フレキ=ゲー編ガップ民話集

神光寺かをり

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地上に巨人が生まれて、そのあと絶えた訳

惜しむべき物と惜しんでは成らぬ物の違い

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 雷鳴と雨音と、それから得体の知れない地鳴りの音に混じって、ミーミルは人の叫び声を聞きました。
 彼は振り返らずに、後ろにいるであろう誰かに声を掛けました。

「兄弟たち、兄弟たち! 高みへ走れ、振り返るな、命を惜しめ、物を惜しむな!」

 すると、あとから来た兄弟たちは、彼を追い越して行きました。彼等はミーミルよりも背が高かったので、ミーミルが進むのよりも早く走れたのです。
 ミーミルを追い越していったのは、マッハとガドレエルの子供たちでした。
 彼等の肩の上には、彼等の両親と、彼等の年若くて身体の小さい兄弟たちが負われていました。
 マッハとガドレエルの子らは走りながら言いました。

「小さな兄弟よ、我々は君の言葉を信じて、他の兄弟たちにも声を掛けてきた。恐らくあとから兄弟たちが来るだろう。どれほどの兄弟たちが救われるのかは解らないけれども」

「ありがとう兄弟たち。あなた方の上に祝福がりますように」

 ミーミルは大きな声で彼等の背中に呼びかけました。
 ミーミルは更に山を登りました。

 雷鳴と雨音と、それから得体の知れない地鳴りの音に混じって、ミーミルは人の叫び声を聞きました。
 彼は振り返らずに、後ろにいるであろう誰かに声を掛けました。

「兄弟たち、兄弟たち! 高みへ走れ、振り返るな、命を惜しめ、物を惜しむな!」

 すると、あとから来た兄弟たちは、追い越して行きました。彼等はミーミルよりも背が高かったので、ミーミルが進むのよりも早く走れたのです。
 ミーミルを追い越していったのは、ジョカとニスロクエルの子供たちでした。
 彼等の肩の上には、彼等の両親と、彼等の年若くて身体の小さい兄弟たちが負われていました。
 ジョカとニスロクエルの子らは走りながら言いました。

「小さな兄弟よ、我々は君の言葉を信じて、他の兄弟たちにも声を掛けてきた。恐らくあとから兄弟たちが来るだろう。どれほどの兄弟たちが救われるのかは解らないけれども」

「ありがとう兄弟たち。あなた方の上に祝福がりますように」

 ミーミルは大きな声で彼等の背中に呼びかけました。
 ミーミルは更に山を登りました。

 雷鳴と雨音と、それから得体の知れない地鳴りの音に混じって、ミーミルは人の叫び声を聞きました。
 彼は振り返らずに、後ろにいるであろう誰かに声を掛けました。

「兄弟たち、兄弟たち! 高みへ走れ、振り返るな、命を惜しめ、物を惜しむな!」

 すると、あとから来た兄弟たちは、ゆっくりと彼を追い越して行きました。兄弟たちはミーミルよりも背が高かったので、例え疲れ果てた足であっても、ミーミルが進むのよりもすこし早く進むことができたのです。
 ミーミルを追い越していったのは、ポイベとエクサエルの子供の、エロワとアラーニエでした。
 彼等の肩の上には、彼等の両親と、彼等の年若くて身体の小さい兄弟たちが負われていました。
 ポイベとエクサエルの身体の小さい子供たちは、兄や姉の身体にしがみつきながら、同時にたくさんの美しい布や飾り物を抱えていました。美しい布は雨水を冷たく重くなっておりました。
 エロワとアラーニエは、彼等の兄弟たちが持つ水に濡れた布のために、彼等が負える以上の重さを背に乗せなければなりませんでした。
 ミーミルは小さな兄弟たちに言いました。

「あなた方とあなたの兄や姉と、それからあなた方の両親の命と、あなた方の持っている物と、どちらが尊いのか!?」

 小さな兄弟たちは互いの顔を見合わせますと、

「私たちの持っている物と、私たちの家族の命とでは、家族の命の方が遙かに尊い」

 と言って、手の中の荷物を水の中に捨てました。
 エロワとアラーニエは歩きながら言いました。

「小さな兄弟よ、どうか彼等を叱らないでくれ。彼等は家を出るときにはそれが必要だと思っていたのだ」

 ミーミルは、すっかり疲れているエロワとアラーニエのことが心配でしたが、今の自分には彼等の荷を負うだけの力がのこっておりませんでしたので、仕方が無く、

「気をつけて兄弟たち。あなた方の上に祝福がりますように」

 大きな声で彼等の背中に呼びかけるだけにしました。
 ミーミルは更に山を登りました。

 雷鳴と雨音と、それから得体の知れない地鳴りの音に混じって、ミーミルはまた別な人の叫び声を聞きました。
 彼は振り返らずに、後ろにいるであろう誰かに声を掛けました。

「兄弟たち、兄弟たち! 高みへ走れ、振り返るな、命を惜しめ、物を惜しむな!」

 すると、あとから来た兄弟たちは、のろのろと彼を追い越して行きました。兄弟たちはミーミルよりも背が高かったので、例え疲れ果てた足であっても、ミーミルが進むのよりもすこし早く進むことができたのです。
 ミーミルを追い越していったのは、ディーヴィとコカバイエルの子供の、ディヤウスとアイナエルでした。 彼等の肩の上には、彼等の両親と、彼等の年若くて身体の小さい兄弟たちが負われていました。
 ディーヴィとコカバイエルの身体の小さい子供たちは、兄や姉の身体にしがみつきながら、同時にたくさんの巻物や機械を抱えていました。巻物は雨水を冷たく重くなっておりましたし、機械はとても複雑な形をしておりました。そんなものを抱え込んでいる小さな兄弟たちは、今にもバランスを崩して荷物もろとも水の中へ落ちてしまいそうでした。
 それに、ディヤウスとアイナエルは、彼等の兄弟たちが持つ水に濡れた皮や木や金属のために、彼等が負える以上の重さの釣り合いが悪いものを背に乗せなければなりませんでした。
 ミーミルは小さな兄弟たちに言いました。

「あなた方とあなたの兄や姉と、それからあなた方の両親の命と、あなた方の持っている物と、どちらが尊いのか!?」

 小さな兄弟たちは互いの顔を見合わせますと、

「私たちの持っている物と、私たちの家族の命とでは、家族の命の方がずっと尊い」

 と言って、手の中の荷物を水の中に捨てました。彼等はしばらくの間、荷物が沈んでゆくのをとても惜しそうに眺めていました。
 ディヤウスとアイナエルは背中が少し軽くなりましたので、歩みを早めますと、振り返らずにミーミルに言いました。

「小さな兄弟よ、どうか彼等を叱らないでくれ。彼等は彼等の思う必要なを持ってきたのだ。それに私たちも最初はそれが必要だと思っていた」

 ミーミルはディヤウスとアイナエルのことが心配でしたが、今の自分には彼等の荷を負うだけの力がのこっておりませんでしたので、仕方が無く、

「気をつけて兄弟たち。あなた方の上に祝福がりますように」

 大きな声で彼等の背中に呼びかけるだけにしました。
 ミーミルは更に山を登りました。
 大分高く登ったというのに、水の高さはやはり彼の腰の下までありました。雨は降り続け、水は増え続けているのです。
 ミーミルはもう走ることができませんでしたが、しかし停まることもしませんでした。
 彼が止まれば、彼だけでなく、彼の背にいる祖父母も水に沈んでしまうからです。
 ミーミルはどんどん山を登ってゆきました。
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