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プロローグ
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そこに立っていたのは男一人だった。どれも致命傷ではないが体の至る所に怪我をしていて、見るからに痛々しかった。男が居たはずの建物は戦いの激しさをもの当たるように倒壊し、廃墟と化していた。
そして、男の手の中には一人の女が抱えられていた。
女もまた体の至るところに怪我をしていたが、男とは二つほど違う点があった。
一つは、四肢がすべて揃っていないこと。右手の肘から先が跡形もなく無くなっているのだ。
何度もその右手で慰められ、抱き止められてきた。その手が無いことが男を悲しくさせた。
しかし、それ以上に男を悲しくさせたのはもうひとつの方だった。
そしてもう一つは肩から腰にかけて鋭利なもので切り裂かれたような傷が致命傷となり、もう
長くないことだ。
『どうして・・・・・・どうしてなんだ!エミリア何故!どうしてこんな・・・・・・』
男の目から止めどなく涙が溢れていた。その涙も今はただただ虚しさを増すだけだった。
それを見て女は笑う。悲しそうに苦しそうにそれでも男を慰めるために。
『私とあなたはいずれはこうなる運命だったのよ』
『運命なんてない。何故なんだ、俺は君を愛していたのに君はそうではなかったと言うのか』
『違う。私もあなたを愛していたわ』
『ならなんでーー』
『聞いてグレン』
女は男の声を遮り、諭すような声音で話始めた。
『この運命は避けられなかったの。あなたがいくらこの運命に抗ったとしても絶対に。だって私があなたを離さないから。あなたが私を守るために離れようとしても絶対に離さないから』
『それでも俺は君に生きてほしかった。例え俺が死んでも君には生きてーー』
『だめよ。私はあなたとは一緒に生きてはいけない。でも、あなたなしでも生きていけない。
私はわがままな女だから。ずっと一緒に生きられなくてもあなたの傍に居たかった』
そう語る彼女の目には涙が流れていた。
それはまるで流れ星が自らを散らしながらも煌めくように死の間際で流れた彼女の涙は綺麗だった。
『だから、あなたは生きて・・・・・・・』
そう言う彼女の命はまさに風前の灯という状態だった。いつ死んでもおかしくない。
でも・・・だからこそ必死に笑顔を作った。
彼女の必死に伸ばしてきた手を両手で包み込むと安心したのか眠りにつくように
彼女ーエミリア・マイラ・シモンズは彼女の愛した男の腕の中で逝った。
そして、それを見たときに自分の中の何か切れた気がした。
どこからか泣き叫ぶ声が聞こえる。
ああ、俺か。俺の声か。
わからない。
なんで俺だけこんな目に。
守るために、失わないために力を手に入れたのに。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
『ウァァァァァァァァァッッッッッッ!!!』
一人の男の叫びが周囲に鳴り響いた。
少し離れた場所にその様子をどこか冷めたような眼で見ている者がいた。
しかし、それと同時に感じたこともある。
『ああ、人間の罪は重い。その罪が、その重さが世界を残酷にしている』
でも、だからこそ
この世界は美しい、と
そして、嗤う。この世界そのものをーー
そして、男の手の中には一人の女が抱えられていた。
女もまた体の至るところに怪我をしていたが、男とは二つほど違う点があった。
一つは、四肢がすべて揃っていないこと。右手の肘から先が跡形もなく無くなっているのだ。
何度もその右手で慰められ、抱き止められてきた。その手が無いことが男を悲しくさせた。
しかし、それ以上に男を悲しくさせたのはもうひとつの方だった。
そしてもう一つは肩から腰にかけて鋭利なもので切り裂かれたような傷が致命傷となり、もう
長くないことだ。
『どうして・・・・・・どうしてなんだ!エミリア何故!どうしてこんな・・・・・・』
男の目から止めどなく涙が溢れていた。その涙も今はただただ虚しさを増すだけだった。
それを見て女は笑う。悲しそうに苦しそうにそれでも男を慰めるために。
『私とあなたはいずれはこうなる運命だったのよ』
『運命なんてない。何故なんだ、俺は君を愛していたのに君はそうではなかったと言うのか』
『違う。私もあなたを愛していたわ』
『ならなんでーー』
『聞いてグレン』
女は男の声を遮り、諭すような声音で話始めた。
『この運命は避けられなかったの。あなたがいくらこの運命に抗ったとしても絶対に。だって私があなたを離さないから。あなたが私を守るために離れようとしても絶対に離さないから』
『それでも俺は君に生きてほしかった。例え俺が死んでも君には生きてーー』
『だめよ。私はあなたとは一緒に生きてはいけない。でも、あなたなしでも生きていけない。
私はわがままな女だから。ずっと一緒に生きられなくてもあなたの傍に居たかった』
そう語る彼女の目には涙が流れていた。
それはまるで流れ星が自らを散らしながらも煌めくように死の間際で流れた彼女の涙は綺麗だった。
『だから、あなたは生きて・・・・・・・』
そう言う彼女の命はまさに風前の灯という状態だった。いつ死んでもおかしくない。
でも・・・だからこそ必死に笑顔を作った。
彼女の必死に伸ばしてきた手を両手で包み込むと安心したのか眠りにつくように
彼女ーエミリア・マイラ・シモンズは彼女の愛した男の腕の中で逝った。
そして、それを見たときに自分の中の何か切れた気がした。
どこからか泣き叫ぶ声が聞こえる。
ああ、俺か。俺の声か。
わからない。
なんで俺だけこんな目に。
守るために、失わないために力を手に入れたのに。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
『ウァァァァァァァァァッッッッッッ!!!』
一人の男の叫びが周囲に鳴り響いた。
少し離れた場所にその様子をどこか冷めたような眼で見ている者がいた。
しかし、それと同時に感じたこともある。
『ああ、人間の罪は重い。その罪が、その重さが世界を残酷にしている』
でも、だからこそ
この世界は美しい、と
そして、嗤う。この世界そのものをーー
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