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この世で一番最初の娘たちと、その婿たちの話。
長幼の順
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ペネムエルは続けて言いました。
「天の最も高きところにおられる最も尊き御方が、この世で最初の人をお造りになられたとき、まず大地の御使を呼び、命ぜられました。
『肥えた土を採れ。逞しき体となるように』
大地の御使いは楽園の中心から肥えた土を掘り出し、御前に運びました。
それから海の御使いを呼び、命ぜられました。
『澄んだ水を採れ。健勝な体となるように』
海の御使いは海の底から澄んだ海水を汲み、御前に運びました。
それから炎の御使いを呼び、命ぜられました。
『清い炎を採れ。強き体となるように』
炎の御使いは山の頂から清い炎を採り、御前に運びました。
それから風の御使いを呼び、命ぜられました。
『涼やかな風を採れ。柔軟な体となるように』
風の御使いは谷川から涼やかな風を採り、御前に運びました。
いと尊き御方は、土を集めて人の形を作り、水を加えて整え、炎で乾かし固め、風を吹き込まれました。土は肉となり、水は血となり、炎は熱となり、風は息となりました。
それらは眠る人となって、御前に横たえられました。
最後に最も尊き御方は、空の御使いに命じて言われました。
『古き命の輝きを降らせよ。相応しき命が宿るように』
空の御使いは夜の天蓋を揺すり、小さな星を雨と降らせました。
万の星は燃え尽きて消え、千の星は海に落ちて消え、百の星は山に落ちて消え、十の星は楽園の地面に落ちて消え、一つの星が眠る人の胸に落ちました。
眠る人の胸の中で、星は消えることなく光輝き続けました。
それ故、眠る人は目醒めた人となったのです。
偉大な兄姉よ。あなたは土の人であり、あなた方の娘たちもまた、大地から造られた肉の体を持っています。
大地に生きる大地の兄姉よ。あなた方があなた方に相応しいように、肉の体を持つ者の夫には肉の体を持つ者が相応しく、肉の体を持つ者の妻には肉の体を持つ者が相応しいのです。
しかし、あなた方より後に来た私の兄弟は、土から生まれた肉の身体を持っていません。それは、あなた方の娘たちに相応しい体を持っていないということです。
偉大な兄姉よ、あなたより後に地上に来た私たちは、燃え尽きた星と同じ古き命そのものです。あなた方の目に見えていて、あなた方が思っているものと同じ体は、持っていません。古い命は肉の目に見える物ではないからです」
この世で最初のお父さんは頷いて言いました。
「智慧のある兄弟よ。誠にあなたの言うとうりでしょう。しかるに私の娘とあなたとが手分けをして運んできたのは、私の娘の婿たちの血肉たる土でありましょう。
さあそれを彼等に手渡してください。そうすれば、彼等は私の娘たちの正しい婚約者となるでしょう」
しかしペネムエルは荷を下ろしませんでした。荷主であるペネムエルが荷物を担ったままですので、フッラも荷を下ろすことができませんでした。
ペネムエルが荷を下ろさなかったのは、この世で最初のお父さんが「婚約者」としか言わなかったからです。
ペネムエルは彼の偉大な兄弟に問いました。
「彼等が肉の体を持つ人となっても、彼等は娘たちの夫にはなれないというのですか?」
この世界で一番最初のお父さんは、頷いて言いました。
「私は彼等に言ったのです。上の娘が嫁ぐ前に下の娘が嫁いでは物事の順序が逆になるから、一番年上の娘によい夫が現れるまでは、彼等を年下の娘たちの夫にすることはできないと」
青い服のペネムエルは、この世で最初のお父さんが言うことは尤も正しいと思いました。物事の順序は正さないといけないとも思いました。
さてこのとき、この世で最初のお父さんの話を聞いて、この世で最初に生まれた子供のフッラは大変悲しくなりました。自分の夫となってくれる者がいなければ、妹たちは結婚できないと知ったからです。
フッラは、
『この世に私の夫となってくれる人はいるのだろうか』
と考えました。
でもどれだけ考えても答えは「いいえ」にしかなりませんでした。
もとよりこの世には、この世の娘たち一人に一人の花婿をあてがうに足りるだけの人数の男ががいないのですからね。
フッラはよく考えた上にもっと考えました。そうして思いついたことを両親に言いました。
「物の順序も大切ですが、それのために求婚してきた人たちが彼女らから離れていってしまってはなりません。あの人たち以外に、この世には私の妹たちの花婿となれる人は一人としていないのですから」
フッラは膝をついて深く頭を下げました。
この世で最初のお父さんと、この世で最初のお母さんは、互いに顔を見合わせて考え込みました。
物の順序のことは全くその通りですし、フッラの言い分も全くその通りだからです。
「天の最も高きところにおられる最も尊き御方が、この世で最初の人をお造りになられたとき、まず大地の御使を呼び、命ぜられました。
『肥えた土を採れ。逞しき体となるように』
大地の御使いは楽園の中心から肥えた土を掘り出し、御前に運びました。
それから海の御使いを呼び、命ぜられました。
『澄んだ水を採れ。健勝な体となるように』
海の御使いは海の底から澄んだ海水を汲み、御前に運びました。
それから炎の御使いを呼び、命ぜられました。
『清い炎を採れ。強き体となるように』
炎の御使いは山の頂から清い炎を採り、御前に運びました。
それから風の御使いを呼び、命ぜられました。
『涼やかな風を採れ。柔軟な体となるように』
風の御使いは谷川から涼やかな風を採り、御前に運びました。
いと尊き御方は、土を集めて人の形を作り、水を加えて整え、炎で乾かし固め、風を吹き込まれました。土は肉となり、水は血となり、炎は熱となり、風は息となりました。
それらは眠る人となって、御前に横たえられました。
最後に最も尊き御方は、空の御使いに命じて言われました。
『古き命の輝きを降らせよ。相応しき命が宿るように』
空の御使いは夜の天蓋を揺すり、小さな星を雨と降らせました。
万の星は燃え尽きて消え、千の星は海に落ちて消え、百の星は山に落ちて消え、十の星は楽園の地面に落ちて消え、一つの星が眠る人の胸に落ちました。
眠る人の胸の中で、星は消えることなく光輝き続けました。
それ故、眠る人は目醒めた人となったのです。
偉大な兄姉よ。あなたは土の人であり、あなた方の娘たちもまた、大地から造られた肉の体を持っています。
大地に生きる大地の兄姉よ。あなた方があなた方に相応しいように、肉の体を持つ者の夫には肉の体を持つ者が相応しく、肉の体を持つ者の妻には肉の体を持つ者が相応しいのです。
しかし、あなた方より後に来た私の兄弟は、土から生まれた肉の身体を持っていません。それは、あなた方の娘たちに相応しい体を持っていないということです。
偉大な兄姉よ、あなたより後に地上に来た私たちは、燃え尽きた星と同じ古き命そのものです。あなた方の目に見えていて、あなた方が思っているものと同じ体は、持っていません。古い命は肉の目に見える物ではないからです」
この世で最初のお父さんは頷いて言いました。
「智慧のある兄弟よ。誠にあなたの言うとうりでしょう。しかるに私の娘とあなたとが手分けをして運んできたのは、私の娘の婿たちの血肉たる土でありましょう。
さあそれを彼等に手渡してください。そうすれば、彼等は私の娘たちの正しい婚約者となるでしょう」
しかしペネムエルは荷を下ろしませんでした。荷主であるペネムエルが荷物を担ったままですので、フッラも荷を下ろすことができませんでした。
ペネムエルが荷を下ろさなかったのは、この世で最初のお父さんが「婚約者」としか言わなかったからです。
ペネムエルは彼の偉大な兄弟に問いました。
「彼等が肉の体を持つ人となっても、彼等は娘たちの夫にはなれないというのですか?」
この世界で一番最初のお父さんは、頷いて言いました。
「私は彼等に言ったのです。上の娘が嫁ぐ前に下の娘が嫁いでは物事の順序が逆になるから、一番年上の娘によい夫が現れるまでは、彼等を年下の娘たちの夫にすることはできないと」
青い服のペネムエルは、この世で最初のお父さんが言うことは尤も正しいと思いました。物事の順序は正さないといけないとも思いました。
さてこのとき、この世で最初のお父さんの話を聞いて、この世で最初に生まれた子供のフッラは大変悲しくなりました。自分の夫となってくれる者がいなければ、妹たちは結婚できないと知ったからです。
フッラは、
『この世に私の夫となってくれる人はいるのだろうか』
と考えました。
でもどれだけ考えても答えは「いいえ」にしかなりませんでした。
もとよりこの世には、この世の娘たち一人に一人の花婿をあてがうに足りるだけの人数の男ががいないのですからね。
フッラはよく考えた上にもっと考えました。そうして思いついたことを両親に言いました。
「物の順序も大切ですが、それのために求婚してきた人たちが彼女らから離れていってしまってはなりません。あの人たち以外に、この世には私の妹たちの花婿となれる人は一人としていないのですから」
フッラは膝をついて深く頭を下げました。
この世で最初のお父さんと、この世で最初のお母さんは、互いに顔を見合わせて考え込みました。
物の順序のことは全くその通りですし、フッラの言い分も全くその通りだからです。
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