フレキ=ゲー編ガップ民話集

神光寺かをり

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この世で一番最初の娘たちと、その婿たちの話。

長姉フッラの帰還。

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 夜は更けました。

 良い土の詰まった七つの袋のうちの二つと食べ物の袋とを持ったフッラと、良い土の詰まった七つの袋のうちの五つと飲み物の袋を持った青い服のペネムエルは、ゆっくり進み時々休みながら荒れ地を歩いておりました。
 フッラは自分が生まれてから今日までに家族に起きたことと、その間に自分が見知ったことをペネムエルに話しました。御使いは彼女の物覚えの良さをたいそう喜んで、言いました。

「あなたはそのことを皆に伝えるするべきです。そうすればあなたの子供たちがあなたの叡智を受け継いで、その家族たちのために働くことができるでしょう」

 フッラは答えて言いました。

「確かに私の知っていることを私だけが知っているようにしておくのは、私の家族のためにも良くないことだと判っています。ですが、私が私の知っていることを他の者に伝える為にできることは、その場その時に喋る事だけで、他に術を知りません」

 フッラは残念そうに息を吐きました。するとペネムエルはにこりと笑いました。

「私は荒れ野を歩いている間、ずっとあなたに何を贈るべきかを考えていました」

 突然に言われましたので、フッラは驚いて尋ねました。

「あなたは私に何を贈ろうというのでしょうか? 私は足りるだけの物を持っています。食べるための肉やパン、飲むための乳、着るための服、歩くための杖、休むための家、心癒すための詩」

 指を折りながらフッラは数えました。

「あなたの家族にいと尊き方の祝福を。そしえあなたに生きるための知恵を与えた尊き方を褒め称えん」

 ペネムエルが大きな声で言いました。

 すると丁度その時、東の地平の果てから、まぶしい太陽が昇り始めました。

 フッラのはっきりとは見えない目であっても、朝日の中に洞のある大きな岩屋が見えました。
 長い時間歩いた果てに、二人はフッラの家族の住む土地へと、ようよう戻ってきたのです。

 狩りの道具と漁の道具のある小屋が見えました。
 炊煙を吹き出す煙突が見えました。
 染め上げられた布がたなびくだてやぐらが見えました。
 うずたかく積み上げられた干し草の山が見えました。
 たいそう立派な新しい家が見えました。
 キラキラ輝く袖を打ち振る人影が見えました。
 そうして、広い農園で農夫が七人働くのが見えました。

 フッラは目頭と目尻を擦り、言いました。

「畑にいるのは私の父でしょう。夜が明ける前から働いて、夜が更けるまで働く人です。他の六人の影は、今まで一度も見たことがない人々ですが……おそらくは貴方の兄弟ではありませんか?」

 青い服のペネムエルは一度頷きましたが、その後すぐに小首を傾げました。

「確かに彼らは私の兄たちでしょう。しかし、少し違う気もします。私の知っている私の兄弟たちには肉の体がないはずであるのに、あそこにいる兄弟たちは、まるで肉の体を持っている人のように働いている」

 フッラとペネムエルは語りながら歩きました。
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