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第5章 シ・ア・ワ・セ・シ・ン・デ・レ・ラ・? ~独占欲と情欲とがっつり食欲~
得意分野は食欲です<489>
しおりを挟む「え、何ですか。あんたは?」
見知らぬ男の、ひどく動揺した声が聞こえた。
急いで部屋に入ると、缶ジュースを灰皿代わりに吸殻を広げた、黒いTシャツにブルージーンズ姿の中肉中背の男の人がいた。
「市丸君の上司だよ。君は何のご用で、ここに?」
「べ、別になんでもありません。……帰ります」
そう言って男は、テーブルに広げていたタバコと財布とスマホを拾ってズボンのポケットに入れてこっちへ向かって来た。
私はさっと、課長の後ろについて離れた。
「あんたも、会社の人か?」
「は?」
「まさか、こいつと付き合ってんの?」
「いいえ。違います」
「こいつ、ケチらしいぜ。まったく、薄情な奴」
そう言い残して、男はそさくさと帰っていった。
私は、何となく嫌な感じがしたので、勝手に玄関に戻り、家カギを掛けてチェーンロックを掛けた。
郵便物のボックスを開けると少し外扉が開いているから、気になっていたがたくさんの封筒が入っていた。
中は、市丸&伊藤名義の郵便物のオンパレードだった。
取り合えず、プライバシーとか何とか、言ってる場合ではないと思って、私は部屋に戻ると窓を開けて喚起する市丸君とテーブルを片付ける課長の姿を見て泣けた。
「いや、本当。 連れて来たのが石崎さんで良かったよ」
「いや、言っている意味が全く分からないんですけど」
私は、お腹が空き過ぎてケーキが食べられないと言う市丸君に、米を炊いた。
冷蔵庫の中にある、卵でかろうじて作れた卵焼きと実家から持ち帰ったお歳暮で貰っただしの素と味噌と、キャベツと人参の切れ端で作った味噌汁。
「お米って、虫が沸くんですね」
「夏場は、普段留守がちな家だったら高温で沸くよ。夏場は防虫剤を米びつに入れるか、冷蔵庫の野菜室に入れなきゃ」
米櫃に僅か3合ほど残っていた米にテントウムシサイズの虫(コクゾウムシ)が10数匹入っていた。
悲鳴を上げたのは、ご飯位俺が作ると米櫃を開けた課長で。
良いから、座ってお茶でも飲んでなさい、と私が変わった。
台所から白いざるを取り出して少量ずつざるを躍らせると、虫や砕けた米の破片が落ちる。
後はいつもより大雑把に洗って、こぼれるお米は惜しげなく流してしまえば、綺麗なお米だけが残る。
お米の分量は図れなかったが、手を平らに伸ばしたコメの上に広げ手の甲が沈む位置が丁度良い水加減だから、その要領で水加減を決め、早炊きにした。
後は、野菜室にキュウリがあったので、ピーラーで筋を入れて一口大の輪切りに切って、塩と大匙半杯の砂糖でもんで浅漬けを作ってだした。
お米が炊けるまで35分、炊きあがる5分前にはすべての用意が出来ていたので、炊けてないけどご飯をよそった。
早炊きのお米は、若干固くなるのでちょっと蒸らして蒸気を抜かない早めの方が柔らかく食べられる。
「すみません。朝から何も食べてなくて」
そう言って、課長と私の前で市丸君はご飯を食べだした。
私はこそっと課長に、傍らに隠して積んだ、件の郵便物の存在を目線だけで伝えた。
課長を一瞬目を見張った後、口を尖らせつつも、市丸君の食事を見守ったのだった。
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