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46 リリア妃殿下との面会
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「では、リリア妃に会いに行きましょうか」
わたしはソファーから立ち上がる。
「どうやって会おうか。そういえば、従者たちは何で入って来ないんだ?」
ヴァレリー王太子はドアを眺める。
ドアの外では人が動く気配がする。それはここへ案内してくれた衛兵と、従者たちの気配だろう。
「どうした?」
カチャッっとドアを開けてヴァレリー王太子が廊下に顔を出すと、従者たちは皆飛び跳ねて驚き、直立した。
私も王太子に続いて廊下に出るが、皆、妙に赤らんだお顔で、目を合わせない。
やっぱり、誤解されてるー!
きっと気を利かせた衛兵が、部屋に入ろうとする従者たちを引き留めていたんだ。
そう思うと私も顔が赤くなる。
違う、誤解だ、何にもないと、聞かれてもいないのに言うのも嫌だし、私は侍女のアニーを見つけ出してこっそりそちらへ逃げた。
「お嬢様……」
嫌だアニー、怒ってる。
「お嬢様。未婚の令嬢が男性と部屋で二人きりなど許されません。何があったか言いなさーい!」
と、口に出してくれればいいのに、無言でジトッと見て来るので、私はブンブン首を振って誤解だと主張する。
「り、リリア妃殿下に面会に行こうかしらってお話ししてただけです!」
つい、口調が強くなってしまったが、婚約破棄に続いて褒められない噂がたってしまっては、両親に申し訳ないので仕方が無く恥を恥を忍んで否定させてもらった。
「ええ! 言っちゃったよ!」
テオドリック様は慌てている。
あ、リリア妃に会いに行くのは秘密の作戦でしたっけ?
でも、兵士たちの誤解に気付かず呑気にしている王太子が悪い。
秒で秘密の作戦失敗しました。
「わかりました。では手続きをお願いします」
と話を進めたのは案内してくれた衛兵だ。
「え?」
私は渡された書類と衛兵を交互に見る。
「ご令嬢の直筆で日付、時間、サインをお願いします。面会室には令嬢お一人と、担当の衛兵二人と書記官が入室します。お話された内容は全て記録されますのでご了承ください。収容者にも面会拒否権はありますので、そちらもご理解の程お願いいたします」
流れるような衛兵の説明に乗って、いつの間にか面会申請が終わっていた。
「え? 私面会していいの?」
衛兵に尋ねる。
「はい、面会不可リストに、ルイーズご令嬢の名前はありませんから。でもヴァレリー王太子殿下は貴族裁判の判決権をお持ちですので、牢獄収容者とは一切面会出来ません」
なるほど~。
「じゃあ、ついでにバルリ候とも面会申請をお願いします」
私は衛兵ににっこりお願いした。
「あ、バルリ候についてはルイーズご令嬢も面会不可リストにお名前が載ってます。面会できません」
私はヴァレリー王太子と顔を見合わせた。
うん。バルリ候に関しては秘密の計画を遂行する必要がありそうだ。
そうこうしているうちに「リリア第二王妃がお会いになるそうです」と連絡が来て、びっくりしている間に私はリリア妃の元へ向かう事になってしまった。
「え~と、何を話したらいいのかしら?」
面会室のドアの前で立ち止まり、一緒に入室する方に話しかけると、それまで無表情だった顔がハッとした。
「ええと、えーと、何でもいのです。」
「尋問材料も尽きてしまったので、少しでも第二王妃のお気持ちが解れば、また新たな切り口が生まれると思います」
慌てて言い募る衛兵たち。
お気持ちを知るだけでもいいのね。
「じゃあ、やってみますね」
言ってドアを開けるように示すと、衛兵二人と書記官の顔が期待に満ちた。
第二王妃は怒ったり苛立ったり、感情の振り幅が大きい人だった。
そして小柄な見た目と違って大雑把だ。
武の国ルルヴァル王国の公女だな、といつも思っていた。
だがそのリリア妃は物静かに落ち着いて面会室へ入室し、大きなテーブルを挟んだ私の向かい側に座る。
グレーの落ち着いた品のあるドレスに、牢獄の中でもそれなりの待遇を受けていることが解った。
しばらく沈黙が続き、意地を張っても仕方が無いので、私から話を切り出した。
「テオドリック様は釈放され、宮廷内謹慎になったそうです」
「知っておる」
それはそうか。
「エルミナ様との婚約は無くなったそうです」
「知っておる」
それもそうだ。
私の知っていることなど、既に尋問官が教えているはずだ
私はテーブルの右側に控えた衛兵と左側の小さな机に座って筆を走らせている書記官を順に見た。
その表情は「しゃべった~」という所だろう。
さてもう、話題が無い。
気持ちで攻めていくか。
「お顔、お綺麗に治られて良かったです」
ピクリとリリア妃の頬が引きつった。
自分の忘れて欲しい姿を思い出されて不快なのだろう。
解るわ~。
私はヴァレリー王太子を思い浮かべる。
「今になって思えば、私は未来、義母になるはずだったリリア妃殿下に無関心過ぎましたね」
私が慈悲深い笑顔を意識すると、リリア妃の頬は更に激しく引き攣った。
わたしはソファーから立ち上がる。
「どうやって会おうか。そういえば、従者たちは何で入って来ないんだ?」
ヴァレリー王太子はドアを眺める。
ドアの外では人が動く気配がする。それはここへ案内してくれた衛兵と、従者たちの気配だろう。
「どうした?」
カチャッっとドアを開けてヴァレリー王太子が廊下に顔を出すと、従者たちは皆飛び跳ねて驚き、直立した。
私も王太子に続いて廊下に出るが、皆、妙に赤らんだお顔で、目を合わせない。
やっぱり、誤解されてるー!
きっと気を利かせた衛兵が、部屋に入ろうとする従者たちを引き留めていたんだ。
そう思うと私も顔が赤くなる。
違う、誤解だ、何にもないと、聞かれてもいないのに言うのも嫌だし、私は侍女のアニーを見つけ出してこっそりそちらへ逃げた。
「お嬢様……」
嫌だアニー、怒ってる。
「お嬢様。未婚の令嬢が男性と部屋で二人きりなど許されません。何があったか言いなさーい!」
と、口に出してくれればいいのに、無言でジトッと見て来るので、私はブンブン首を振って誤解だと主張する。
「り、リリア妃殿下に面会に行こうかしらってお話ししてただけです!」
つい、口調が強くなってしまったが、婚約破棄に続いて褒められない噂がたってしまっては、両親に申し訳ないので仕方が無く恥を恥を忍んで否定させてもらった。
「ええ! 言っちゃったよ!」
テオドリック様は慌てている。
あ、リリア妃に会いに行くのは秘密の作戦でしたっけ?
でも、兵士たちの誤解に気付かず呑気にしている王太子が悪い。
秒で秘密の作戦失敗しました。
「わかりました。では手続きをお願いします」
と話を進めたのは案内してくれた衛兵だ。
「え?」
私は渡された書類と衛兵を交互に見る。
「ご令嬢の直筆で日付、時間、サインをお願いします。面会室には令嬢お一人と、担当の衛兵二人と書記官が入室します。お話された内容は全て記録されますのでご了承ください。収容者にも面会拒否権はありますので、そちらもご理解の程お願いいたします」
流れるような衛兵の説明に乗って、いつの間にか面会申請が終わっていた。
「え? 私面会していいの?」
衛兵に尋ねる。
「はい、面会不可リストに、ルイーズご令嬢の名前はありませんから。でもヴァレリー王太子殿下は貴族裁判の判決権をお持ちですので、牢獄収容者とは一切面会出来ません」
なるほど~。
「じゃあ、ついでにバルリ候とも面会申請をお願いします」
私は衛兵ににっこりお願いした。
「あ、バルリ候についてはルイーズご令嬢も面会不可リストにお名前が載ってます。面会できません」
私はヴァレリー王太子と顔を見合わせた。
うん。バルリ候に関しては秘密の計画を遂行する必要がありそうだ。
そうこうしているうちに「リリア第二王妃がお会いになるそうです」と連絡が来て、びっくりしている間に私はリリア妃の元へ向かう事になってしまった。
「え~と、何を話したらいいのかしら?」
面会室のドアの前で立ち止まり、一緒に入室する方に話しかけると、それまで無表情だった顔がハッとした。
「ええと、えーと、何でもいのです。」
「尋問材料も尽きてしまったので、少しでも第二王妃のお気持ちが解れば、また新たな切り口が生まれると思います」
慌てて言い募る衛兵たち。
お気持ちを知るだけでもいいのね。
「じゃあ、やってみますね」
言ってドアを開けるように示すと、衛兵二人と書記官の顔が期待に満ちた。
第二王妃は怒ったり苛立ったり、感情の振り幅が大きい人だった。
そして小柄な見た目と違って大雑把だ。
武の国ルルヴァル王国の公女だな、といつも思っていた。
だがそのリリア妃は物静かに落ち着いて面会室へ入室し、大きなテーブルを挟んだ私の向かい側に座る。
グレーの落ち着いた品のあるドレスに、牢獄の中でもそれなりの待遇を受けていることが解った。
しばらく沈黙が続き、意地を張っても仕方が無いので、私から話を切り出した。
「テオドリック様は釈放され、宮廷内謹慎になったそうです」
「知っておる」
それはそうか。
「エルミナ様との婚約は無くなったそうです」
「知っておる」
それもそうだ。
私の知っていることなど、既に尋問官が教えているはずだ
私はテーブルの右側に控えた衛兵と左側の小さな机に座って筆を走らせている書記官を順に見た。
その表情は「しゃべった~」という所だろう。
さてもう、話題が無い。
気持ちで攻めていくか。
「お顔、お綺麗に治られて良かったです」
ピクリとリリア妃の頬が引きつった。
自分の忘れて欲しい姿を思い出されて不快なのだろう。
解るわ~。
私はヴァレリー王太子を思い浮かべる。
「今になって思えば、私は未来、義母になるはずだったリリア妃殿下に無関心過ぎましたね」
私が慈悲深い笑顔を意識すると、リリア妃の頬は更に激しく引き攣った。
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