80 / 115
「聖堂寺」
しおりを挟む
満月の下で重厚な雰囲気を放っている日本家屋。聖堂寺本邸が目の前に立っていた。
「ここが聖堂寺の本邸か」
「ええ。ただ簡単には入れなさそうよ」
本邸周りには隼人達の出現を察したように複数人の警備員が立っている。
「裏側はまだ警備が薄いな」
「そこを叩きましょう」
隼人と結巳は侵入経路を考えると、車内を飛び出した。
「わしは外で待機している。何かあったら連絡する」
「ああ、頼んだ」
シライとしばしの別れを告げた隼人は結巳とともに聖堂寺に本邸裏口に向かって進んだ。
裏口に向かうと警備員が二人立っていた。
「貴様ら一体何者だ!」
「氷結大地!」
結巳が地面に聖滅具の剣先を突き刺すと警備員二人の足元が凍結した。
「うお!」
「わああ!」
その瞬間、二人は後ろに引っ張られたように足を滑られて倒れた。
一人は後頭部を打って、白目をむいた。もう一人の方は意識を保っていたので隼人の手で即座に気絶させられた。
「すみません」
「どうか許して」
隼人達は気絶させた警備員に謝罪して本邸の庭に忍び込んだ。足音を殺して、夜の静寂に溶け込んで進んでいく。
本邸の中に入ると時が止まったように無音の空間が隼人達を出迎えた。
「ここの奥に父の書斎があったはずです」
結巳に導かれるまま、進んで行くと一際立派な木製の扉が見えた。
「ここか」
「開けましょう」
扉を開けると無数の本棚が隼人の目に飛び込んできた。こまめに手入れをされていたのか部屋は清潔感があふれていた。
「生前、お父様がこの部屋の奥に重要書類が保管されていると言っていたわ」
「じゃあ、探すか」
隼人は結巳とともに本を漁った。時間が限られているので場所を絞って徹底して行く。
すると一際薄汚れた一冊の本を見つけた。
表紙には僅かに血がこびりついていた。
「この本じゃないのか?」
本の表紙を結巳に見せると彼女の表情が少し硬くなった。おそらくお目当てはこの本のようだ。
「じゃあ捲るわよ」
本が開かれるとともに閉ざされた歴史の扉がゆっくりと開かれた。
一千年前。街の近くにある山に大蛇がいた。多くの民を喰らっていく中、一人の青年が大蛇を討伐する。青年は大蛇の肉を喰らって、異能に目覚めた。
青年は帝《みかど》から大蛇の封印を褒め称えられて『聖堂寺《せいどうじ》』の名を授かる。
その後、世の裏側で青年とその子孫は国を良くしようと自分の身に宿る異能を善のために使った。
青年の死後も、子孫達は必死に戦ったが一向に世の中は平和にならない。一族は次第に絶望し、傍若無人な振る舞いを好むようになる。
己の能力を受け継ぐ子を産むため、国の各地から優秀な血筋の人間を攫う寄りになった。
反対勢力は秘密裏に粛清し、異能に適性があると判断すれば、一族に無理やり引き入れた。
一族の中で誰かが死ぬとその死肉をくらい、己の力を強めた。
やがて一族は繁栄して、無数の分家が生まれた。そして、百年前。分家の一つである鳳家の嫡男、鳳鴉が本家と他の分家に反旗を翻した。
鴉は本家の一人息子である聖堂寺陽以外の一族の面々を殺害した後、逃亡。
その後、聖堂寺陽は忌獣対策本部を設立して、鳳鴉に対抗を始める。それからは今日に至るまでの争いが始まった。
「これが聖堂寺の歴史」
あまりに壮絶な内容だったため、隼人と結巳はただ項垂れるばかりでいた。
人間の敵である忌獣。
それを討伐する組織を生み出した誇り高い聖堂寺家。しかし百年前まで畜生と言っても過言ではない程の悪行を重ねていた。
そして、分家の一人、鳳鴉との争い。彼が生み出した組織がおそらく、『鳥籠』だ。
「お、おそらく兄さんはこれを見たから父と」
彼女の表情が見る見るうちに影を帯びる。きっと罪の意識に苛まれてしまったのだ。
そして、隼人自身、気がかりな事があった。山にいた大蛇と青年の話だ。その内容が夏祭りに結巳から聞いたおとぎ話とそっくりだったのだ。
それと対立した分家の鳳。その名前に隼人は聞き覚えがあった。
「まさか」
突然、隼人の携帯が鳴った。シライからだた。
「もしもし」
「隼人。作戦が開始された」
「ここが聖堂寺の本邸か」
「ええ。ただ簡単には入れなさそうよ」
本邸周りには隼人達の出現を察したように複数人の警備員が立っている。
「裏側はまだ警備が薄いな」
「そこを叩きましょう」
隼人と結巳は侵入経路を考えると、車内を飛び出した。
「わしは外で待機している。何かあったら連絡する」
「ああ、頼んだ」
シライとしばしの別れを告げた隼人は結巳とともに聖堂寺に本邸裏口に向かって進んだ。
裏口に向かうと警備員が二人立っていた。
「貴様ら一体何者だ!」
「氷結大地!」
結巳が地面に聖滅具の剣先を突き刺すと警備員二人の足元が凍結した。
「うお!」
「わああ!」
その瞬間、二人は後ろに引っ張られたように足を滑られて倒れた。
一人は後頭部を打って、白目をむいた。もう一人の方は意識を保っていたので隼人の手で即座に気絶させられた。
「すみません」
「どうか許して」
隼人達は気絶させた警備員に謝罪して本邸の庭に忍び込んだ。足音を殺して、夜の静寂に溶け込んで進んでいく。
本邸の中に入ると時が止まったように無音の空間が隼人達を出迎えた。
「ここの奥に父の書斎があったはずです」
結巳に導かれるまま、進んで行くと一際立派な木製の扉が見えた。
「ここか」
「開けましょう」
扉を開けると無数の本棚が隼人の目に飛び込んできた。こまめに手入れをされていたのか部屋は清潔感があふれていた。
「生前、お父様がこの部屋の奥に重要書類が保管されていると言っていたわ」
「じゃあ、探すか」
隼人は結巳とともに本を漁った。時間が限られているので場所を絞って徹底して行く。
すると一際薄汚れた一冊の本を見つけた。
表紙には僅かに血がこびりついていた。
「この本じゃないのか?」
本の表紙を結巳に見せると彼女の表情が少し硬くなった。おそらくお目当てはこの本のようだ。
「じゃあ捲るわよ」
本が開かれるとともに閉ざされた歴史の扉がゆっくりと開かれた。
一千年前。街の近くにある山に大蛇がいた。多くの民を喰らっていく中、一人の青年が大蛇を討伐する。青年は大蛇の肉を喰らって、異能に目覚めた。
青年は帝《みかど》から大蛇の封印を褒め称えられて『聖堂寺《せいどうじ》』の名を授かる。
その後、世の裏側で青年とその子孫は国を良くしようと自分の身に宿る異能を善のために使った。
青年の死後も、子孫達は必死に戦ったが一向に世の中は平和にならない。一族は次第に絶望し、傍若無人な振る舞いを好むようになる。
己の能力を受け継ぐ子を産むため、国の各地から優秀な血筋の人間を攫う寄りになった。
反対勢力は秘密裏に粛清し、異能に適性があると判断すれば、一族に無理やり引き入れた。
一族の中で誰かが死ぬとその死肉をくらい、己の力を強めた。
やがて一族は繁栄して、無数の分家が生まれた。そして、百年前。分家の一つである鳳家の嫡男、鳳鴉が本家と他の分家に反旗を翻した。
鴉は本家の一人息子である聖堂寺陽以外の一族の面々を殺害した後、逃亡。
その後、聖堂寺陽は忌獣対策本部を設立して、鳳鴉に対抗を始める。それからは今日に至るまでの争いが始まった。
「これが聖堂寺の歴史」
あまりに壮絶な内容だったため、隼人と結巳はただ項垂れるばかりでいた。
人間の敵である忌獣。
それを討伐する組織を生み出した誇り高い聖堂寺家。しかし百年前まで畜生と言っても過言ではない程の悪行を重ねていた。
そして、分家の一人、鳳鴉との争い。彼が生み出した組織がおそらく、『鳥籠』だ。
「お、おそらく兄さんはこれを見たから父と」
彼女の表情が見る見るうちに影を帯びる。きっと罪の意識に苛まれてしまったのだ。
そして、隼人自身、気がかりな事があった。山にいた大蛇と青年の話だ。その内容が夏祭りに結巳から聞いたおとぎ話とそっくりだったのだ。
それと対立した分家の鳳。その名前に隼人は聞き覚えがあった。
「まさか」
突然、隼人の携帯が鳴った。シライからだた。
「もしもし」
「隼人。作戦が開始された」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる