フレキ＝ゲー編ガップ民話集

愛する者の愛し方を間違えた御使いの話

鬼避けのまじない。

　さて。
　人間が立てた地上の神殿の年を取った神官は、礼拝に来た人々にこんな話をしました。

「もし自分達の子供が、地の底で生まれた者のその子供と取り替えられるのが嫌であるなら、子供の部屋には鏡を置き、燃える火の色と形をした飾り物をゆりかごの側に吊しなさい。
　地の底で生まれた者たちは、それを恐れて近寄らないだろうから。

　そしてもし、自分たちの子供が自分たちと似ていなくて、もしかしたら地の底で生まれた者のその子供と取り替えられたのだと思ったなら、その子供を慈いつくしんで育てなさい。
　あなた方の子供は地の底で生まれた親から愛されて育っているのです。

　あなた方があなた方の腕の中の子供を疎うとめば、別の所で別の親の腕の中の子供が疎うとまれるのです」


　その神殿で修業を勤め上げた、親に似ていなかったあの子供は、長じて大神官となり、人々の崇敬を集めたと言います。

　他方、地の底の洞窟の奥で育てられた、親に似ていなかったあの子供は、長じて彼の者たちの長となり、彼の者たちの世界を治めたと言われています。


　それから、天の神殿の床をすり抜けて、人々の大地を突き抜けて、地の底の洞穴の奥に封じられた彼の者ですが――。
　今でも地の底の洞穴の奥で、地の底の人々からも地上の人々からも天上の兄弟達からも姿を隠・さ・れ・て・いるのだと言う者がおりますが、それが本当のことなのかどうかは、誰にも判りません。