんて持って! 私たちを殺す気ね!」
「お、おいネルフィ、それは本当か? ……オルド君が、第6に?」
「パーパは黙ってて! ねえ、どうなの?」
ツカツカと軽い音をたてながら少女が近づく……。
そして壁に立てかけてある鉄ヤリを掴み、構え、少女は俺にそう尋ねた。
流れるような動きだった。
鋭そうな切っ先が、目の前に突き付けられる。
「うぉっ……、あ、あぶなっ!」
『ただの威嚇だよ。頼むからビクビクしないでくれ、カッコ悪いから』
「そうは言っても、怖いもんは怖いし、危ないもんは危ないだろう!」
「なにをブツブツ言ってんの。さあ答えなさい! 私たち家族に近づいて、なにが目的なの!?」
少女が激昂する。
ヒンヤリとした鉄ヤリの先が、今度は俺の首にツンと触れた。
あ、これ絶対血ぃでたヤツだ。クソ、血ぃでてるよコレ! だって痛いし熱いもん!
「ご、ご、ごはん! ごはんです! ご飯が欲しかったんですうっ!」
からだがプルプルと震える。武者震いとは言うまい。これは純粋に恐怖だ!
両手をあげ、怖いので目をつむる。
お願いですからその物騒なモノを下ろしてください! 助けてください!
「……も、もしかして、本当にそれだけなの……?」
「ご、ごめんなさい! あわよくば夕飯も頂こうと思っていましたぁ!」
「…………そ、そう」
それから数秒後、首元にあった鉄ヤリの感触がなくなった。
恐る恐る目を開けてみると、少女はもう、俺に矛先を向けてはいなかった。
少し恥じているのだろうか、横を向いたまま、少女……ネルフィが言う。
「アナタが底なしの食いしん坊だってことは分かった。だけど、アナタが第6である以上、ご飯を一緒にするなんてできない。出てって」
ぜんぜん恥じてなかった。
むしろ、さっきよりも声色は冷たい。
『まあ、そりゃそうだ』
「ご飯ができたわよー! って、あ、あれ? オルド君? ネルフィ? どうして武器なんて持っているの?」
「……オルドさんは帰るみたい。でも……そうね。ふん。せっかくだから、お弁当だけは渡してあげましょう。マーマ、お願いね」
「あらそうなの? 残念だけど仕方ないわね! でもいいわ、そういうことなら、少し待っていてちょうだい!」
それから数分後、俺は左手に大剣を、右手にピンクの風呂敷で包まれたお弁当を持っていた。
ネルフィの家のドアをバタンと閉じる。
背後にはネルフィの家があり、周りには誰もいない。
「なあオルド、訊きたいことがある」
『……やっぱり?』
「俺にやらせた儀式とか、第6とか、一体何なんだ」
『その話をするには、少し時間をかけないといけないけど……』
「だからって話すのを止めるのか? 先延ばしにするのかよ」
『……はあ、分かったよ。じゃあ、ちゃんと聞いていてよ?』
今から、20年以上も昔のこと。
4つの種族からなる《連合軍》と、3つの種族からなる《エヴァン軍》は、命を賭け奪い合い、戦争に戦争を重ねていた。新兵が3日も生き残れれば奇跡と謳われるほど、その戦争は熾烈を極め、人々は狂ったように剣を振り続けた。
だが、終わりなき物に始まりもない。
その戦いに終止符を打ったのは、《連合軍》副指揮官である僕の親父、ハース・レインチェンバーだった。
戦場を駆け抜け、幾千の敵を1人で討ち取った親父はいつしか、《覇世王》と呼ばれるようになっていた。
特に、《エヴァン軍》リーダーであるクウェンとの一騎打ちはまさに、《覇世王》と謳われるに相応しい戦いであったと伝えられている。
最強の男、《覇世王》ハース・レインチェンバーが《エヴァン軍》に寝返り、全種族を敵に回した今でも語られ続けていることが、その証だろう。
「寝返り?」
『そう、裏切ったんだよ。僕の父親は。いいから、聞いてて』
世界は今、平和と危機の間に孤立している。
かつて繰り広げられた命と命の大きなぶつかり合いは終焉を迎え、世界は平和に包まれた。
しかし、そう思ったのも束の間。
世界の英雄は敵陣に寝返り、《エヴァン軍》リーダーの座に身を置いた。
そして、ゼニア以外の集落を落として回った。
現在、生命の拠り所として機能しているのは、ここゼニアだけだ。
なぜ親父は、俺たちを裏切ったのか。
その真意は、戦いから15年が経った今も、明らかになっていない。
分かっているのは、真相を知ろうと出向いた母が、夫である《覇世王》自らの手によって殺されたという、悲惨な事実だけだ。
『……さて、ここまでが現世界の話だ。次は種族について話そうと思う』
「お、オーケイ」
『――この世界には、5つの種族が存在するんだ』
1つは人間族。
力・体力・耐久面、どれをとっても平凡だが、種族の繁栄力は絶大。
しかし一方で、欲への渇望や愚かさもそれに引けを取らない。
他の種族からはそう評価されているそうだ。
ちなみに、ゼニアの人口の9割が人間族だ。
もう1つの種族は、シャルナル。
全身を炎に包んだ、静寂と孤独を愛する亜人だ。
背丈は大人になると3メートルを超え、子どもでも1メートルはくだらない。
凶暴的な外見とは裏腹に、無闇な殺生を嫌う、比較的温厚な種族だ。
もう1つはリボース。
体は岩石で造られており、眠るときは故郷の石と同化して眠りにつく。
眠っている間は感覚が研ぎ澄まされ、闇夜でも猫のように目が利き、嗅覚は蛇のように研ぎ澄まされ、耳は絹が擦れる音も聞き逃さないほど、強力な聴力を発揮するそうだ。
が、起きている間は、人間族と同等の五感しか持たないらしい。
動きはトロいが、一撃の重さや防御力は他の種族に追随を許さず、戦と喧騒を好む。
男女はなく、どうやって産まれるのかは不明。
最後に、ヌファイレ。
表皮は青紫の色彩を放ち、人間族よりも硬い肌をもつ、唯一魔法の扱える種族だ。
魔法は1人につき1つの魔法しか覚えられず、また使うこともできない。
もっとも、使うたびに自らの五感が失われていくため、戦場でも魔法を使っている所を見た者は少ないという。
ちなみにヌファイレ族の間では、親の体を子どもに喰わせると、子どもが強くなると信じられているらしい。そのため、母親は子どもが生まれ8年がたつと命を絶ち、自らの体を子どもに喰わせるそうだ。
さて、僕の母親は、人間ではない。
《ヌファイレ族・第一部隊》
それが、母が《連合軍》に所属していたときの居場所だ。
親父ほどではないにしろ、母も戦場での評価を高く受け、何かしらの異名を持っていたらしい。
冷静な判断力、世界一の剣術をもつ元英雄《覇世王》ハース。
貴重な回復魔法を扱う、ヌファイレ族一番の美貌を誇ったエミリー。
しかしそんな2人を両親に持つ俺はといえば、剣はろくに扱えず、魔法も使えない。さらに体力もない。
いわゆる――出来損ないというやつだった。
かつて《エヴァン軍》のリーダー、クウェンが住んでいた城は、僕たちの村のすぐ近くに存在している。
もっとも、現在では僕の父親、ハースの居城だ。
生ける伝説である親父が攻め入ってくれば、僕たちの村は1時間もかからず滅びるだろう。
世界は今、平和と危険の間に孤立している。
だがそれはつまり、平和に転ぶこともできるということだ。
ヌファイレ族の扱う魔法は、かつては誰もが修得可能であった。
「古代魔術って言うんだけどね。だけど、あまりの強さとその代償に、僕たちの先祖は古代魔術を後世へと伝えず、忘却の彼方へと押しやったんだ」
だけど光明ができた。僕たちの村長が、古代魔術を会得したんだ。
深い谷にあるさらに深い洞窟の更なる奥。最果ての地で、古代魔術は発見された。
1つの古代魔術の効力は、若者1人を過去へ送る――というもの。
代償は、過去に送る者と同じ年齢の5つの命。
村長は村人全員と話し合い、軍を勝利へと導いた元英雄・現敵軍リーダーである俺の親父を殺すため、古代魔術の使用を決定した。
『というのが現状。ちなみに、ゼニア以外に集落はないとされている。全て滅ぼされたはずだ』
「……つまり?」
『ゼニアはこの世界において最後の希望だ。だけど、その希望もすぐに消えてしまうかもしれない』
「……だから、古代魔術とやらで過去に人間を送りこみ、裏切られる前にオルドの父親を殺そうと、そういうことか?」
『そう、その通り。だから儀式の選別だ。過去に転送できるのはたった1人。成功率は高くなければいけない。そのために、候補者の中から最強を選ぶんだ』
「………………」
『ん? 急に黙って、どうしたんだい?』
「……それだけじゃないんだろ? もしそれだけなら、あの子……ネルフィがあそこまで俺を拒絶するには違和感がある、ありすぎる。何かあるんだろ? 言ってくれよ」
『……んー、そこに気が付くのに、さっきのには気づかないか。まあ、そりゃそうか。君にプレッシャーをかけたくなかったから本当は言いたくなかったんだけど、訊かれたからにはしょうがない。答えるよ』
『村長が会得した古代魔法の効果は、1人を過去に送るというもの。その代償は、過去に送る者と同じ年齢の5つの命、そういっただろう?』
「うん」
『儀式の候補者は、総員6名。君が第六の候補者だ。その中から1人だけが過去に行ける。ああ、もう分かったかな? そう。他の候補者、つまり負けた人は、術の代償として殺されるんだ』
道場を出るなり、オルドが呟く。
「どうして分かるんだ?」
『16年の経験則だよ。さあ、昼飯を頂くんだろう? 急がないと、時間がなくなるよ』
オルドに急かされ、舗装もされていないジャリ道を歩き始める。
やがて俺は、例の夫婦の家に着いた。
確か、奥さんの名前はプレテニアだっけ? 違う、プラトニアだ!
娘の名前はネルフィだっけかな。
「場所は、ここでいいんだよな?」
『多分ね』
「もう入っていいのかな? それともまだ待った方が良いかな?」
なんだか不安になってくる。
『良いから入れよ、もう!』
イラただしげに、オルドが唸る。
短気なヤツだ。でも、言いたいことも分かる。
「……よし、じゃあ入るか」
一言呟いて気合を入れてから、俺はドアを押し開けた。
「ふざけないでっ!」
途端、怒りに溢れた罵声が聞こえてきた。若い女性の声だ。
プラトニアさんの声に似ているが、それよりも若く、幼い。
「なんで敵と馴れ合うのッ? 信っじられない!」
「い、いや。ネルフィ。これはお詫びも兼ねてだな、その…………。あ」
どうやらまだ早かったらしい。
1度出直そうとドアを閉めようとしたところで、しかしプラトニアの夫さんと目が合ってしまった。
ダメだ。こんなにもガッツリと合わせられたら、もう逃げられない。
「あー」
覚悟を決めて、1歩目を踏み出し、口を開く。
どうにか、どうにかしてこの気まずい雰囲気を打開しなければ!
そんな俺の必死の思いを、しかし彼女がぶち壊す。
「帰って! 入ってこないで!」
「…………。なあオルド、お前、あの子に何かしたのか?」
『はあ? 何かってなんだよ、失礼な。何にもしてないよ』
それにしては反応が過激だ。
オルドを信じるなら、じゃあ、一体なにが原因だろう。
「アナタもアナタよ! なにご馳走になろうだなんて甘ったれた事言ってんの? 聞いたわよ、儀式の第6になったそうね! 一体なにが目的なのッ? 抜き身の剣なんて持って! 私たちを殺す気ね!」
「お、おいネルフィ、それは本当か? ……オルド君が、第6に?」
「パーパは黙ってて! ねえ、どうなの?」
ツカツカと軽い音をたてながら少女が近づく……。
そして壁に立てかけてある鉄ヤリを掴み、構え、少女は俺にそう尋ねた。
流れるような動きだった。
鋭そうな切っ先が、目の前に突き付けられる。
「うぉっ……、あ、あぶなっ!」
『ただの威嚇だよ。頼むからビクビクしないでくれ、カッコ悪いから』
「そうは言っても、怖いもんは怖いし、危ないもんは危ないだろう!」
「なにをブツブツ言ってんの。さあ答えなさい! 私たち家族に近づいて、なにが目的なの!?」
少女が激昂する。
ヒンヤリとした鉄ヤリの先が、今度は俺の首にツンと触れた。
あ、これ絶対血ぃでたヤツだ。クソ、血ぃでてるよコレ! だって痛いし熱いもん!
「ご、ご、ごはん! ごはんです! ご飯が欲しかったんですうっ!」
からだがプルプルと震える。武者震いとは言うまい。これは純粋に恐怖だ!
両手をあげ、怖いので目をつむる。
お願いですからその物騒なモノを下ろしてください! 助けてください!
「……も、もしかして、本当にそれだけなの……?」
「ご、ごめんなさい! あわよくば夕飯も頂こうと思っていましたぁ!」
「…………そ、そう」
それから数秒後、首元にあった鉄ヤリの感触がなくなった。
恐る恐る目を開けてみると、少女はもう、俺に矛先を向けてはいなかった。
少し恥じているのだろうか、横を向いたまま、少女……ネルフィが言う。
「アナタが底なしの食いしん坊だってことは分かった。だけど、アナタが第6である以上、ご飯を一緒にするなんてできない。出てって」
ぜんぜん恥じてなかった。
むしろ、さっきよりも声色は冷たい。
『まあ、そりゃそうだ』
「ご飯ができたわよー! って、あ、あれ? オルド君? ネルフィ? どうして武器なんて持っているの?」
「……オルドさんは帰るみたい。でも……そうね。ふん。せっかくだから、お弁当だけは渡してあげましょう。マーマ、お願いね」
「あらそうなの? 残念だけど仕方ないわね! でもいいわ、そういうことなら、少し待っていてちょうだい!」
それから数分後、俺は左手に大剣を、右手にピンクの風呂敷で包まれたお弁当を持っていた。
ネルフィの家のドアをバタンと閉じる。
背後にはネルフィの家があり、周りには誰もいない。
「なあオルド、訊きたいことがある」
『……やっぱり?』
「俺にやらせた儀式とか、第6とか、一体何なんだ」
『その話をするには、少し時間をかけないといけないけど……』
「だからって話すのを止めるのか? 先延ばしにするのかよ」
『……はあ、分かったよ。じゃあ、ちゃんと聞いていてよ?』
今から、20年以上も昔のこと。
4つの種族からなる《連合軍》と、3つの種族からなる《エヴァン軍》は、命を賭け奪い合い、戦争に戦争を重ねていた。新兵が3日も生き残れれば奇跡と謳われるほど、その戦争は熾烈を極め、人々は狂ったように剣を振り続けた。
だが、終わりなき物に始まりもない。
その戦いに終止符を打ったのは、《連合軍》副指揮官である僕の親父、ハース・レインチェンバーだった。
戦場を駆け抜け、幾千の敵を1人で討ち取った親父はいつしか、《覇世王》と呼ばれるようになっていた。
特に、《エヴァン軍》リーダーであるクウェンとの一騎打ちはまさに、《覇世王》と謳われるに相応しい戦いであったと伝えられている。
最強の男、《覇世王》ハース・レインチェンバーが《エヴァン軍》に寝返り、全種族を敵に回した今でも語られ続けていることが、その証だろう。
「寝返り?」
『そう、裏切ったんだよ。僕の父親は。いいから、聞いてて』
世界は今、平和と危機の間に孤立している。
かつて繰り広げられた命と命の大きなぶつかり合いは終焉を迎え、世界は平和に包まれた。
しかし、そう思ったのも束の間。
世界の英雄は敵陣に寝返り、《エヴァン軍》リーダーの座に身を置いた。
そして、ゼニア以外の集落を落として回った。
現在、生命の拠り所として機能しているのは、ここゼニアだけだ。
なぜ親父は、俺たちを裏切ったのか。
その真意は、戦いから15年が経った今も、明らかになっていない。
分かっているのは、真相を知ろうと出向いた母が、夫である《覇世王》自らの手によって殺されたという、悲惨な事実だけだ。
『……さて、ここまでが現世界の話だ。次は種族について話そうと思う』
「お、オーケイ」
『――この世界には、5つの種族が存在するんだ』
1つは人間族。
力・体力・耐久面、どれをとっても平凡だが、種族の繁栄力は絶大。
しかし一方で、欲への渇望や愚かさもそれに引けを取らない。
他の種族からはそう評価されているそうだ。
ちなみに、ゼニアの人口の9割が人間族だ。
もう1つの種族は、シャルナル。
全身を炎に包んだ、静寂と孤独を愛する亜人だ。
背丈は大人になると3メートルを超え、子どもでも1メートルはくだらない。
凶暴的な外見とは裏腹に、無闇な殺生を嫌う、比較的温厚な種族だ。
もう1つはリボース。
体は岩石で造られており、眠るときは故郷の石と同化して眠りにつく。
眠っている間は感覚が研ぎ澄まされ、闇夜でも猫のように目が利き、嗅覚は蛇のように研ぎ澄まされ、耳は絹が擦れる音も聞き逃さないほど、強力な聴力を発揮するそうだ。
が、起きている間は、人間族と同等の五感しか持たないらしい。
動きはトロいが、一撃の重さや防御力は他の種族に追随を許さず、戦と喧騒を好む。
男女はなく、どうやって産まれるのかは不明。
最後に、ヌファイレ。
表皮は青紫の色彩を放ち、人間族よりも硬い肌をもつ、唯一魔法の扱える種族だ。
魔法は1人につき1つの魔法しか覚えられず、また使うこともできない。
もっとも、使うたびに自らの五感が失われていくため、戦場でも魔法を使っている所を見た者は少ないという。
ちなみにヌファイレ族の間では、親の体を子どもに喰わせると、子どもが強くなると信じられているらしい。そのため、母親は子どもが生まれ8年がたつと命を絶ち、自らの体を子どもに喰わせるそうだ。
さて、僕の母親は、人間ではない。
《ヌファイレ族・第一部隊》
それが、母が《連合軍》に所属していたときの居場所だ。
親父ほどではないにしろ、母も戦場での評価を高く受け、何かしらの異名を持っていたらしい。
冷静な判断力、世界一の剣術をもつ元英雄《覇世王》ハース。
貴重な回復魔法を扱う、ヌファイレ族一番の美貌を誇ったエミリー。
しかしそんな2人を両親に持つ俺はといえば、剣はろくに扱えず、魔法も使えない。さらに体力もない。
いわゆる――出来損ないというやつだった。
かつて《エヴァン軍》のリーダー、クウェンが住んでいた城は、僕たちの村のすぐ近くに存在している。
もっとも、現在では僕の父親、ハースの居城だ。
生ける伝説である親父が攻め入ってくれば、僕たちの村は1時間もかからず滅びるだろう。
世界は今、平和と危険の間に孤立している。
だがそれはつまり、平和に転ぶこともできるということだ。
ヌファイレ族の扱う魔法は、かつては誰もが修得可能であった。
「古代魔術って言うんだけどね。だけど、あまりの強さとその代償に、僕たちの先祖は古代魔術を後世へと伝えず、忘却の彼方へと押しやったんだ」
だけど光明ができた。僕たちの村長が、古代魔術を会得したんだ。
深い谷にあるさらに深い洞窟の更なる奥。最果ての地で、古代魔術は発見された。
1つの古代魔術の効力は、若者1人を過去へ送る――というもの。
代償は、過去に送る者と同じ年齢の5つの命。
村長は村人全員と話し合い、軍を勝利へと導いた元英雄・現敵軍リーダーである俺の親父を殺すため、古代魔術の使用を決定した。
『というのが現状。ちなみに、ゼニア以外に集落はないとされている。全て滅ぼされたはずだ』
「……つまり?」
『ゼニアはこの世界において最後の希望だ。だけど、その希望もすぐに消えてしまうかもしれない』
「……だから、古代魔術とやらで過去に人間を送りこみ、裏切られる前にオルドの父親を殺そうと、そういうことか?」
『そう、その通り。だから儀式の選別だ。過去に転送できるのはたった1人。成功率は高くなければいけない。そのために、候補者の中から最強を選ぶんだ』
「………………」
『ん? 急に黙って、どうしたんだい?』
「……それだけじゃないんだろ? もしそれだけなら、あの子……ネルフィがあそこまで俺を拒絶するには違和感がある、ありすぎる。何かあるんだろ? 言ってくれよ」
『……んー、そこに気が付くのに、さっきのには気づかないか。まあ、そりゃそうか。君にプレッシャーをかけたくなかったから本当は言いたくなかったんだけど、訊かれたからにはしょうがない。答えるよ』
『村長が会得した古代魔法の効果は、1人を過去に送るというもの。その代償は、過去に送る者と同じ年齢の5つの命、そういっただろう?』
「うん」
『儀式の候補者は、総員6名。君が第六の候補者だ。その中から1人だけが過去に行ける。ああ、もう分かったかな? そう。他の候補者、つまり負けた人は、術の代償として殺されるんだ』
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