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火曜日/私の学校生活
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中学生にもなれば、体育の時間は基本的に男女別で行われる。
でも、例外もある。
私は体育館で跳び箱に向かって走った。
―ダンッ
ジャンプ台の板バネの力を一片も無駄にせず、高くジャンプ。
―パンッ
跳び箱を軽やかに跳び越え、マットにきれいに着地。
クラスメイト達が「おおっ」と感嘆の声を上げてくれた。
8段を跳べる女子は私だけなのだ。
ただ、用意されている跳び箱は8段までで、これ以上高い跳び箱はない。
つまんないの。
私は、男子しか並んでいない8段の順番待ちの列に、再び並んだ。
「やるな、楽々浦」
「でしょ?」
同じ列に並んでいるY田が話しかけてきた。
サッカー部に所属していて、私とは仲がいい男子だ。
「さすがにお前でも8段はムリだと思ってた!」
「なんだとー?」
肩をペシペシ軽く叩かれながら軽口を交わした。
順番を待ちながら他の列を見る。
7段の列に並んでいるのはほとんどが男子で女子は少し。
6段の列はほとんどが女子で男子は少し。
その6段の列に釈氏が並んでいるのを見つけた。
校則に反して髪の毛を染めるような生徒はいない進学校。
黒髪の学生の波の中では、あいつの茶色の髪はよく目立つ。
髪といい肌といい、日本人離れした色の薄さだ。
初めてあいつを見て、純血日本人だと思う人間はまずいないだろう。
私だってこの学校に入学して初めてあいつを見た時は、ハーフかなんかだと思った。
でも、生まれつき色素が薄いだけで、100パーセント日本人だそうだ。
あの茶色い髪と白い肌と、綺麗に整った顔立ち。
たまに大きなビスクドールに見える事すらある。
でも、性格はイヤミな奴だ。
昨日も自分が学年主席だからってドヤ顔で私に絡んできた。
あいつのドヤ顔を思い出してイラッとしていると、釈氏がこっちを見て、目が合った。
釈氏はなんだかムッとした顔をしている。
なんでだ。
…あ、そうか。
あいつは6段の跳び箱しか跳べないけど、私は8段を跳べる。
跳び箱―というか、運動は私が上だ。
昨日のお返しに私も釈氏にドヤ顔してやる。
ドヤァ。
私の意志は伝わったようで、あいつはさらにムッとした顔になった。
フフン、よく顔に出るやつだ。
…ん?
仕返しが成功してニヤニヤしていると、チクチクする視線を感じた。
キョロッと視線の出所を探すと、6段の列で釈氏の後ろに並んでいる女子数人も、私のことを見ているのに気付いた。
いや、見ている…というか、睨まれてる、ような。
なんでだ。
あの子達に何かした覚えはないんだけど。何かしただろうか…?
うーん…。
モヤモヤした気持ちを残しながら、体育の授業が終わった。
放課後。
私は学校内の自習室に向かっていた。
自分の部屋で勉強しようとしてもどうしてもダラけてしまうので、私はいつも学校か塾の自習室で勉強している。
1日の授業が終わり、生徒で賑わう廊下。
歩いていると、聞き慣れた声に呼び止められた。
「楽々浦さん」
「ん?」
声に振り向くと、釈氏が掲示板を背に突っ立っていた。
金色のボタンが輝く、ちょっと凝ったデザインのブレザー制服。
こいつが着ると、なんだか王子様の衣装みたいに見えるから不思議だ。
いつもの澄まし顔だとなおさら王子様か人形みたいに見えるはずだけど、今の釈氏はなぜか眉間にシワを寄せていた。
「なんだよ」
「今日の体育の時間のことだけど」
「うん」
「あれ、どういうつもりなんだい?」
「え?」
あれってどれだ?
今日の体育で釈氏をムカつかせた事といえば…ドヤ顔したこと?
でもドヤ顔なんてこいつの方がよくやってるし、わざわざ咎められるようなことでもないと思う。
「何が?」
一体こいつが何の話をしているのか分からなかったので、聞いてみた。
なのに
「…いや、やっぱりいいよ…」
釈氏は私の質問には答えず、不愉快そうな顔のまま足早に立ち去ってしまった。
「…何だよ…」
意味が分からず、私はその場に立ち尽くした。
なんなんだ。
モヤモヤしながらも私は自習室に向かった。
今日はモヤモヤすることが多い日だ。
―カラ…
自習室の戸をソッと開ける。
我が校の自習室の机は、1人分のスペースごとに仕切り板があって、隣の生徒の顔もノートも見えない。
おかげでよく集中できる。
開いた席を見つけ、勉強道具を広げる。
「…」
勉強しなきゃ。
分かってはいるけど、モヤモヤが頭を覆っている。
クラスの女子に睨まれていたのはなんでなんだろう。
釈氏は何を怒っていたんだろう。
勉強しなきゃいけないのに、考えてしまう。
…そういえば、釈氏も常に学年主席になっているからには、それなりに勉強しているはず。
どこで勉強しているんだろう。
自分の部屋とかかな?
いや、どうでもいいや。
あいつがどこで勉強してるかなんて。
モヤモヤ考えていた思考をなんとかストップさせて、私はまず宿題に取り掛かった。
でも、例外もある。
私は体育館で跳び箱に向かって走った。
―ダンッ
ジャンプ台の板バネの力を一片も無駄にせず、高くジャンプ。
―パンッ
跳び箱を軽やかに跳び越え、マットにきれいに着地。
クラスメイト達が「おおっ」と感嘆の声を上げてくれた。
8段を跳べる女子は私だけなのだ。
ただ、用意されている跳び箱は8段までで、これ以上高い跳び箱はない。
つまんないの。
私は、男子しか並んでいない8段の順番待ちの列に、再び並んだ。
「やるな、楽々浦」
「でしょ?」
同じ列に並んでいるY田が話しかけてきた。
サッカー部に所属していて、私とは仲がいい男子だ。
「さすがにお前でも8段はムリだと思ってた!」
「なんだとー?」
肩をペシペシ軽く叩かれながら軽口を交わした。
順番を待ちながら他の列を見る。
7段の列に並んでいるのはほとんどが男子で女子は少し。
6段の列はほとんどが女子で男子は少し。
その6段の列に釈氏が並んでいるのを見つけた。
校則に反して髪の毛を染めるような生徒はいない進学校。
黒髪の学生の波の中では、あいつの茶色の髪はよく目立つ。
髪といい肌といい、日本人離れした色の薄さだ。
初めてあいつを見て、純血日本人だと思う人間はまずいないだろう。
私だってこの学校に入学して初めてあいつを見た時は、ハーフかなんかだと思った。
でも、生まれつき色素が薄いだけで、100パーセント日本人だそうだ。
あの茶色い髪と白い肌と、綺麗に整った顔立ち。
たまに大きなビスクドールに見える事すらある。
でも、性格はイヤミな奴だ。
昨日も自分が学年主席だからってドヤ顔で私に絡んできた。
あいつのドヤ顔を思い出してイラッとしていると、釈氏がこっちを見て、目が合った。
釈氏はなんだかムッとした顔をしている。
なんでだ。
…あ、そうか。
あいつは6段の跳び箱しか跳べないけど、私は8段を跳べる。
跳び箱―というか、運動は私が上だ。
昨日のお返しに私も釈氏にドヤ顔してやる。
ドヤァ。
私の意志は伝わったようで、あいつはさらにムッとした顔になった。
フフン、よく顔に出るやつだ。
…ん?
仕返しが成功してニヤニヤしていると、チクチクする視線を感じた。
キョロッと視線の出所を探すと、6段の列で釈氏の後ろに並んでいる女子数人も、私のことを見ているのに気付いた。
いや、見ている…というか、睨まれてる、ような。
なんでだ。
あの子達に何かした覚えはないんだけど。何かしただろうか…?
うーん…。
モヤモヤした気持ちを残しながら、体育の授業が終わった。
放課後。
私は学校内の自習室に向かっていた。
自分の部屋で勉強しようとしてもどうしてもダラけてしまうので、私はいつも学校か塾の自習室で勉強している。
1日の授業が終わり、生徒で賑わう廊下。
歩いていると、聞き慣れた声に呼び止められた。
「楽々浦さん」
「ん?」
声に振り向くと、釈氏が掲示板を背に突っ立っていた。
金色のボタンが輝く、ちょっと凝ったデザインのブレザー制服。
こいつが着ると、なんだか王子様の衣装みたいに見えるから不思議だ。
いつもの澄まし顔だとなおさら王子様か人形みたいに見えるはずだけど、今の釈氏はなぜか眉間にシワを寄せていた。
「なんだよ」
「今日の体育の時間のことだけど」
「うん」
「あれ、どういうつもりなんだい?」
「え?」
あれってどれだ?
今日の体育で釈氏をムカつかせた事といえば…ドヤ顔したこと?
でもドヤ顔なんてこいつの方がよくやってるし、わざわざ咎められるようなことでもないと思う。
「何が?」
一体こいつが何の話をしているのか分からなかったので、聞いてみた。
なのに
「…いや、やっぱりいいよ…」
釈氏は私の質問には答えず、不愉快そうな顔のまま足早に立ち去ってしまった。
「…何だよ…」
意味が分からず、私はその場に立ち尽くした。
なんなんだ。
モヤモヤしながらも私は自習室に向かった。
今日はモヤモヤすることが多い日だ。
―カラ…
自習室の戸をソッと開ける。
我が校の自習室の机は、1人分のスペースごとに仕切り板があって、隣の生徒の顔もノートも見えない。
おかげでよく集中できる。
開いた席を見つけ、勉強道具を広げる。
「…」
勉強しなきゃ。
分かってはいるけど、モヤモヤが頭を覆っている。
クラスの女子に睨まれていたのはなんでなんだろう。
釈氏は何を怒っていたんだろう。
勉強しなきゃいけないのに、考えてしまう。
…そういえば、釈氏も常に学年主席になっているからには、それなりに勉強しているはず。
どこで勉強しているんだろう。
自分の部屋とかかな?
いや、どうでもいいや。
あいつがどこで勉強してるかなんて。
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