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「振り返り」
しおりを挟む宝飾品に彩られた一室。ブレド・ローゼンは両脇に美しい女性二人を置いて、葡萄酒を味わっていた。
「このようなホテルに招いていただけるなんて素敵ですわ。殿下」
「本当。一度豪華絢爛な部屋って来てみたかったんです」
「ははは。私が優勝したあかつきにはもっと最高な舞台を用意しよう」
ブレドは頰を緩めながら、テーブルにあった赤ワインに手を伸ばそうとした時、部屋の扉がノックされた。
「入れ」
「失礼します。殿下。奇襲を依頼した二人ですが失敗に終わったそうです」
兵士の報告にブレドが苦虫を噛み潰した表情を浮かべた。両脇には美女はブレドの様子に怯えたのか、その場を離れた。
「くそ! 愚弟の分際で」
ブレドが葡萄酒を流し込んで、机を強く叩いた。
歓声と興奮が支配する会場の中、アーケオは相手選手を倒した。
「勝者! アーケオ選手!」
司会者の言葉で会場がさらに湧き上がった。アーケオは額の汗をぬぐいながら、闘技場を離れた。
「お疲れ様です。アーケオ様。次勝てば決勝進出ですよ!」
「うん。必ず勝ってみせるよ」
マシュロが控え室の前で待っていた。
「本当。なんかバタバタしたね」
「そうですね。宿舎の窓弁償した後に宿主や他の宿泊客への謝罪を済ました後にようやく眠れましたからね」
マシュロが喉から重いため息を吐いた。アーケオ自身もいつもより睡眠時間が少なかったせいか、今回の試合はこれまでよりも疲れた。
「さあ、今日も試合も終わった事ですし、宿に戻りますか?」
「そうだね。少し休憩したい」
アーケオは宿に戻ることにした。しかし、彼は宿への道中、違和感を覚えた。
「こんなに兵士多かったっけ?」
「確かに多いですね」
街の至る所、特に大会が行われている会場周辺に多くの兵士がいた。
「すみません。なんでこんなに兵士が多いんですか?」
「実は反社会組織の残党がいるという目撃談がありましてそれの知らせで」
「反社会組織?」
「夜明けの翼です」
アーケオはその名前を聞いて、思わず背筋が固まった。博物館を襲撃した連中の残党が今、この国にいるというのだ。
「そうか。今はローゼン国王もいる。タイミングとしてはいつ狙われてもおかしくないのか」
「そういうことです」
兵士がそう言うと一礼して、アーケオ達の前から去った。
「何もないといいな」
胸の中に渦巻く不安感を抱きながら、アーケオは宿舎に戻った。
宿舎に戻った後、アーケオはいつもの本を読んでいた。亡き母との絆の本。現実の残酷さや過酷さに触れるたび、アーケオはこうして本を読んでいる。現実は綺麗なものばかりではないが、本と同じように夢を与えてくれるものもある。
壮大な自然風景。様々な動植物。好奇心そそられる異文化とそこで暮らしている人々。そのどれもがアーケオの心を癒したのだ。
「好きですねその本」
マシュロがアーケオのそばに座って、本を覗いてきた。
「うん。面白い」
「ウィンディー様の子供の頃からある本ですからね」
アーケオとウィンディー。親子二代に渡って、この本から夢をもらっていた。
もし自分に子供ができたら、またこうして夢を繋いでいきたい。アーケオはしみじみとそう思った。
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