病弱を理由に婚約破棄されました ~私、前世は狂戦士だったのです~

呉マチス

文字の大きさ
7 / 53

07 忍び寄る悪意

しおりを挟む
目が覚めると見慣れない部屋だった。

「・・・・・?」

状況把握が出来なくて小首をかしげていると、ドアを細く開けて覗いている侍女のアニーと目が合う。

「どうしたの、アニー?」

声を掛けるとアニーは眉間に皺を寄せた。

「ガルガン卿ですか?」

聞かれて思わず笑ってしまう。

「ふふふ。アニーったら」

だが同時に昨日、私が気持ちを爆発させてしまった出来事を思い出す。

「ああ! そうでしたわ! 皆無事だった!?」

私が大声を出すと、侍女たちが部屋に駆け込んできた。

「お嬢様、お静かに」

「落ち着いて、深呼吸です」

いつのも対応だ。私が少しでも興奮すると、皆が飛んで来て落ち着くように諭すのだ。
だが、今日はいつもより緊張した顔をしている。
昨日、ガルガンの気を発動してしまい、恐怖を植え付けてしまったようだ。

「大丈夫です。部屋と家具はまるっと破壊されましたが、人的被害はありませんでした。ルイーズお嬢様がお倒れになられたので、勝手ながらこちらの部屋に移動いたしました」

アニーの説明に私は胸を撫で下ろし納得した。

「ああ良かった。皆、怖い目に合わせてしまってごめんなさい」

私が謝ると皆の動きがビシッと止まる。そして叫び出した。

「お嬢様のせいではございません!」

「殿下が! エルミナ令嬢が! 悪いのです!!」

「信じられません! ルイーズお嬢様を蔑ろにするなんて!!」

私のために皆が叫んでくれる。
これもいつもの事だ。
そうやって私の感情を代わって発散してくれるので、私は心を落ち着ける事ができるのだ。

「ルイーズお嬢様、昨日の事は覚えていますか?」

アニーが確信に触れてくる。

「もちろんよ、全部覚えているわ。大丈夫よ」

私は涙の跡でカピカピになった目尻を擦った。
侍女たちが大騒ぎして、その手を止める。「お嬢様の真珠の肌が!!」と蒸しタオルが用意された。
タオルを瞼に乗せて寝転がり、私は最近のテオドリックとの関係を振り返る。

良好、とは言えないまでもいつもと変わらない関係を保っていた。
テオドリックには婚約当初から思いを寄せる相手がいるのだが、それを知っても、私にはテオドリックを振り向かせようという気概は無かった。
疲れるし倒れるから。

だが、政略結婚だ。
お互いの立場を考えるに、一番の良縁談だということは、テオドリックも理解していたはずだ。
だからこそ、私は良い第二王妃になるための努力を惜しまなかったし、テオドリックと恋は出来ずとも、情で結ばれようとする努力も欠かさなかった。

テオドリックもそれに応えてくれていた。
デビュタントで一番に名前が呼ばれると決まった時は、あの美しい青い瞳を輝かせて喜んでくれたではないか。

デビュタントの一位を勝ち得たのは二ヶ月前。
デビューしたら直ぐに婚姻式の予定が立てられ、私は王妃となるべく準備に取りかからねばならなかった。
だから、王妃教育も終えたこのデビュタント舞踏会までの二ヶ月前は、実家で両親とゆっくり過ごすといい。
そう言ったテオドリックの美しい笑顔を思い出す。

この二ヶ月は、手紙のやり取りだけで、直接顔を会わせることはほとんど無かった。
それまでは毎日宮廷の王子宮へ通い、教育を受け、帰りにテオドリックとお茶を頂いて帰るのが日課となっていた。
お互いを気遣いつつ、お互いを知ろうと努力した。
だからこそ、恋はしていなくてもお互いを大事にしようという気持ちが育ったのだ。
育っていたはずだ。

「この二ヶ月に何かがあったのだわ」

ほんの少しだけ生じた隙に、迷い無くつけ込んでくる悪意の存在に、私は背筋を凍らせた。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

揺れぬ王と、その隣で均衡を保つ妃

ふわふわ
恋愛
婚約破棄の断罪の場で、すべては始まった。 王太子は感情に流され、公爵令嬢との婚約を解消する。 だが、その決断は王家と貴族社会の均衡を揺るがし、国そのものを危うくする一手だった。 ――それでも彼女は、声を荒らげない。 問いただすのはただ一つ。 「そのご婚約は、国家にとって正当なものですか?」 制度、資格、責任。 恋ではなく“国家の構造”を示した瞬間、王太子は初めて己の立場を知る。 やがて選ばれるのは、感情ではなく均衡。 衝動の王子は、嵐を起こさぬ王へと変わっていく。 そして彼の隣には、常に彼女が立つ。 派手な革命も、劇的な勝利もない。 あるのは、小さな揺れを整え続ける日々。 遠雷を読み、火種を消し、疑念に居場所を与え、 声なき拍手を聞き取る。 これは―― 嵐を起こさなかった王と、 その隣で国家の均衡を保ち続けた妃の物語。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜
恋愛
次期当主になるべく、領地にて父親から仕事を学んでいた伯爵令息フレデリックは、ちょっとした出来心で領民の娘イルアに手を出した。 ただそれは、結婚するまでの繋ぎという、身体目的の軽い気持ちで。 対して領民の娘イルアは、本気だった。 もちろんイルアは、フレデリックとの間に身分差という越えられない壁があるのはわかっていた。そして、その時が来たら綺麗に幕を下ろそうと決めていた。 けれど、二人の関係の幕引きはあまりに酷いものだった。 誠意の欠片もないフレデリックの態度に、立ち直れないほど心に傷を受けたイルアは、彼に復讐することを誓った。 弄ばれた女が、捨てた男にとって最後で最高の女性でいられるための、本気の復讐劇。

処理中です...