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38 一戦終えて
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ヴァレリー王太子と私のとんでも瞬発力に、ルルヴァルの戦士たちはことごとくタイミングを逸し、徐々に王宮親衛隊の優勢となった。
そのあたりで、大人数の騎士団が到着する。
回廊は騎士団の管理下となり、私も王太子も、安全な場所に引っ込まされた。
「短慮ですぞ、殿下!」
ヴァレリー王太子は様々な立場の人に怒られている。
少数で戦況の危うい場に出てしまったのだから、仕方が無いだろう。
一方私は。
「ルイーズ! 大大丈夫か!? 怪我は無いか!? ああ! 誰だ腕をこんなにした奴は!!」
と、騎士団と共に来たお父様から、回廊を壊した事はスルーして好待遇を受けていた。
「遅いです、お父様」
疲れた私はついお父様に甘えた文句を言ってしまう。
「馬鹿言うな。最速で駆けつけたぞ」
私の頭をポンポン叩くのは大公様だ。
「宮廷内で乱戦が起こるなど想定外もいい所だ」
大きな体に大きな鎧を纏って、騎士団の長は貫禄たっぷりに自分の近衛隊、つまりお父様の隊を従えている。
「なのに準備皆無の状態からよく持ちこたえたな。偉いぞ。こちらの死人が出なかったのはルイーズのお陰だろうなぁ」
大公様はアルベールにも褒め言葉を与えて、しかし顔つきは厳しいままだ。
いつの間にかルルヴァルの兵士たちは一人残らず拘束されている。
しかし、居ると思われた宰相が見つかっていないからだ。
まだ、回廊を制しただけで、北側の塔は手を付けていない。
お父様からはもう現場から離れるように言われたが、離れた場所から戦況を見守る事を希望した。
「いいぞ、ルイーズ嬢ちゃんは俺の直属だからな。俺のそばから離れない事が条件だ」
大公様からお許しが出た。
そうでした。こんなドレスを着ているが、今日から私も騎士団の所属なのでした。
そうか。私が戦いにしゃしゃり出た事は、あながち間違いでは無かったという事だ。
私は味方の被害が最小限に抑えられたことにホクホクして、周囲の様子を見渡した。
北側の塔を囲う騎士団たち。
回廊ではガスパール卿をはじめとした親衛隊が現状を報告している。
一歩引いた、目的である北塔とは反対側に陣取った騎士団。
その陣の中には大公様と大公様の近衛兵と私。
陣の最奥には王太子たち。
後宮の美しい宮殿だが、見た目は戦場だ。
私は今後、この中で生きていくのだな。
しみじみと環境を実感している時、いきなり『地獄耳』が発動した。
―――ぺたぺた。
「!?」
私はびっくりして辺りを見渡す。
何の音!?
扉に駆け寄り、向こう側の回廊の惨状を見回す。
北塔の方角から音がする。
―――ぺたぺた。
ええ、何!?
気持ち悪い音!?
キョロキョロしていると回廊内で作業しているガスパール卿と目が合う。
物凄くいぶかし気な表情をされてしまった。
その渋いお顔のまま私の所まで早歩きでやってくる。
「何事ですか?」
突然強く聞かれて驚いた。
大公様や騎士たちもびっくりしているではないか。
「な、何でもない、です!」
私は言うが、ガスパール卿は強かった。
「何でもない顔ではありませんね。もう騙されませんよ! 何をお考えですか!?」
別に昨日だって騙した訳じゃないじゃない。
色々と機密事項を背負っているのよ。
と言い訳したかったが、気持ちの悪い音が徐々に近づいて来る感覚に、私はゾゾっと背筋を凍らせてガスパール卿にしがみついた。
「し、下です~!!」
ガスパール卿の首にしがみついて、私は両足を浮かしてバタバタさせる。
床が気持ち悪い!
床に足を置きたくない程に!
「今度は何事だ! ルイーズ!!」
大公様が部下を従えて直々やってくる。
その奥では王太子が近衛や付き人に引き留められている。
「床に何かいます~。ひー! 気持ち悪いよ~!!」
私は本気で悪寒が走り、床を指さした。
「この辺、この辺です!」
本気で気持ち悪かったのだ。
状況から逃れたかったのだ。
だから床が抜けたのは私のせいではないと言いたい。
「ギャー!!」
ビシィッ、と床石に亀裂が入り、その上にいた大公様や数人の騎士たちと共に、私とガスパール卿は落下した。
ガルガン、いい加減にしろ。
あんたの能力強すぎる。
そのあたりで、大人数の騎士団が到着する。
回廊は騎士団の管理下となり、私も王太子も、安全な場所に引っ込まされた。
「短慮ですぞ、殿下!」
ヴァレリー王太子は様々な立場の人に怒られている。
少数で戦況の危うい場に出てしまったのだから、仕方が無いだろう。
一方私は。
「ルイーズ! 大大丈夫か!? 怪我は無いか!? ああ! 誰だ腕をこんなにした奴は!!」
と、騎士団と共に来たお父様から、回廊を壊した事はスルーして好待遇を受けていた。
「遅いです、お父様」
疲れた私はついお父様に甘えた文句を言ってしまう。
「馬鹿言うな。最速で駆けつけたぞ」
私の頭をポンポン叩くのは大公様だ。
「宮廷内で乱戦が起こるなど想定外もいい所だ」
大きな体に大きな鎧を纏って、騎士団の長は貫禄たっぷりに自分の近衛隊、つまりお父様の隊を従えている。
「なのに準備皆無の状態からよく持ちこたえたな。偉いぞ。こちらの死人が出なかったのはルイーズのお陰だろうなぁ」
大公様はアルベールにも褒め言葉を与えて、しかし顔つきは厳しいままだ。
いつの間にかルルヴァルの兵士たちは一人残らず拘束されている。
しかし、居ると思われた宰相が見つかっていないからだ。
まだ、回廊を制しただけで、北側の塔は手を付けていない。
お父様からはもう現場から離れるように言われたが、離れた場所から戦況を見守る事を希望した。
「いいぞ、ルイーズ嬢ちゃんは俺の直属だからな。俺のそばから離れない事が条件だ」
大公様からお許しが出た。
そうでした。こんなドレスを着ているが、今日から私も騎士団の所属なのでした。
そうか。私が戦いにしゃしゃり出た事は、あながち間違いでは無かったという事だ。
私は味方の被害が最小限に抑えられたことにホクホクして、周囲の様子を見渡した。
北側の塔を囲う騎士団たち。
回廊ではガスパール卿をはじめとした親衛隊が現状を報告している。
一歩引いた、目的である北塔とは反対側に陣取った騎士団。
その陣の中には大公様と大公様の近衛兵と私。
陣の最奥には王太子たち。
後宮の美しい宮殿だが、見た目は戦場だ。
私は今後、この中で生きていくのだな。
しみじみと環境を実感している時、いきなり『地獄耳』が発動した。
―――ぺたぺた。
「!?」
私はびっくりして辺りを見渡す。
何の音!?
扉に駆け寄り、向こう側の回廊の惨状を見回す。
北塔の方角から音がする。
―――ぺたぺた。
ええ、何!?
気持ち悪い音!?
キョロキョロしていると回廊内で作業しているガスパール卿と目が合う。
物凄くいぶかし気な表情をされてしまった。
その渋いお顔のまま私の所まで早歩きでやってくる。
「何事ですか?」
突然強く聞かれて驚いた。
大公様や騎士たちもびっくりしているではないか。
「な、何でもない、です!」
私は言うが、ガスパール卿は強かった。
「何でもない顔ではありませんね。もう騙されませんよ! 何をお考えですか!?」
別に昨日だって騙した訳じゃないじゃない。
色々と機密事項を背負っているのよ。
と言い訳したかったが、気持ちの悪い音が徐々に近づいて来る感覚に、私はゾゾっと背筋を凍らせてガスパール卿にしがみついた。
「し、下です~!!」
ガスパール卿の首にしがみついて、私は両足を浮かしてバタバタさせる。
床が気持ち悪い!
床に足を置きたくない程に!
「今度は何事だ! ルイーズ!!」
大公様が部下を従えて直々やってくる。
その奥では王太子が近衛や付き人に引き留められている。
「床に何かいます~。ひー! 気持ち悪いよ~!!」
私は本気で悪寒が走り、床を指さした。
「この辺、この辺です!」
本気で気持ち悪かったのだ。
状況から逃れたかったのだ。
だから床が抜けたのは私のせいではないと言いたい。
「ギャー!!」
ビシィッ、と床石に亀裂が入り、その上にいた大公様や数人の騎士たちと共に、私とガスパール卿は落下した。
ガルガン、いい加減にしろ。
あんたの能力強すぎる。
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