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二人の王子様と一人のお姫様
王子様とお姫様
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それからどれくらい経った頃でしょうか。
キルハの国には、王子様が一人とお姫様が一人おられました。
お二人はとてもよく似ていました。
内から輝くような髪の色も、澄み渡る湖のような瞳の色も同じでした。
ふっくらとした頬も、つややかな唇もそっくりです。
鼻の高さも、背の丈も、見分けが付きません。
まるで、双子か鏡のように瓜二つだったのです。
キルハの王様とお妃様との間に生まれたお子と、ウーファの王様とお妃様との間に生まれたお子は、キルハの尾城で、まるで兄妹のように育てられました。
仲の良い従姉弟同士のお二人は、仲のよい恋人同士でもありました。
お二人のお名前は、フレイ様とフレイア様とおっしゃいました。
あるとき、
「ロウの国のゲオルグ王子という方を、フレイはご存じ?」
朱鷺色で染め上げられた絹地の、肩のところがふくらんだドレスに身を包んだフレイア様が、ちょっと困った顔で従弟に問いかけました。
「ああ、あのバカ王子」
と、澄んだ秋の空の色で染められたシャツを着たフレイ様は、答えてお嗤いになりました。
「ロウの王子なら、先般この城で開かれた舞踏会に来ていたじゃないか。随分と君に色目を使っていたよ。気付かなかったかい?」
「気付くわけがないわ。私はずっとフレイを見ていたもの」
フレイア様は嫣然と笑われましたが、フレイ様は少し怒ったような顔をなさいました。
「僕は気になって仕方がなかった。腹が立ったんだ。なにしろ、あの方はあまり評判のよろしくない王子様でね。なんでわざわざこのキルハの舞踏会に来ているのかと」
「私、理由を存じ上げておりましてよ」
フレイア様の言葉にフレイ様は片方の眉を持ち上げました。フレイア様は笑顔を崩さずに、お言葉をお続けになりました。
「とんでもないことをお父様に言うためですわよ。……『わたくしを、陛下の姫君の婿にしてください』ですって」
フレイア様は笑ったまま、でも大きく冷たいため息をお吐きになりました。
フレイ様は小さくうなづいて、
「その話を今朝、僕も聞いた。『姫には婚約者がいる』と言われても聞く耳を持たず、『その者よりわたくしの方が勝っている』と申されたそうな」
お腹を抱えて大仰にお笑いになりました。
ですが、すぐに笑顔を隠しになって、
「決闘がご所望だそうだよ。いや、御前試合って言った方が正しいかな。『王様に、いかにわたくしが強くたくましい男であるかということを、お見せいたしましょう』などと抜かしたらしい」
「まあ、お可愛そうに」
フレイア様は、にっこりと笑いました。
ゲオルグ王子がどれほどの腕前か、フレイア様はご存じないのですが、彼が勝つことなど無いことは解って入らしたのです。
キルハの国には、王子様が一人とお姫様が一人おられました。
お二人はとてもよく似ていました。
内から輝くような髪の色も、澄み渡る湖のような瞳の色も同じでした。
ふっくらとした頬も、つややかな唇もそっくりです。
鼻の高さも、背の丈も、見分けが付きません。
まるで、双子か鏡のように瓜二つだったのです。
キルハの王様とお妃様との間に生まれたお子と、ウーファの王様とお妃様との間に生まれたお子は、キルハの尾城で、まるで兄妹のように育てられました。
仲の良い従姉弟同士のお二人は、仲のよい恋人同士でもありました。
お二人のお名前は、フレイ様とフレイア様とおっしゃいました。
あるとき、
「ロウの国のゲオルグ王子という方を、フレイはご存じ?」
朱鷺色で染め上げられた絹地の、肩のところがふくらんだドレスに身を包んだフレイア様が、ちょっと困った顔で従弟に問いかけました。
「ああ、あのバカ王子」
と、澄んだ秋の空の色で染められたシャツを着たフレイ様は、答えてお嗤いになりました。
「ロウの王子なら、先般この城で開かれた舞踏会に来ていたじゃないか。随分と君に色目を使っていたよ。気付かなかったかい?」
「気付くわけがないわ。私はずっとフレイを見ていたもの」
フレイア様は嫣然と笑われましたが、フレイ様は少し怒ったような顔をなさいました。
「僕は気になって仕方がなかった。腹が立ったんだ。なにしろ、あの方はあまり評判のよろしくない王子様でね。なんでわざわざこのキルハの舞踏会に来ているのかと」
「私、理由を存じ上げておりましてよ」
フレイア様の言葉にフレイ様は片方の眉を持ち上げました。フレイア様は笑顔を崩さずに、お言葉をお続けになりました。
「とんでもないことをお父様に言うためですわよ。……『わたくしを、陛下の姫君の婿にしてください』ですって」
フレイア様は笑ったまま、でも大きく冷たいため息をお吐きになりました。
フレイ様は小さくうなづいて、
「その話を今朝、僕も聞いた。『姫には婚約者がいる』と言われても聞く耳を持たず、『その者よりわたくしの方が勝っている』と申されたそうな」
お腹を抱えて大仰にお笑いになりました。
ですが、すぐに笑顔を隠しになって、
「決闘がご所望だそうだよ。いや、御前試合って言った方が正しいかな。『王様に、いかにわたくしが強くたくましい男であるかということを、お見せいたしましょう』などと抜かしたらしい」
「まあ、お可愛そうに」
フレイア様は、にっこりと笑いました。
ゲオルグ王子がどれほどの腕前か、フレイア様はご存じないのですが、彼が勝つことなど無いことは解って入らしたのです。
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