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用間篇 第十三
用間篇1・スパイの活用法には五つくらいパターンあるっす。
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これ、オレが考えてることなんですけども。
大分前に……えっと、作戦篇ぐらいだったかな……その辺で一遍言ったと思うんですけど、確認のためにもう一度繰り返しちゃいますね。
十万人規模の大出兵を企画して、出征の総移動距離が四千粁ってことになると、国民が負担する費用とか王様のお財布から出るお金なんかをひっくるめて、一日当りの費用が大体千金ぐらい、もう平気でジャブジャブ消費されてっちゃいますよね。
そういう大イベントを企画しちゃうと、身内も部外者も、メチャクチャ大騒ぎになっちゃいますでしょ?
人が動いて、資材とか機材とかご飯とかをのっけた重たい車がガンガン走ちゃう。そうすると、道路なんかもうボロボロになっちゃいます。
現地でヘルプのスタッフさんを雇ったりしても、そういう人達は慣れない作業をさせられるもんだから、もうボロボロになってバッタンバッタン倒れちゃったりして、可哀想なことになっちゃう。
そのせいで、本業のご商売とか農業とかが回せなくなっちゃう家が七十万軒ぐらい出ちゃう。いやこれ可能性っていうよりは、割とリアルな数字ですから。
そうやって国同士が何年も何年もやり合って、勝ち負け結果が決まるのなんてほんの一瞬。たった一日の勝利の日を、どえらい無駄と犠牲を払ってドンパチ争う訳です。
なんか、こー、むなしいなぁ。なんて。
だ、か、ら。
始める前に情報を収集しましょう。そのために十分な費用を使いましょうって事なんですよ。
ボーナス百金とか、貴族の地位とか表彰状とか、そんな些細な出費をケチって、敵さんチームの情報を「調べない、知ろうとしない」なんて王様や将軍がいたとしたら、そいつらハッキリ言ってケチです。人の心も思いやりのかけらも無いドケチです。
だって一日一千金を一年三百六十五日ジャブジャブ使うことを考えたら、戦争をその一日で終らせる情報を持ってきてくれた人に百金差し上げちゃった方がずっとお得ですよ。実質タダみたいなもんじゃ無いですか。
そのタダみたいな百金で、国の皆の負担が綺麗さっぱりなくなるんですよー。
今お財布から出す百金は、見えないところで溶けてゆく「国民と王様の血と汗と涙の一千金」の供給をストップさせちゃうブレーキです。
財布の中のお金をケチって、お家の金庫をカラッポにしちゃだめですよね。
そんなケチ野郎には、人の上に立つ将軍の資格はありません。王様を助ける補佐役の資格だってありません。ましてや、勝利を手にするチャンピオンの資格なんか、あるわけがない。
ですから、聡明で目端の利く王様と、賢明で頭の冴えた将軍が軍隊を動かして、さらっと敵さんに勝っちゃって、他の盆暗な王様や脳足りんな将軍なんかよりも、頭二つ三つぐらい飛び出して大成功を治めちゃうっていう、当然の結果を呼ぶには当然の理由ってのがあっちゃうんですよ。
それはつまり、オレ達のイケてる王様や格好いい将軍さんが、物事を敵よりも「先に知る」ことができたから。
これ以外に理由なんてありゃしません。
物事を誰よりも先に知るったって、そりゃ「神様仏様ご先祖様のお告げを聞く」なんてことをやるンじゃないですよ。
かといって、経験とか前例とか、そーゆー「昔から判っていたことから類推できる」っていうことでも、これまたない。
ま、確かに、お空のお星様やらお月様やら運行を観察して、そこから自然の法則みたいなものを引っ張り出せば、大分正確な「天気予報」はできますよ。んで、お天気の情報は戦況を左右する重要なモノではありますけども。
けども、ですよ。
それは、戦争そのものが「この先どんな風に動いちゃうか」を先に知る為のモノじゃないわけですよね。
情報ってのは、生きた人間がもたらすものなんですよねー。
人間から真実を聞き出し、敵の情報を知ることができちゃう人ってのが、つまりは「先に知る者」ってやつです。
そのために必要なのが間者、ってコトなんですよ。
それで。
ここからは間者の運用・活用法には五つくらいパターンある、ってことを説明しちゃいますよ。
この五つってのをパパッと言っちゃいましょうか。
「因間」
「内間」
「反間」
「死間」
「生間」
この五つですけど、個々の詳細な解説はちょっと、後回しにしますね。
この五種類の間諜なんですけど、これどれか一つの項目ピックアップして任務を遂行させれば良い、ってもんじゃ無いんですねー。五種類の間者がそれぞれ並行して任務を遂行しないといいけない。
んで、その間者の行動は当然敵に知られちゃイケないし、場合によっちゃぁ味方、それも同じように任務に就いてる間者同士にも知られちゃイケない。
そういう完璧な隠密活動を統率できちゃうのが、「神紀」……つまり神統括って言うヤツです。
くぅー、カッコイイーっすよねー。こういうカッコイイ間者組織は国宝ですよ。絶対大切にしないといけませんよ。
じゃ、お待ちかね。この五種類の間諜のこと、それぞれ詳しく説明しましょっか。
一つめ、因間。
これは、現地の民間人さんをこっちの味方に付けちゃって、情報もらっちゃうパターン。敵国の中の人に協力者さんになってもらうんですね。
地元の人だから、住んでる場所の地形なんかはチョー詳しい。
九変篇とか地形篇とか九地篇とか、たしかそこいら辺でも説明しましたよね?
戦争するときには、地形についての知識がチョー大切なんだってこと。
勿論覚えてらっしゃいますよね?
戦場の地形とか、そこまでの道とかを知るために地元のガイドさんを雇えって話もしたでしょ? アレも一種の因間さんですよね。
それから、国の中の様子とかを調べるって場合でも、他所から入っていった見知らぬ外国人より、地元の人の方が色々単にイケるでしょ?
ただ、基本が素人なわけですからね……。難しい、複雑なお仕事は頼めないかも知れないですねぇ。でも、基本情報を仕入れるには便利だし、重要なポジションの人ですよ。
二つめ。内間。
これは、現地のお役人さんをこっちの味方に引き込んじゃって、内部で諜報工作活動してもらうってパターン。これも因間と同じな敵国内の協力者さんです。
地方のお役人さんて、戦中はお給料が減っちゃったりしてカツカツだったりするんで、正当な報酬を提示すると、わりとこっちのお手伝いをしてくれちゃうんですよ、これが。
こーゆーの、悪い言葉で言うと贈収賄、ぶっちゃければ涜職、なんですけどね。
中には、こっちのお誘いに乗ってくれない、すごく硬い人もいないワケじゃないですけど、そういう人には最初から接触しなきゃ良いだけのことですから。
これも因間さんと同じで地元の人だけど、全くの素人じゃないでしょ? お役人さんである分、国の内情とか王様やその周辺の人達のこととか、軍隊の内部の裏話みたいなことについては、一般庶民の人よりもずっと深い情報まで知ってたりする訳で。そういうところ、ちょっと期待できちゃったりしちゃうんですね。
三つめ。反間。
これ、運用にちょっとテクニックが要るヤツですよ。
敵さんチームから送り込まれてきた間者や、敵さんチームの因間や内間になっちゃった人達、こういう人達に近付いてって、逆に利用しちゃうパターンです。敵国出身の人もいるけど、自分の国の人の場合もあり、と。
間者が調べて外に流出させちゃう筈だった情報を、水際でガッチリ堰き止める。で、逆に敵さんチームの情報を頂戴しちゃおうって寸法ですよ。
捕まえた間者や外に情報を漏らしちゃいそうになってた国民の皆さんにに、お金的なアレとか、地位とか爵位とか、そういうものを気前よくプレゼントしちゃったり、身内の皆様を守って差し上げる約束をしちゃったり、そういう取引をしましょう。
取引に応じてくれないなら、叩いたり斬ったりつ濡らしたり焼いたり奪ったり脅したりなんかして……あ、これ一言で言うと拷問ですね……そうやって承諾を得るんですよ。
ともかく、ありとあらゆる手を尽くして、
「敵さんチームに協力するよりも、こっちチームについた方がお得だ」
って思い直して頂いちゃうんですよ。ンフフフ。
四つめ。死間。
字面は怖いですけど、人が死ぬって言う意味じゃないですから、その辺は安心して下さい。
死なせちゃうのは情報。つまり敵さんに偽情報を流しちゃうパターン。これは敵国から間者が入ってきてることを「利用」しちゃうモードですね。
ハイ、問題です。
敵さんチームの間諜が、味方チームに接触してきた、としましょうよ。んで、イロイロなやりとりがあって、敵の間諜が重要情報を持って帰る、と。
その重要情報が、まるっきり間違ってたら、どーなるでしょう、か?
答え。
敵さんチームはウソッコの情報を信用して、作戦立てて、自滅しちゃう。
もうちょっと詳しく、ですか? うーん、そーですねぇ。例えば……。
A国の間諜がB国の下級士官と接触して得た情報により、B国は兵力が少ないと判断。お気軽にB国に攻め込んだら、情報通り少人数の部隊と遭遇したため、相手は弱いと判断して交戦開始。
……ところがどっこい、人数は少ないけどめちゃ強な精鋭部隊。逆ボコりされた、とか。
A国の間諜がB国の政治家秘書と接触。B国の長官級の人物某がA国に協力するという密約を取り付けた。
……ところがどっこい、実際に戦争が開始されても、某さんは全然全くこれっぽっちも動いてくれなかった、とか。
B国の某所に兵糧が貯蔵されてるという情報を入手したA国軍。これを可及的速やかに略奪するため主力部隊を某所に進軍させた。
……ところがどっこい、実際には某所の貯蔵施設はカラッポ。粟粒の一つも無く、骨折り損のくたびれもうけ。その上、主力が出陣して手薄になっていたA国の本陣に、B国部隊が侵攻。あっさり陥落しちゃった、とか。
A国がB国の間者を捉えたところ、同盟国Cの某に宛てた密書を拐帯していた。密書を解析した結果、同盟国CはA国との盟約を反故にし、敵国Bと同盟することを画策していると判明。A国は激おこぷんぷん丸となってC国へ攻め込み、コレを破った。
……ところがどっこい、密書は偽物で、同盟破棄の事実なんかこれっぽっちもなかった。
結果的に味方同士討ちのつぶし合いになっちゃった上に、A国は他の諸国から「同盟国を簡単に裏切る、信用のおけない国家」とみられるようになって、ハブられちゃった、とか。
ほら、オイシー、オイシー。
高等テクニックですけど、使えますよ、コレは。
五つめ。生間。
自国の間諜を敵さんの中に入り込ませて、最新の生きた情報を掴んだうえで生きてかえってきてもらうパターン。自分の国の人に命がけで働いてもらうヤツですね。
この場合、間諜はピチピチな生きの良い正確な情報を手に入れて、しかも自分自身は確実に、絶対に生きて逃げ帰ってこないといけない。
ええ、この間諜さんは敵さん達に気付かれないようにして、生きて戻らなきゃいけないんです。
かなり重要できついなお役目です。
だって、敵さんだって情報を盗まれたって気付いちゃったら、防御しますからね。その情報に基づいてた作戦だって、まるっと変えてくるでしょうし。
そうなったら、命を掛けた間諜の、その掛けた命がまるっきり無駄になっちゃう。こっちの計略も全面的に改定しないとならなくなる。
逃げ損ねて、敵さんチームの中に居る時に間者だってバレたら、そりゃもう大事ですよ。
捕まった間諜は、えげつない拷問を受けちゃうでしょう。……場合によっては、当人は殺されちゃうかも、ですね。
それで、情報は味方に送れないし、相手も防御が堅くなるし、軍事力の増強だってしちゃうこと請け合いです。
そうなったら、こっちチームは全軍撤退とか、そうじゃなくても不利な状態からの戦闘になっちゃうかも知れない。これ、相当な損害が出ちゃいますよ。
失敗して当人が死ぬ羽目になるのは確かにキビシイですけど、絶対に生き抜かなきゃイケないのもしんどい役目っすよ。
だからそうやってゲットした情報は大切に利用しなきゃイケませんね。
大分前に……えっと、作戦篇ぐらいだったかな……その辺で一遍言ったと思うんですけど、確認のためにもう一度繰り返しちゃいますね。
十万人規模の大出兵を企画して、出征の総移動距離が四千粁ってことになると、国民が負担する費用とか王様のお財布から出るお金なんかをひっくるめて、一日当りの費用が大体千金ぐらい、もう平気でジャブジャブ消費されてっちゃいますよね。
そういう大イベントを企画しちゃうと、身内も部外者も、メチャクチャ大騒ぎになっちゃいますでしょ?
人が動いて、資材とか機材とかご飯とかをのっけた重たい車がガンガン走ちゃう。そうすると、道路なんかもうボロボロになっちゃいます。
現地でヘルプのスタッフさんを雇ったりしても、そういう人達は慣れない作業をさせられるもんだから、もうボロボロになってバッタンバッタン倒れちゃったりして、可哀想なことになっちゃう。
そのせいで、本業のご商売とか農業とかが回せなくなっちゃう家が七十万軒ぐらい出ちゃう。いやこれ可能性っていうよりは、割とリアルな数字ですから。
そうやって国同士が何年も何年もやり合って、勝ち負け結果が決まるのなんてほんの一瞬。たった一日の勝利の日を、どえらい無駄と犠牲を払ってドンパチ争う訳です。
なんか、こー、むなしいなぁ。なんて。
だ、か、ら。
始める前に情報を収集しましょう。そのために十分な費用を使いましょうって事なんですよ。
ボーナス百金とか、貴族の地位とか表彰状とか、そんな些細な出費をケチって、敵さんチームの情報を「調べない、知ろうとしない」なんて王様や将軍がいたとしたら、そいつらハッキリ言ってケチです。人の心も思いやりのかけらも無いドケチです。
だって一日一千金を一年三百六十五日ジャブジャブ使うことを考えたら、戦争をその一日で終らせる情報を持ってきてくれた人に百金差し上げちゃった方がずっとお得ですよ。実質タダみたいなもんじゃ無いですか。
そのタダみたいな百金で、国の皆の負担が綺麗さっぱりなくなるんですよー。
今お財布から出す百金は、見えないところで溶けてゆく「国民と王様の血と汗と涙の一千金」の供給をストップさせちゃうブレーキです。
財布の中のお金をケチって、お家の金庫をカラッポにしちゃだめですよね。
そんなケチ野郎には、人の上に立つ将軍の資格はありません。王様を助ける補佐役の資格だってありません。ましてや、勝利を手にするチャンピオンの資格なんか、あるわけがない。
ですから、聡明で目端の利く王様と、賢明で頭の冴えた将軍が軍隊を動かして、さらっと敵さんに勝っちゃって、他の盆暗な王様や脳足りんな将軍なんかよりも、頭二つ三つぐらい飛び出して大成功を治めちゃうっていう、当然の結果を呼ぶには当然の理由ってのがあっちゃうんですよ。
それはつまり、オレ達のイケてる王様や格好いい将軍さんが、物事を敵よりも「先に知る」ことができたから。
これ以外に理由なんてありゃしません。
物事を誰よりも先に知るったって、そりゃ「神様仏様ご先祖様のお告げを聞く」なんてことをやるンじゃないですよ。
かといって、経験とか前例とか、そーゆー「昔から判っていたことから類推できる」っていうことでも、これまたない。
ま、確かに、お空のお星様やらお月様やら運行を観察して、そこから自然の法則みたいなものを引っ張り出せば、大分正確な「天気予報」はできますよ。んで、お天気の情報は戦況を左右する重要なモノではありますけども。
けども、ですよ。
それは、戦争そのものが「この先どんな風に動いちゃうか」を先に知る為のモノじゃないわけですよね。
情報ってのは、生きた人間がもたらすものなんですよねー。
人間から真実を聞き出し、敵の情報を知ることができちゃう人ってのが、つまりは「先に知る者」ってやつです。
そのために必要なのが間者、ってコトなんですよ。
それで。
ここからは間者の運用・活用法には五つくらいパターンある、ってことを説明しちゃいますよ。
この五つってのをパパッと言っちゃいましょうか。
「因間」
「内間」
「反間」
「死間」
「生間」
この五つですけど、個々の詳細な解説はちょっと、後回しにしますね。
この五種類の間諜なんですけど、これどれか一つの項目ピックアップして任務を遂行させれば良い、ってもんじゃ無いんですねー。五種類の間者がそれぞれ並行して任務を遂行しないといいけない。
んで、その間者の行動は当然敵に知られちゃイケないし、場合によっちゃぁ味方、それも同じように任務に就いてる間者同士にも知られちゃイケない。
そういう完璧な隠密活動を統率できちゃうのが、「神紀」……つまり神統括って言うヤツです。
くぅー、カッコイイーっすよねー。こういうカッコイイ間者組織は国宝ですよ。絶対大切にしないといけませんよ。
じゃ、お待ちかね。この五種類の間諜のこと、それぞれ詳しく説明しましょっか。
一つめ、因間。
これは、現地の民間人さんをこっちの味方に付けちゃって、情報もらっちゃうパターン。敵国の中の人に協力者さんになってもらうんですね。
地元の人だから、住んでる場所の地形なんかはチョー詳しい。
九変篇とか地形篇とか九地篇とか、たしかそこいら辺でも説明しましたよね?
戦争するときには、地形についての知識がチョー大切なんだってこと。
勿論覚えてらっしゃいますよね?
戦場の地形とか、そこまでの道とかを知るために地元のガイドさんを雇えって話もしたでしょ? アレも一種の因間さんですよね。
それから、国の中の様子とかを調べるって場合でも、他所から入っていった見知らぬ外国人より、地元の人の方が色々単にイケるでしょ?
ただ、基本が素人なわけですからね……。難しい、複雑なお仕事は頼めないかも知れないですねぇ。でも、基本情報を仕入れるには便利だし、重要なポジションの人ですよ。
二つめ。内間。
これは、現地のお役人さんをこっちの味方に引き込んじゃって、内部で諜報工作活動してもらうってパターン。これも因間と同じな敵国内の協力者さんです。
地方のお役人さんて、戦中はお給料が減っちゃったりしてカツカツだったりするんで、正当な報酬を提示すると、わりとこっちのお手伝いをしてくれちゃうんですよ、これが。
こーゆーの、悪い言葉で言うと贈収賄、ぶっちゃければ涜職、なんですけどね。
中には、こっちのお誘いに乗ってくれない、すごく硬い人もいないワケじゃないですけど、そういう人には最初から接触しなきゃ良いだけのことですから。
これも因間さんと同じで地元の人だけど、全くの素人じゃないでしょ? お役人さんである分、国の内情とか王様やその周辺の人達のこととか、軍隊の内部の裏話みたいなことについては、一般庶民の人よりもずっと深い情報まで知ってたりする訳で。そういうところ、ちょっと期待できちゃったりしちゃうんですね。
三つめ。反間。
これ、運用にちょっとテクニックが要るヤツですよ。
敵さんチームから送り込まれてきた間者や、敵さんチームの因間や内間になっちゃった人達、こういう人達に近付いてって、逆に利用しちゃうパターンです。敵国出身の人もいるけど、自分の国の人の場合もあり、と。
間者が調べて外に流出させちゃう筈だった情報を、水際でガッチリ堰き止める。で、逆に敵さんチームの情報を頂戴しちゃおうって寸法ですよ。
捕まえた間者や外に情報を漏らしちゃいそうになってた国民の皆さんにに、お金的なアレとか、地位とか爵位とか、そういうものを気前よくプレゼントしちゃったり、身内の皆様を守って差し上げる約束をしちゃったり、そういう取引をしましょう。
取引に応じてくれないなら、叩いたり斬ったりつ濡らしたり焼いたり奪ったり脅したりなんかして……あ、これ一言で言うと拷問ですね……そうやって承諾を得るんですよ。
ともかく、ありとあらゆる手を尽くして、
「敵さんチームに協力するよりも、こっちチームについた方がお得だ」
って思い直して頂いちゃうんですよ。ンフフフ。
四つめ。死間。
字面は怖いですけど、人が死ぬって言う意味じゃないですから、その辺は安心して下さい。
死なせちゃうのは情報。つまり敵さんに偽情報を流しちゃうパターン。これは敵国から間者が入ってきてることを「利用」しちゃうモードですね。
ハイ、問題です。
敵さんチームの間諜が、味方チームに接触してきた、としましょうよ。んで、イロイロなやりとりがあって、敵の間諜が重要情報を持って帰る、と。
その重要情報が、まるっきり間違ってたら、どーなるでしょう、か?
答え。
敵さんチームはウソッコの情報を信用して、作戦立てて、自滅しちゃう。
もうちょっと詳しく、ですか? うーん、そーですねぇ。例えば……。
A国の間諜がB国の下級士官と接触して得た情報により、B国は兵力が少ないと判断。お気軽にB国に攻め込んだら、情報通り少人数の部隊と遭遇したため、相手は弱いと判断して交戦開始。
……ところがどっこい、人数は少ないけどめちゃ強な精鋭部隊。逆ボコりされた、とか。
A国の間諜がB国の政治家秘書と接触。B国の長官級の人物某がA国に協力するという密約を取り付けた。
……ところがどっこい、実際に戦争が開始されても、某さんは全然全くこれっぽっちも動いてくれなかった、とか。
B国の某所に兵糧が貯蔵されてるという情報を入手したA国軍。これを可及的速やかに略奪するため主力部隊を某所に進軍させた。
……ところがどっこい、実際には某所の貯蔵施設はカラッポ。粟粒の一つも無く、骨折り損のくたびれもうけ。その上、主力が出陣して手薄になっていたA国の本陣に、B国部隊が侵攻。あっさり陥落しちゃった、とか。
A国がB国の間者を捉えたところ、同盟国Cの某に宛てた密書を拐帯していた。密書を解析した結果、同盟国CはA国との盟約を反故にし、敵国Bと同盟することを画策していると判明。A国は激おこぷんぷん丸となってC国へ攻め込み、コレを破った。
……ところがどっこい、密書は偽物で、同盟破棄の事実なんかこれっぽっちもなかった。
結果的に味方同士討ちのつぶし合いになっちゃった上に、A国は他の諸国から「同盟国を簡単に裏切る、信用のおけない国家」とみられるようになって、ハブられちゃった、とか。
ほら、オイシー、オイシー。
高等テクニックですけど、使えますよ、コレは。
五つめ。生間。
自国の間諜を敵さんの中に入り込ませて、最新の生きた情報を掴んだうえで生きてかえってきてもらうパターン。自分の国の人に命がけで働いてもらうヤツですね。
この場合、間諜はピチピチな生きの良い正確な情報を手に入れて、しかも自分自身は確実に、絶対に生きて逃げ帰ってこないといけない。
ええ、この間諜さんは敵さん達に気付かれないようにして、生きて戻らなきゃいけないんです。
かなり重要できついなお役目です。
だって、敵さんだって情報を盗まれたって気付いちゃったら、防御しますからね。その情報に基づいてた作戦だって、まるっと変えてくるでしょうし。
そうなったら、命を掛けた間諜の、その掛けた命がまるっきり無駄になっちゃう。こっちの計略も全面的に改定しないとならなくなる。
逃げ損ねて、敵さんチームの中に居る時に間者だってバレたら、そりゃもう大事ですよ。
捕まった間諜は、えげつない拷問を受けちゃうでしょう。……場合によっては、当人は殺されちゃうかも、ですね。
それで、情報は味方に送れないし、相手も防御が堅くなるし、軍事力の増強だってしちゃうこと請け合いです。
そうなったら、こっちチームは全軍撤退とか、そうじゃなくても不利な状態からの戦闘になっちゃうかも知れない。これ、相当な損害が出ちゃいますよ。
失敗して当人が死ぬ羽目になるのは確かにキビシイですけど、絶対に生き抜かなきゃイケないのもしんどい役目っすよ。
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