稀有ってホメてる?

紙吹雪

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第2章 覚悟と旅立ち

更なるレベル上げ #5

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 全員で個室を出る。リミルとクリードが最後に残り少し話した。

『戸籍が見つかったと聞いたとき、喜ぶのが遅れてすまなかった。戸籍があったということは育児放棄か、もしくはリミルの親に何かあったんだろうと思うと喜んで良いのか迷ってしまってな。リリアンもそうだと思う。』

「そっか。後者だけど、詳しくはギルレイから聞かされると思う。アイツらを巻き込みたくないからみんなの前で行方不明について言及されなくて助かった。ありがとう。」

『そうか…。手紙、見つかってよかったな。俺もお前の両親の事は知ってる。リーマスがミルレアに惚れててな、ミルレアとギルレイの親父が頑固で兄妹そろって結婚に反対されてたんだ。2人も結婚してたんだな。』

 遠くを見つめて思い出すように語ってくれた内容に少し擽ったさを覚えながら聞いていた。するとノックをしてニーナが迎えに来たので、クリードにはまた聞かせて欲しいと頼んで個室を出た。
 リリアンに4人の依頼の選定は任せて、リミルはニーナと共にリンドの森に向かった。





 転移での移動にあっという間に元ホームに着く。パーティ全員とギルレイには既に転移はバレているので最近はパーティでの移動にも一応人目は避けて使用していたりする。
 移動を楽にするためにバラした。

転移者テレポーターの取得条件ってまだ分かってないんだっけ?取りたいなー。』

「そうだな。取得している者同士で話せば少しくらいは何か分かるかもしれないけど、珍しい職業クラスだから皆隠して使ってるだろ?無理だな。」

 小声でそんなやり取りをしながら人気のない場所を走る。森にはいくつかのパーティが入っていると思われるが広大なためなかなか遭遇はしない。それでも一応用心して移動する。

「ニーナ、2人の時にしか出来ない移動方法やってみるか?」

『何それ!やるやる!』

 リミルは地面から飛び出た岩に飛び乗り、近くの木の幹に飛び移る。

『なるほど。確かに2人の時じゃないと無理だね。』

「だろ?でも3人とも忍者を習得すれば出来るようになるけどな。ニーナは一足先に樹上移動を覚えてしまおう。スムーズに出来るようになる頃には種族も職業クラスも少しずつレベルが上がってるはずだ。」

 ニーナもリミルの真似をして岩に飛び乗り木に飛び移った。木で少し足元が滑ったがリミルが支えて無事だった。

『この木って結構滑るんだね。』

「うん。靴にもよるかもしれないけど、色んな木の上を移動するから頑張って慣れよう。今日の帰り装備屋に行って靴を新調するか?」

『そうだね、そろそろ普通の靴じゃ無理があるのかも。』

 防具や武器は買って貰っていたが靴や籠手などは買っておらず、靴は村で使っていた物だ。そろそろ自身で買えるくらいには稼いだのでニーナは帰りの買い物を楽しみに頑張ることにした。



 木から木へ飛び移りながら森を見回る。拓けて木がない場所は1度地上に飛び降り、また木があれば飛び乗る。その繰り返しだ。リミルは周辺の様子とニーナを気にしながら慣れた様子で移動するがニーナは飛び移ることに精一杯で辺りに気を配る余裕は無かった。しかし1日目にしては飲み込みが早かった。

「木登り自体は慣れてるな。」

『狩りをする時に上からの方がやりやすくて。』

「狩りはしたことあるのか。何種類くらい?」

『2か3かな?たぶん。えっとベリットとデリーツ…あ、あとコリーヌ鳥。』

 ベリットとデリーツは植物系の魔物だ。
 ベリットからはベリーの果実がドロップするのだが、棲息地域によってベリーの味が変わる。ダンジョンだと殆ど均等にドロップするがダンジョン産でない物は特産として扱われ、ダンジョン産よりも美味しい。
 デリーツがドロップする実の中にはリーツと呼ばれる焼き菓子がいくつか入っている。デリーツのドロップする甘くてサクフワのリーツをもとに、似た焼き菓子が作られ販売されるくらい人気で定番のお菓子だ。
 コリーヌ鳥は比較的仕留めやすいがベリットとデリーツは動きが素早くコツがいる。

「やるな。ベリーもリーツも天然物は特に美味しいもんな。狩りはあと3種類くらい狩っておけば大丈夫だろ。」

『種類はなんでも良いの?』

「そうだな…一応植物系の魔物と鳥系の魔獣はなしで、それ以外ならなんでも良いよ。」



 巡回を続けているとニーナがはぐれた子猪アグーを見つけた。森では親とはぐれるのは普通、死を意味する。例外はこの際置いておくとして。
 ニーナがどうにかしてあげたいと言うので、途中で放棄すれば可哀想なのはその子だから後のことも考えて手を出せよと言い聞かせた。


 ニーナは頷き、最大限自身のスキルを使用して母親探しを始めた。アグーは腕の中で心配そうにニーナを眺めた。
 ニーナが痕跡を辿っていくと地中の実を掘り出して食べる親らしき2体の大猪と子猪達の集団があった。
 ニーナが抱えていた子猪アグーが腕を飛び出し集団に駆け寄った。すると兄弟たちが鼻先でその子どもを小突き始め、親は実を掘っている。

『もしかして仲悪いのかな?』

 ニーナが不安そうにそう言い近づくと兄弟達が囲み、守っているように見えた。親達も実をいくつか掘り出し終わるとはぐれた子猪に与えていた。

「今回は大丈夫だったみたいだ。たまに口減らしに捨てる親もいるからどちらかは連れて行ってみないことには分からないんだ。親が子に与える試練っていう種族もあるしな。」

『そうなんだ。人族だと神殿に連れていけば犯罪にはならないけど野生だとそういうのもないもんね…。』

「だから俺は捨てられたと自覚させるのは嫌で親元にはあまり連れていかない。食えるやつは仕留める。無理なら比較的生き延びやすい場所に追い立てる。声をかけてしまうと情が移って契約するしかなくなるからな…。契約したいなら声を掛ければいい。」

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