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06 ルイーズは狂戦士の能力を継承していた
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ガルガン。
王の命に応え続け、戦争によって国を統一し、領土を広げた最強の騎士。
余りの強さと、戦下で敵を切り倒し前進していく様は狂戦士と呼ばれ、彼の通った後には死体の山と廃墟しか残らなかったと記録が残っている。
ガルガンの名はその白い髪と白い甲冑から『白い災い』として世界に広まった。
幼い子供には「悪さをするとガルガンに連れて行かれるよ」としつけの一環にまで使われる名である。
「ガルガンかー、まさかのガルガン卿かー・・・」
ブルージュ公爵はにわかには信じられなかったが、娘の話を聞いているうちに現実味が増してくる。
「ガルガンから引き継いだ特技がいっぱいあるよ」
ルイーズは得意げに芸事のように次々と異様な力を披露した。
「これが『王の手』」
ルイーズが小さな手でコップを持って集中する。
するとすぐにパリンとコップが割れた。
「近距離攻撃の技なんだよ」
笑顔で話す娘に集まっていた親戚たちはどよめいた。
「これが、覇気」
言葉と同時にバンと緊迫した空気が張り詰める。その場にいた皆が瞬時に動けなくなった。同時に息が詰まるような緊張感を覚える。
ルイーズは真剣な顔で正面を見据えていた。
その姿にブルージュ公爵は寒気を覚えた。
「・・・ふう、これ疲れちゃう」
覇気を解いたのか、ルイーズは布団に横たわった。
「本物だ」
「本物のガルガン公だ。『王の手』なんてルイーズが知っているはずない」
「ガルガンの力を継承しているとすれば、さっきのコップが割れたのも、今の動きを止められたのも、説明がつく」
「それにしても強すぎるぞ」
親戚が議論を重ねていると、小さな寝息が聞こえて来た。
見ると可愛らしい少女が、フワフワの布団に埋もれて眠っている。
「この子の体力の無さは、きっとガルガン公が原因なのだろう。この小さな体にガルガンの器は収まりきらないのだ。だからすぐ失神したり寝込んだりする」
一族で議論を重ねた結果、ルイーズの原因不明の体調不良と前世の能力継承が紐づけけられた。
そしてそれは速やかに王家に伝えられたのである。
ガルガンの生まれ変わりであるルイーズを目にした王と王妃は、速やかに見守り隊へと入隊した。
百五十年振りのせっかくの転生者であるルイーズだったが、女性であり体力もない事から、騎士とはなれないであろうことが予想された。
そのため、ルイーズの修行は内にあるガルガン要素を引き出さない事に終始した。
中でも重要だったのは感情表現を抑える事だ。
嬉しくても悲しくても、いつだって瞬時に傍観者になる必要があった。
一旦落ち着いて、改めてしみじみと感情を噛み締める。
興奮や高揚を感じたら深呼吸して心を落ち着ける。
でなければぶっ倒れてしまうのはルイーズの肉体なのだ。
そうやって感情の振り幅が大きいガルガンに静寂を教え込み、身体の中で飼いならしていくうちに、いっそうたおやかな淑女が出来上がっていったのだ。
そして十歳になり、感情コントロールが出来るようになった頃、王家より第二王子テオドリックとの婚約が持ち掛けられたのである。
ガルガンの能力を我が物にしたい、という王家の陰謀は全く感じられず、とにかく成長を見守っていた可愛い可愛いルイーズを他所に取られたくなーい! という煩悩炸裂な婚約契約であった。
王の命に応え続け、戦争によって国を統一し、領土を広げた最強の騎士。
余りの強さと、戦下で敵を切り倒し前進していく様は狂戦士と呼ばれ、彼の通った後には死体の山と廃墟しか残らなかったと記録が残っている。
ガルガンの名はその白い髪と白い甲冑から『白い災い』として世界に広まった。
幼い子供には「悪さをするとガルガンに連れて行かれるよ」としつけの一環にまで使われる名である。
「ガルガンかー、まさかのガルガン卿かー・・・」
ブルージュ公爵はにわかには信じられなかったが、娘の話を聞いているうちに現実味が増してくる。
「ガルガンから引き継いだ特技がいっぱいあるよ」
ルイーズは得意げに芸事のように次々と異様な力を披露した。
「これが『王の手』」
ルイーズが小さな手でコップを持って集中する。
するとすぐにパリンとコップが割れた。
「近距離攻撃の技なんだよ」
笑顔で話す娘に集まっていた親戚たちはどよめいた。
「これが、覇気」
言葉と同時にバンと緊迫した空気が張り詰める。その場にいた皆が瞬時に動けなくなった。同時に息が詰まるような緊張感を覚える。
ルイーズは真剣な顔で正面を見据えていた。
その姿にブルージュ公爵は寒気を覚えた。
「・・・ふう、これ疲れちゃう」
覇気を解いたのか、ルイーズは布団に横たわった。
「本物だ」
「本物のガルガン公だ。『王の手』なんてルイーズが知っているはずない」
「ガルガンの力を継承しているとすれば、さっきのコップが割れたのも、今の動きを止められたのも、説明がつく」
「それにしても強すぎるぞ」
親戚が議論を重ねていると、小さな寝息が聞こえて来た。
見ると可愛らしい少女が、フワフワの布団に埋もれて眠っている。
「この子の体力の無さは、きっとガルガン公が原因なのだろう。この小さな体にガルガンの器は収まりきらないのだ。だからすぐ失神したり寝込んだりする」
一族で議論を重ねた結果、ルイーズの原因不明の体調不良と前世の能力継承が紐づけけられた。
そしてそれは速やかに王家に伝えられたのである。
ガルガンの生まれ変わりであるルイーズを目にした王と王妃は、速やかに見守り隊へと入隊した。
百五十年振りのせっかくの転生者であるルイーズだったが、女性であり体力もない事から、騎士とはなれないであろうことが予想された。
そのため、ルイーズの修行は内にあるガルガン要素を引き出さない事に終始した。
中でも重要だったのは感情表現を抑える事だ。
嬉しくても悲しくても、いつだって瞬時に傍観者になる必要があった。
一旦落ち着いて、改めてしみじみと感情を噛み締める。
興奮や高揚を感じたら深呼吸して心を落ち着ける。
でなければぶっ倒れてしまうのはルイーズの肉体なのだ。
そうやって感情の振り幅が大きいガルガンに静寂を教え込み、身体の中で飼いならしていくうちに、いっそうたおやかな淑女が出来上がっていったのだ。
そして十歳になり、感情コントロールが出来るようになった頃、王家より第二王子テオドリックとの婚約が持ち掛けられたのである。
ガルガンの能力を我が物にしたい、という王家の陰謀は全く感じられず、とにかく成長を見守っていた可愛い可愛いルイーズを他所に取られたくなーい! という煩悩炸裂な婚約契約であった。
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