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09 ヴァレリー王太子のお詫び訪問
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「ヴァレリー王太子?」
思いもよらない大物の名に私もビクトリアも目を会わせる。
「体調が許すのならばご挨拶に伺った方がよろしいかと」
執事の言葉に私は勢いづいて立ち上がると、目眩がして直ぐにテーブルに手をついてしまう。
昨日、思う存分感情を爆発させた影響がまだ残っていた。
「ルイーズ、まだ無理よ」
ビクトリアが素早く私を支えて、再びソファーに座らせる。
「もう。本当に、この身体がもどかしいわ」
婚約破棄の原因ともなったこの弱い体が憎らしい。
ガルガンが悪いわけじゃない。彼の記憶も能力も、激しい感情も、今では私と一体となってこの弱い身体と向き合っている。
だからこそ、もっと体力があったならと考えてしまう。
ガルガンの能力を継承していてもこの体では、全てが有り余った能力となってしまう。
誰にだって少し無理をしてでも頑張らなければならない時は、人生においてままあるのに、私はいつだってそこで、気力より身体が先に根を上げてしまうのだ。
「悔しい」
とうとう、我慢していた言葉を言ってしまった。
1度口から出てしまうと、止まらなくなる。
「悔しい、悔しいわ」
ボタボタと大粒の涙を落としながら、ビクトリアの腕を掴んで気持ちを吐露してしまったときだ。ドアの向こうが騒がしくなり、ノックと同時に扉が開かれると、父を先頭にぞろぞろと人がなだれ込んで来た。
「ルイーズ!」
未だ涙が止まらない私を見て、父や親戚たちが駆け寄ってくる。
「ルイーズ、可哀想に」
父に体を支えられると、大きな手の温かさに再びの涙が溢れ出る。
こんな大勢の前で泣きたくないのに。
「大丈夫、大丈夫です、お父様」
気丈に振る舞おうと涙を拭く。その仕草がまた痛ましさを覚えさせてしまったようで、見守る一同の顔を一様にしかめさせた。
「ルイーズ嬢」
よく通る声が場を制するように響いた。
一同にまぎれ、そこにいたのはヴァレリー王太子だった。
驚きに慌ててカテーシーで挨拶をするが、膝を折った所でよろめき、床に手をついてしまう。
淑女の挨拶すらまともに出来なくて、自分を恨めしく思う気持ちが募る。
それを支えたのはヴァレリー王太子だった。
王太子自ら床に膝を付き、私の体を抱き起こすと、そのままソファーに戻される。
何てこと、何てこと!!
深呼吸、深呼吸よ!!
私は動揺に目眩をおこし、寝かされたソファーから起き上がることも出来ない。
「申し訳ございません。申し訳・・・」
何度も何度も謝罪を口にするが、王太子は気にする必要は無いというようにソファーの傍らに膝をついて座り込み、誰かから受け取ったのであろうハンカチで涙を拭ってくれる。
「あなたが謝る事ではない。私は王家の代表としてテオドリックの蛮行を詫びに来たのだ」
近い位置に王太子の顔があって、私は泣き腫らした自分の顔がどれだけ醜いかと、恥ずかしくなる。
謝罪を口にしていても、王太子のハンサムなお顔は気品を失わず神々しい。
両手で顔を覆って視線を避ける素振りに、王太子は気を使って立ち上がり、その場から一歩二歩と下がっていく。
「今日はまだ傷も深いだろう。また改めて来る」
そう言うと一同を引き連れて部屋を出ていった。
残されたのは私とビクトリアだけ。
「ヴァレリーが直接来るなんて、これは良い傾向よ。それにしてもレディーの部屋に断りもなく大勢で押し掛けるなんて、王太子のくせに気が利かないわね」
敢えての明るい口調で私を慰めるビクトリア。
私はもう、心労募って言葉もない。
「くふふ、ヴァレリーのあの顔! ルイーズに釘付けだったわ。本当にこれは良い傾向よ!」
ビクトリアは従兄弟であるヴァレリーに対し気安く下世話な事を言うが、私にはもうそれを咎める気力も無かった。
思いもよらない大物の名に私もビクトリアも目を会わせる。
「体調が許すのならばご挨拶に伺った方がよろしいかと」
執事の言葉に私は勢いづいて立ち上がると、目眩がして直ぐにテーブルに手をついてしまう。
昨日、思う存分感情を爆発させた影響がまだ残っていた。
「ルイーズ、まだ無理よ」
ビクトリアが素早く私を支えて、再びソファーに座らせる。
「もう。本当に、この身体がもどかしいわ」
婚約破棄の原因ともなったこの弱い体が憎らしい。
ガルガンが悪いわけじゃない。彼の記憶も能力も、激しい感情も、今では私と一体となってこの弱い身体と向き合っている。
だからこそ、もっと体力があったならと考えてしまう。
ガルガンの能力を継承していてもこの体では、全てが有り余った能力となってしまう。
誰にだって少し無理をしてでも頑張らなければならない時は、人生においてままあるのに、私はいつだってそこで、気力より身体が先に根を上げてしまうのだ。
「悔しい」
とうとう、我慢していた言葉を言ってしまった。
1度口から出てしまうと、止まらなくなる。
「悔しい、悔しいわ」
ボタボタと大粒の涙を落としながら、ビクトリアの腕を掴んで気持ちを吐露してしまったときだ。ドアの向こうが騒がしくなり、ノックと同時に扉が開かれると、父を先頭にぞろぞろと人がなだれ込んで来た。
「ルイーズ!」
未だ涙が止まらない私を見て、父や親戚たちが駆け寄ってくる。
「ルイーズ、可哀想に」
父に体を支えられると、大きな手の温かさに再びの涙が溢れ出る。
こんな大勢の前で泣きたくないのに。
「大丈夫、大丈夫です、お父様」
気丈に振る舞おうと涙を拭く。その仕草がまた痛ましさを覚えさせてしまったようで、見守る一同の顔を一様にしかめさせた。
「ルイーズ嬢」
よく通る声が場を制するように響いた。
一同にまぎれ、そこにいたのはヴァレリー王太子だった。
驚きに慌ててカテーシーで挨拶をするが、膝を折った所でよろめき、床に手をついてしまう。
淑女の挨拶すらまともに出来なくて、自分を恨めしく思う気持ちが募る。
それを支えたのはヴァレリー王太子だった。
王太子自ら床に膝を付き、私の体を抱き起こすと、そのままソファーに戻される。
何てこと、何てこと!!
深呼吸、深呼吸よ!!
私は動揺に目眩をおこし、寝かされたソファーから起き上がることも出来ない。
「申し訳ございません。申し訳・・・」
何度も何度も謝罪を口にするが、王太子は気にする必要は無いというようにソファーの傍らに膝をついて座り込み、誰かから受け取ったのであろうハンカチで涙を拭ってくれる。
「あなたが謝る事ではない。私は王家の代表としてテオドリックの蛮行を詫びに来たのだ」
近い位置に王太子の顔があって、私は泣き腫らした自分の顔がどれだけ醜いかと、恥ずかしくなる。
謝罪を口にしていても、王太子のハンサムなお顔は気品を失わず神々しい。
両手で顔を覆って視線を避ける素振りに、王太子は気を使って立ち上がり、その場から一歩二歩と下がっていく。
「今日はまだ傷も深いだろう。また改めて来る」
そう言うと一同を引き連れて部屋を出ていった。
残されたのは私とビクトリアだけ。
「ヴァレリーが直接来るなんて、これは良い傾向よ。それにしてもレディーの部屋に断りもなく大勢で押し掛けるなんて、王太子のくせに気が利かないわね」
敢えての明るい口調で私を慰めるビクトリア。
私はもう、心労募って言葉もない。
「くふふ、ヴァレリーのあの顔! ルイーズに釘付けだったわ。本当にこれは良い傾向よ!」
ビクトリアは従兄弟であるヴァレリーに対し気安く下世話な事を言うが、私にはもうそれを咎める気力も無かった。
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