弱き光の夜

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 金色の波が進む。
 冬の透き通った太陽の光を存分にあびて輝く、
 枯れ野が風に吹かれて次々に揺れる。
 大地を光が波打ちながら進んで行っているかのようだった。
 ——美しく、
 溢れるばかりの平和に包まれた、
 穏やかな北の地の光景。 
 
    その時ならば、
    あり得ざると思った、
    地を進む波。
    思い出し、
    後悔とも悔恨とも違う、
    口の中で噛み締める苦い味。

 春近き穏やかな海辺の風景だった。
 吹く風に揺れ野は歌っていた。
 照らす光に海は笑っていた。
 この場所。
 見渡す限りに続く、長い砂浜。
 輝く野原。
 何処までも広がる海。
 私は歩く。
 春を待ちきれぬ暖かい太陽が照らす、この地を。
 白い波が砕けて岩を洗う。
 白い鳥が海に注ぐ川から飛び立ち目の前を低く飛んで行く。
 楽しげに吠える散歩の犬の声が響く。
 波打ち際で遊ぶ子供のはしゃぐ姿の見える。
 この砂浜。
 高く上がる凧の下、ゆっくりと振られる釣り竿にあわせて心も海の彼方までとんでいきそうな、
 穏やかな、
 穏やかな、
 休日。
 この日。
 私は、ただこの風景を眺めていたのだった。
 海。
 小さな船が遠くをゆっくりと動き、島と島の間を抜ける。
 ——この海。
 船を追いかける群れるカモメ達の姿が雲のように流れて行く。
 ——海。
 何処までも遠く広がる水平線。
 穏やかな太陽の光が照らす平穏なこの世界。
 私は、こんな何でも無い一日を、ただそこにいる。
 その事を楽しんでいるのだった。
 私は直中にいた。
 この平和の中に。
 私は、ただ歩き、見る。
 ——この日。
 東北の三月にしてはずいぶんと暖かな日だった。
 このまま千年の平和が続くだろうと思えるような静かな午後だった。

    その日の千年前のことを皆が思い出すのはもっと後のことだ。
    そして千年の平和は千年の後に破られることを知るのもやはり後のこと。
    我々は知った。
    かつて知った。
    しかし忘れ、また思い出す。
    思い出すことは未来を知ることでもある。
    それを忘れずにいられるだろうか。  
    忘れることは未来から失うことでもある。

 美しく輝く風景だった。
 浜辺が、海が、風が、空が。
 そして私は信じていた
 繰り返し押し寄せては引いて行く波のように、
 世界はこのままこの日常を繰り返してゆくのだろうと。
 そんな風に思いながら、
 この日、
 私はこの砂浜に歩き、
 穏やかな海を見ていた。
 繰り返し押し寄せる波の音を聴きながら、
 沖を飛ぶ鳥を眺めていた。
 足下に落ちていた貝殻を拾い、
 その七色の輝きを見つめていた。
 様々な色。
 傾ける角度により、様々な色合いを見せるその貝殻。
 それを握りしめながら、
 気付くといつの間にか落としてしまっていた、
 その貝殻をずっと握っていると思い込みながら、
 長く伸びる海岸、
 明るい光に照らされて、
 ハレーションを起こすくらい明るく輝く、
 その中を私は歩き始めたのだった。
 地は光に溢れていた。
 露出過多の写真のような、
 細部が、影が飛んでしまった写真の中のような世界だった。
 何もかもが光と言うベールを被ってしまったかのような、
 綺麗な物も汚いものも光が覆い隠す、
 その中を。
 光が満たすこの地を。
 何もかもが輝く。
 この地を。
 ——私は見る。
    
    海岸には打ち上げられた瓦礫が散らばる。
    持ち主の現れない車が放置され。
    ひっくり返った船、
    雑草だらけのまま放置された崩れた小屋の向こう側
    ボランティアの人達の歩いて来るその方向から、
    やって来た蠅が私の目の前を鬱陶しく飛び回る。

 砂に混ざるガラスがキラキラと輝いた。
 遠くのテトラポットがこの世の物とは思えないくらい真っ白に見えた。
 風が光り波が輝いた。
 世界はとても明るかった。
 この空の下にいるもの全てを光へと変えてしまおうかとでも言うように、
 光は海岸に降りそそぐ。
 黄金の枯れ野が風に揺れ、光の波を地に広げる。
 光が地上を天上に変えているかのようだった。
 影が消えた世界だった。
 私はそれに魅せられて立ち止まった。
 魔力のような物を感じながら、
 私は、
 空を見て——地を見て——そして海を見た。
 光だけが見えた。 
 まぶしかった。
 ぎらぎらと輝く海面、
 その照り返しがに目が眩み、
 私は思わず目をつむり、
 ——足に冷たさを感じてはっとして目を開く。
 足下が波に少し浸かっていたのだった。
 目を瞑った一瞬の間に打ち寄せた波から逃げ遅れて私は靴を濡らしたのだった。
 私は波打ち際からあわてて離れると靴についた濡れた砂を払う為にしゃがんだ。
 低くなり、砂浜すれすれから見る波は大きく高く見えた。
 飲み込まれそうな程。
 盛り上がり、押し寄せる波。
 私は少し恐怖を感じて立ち上がる。
 今度の波は特に大きかったのだろう。
 まだ濡れていない砂の場所まで下がっていた、そこからあわてて後ずさりした、私のすぐそばまで波は来た。
 押し寄せる波は、私の足下までやって来て、引き返す時に小さな貝殻を残して去って行ったのだった。
 そこで初めて、私は自分がさっきまで持っていたはずの貝殻を、いつの間にか落としてしまっているのに気付いた。
 私はまたその貝殻を拾った。
 いつの間にか落としていた、さっきの貝殻の替わりに。
 それは落とした貝殻と良く似た貝殻だった。
 手に程よく収まって単純だが優美な曲線を描く美しい貝殻だった。
 それはもしかして落とした貝殻そのものであるかも知れないとさえ思えた。
 海に落とした貝殻が波に運ばれて繰り返し私の元にやって来たのかもしれないと私は思った。
 そう思うと、
 なぜかそれは私の心に意味の良く分からない寒気を生じさせるのだが、
 その気持ちに逆らってさっきと同じように貝を拾った、
 私はまたその輝きを期待して、
 目の前まで持って行くのだが、
 しかしそれはもう光らなかった。

    纏う光りの虚飾が取れ、
    ただ物の見える、
    その丘から、
    見下ろした野に逃げ出して、
    吐き気をこらえて転がった、
    その中に沈むのなら、
    歴史の終わりの中でなら、
    屍体は物に返るのかもしれない。
    その中でなら無は光りを生み出すのかもしれない。
    しかし今はまだここにあるのは我らである。
    繰り返す歴史にも学ばぬ我らである。
    その我らは取り囲むのは物のある事を知らしめられる。
    現実は、違わずに我らを取り囲むのだろう。
    繰り返す歴史に生は包まれるのだろう。
    
 いつの間にか陽が陰っていたのだった。
 薄い雲が太陽の前を横切っていた。
 すると地を覆った光は天に引き上げていた。
 世界は陰影を取り戻していた。
 砂浜には、さっきまで見え無かった物が見え始めていたのだった。
 私は砂浜に大きく描かれた絵に気付いたのだった。
 それはクジラだった。
 まるで浜に打ち上げられたクジラででもあるかのようなそれは、
 のんきな顔をして潮を噴き上げながら、
 イカやら蛸やら魚やらの沢山の仲間を引き連れて、
 海と一緒に丘へ向かって進みつつある所だった。
 私はそれを何かの不吉な前兆だったかのように思い出す、
 ——大地震の夜。
 私は思う。
 打ち寄せる波に次第に消えていったクジラは今何処にいるのか。
 あの瞬間は今何処にいるのかと。
 今、夜の東京を歩きながら——私は思い出していた。
 今日の昼にあっという間に海に飲み込まれたと言うかつて歩いたその地の事を。
 ニュースで見た衝撃的な津波の映像を思い出しながら、
 自分の思い出が今はその下にある事に呆然としながら、
 それをどう考えたら良いのか良くわからないまま、
 私は思い出とは遠く離れたこの地で黙々と暗闇の中を歩き続ける。
 私は、この夜に首都を埋め尽くした、帰宅者の集団の中にいる。
 私は、今、ここにいる。
 この闇の中、白い街灯に照らされる、顔に様々な感情を浮かべた人々の、その中にいる。
 この夜に、大地震のその日の夜に、あの海岸にではなく、遠く離れた首都の路上にいる。
 ——溢れかえる徒歩の人々の群れが歩道を埋め尽くしていた。
 突然に現れた非日常がこの東京を覆い尽くしている、その中に私はいた。
 私は、不安と不思議な高揚感、この二つの間で揺れ動きながら、歩いている。
 現実の中に潜んでいた別の世界が、この夜の闇の中でこそ見える。
 今までと何かが違う光で照らされた非常の世界は、今日の昼までとは違う姿を見せるのを、私はただ呆然と眺めている。
 つまり、目の前の光を見る。
 白い光。
 街灯の照らす、街の姿。
 常ならぬ夜の灯り。
 人々は整然と歩き、灯りはその姿をくっきりと照らし出す。
 それは一見いつも通りの東京の姿のようにも見えるが、昨日と同じようで何か違う。
 異な感情がこの街の中に漂っていた。
 言葉で表すことができない。
 希望でも絶望でもあるような——その二つがまだ分かれる前の太古の感情。
 言葉にできない不思議な感情。
 それが私の心の中を駆け巡っていた。
 街のざわめきとともに。
 この街を巻き込んで回る。
 その、ぐるぐると回る感情に、通り過ぎる世界が、震える。
 ——赤。
 揺れる光と音。
 通り過ぎる救急車。
 私は、そのサイレンの光と音が夜の闇に飲み込まれ消えるのをじっと見つめている。
 救急車がいなくなった後の世界に息をのむような無が満ちるのに驚きながら、私は、言葉が、溢れる、満ちるのを聞く。
 私はいつのまにか立ち止まり——夜の公園——ここでしばしの休息をとる人々の中にいた。
 いろいろな言葉が渦を巻き流れる中、人々は一様に空を見上げ、そびえ立つ塔の先端を見つめている。
「東京タワーの先端が曲がったそうだよ」
「ほんとだ」
 見た目は楽しそうに笑うカップルの表情はしかし少しこわばっていた。
 二人は自分の中にある、言葉にならない何物かを外に出せずに妙な気分になっているようだった。
「暗くて携帯じゃ写んないね」
「カメラ持ってくれば良かった」
 隣の初老の男二人は、同じように東京タワーを腕組みをして見上げている。
 二人も何か話そうと心の中をさぐって無口になった、一瞬の間の後、しかし借り物の、言いたかったはずのものとは違う言葉が、口からすらすらと出る事に驚いてる風な顔で、
「東京タワーは三百三十三メートルで、私らの子供の頃にできまして」
「昔、僕は修学旅行でここに来て」
 二人は、また言葉に詰まり、それ以上は何も言わずに歩き出す。
 つられて私も歩き出す。
 公園の様々な影を眺めながら進む。
 すると——夜に色彩が——暗闇に表情があるのに私は気づく。
 その暗闇に包まれる人々の顔に様々な表情が映し出されるのを、夜にこそ見せる脆弱な、昼の強い光の元では塗り込められてしまう感情が、今ここでこそ現れているのに気づく。

   公園には台風や大雪の時の子供達のような、
   期待と怖れの混じり合う表情をした人々に溢れていた。
   感情が闇を照らすそんな夜であった。
   この夜の東京にその前もその後も決して見る事のできない光景であった。
   そんな中を私は歩く。
   様々な人々の中を。
   様々な東京を同時に見る。
   春も間近な、
   新芽を膨らませる、
   この冬を耐えた木々の影の下、
   時がくる。

 この夜。
 周りの混乱等関心無いように、寝転がる浮浪者があくびをしながら、周りの帰宅難民の不安げな顔をつまらなさそうに見回していた。
 芝生を歩く若者は、何かから一時解放されたかのような、楽しげな足取りだった。
 深刻そうな顔をした足取りの思い老人もいた。
 ベンチで休む人々。
 二人掛けのベンチには、携帯を見ながら座っている若い女性が、疲れた顔をした、ただ遠くを見てぼおっとしている中年の男と一緒に座る。
 たまたまここで居合わせただろう、たぶん見ず知らずの二人は、別々の方向を向いて、それぞれの物思いに耽っている。
 互いに、相手の存在などそこには無いかのように、それぞれの世界だけを見つめ、それぞれの歴史の中で、この夜の意味を理解しようとしている。
 我々は一人一人別々に生きながら、それぞれの時間を漂って、たまたまこの夜の公園ですれ違う。
 人と人。
 影と影。 
 街灯に照らされ長く伸びる私の影は、様々な影と溶けあう。
 私の境界が暗闇と混じった。
 隠された色と色が混じった。
 その瞬間、背筋のぞくっとするような感覚があった。
 私が、強く横たわる黒と一つになった時。
 その瞬間。
 つまりこの場所で、起源を忘れ、塗り込められた単一は、解け合った時。
 私は感じた。
 その言葉では足らないと思いつつ、他の言葉が見つからないので、とりあえず崇高とでもしか言いようのない感覚に捕らわれる。
 それは全てであった。
 黒が、黒であるが故に全てであった。
 世界を無に戻す黒。 
 しかし、その闇の中、新しい言葉が湧いて来るだろう。
 様々な影の重なる暗闇は、失われた全き宇宙の胎動。
 そんな風に思えて来た。
 私は、この日、歴史を飲み込んだ暗闇こそが、何かの始まりとなるのではないか、そんな理由もあいまいな希望を感じながら、自分の鼓動が早まるのを聞いた。
 原初の闇の中、ただ家へたどり着くため為、この夜に歩く。
 世界は有るようにしかなかった。
 するべき事はひとつだけだった。
 ふと心に浮かぶ不安も、あっという間に目的の中に隠れる。
 我々はただ歩くのだ。
 家に向かって急ぐ、それだけで良い。
 なんと単純で素晴らしき人生。
 我ら、この風の吹く公園に、風に押されて集まって来た塵芥ででもあるかのような。
 我々は、おのおのが、おのおのの感情をその内に潜め、帰宅者の群れとなり、この場所に一時の間、吹きだまり、また歩き出す。
 我々は風そのもののようだった。
 我々はそのようにあつまり、分かれて行く。
 この夜に、繁華街のようなにぎわいを見せるこの公園に、しかし静かな、人々。
 様々な人々、様々な年代の人々が、この都市にこれほど入り交じる。
 人々はその遭遇に戸惑い、言葉も少なげに、ここにただいる。
 それぞれの帰るところに向かう途中、偶然に行き会ったこの場所、その偶然が作り出す意味を計りかねたまま、互い不思議な感情を持ってすれ違う。
 静かな夜。
 意味の死んだ夜。
 まるで時間が止まったかのようだった。
 何もかも、歴史さえも消えてしまったかのような、この瞬間。
 闇が空より降り、全て包む。
 闇の中に、色が消える。
 昨日と今日のつながり消える、この日に、何故ここにいて、何故今日は今日なのだろうかと考える夜。
 昨日でも明日でもなく、五年前でも、十年後でもない。
 何故私は今日にいる。
 何故この日なのだろう。
 何故、濁流は、今日、私ではなく、思い出を飲み込んでいったのかと思う。
 私はそこにはいない。
 揺れる金色の枯れ野、そのきらめく光を私は思い出す。
 その場所。
 私は今日はそこにはいない。
 ゆっくりと歩いた砂浜の足の裏の感触をまるで今そこを歩いているかのように思い出せるのに、今、私は遠く首都の夜を歩く。
 それがとても不思議に思えた。
 時が、あの海岸にいた自分と今の自分を隔てているというその事が。
 黄金色の枯れ野を歩き、砂浜で佇んだ私は、今、その地にいない事が。
 ——なぜなのだろう。
 なぜ時は、私を災害から隔てることができるのだろう。
 それがとても不思議に感じられる。
 あの日、海辺を歩いたその時に、濁流が時を遡ってそこに押し寄せてこないのは何故なのだろう。
 そんな事は現実には起き得ない事を分かっていて、
 ——私はなおも不思議に思う。
 容易く堤防を、空間を、乗り越えた津波は時を乗り越えては押し寄せて来ないのは何故なのだろうかと。
 あり得ない事と分かりつつ、熱死の概念を心の中で唱えつつ、私はいつの間にか不安に捕われて、また立ち止まり、
 ——しかし私は、この夜、この街をまた歩く。
 ゆっくりと一歩、また一歩。
 私の足はだんだんと早くなり、すると歩くことに意識が集中して、混乱した気持ちが収まって来る。
 歩き出すと失われた歴史が戻って来たような感じがした。
 未来は私の進む方向にあり、過去は私の後ろに長く棚引く。
 かの聖アウグスティヌスの述べるがごとく、過去は記憶で未来は期待なのだとすれば、私は今、自分の未来を作り出しているのだった。
 過去もまた、
 ——この夜。
 思い出す。
 私は、進んでも進んでも追いかけてくる、自分の影を引きづりながら進む。
 忘れていた過去、思い出せない言葉、私は、様々な思いの渦巻く闇の中。
 歩き続ける。
 雑踏の中、私はただ家路に急ぐ。
 動かない地下鉄の入り口を通り過ぎ、夜なのに様々な人々が歩くがやがやとしたこの街のにぎわいに、祭りの夜のような高揚と、それが終わる不安を感じながら、歩く。
 大地震の夜。
 日本を揺らしたその大きな揺れが、まだどのような被害をもたらしたのかは良くは知らない、我ら、遠く、首都を歩く。
 この夜、大津波が、歴史をさらった夜。
 まだ浅き闇、街灯が煌煌と街を照らす、それはまだ知らぬ、我らが無邪気に歩く夜の……
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