ねくろすおーにら-死者の夢-

神光寺かをり

文字の大きさ
20 / 37

2016-02-17。こんな夢を見た。

しおりを挟む
 どうしてもあちらの方へ行かなければならないのです。
 日の沈むあの方角へ。

 でもココは見知らぬ道筋で、このまま進んで良いのかどうかもわかりません。
 といっても、白壁の土蔵造りの建物が右にも左にもぎっしりと立ち並んで、右に折れる筋も左に折れる角もないのですから、ただまっすぐ進むより他に手だてがないのですけれども。

 どれほど進んだことでしょう。
 不意に、右手の白壁が途切れていることに気付きました。
 ちょうど家一軒ほどの空き地に、背の高い、名も知らぬ稲科の植物らしい草が、一面風にそよいで揺れているのです。
 その向こう側に、知っている家並みによく似た道筋があるように思えましたので、草をかき分けてそこへ入って行きました。
 進んで行きますと、空き地の突き当たりには金網の柵が張ってあって、見覚えのありそうな道筋に直接は出られそうにありませんでした。
 首を振ると、右手に一段高い盛り土があるのが見えました。
 その上に三階建てほどの、銀色の骨組みばかりのやぐらじみた物がありましたので、上ってみることにしました。

 階段は螺旋らせんのようで、一階と二階と三階の区別もなく、上へ上へと昇って行きます。
ふと下を見ますと、盛り土の下の草むらの辺りに、大きな蠅が幾匹も幾匹も羽音を立てて旋回していました。
 金網の向こう側をのぞき込みますと、確かに細い道があるのですが、ホンの五公尺メートルも行った先で、背丈の三倍ほどもある赤い岩が、道も建物も覆い隠していました。

 この道は進めない――。

 あきらめて目を転じますと、櫓の二階の辺りに白黒の模様の大熊貓ジャイアントパンダが二頭折り重なっているのが見えました。
 その脇には、真っ白な柯莫德熊カーモードベアが一頭、うつぶしています。
 どちらも本物のように見えました。ただ二つともぴくりともしないのが気がかりでなりません。
 この三頭の大きな生き物が、果たして眠っているのか、あるいは息をしていないのか、それとも本物のようなぬいぐるみなのか、はっきりと区別ができません。
 本物のようなぬいぐるみに違いない、と自分に言い聞かせ、大きな蠅を手で払いながら、櫓を転がり降りて、草を掻き分け、元の道へ駆け戻りました。

 空き地を振り返りますと、櫓の二階の柯莫德熊シロアメリカグマが、顔をこちらに向けておりました。
目が黒々としております。

 右へ向き直ったその先にある、赤い鉄の細い橋を渡れば、その場所に着くでしょう。

 どうしても前へ踏み出してくれない左右の足を引きずって、背中に誰かの視線を思いながら、私は、知らない道を日の沈むあの方角へ歩いて行くのです。

 ……そんな夢を見た。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

奪った代償は大きい

みりぐらむ
恋愛
サーシャは、生まれつき魔力を吸収する能力が低かった。 そんなサーシャに王宮魔法使いの婚約者ができて……? 小説家になろうに投稿していたものです

ブチ切れ公爵令嬢

Ryo-k
恋愛
突然の婚約破棄宣言に、公爵令嬢アレクサンドラ・ベルナールは、画面の限界に達した。 「うっさいな!! 少し黙れ! アホ王子!」 ※完結まで執筆済み

処理中です...