マミルとマモル(改稿版)

舟津湊

文字の大きさ
13 / 17

作戦会議 in マモル

しおりを挟む
 精一杯考えます、と言ったものの、何をどうすればいいのか。まったく手がかりがない。ここは脳内探偵の力を借りるしかない。
「ねえ、ミニホー、相談に乗ってくれる?」
「やあ、久しぶりだな。少年探偵。てかお前までミニホー言うな!」
「ごめんごめん。あの、野々川沿いの遊休地をタヌキのために活用するって、どうもアイデアが浮かばないんですけど、アドバイスもらえますか?」
「あまり自分で考えずに人に頼ってばかりいると、どこぞの助手みたいにろくな大人になれないぞ。まあ、ヒントだけは出してあげよう。こういう時の基本は何だ?」
「そうですね。もう一度現場を徹底的に調べること、かな?」
「ご名答。」
「じゃあ、その遊休地に行って・・・」
「それも大事だが、もう一カ所、着目して欲しい場所がある。」
「え、どこだろう?」
「サービスヒント。マミちゃんと最初に会ったのはどこだ?」
「えーっと、転校生としてやってき来た学校の教室?」
 ミニホームズは、人差し指を立てて左右に振りながら答える。
「ちっちっちっ、甘いな。マミちゃんとの出会いはそこが最初じゃないはずだ。」
「うーん・・・そうか、ぼくらは図書室で出会ったんだ。」
「その通り。では、マミちゃんは危険を犯してまで何で図書室に入ってきたんだろうか?」
「確かにそうだよね・・・そう言えば、本が散らばっていたような。」
「おお、いい線にいってるな。」
「そうか、そこを調べれば、解決の糸口が見つかると!」
「そうだ。さあ、再び図書室に行ってみようではないか。」

 放課後、図書室に寄る。ドアを開けてすぐ、正面のコーナーが問題の場所だ。展示用の本棚の上部に「特設企画コーナー」と書かれたボードが貼り付けられていて、よく見るとその下に、
“生き物との共生”
と黒マジックで書かれている。棚の上には様々な規格サイズの書籍が、表紙を見せて置かれてある。マミちゃんと出会った時は、床の上に散らばっていて、ぼくが棚に戻した本だ。
 都市生活と野生動物の未来に関する本、生物多様性を人と動物・環境を倫理の視点から考察した専門的な書籍から、マンガでわかりやすくSDGsや生物多様性を解説したものまで。
 もしかしてマミちゃんは、人とタヌキがどうやったら仲良く暮らせるか、いろんな分野から情報を探していたのではないだろうか。その知識も仲間のタヌキたちに、そして子ダヌキたちに教えていた、タヌキの側から変えようとしていた・・・。
 棚には、バインダーで閉じられた資料もあった。「環境共生都市、たせがや 自然の力と人の暮らしでつくる豊かな未来」
 資料を手にとり、ペラペラとめくる。東京都内にありながら、川がいくつも流れ、みどりが溢れる自然環境豊かな街。区内には農業の専門大学もある。ここだからこそ、できることがあるかも知れない。
 棚にあった本の中から何冊かを借り、家でじっくり読むことにした。
 ありがとう、ミニホー!
 (だからミニホー言うな! という声が脳内に響いた)



「もしもし、満月亭さんですか?」
 ぼくもマミちゃんもスマホを持ってないし、マミちゃん家の電話番号も知らないので、お店の番号をネットで調べて電話をかけた。
「まいど! テイクアウトのご注文?」
 叔母さんだ。
「あの、お忙しいところすみません。町村です。マミちゃんはいますでしょうか?」
「お、少年か! 真美瑠をご注文だね。ちょっと待ってて。」
 お、叔母さん! なんてことを。

「もしもし?」
 動揺しながら受話器に耳をあてていると、マミちゃんが電話に出た。
「元気?」
「うん。元気。心配かけちゃってごめんね。明日からは学校に行くよ。」
「よかった。」
 マミちゃんの声は思ったより元気そうだ。
 まず、聞いておかなければならない。
「あのさ、いきなりだけど。マミちゃんは移住したいの? あ、お父さんもお母さんも向こうにいるし・・・」
 しばらく間があく。受話器の向こうから、叔母さんの声と、ガチャガチャとお店を準備している音が聞こえてくる。
「ううん。できればここにいたい。ここで生まれたし、このお店も好きだし。学校も友だちも、好きだし。お父さんとお母さんだってじきに帰ってこれると思う。それに・・・」
 何やら言いにくそうにしているので、ぼくは用件を切り出した。
「そうなんだね。ならマミちゃんに手伝って欲しいことがあるんだ。タヌキたちのために。いや、ぼくのために。」
 再び間が空いて、マミちゃんが答える。
「うん。お手伝いできることがあれば何でも言って。」
「ありがとう。じゃあ、こういうことって、できるのかな?」
 リクエストをざっと説明する。しばらくマミちゃんは無言で考えているようだったが、受話器の向こうで、きっぱりと言った。
「多分大丈夫。やってみたことあるし。」
 ぼくらは明日の放課後、緑地公園で待ち合わせる約束をして電話を切った。
 突貫でアイデアコンテストの概要をまとめ、ぼくは学校に逆戻りし、教頭先生に計画への意見を聞いたり、相談をした。

 締め切りの一日前。ぼくは応募作品を仕上げ、プレゼン資料にSDカードを添え、田瀬谷区役所の募集窓口に提出した。
 約二週間後、予選通過の通知と本選の案内が郵送で送られてきた。


 コンコン。
「あいよ。」
「姉貴、ちょっといいかな。」
 姉の部屋のドアを開け、中を覗く。
「なに?」
 何のタイトルか知らないが、姉はオンラインゲームの最中のようでパソコンに向かったまま、めんどくさそうに聞く。
「あ、こないだ借りてたビデオカメラのセット、返すの忘れてた。ありがとう。どこに置けばいい?」
「そこの棚に置いといて・・・あと、お礼を言うことはそんだけじゃないでしょ。」
「あっハイ。素晴らしいビデオ編集でした。おかげでいいものができました。」
「そうでしょそうでしょ! 編集ソフト、ちょうどバージョンアップしたばっかりだったからね、ちょうどよかったよ。わたしのスキルと才能の結集だからね。高くつくよ。」
「お礼は、きっと必ず。・・・ところで」
「なによ、用が済んだんならさっさと出てってよ。」
「いや、あの、聞きたいことがあって・・・中学生の女の子って、プレゼントに何もらったら喜ぶのかな。」

 ここで姉は初めてゲームミングチェアをぐるりと回し、ぼくの顔を見た。
「なによあんた。彼女でもできたの?」
「いや、そういんじゃないけど。感謝とか、いろんな気持ち、伝えておきたくて。」
「おーおー、いっちょ前に色気づきやがって。で、相手はどこの誰よ? ・・・あ、そうか。さては、ビデオに映ってた子だな。ってか、あの子、何かすんごい特技持ってるね。」
 予想以上に姉が食いついてきた。ゲームのパーティー仲間は放っておいていいのだろうか? 
「そうだよ。満月亭ってヤキトリのお店の建物に住んでる同級生。」
「あー、それでこないだヤキトリのお土産あったのか? ありゃうまかった、ゴチ。」

「・・・で、プレゼントの件だけど。」
「そうねえ、最近ヘッドホン、調子悪くてさ。ちょうど良かった、欲しいゲーミングヘッドセット、あるのよねえ。」
「いや、そういう話じゃなくで。中学生の普通の女の子が喜ぶもの。」
「それってわたしに聞くの間違いじゃない? 本人か、他の同級生の女の子に聞けばいいじゃん。」

 姉の言うのも、もっともだ。
「ま、一つだけアドバイスするとすれば、あんたが、こうしてあげたいって気持ちがこもるものを選ぶこと。」
 予想外に、まともなアドバイスをいただいた。
「わかった。そうする。ありがとう。」
「ちょっ、待って。満月亭の子の話、まだ終わってないでしょ?」

 僕は早々に姉の部屋から退散した。そして自分の部屋に戻り、魔の手の追求から逃れるためにドアの鍵をかけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー

i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆ 最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡ バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。 数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...