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闇の中を抜けて、見るのは街の灯り。
郊外の道路沿いに立ち並ぶロードサイドショップの派手な色彩。
運転する車のフロントガラス越しに見えるのは、我も我もと視覚に飛び込んでくる、極彩色の看板の文字。
流れる色彩。
車、流れる車。
ブレーキランプの赤。
信号の赤。
変わって青。
走り出す。
動く。
街が動き出す。
光の渦。
クラクションの音。
都市の喧噪。
私は走り抜けた暗闇の深淵を思い出し、目の前に広がる俗な光景に、少しがっかりしながら、しかしより多く、ほっとしたような感情が心の中に広がるのに驚く。
ここは夜なお光る、陰影を失った世界だった。
時間を失った世界。
つまり、流れる時間によっても変わらない世界。
郊外。
日常。
日本中どこにいっても同じような都市の外れ、国道沿いの騒がしい色彩の中に、私はいた。
閉店の時間が間近の大型スーパーの駐車場からは、次から次へと出てくる家族連れの車が見えた。
通りには、立ち並ぶファミレス、たまに本屋。
靴の安売り店の次にはチェーンの酒屋。
携帯の販売店、紳士服販売店、コンビニ、コンビニ、次にチェーンのジーンズショップ。
赤ちゃん用品を売る店を過ぎて家具屋を越え、向かいは牛丼屋、その次にはまたコンビニ。
——何処にでもある風景の中、何処にでもいる家族の満ちるこの街道沿いの風景。
なんの変哲もないが、それゆえに幸せな瞬間。
過剰なまでに明るく輝く窓ガラスの内側には、そんな光景が次々と連なって行く。
車はそれぞれの店に次々に吸い込まれ、店の前には人々が列をなす。
その姿は、まるで神に対面する巡礼の集団のように見えた。
この現代の偏在する神に会う為に並ぶ、ここは、
——聖なるかな、聖なるかな、約束の場所。
ここは特別な場所なのではなく、何処にでもある場所であり、しかしその偏在するが故にこそ、この中には現代の神が住む。
日曜の夜、家族はその中で生まれ変わり、偏在する神性との結合をはかり、また生活へと戻って行く。
信仰のその場所。
昇華された日常。
ここロードサイドには神がおわします。
現代を統べる、あらかじめ造られた、日常と言う名の神。
かつての日本の成長の中に生まれた神。
空に浮かんでいた夢が地上に降りて記号になった神。
それは、ここ、にぎやかな店内に、あふれる物としてあるのだった。
すべてが同じ物。
入れ替え可能な幻。
その幻の中で生きる。
我々は幻の中に生まれ幻の中で死ぬ。
それは悪夢のようでもあるが、天国の光景の様でもある。
なにしろ神秘が無い故に闇もない。
希望もないが絶望もない。
平板な光に照らされて深さと陰影の無い。
日常。
ハレルヤ。
我々には抗う事はできない。この厳かな日曜日の参拝の中、神託は下る。
この薄さの中に潜む神よ。
内面のないビットとしての神よ。
量としての神よ。
強度としての神よ。
表面しか無い故に我らが到達できない深淵をもつ神よ。
我々のたどり着けない遠くから神託を与える。
あなたは、我々に記号の消費を命令する。
我々はその言葉が聞こえたと言う自覚のないままに、その言葉に従い、至福の笑みを浮かべながら、自らその中に入ってくゆく、
——日曜日の夜。
厳かな、厳かな、儀式の始まり。
ここは聖なる場所。
我々はそのしきたりに従い互いに笑顔をかわし、騒がしくも美しいこの場所で祝詞を述べる。
我々は、ピカピカのビニールでコーティングされた聖典を開き、その神を讃える言葉を述べなければならない。
ボタンを押し。
——ハレルヤ。
私は運ばれて来たハンバーグに神を見なければいけない。
その受胎を感じなければならない。
間違っても、殺された牛の事を考えては行けない。
かき混ぜられる前の材料の固まりを思い浮かべてはいけない。
かき混ぜるミキサーの回転を考えてはいけない。
そのミキサーを回す力の起源を考えては行けない。
見えることが存在する事であり、その見える物、表面しか無い物体の内面を詮索してはいけない。
内面を保障する古い神のいないこの時代に、内面のない物体を結びつける現代の神を信じなければいけない。
あらゆるところに存在し不在する神よ。暗闇のない現代に表面に潜むそれよ。
日常よ。
なんの関わりもない君と私が結びつく、世界などと言う物がある事すら不思議だ。
ましてやそれが毎日よどみなく流れて行くなどとは。
ふと考え始めてしまうと、それはとてもありえないような奇跡のように思えてくるのだが。
しかし、それはある。
それは私をとらえ、同時代などと言う言葉でなにもかもを巻き込み進んで行く。
何のつながりもない物と物がたまたま横にいただけで無理矢理その意味を見つけないと行けないこの世界。
そのつながりを互いに分かったふりをしないと崩れてしまう世界。
昨日と今日のつながりの無く、瞬間だけがつぎつぎに過ぎて行く、そんな世界の中、信じたふりをしなければならないその世界で。
我々は、たまたまそばにある瞬間と瞬間に偽の歴史を感じ、他人と分かり合えているふりをしなければならない。
日常。
しかし、私は運ばれたハンバーグにナイフを入れた瞬間、その表面が切り裂かれたその瞬間、私は足下のぐらつくような目眩を感じた。
とつぜん時間が止まったかのようだった。
日常の表面が切り裂かれたそこには瞬間しか無かった。
偽のつながりが切り裂かれた日常は、その内側をさらけ出す。
そこには今しか無かった。
歴史は無かった。
意味はなかった。
物が、その瞬間だけがあり、零度の中に凍った。
人々はその動きを止めた。
何もかもが止まった。
音のない、静かな、一枚の絵のような光景だった。
コーヒーメーカーのたてる湯気が空中で止まっていた。
ウェイターの手は、皿をつかんだまま空中で止まっていた。
テーブルから落ちたナプキンは問い宙で浮いた様に止まっていた。
人々の表情もこの瞬間で止まり、凍り付いていた。
切り取られた日常の中には、様々な表情の人々がいた。
楽しそうな家族の笑いあっている顔。
言い合いをしているカップルの怒った瞬間の顔
休日も働いていたのだろうスーツの男は、たばこをくわえながらひどく疲れた顔。
子供がこぼれそうなくらいなみなみとコップに緑色のソーダを入れ、緊張した面もちで足を踏み出そうとしている。
誰かの悪口を言っている女の顔はゆがみ、その怒りを聞き流している男は何も考えずに宙を見る。
涙を浮かべたおばあさんはいったい何を思い出しているのか。
笑顔。
はしゃいでいた学生らしき集団は、その顔に笑顔を浮かべたまま。
——瞬間が切り取られたのだった。
時間が止まったその時の、様々な瞬間を人々は身にまとう。
幸せそうな瞬間、辛そうな瞬間。
楽しい瞬間、悲しそうな瞬間。
もしここで世界が終わったなら、それはずいぶんと不公平と思える。
もし最後の瞬間が永遠となるのなら、永遠の歓喜か、永遠の苦しみが保証されてしまうのなら。
それはとても不条理な事だと私は思う。
もし、瞬間が永遠に押し流されたら。
永遠が瞬間を運んだら。
その時に何をしていたかそれだけでその後の全てが決まってしまうならば、そんな馬鹿な話は無いと私は思う。
そんな悲惨はこの現代に起き得るものかと思う。
——しかし、それは起きたのだ。
——津波は瞬間を押し流した。
私がかつていたその瞬間も歴史と一緒に押し流されたのだ。
私は今、過去が大きく揺れ、津波に飲み込まれるのを見た。
日常が濁流に飲み込まれて行くのを。
その当時、何度も通ったその場所が、日常が、揺れる。
川を上り、港を進む、海が地を変える。
津波が進む。
千年前の古文書にも、日常が突然終わった事をしるされる。
この地で。
——私は津波の授業を受けたっけ。
津波。
沖では早く低い、岸に近づくにつれ、浅くなるのに比例してその高さを上げる、ソリトンである。
津波。
その時に学んだ数式で、この大地を飲み尽くした波の事を理解できるのだろうか。
起きてしまった後でさえ、それを信じる事ができるのだろうか。
その再現する数式を。
私は流された過去を見つける事ができるのだろうか。
分からない。
流される。
過去は、その瞬間は、飲み込まれ流される。
永遠に刹那が合する。
それは永遠にある。
瞬間は永遠にそのままにある。
この場所は、その瞬間とともにある。
歴史が、
——電気の消えた、暗い、ガラスの割れたファミレス。
津波の運んだ泥にまみれ、過去がその中に埋まる。
闇の中。
静かに、そのままにある。
この店内。
音も無く、暗く、誰もいない。
しかし、日常を捨てきれない、亡者達の満ちる。
その夜。
見えない子供達が駆け回る。
あらざる夜。
崩れ落ちた壁を通り抜けて。
あらざる人々が、まるで何も起こっていないかのように笑いながら日常をすごす。
この場所。
かつてあったものを演じる。
かつてあったように、そしてこの後も続く。
その、夢の中のような音のないモノクロの光景は、現実の後ろで今も続いている。
しかし、楽しげにはなされる、声のない言葉は、決して我々には届かないままに虚無に吸い込まれる。
暗闇に。
消える。
一人、
一人、
そして私。
郊外の道路沿いに立ち並ぶロードサイドショップの派手な色彩。
運転する車のフロントガラス越しに見えるのは、我も我もと視覚に飛び込んでくる、極彩色の看板の文字。
流れる色彩。
車、流れる車。
ブレーキランプの赤。
信号の赤。
変わって青。
走り出す。
動く。
街が動き出す。
光の渦。
クラクションの音。
都市の喧噪。
私は走り抜けた暗闇の深淵を思い出し、目の前に広がる俗な光景に、少しがっかりしながら、しかしより多く、ほっとしたような感情が心の中に広がるのに驚く。
ここは夜なお光る、陰影を失った世界だった。
時間を失った世界。
つまり、流れる時間によっても変わらない世界。
郊外。
日常。
日本中どこにいっても同じような都市の外れ、国道沿いの騒がしい色彩の中に、私はいた。
閉店の時間が間近の大型スーパーの駐車場からは、次から次へと出てくる家族連れの車が見えた。
通りには、立ち並ぶファミレス、たまに本屋。
靴の安売り店の次にはチェーンの酒屋。
携帯の販売店、紳士服販売店、コンビニ、コンビニ、次にチェーンのジーンズショップ。
赤ちゃん用品を売る店を過ぎて家具屋を越え、向かいは牛丼屋、その次にはまたコンビニ。
——何処にでもある風景の中、何処にでもいる家族の満ちるこの街道沿いの風景。
なんの変哲もないが、それゆえに幸せな瞬間。
過剰なまでに明るく輝く窓ガラスの内側には、そんな光景が次々と連なって行く。
車はそれぞれの店に次々に吸い込まれ、店の前には人々が列をなす。
その姿は、まるで神に対面する巡礼の集団のように見えた。
この現代の偏在する神に会う為に並ぶ、ここは、
——聖なるかな、聖なるかな、約束の場所。
ここは特別な場所なのではなく、何処にでもある場所であり、しかしその偏在するが故にこそ、この中には現代の神が住む。
日曜の夜、家族はその中で生まれ変わり、偏在する神性との結合をはかり、また生活へと戻って行く。
信仰のその場所。
昇華された日常。
ここロードサイドには神がおわします。
現代を統べる、あらかじめ造られた、日常と言う名の神。
かつての日本の成長の中に生まれた神。
空に浮かんでいた夢が地上に降りて記号になった神。
それは、ここ、にぎやかな店内に、あふれる物としてあるのだった。
すべてが同じ物。
入れ替え可能な幻。
その幻の中で生きる。
我々は幻の中に生まれ幻の中で死ぬ。
それは悪夢のようでもあるが、天国の光景の様でもある。
なにしろ神秘が無い故に闇もない。
希望もないが絶望もない。
平板な光に照らされて深さと陰影の無い。
日常。
ハレルヤ。
我々には抗う事はできない。この厳かな日曜日の参拝の中、神託は下る。
この薄さの中に潜む神よ。
内面のないビットとしての神よ。
量としての神よ。
強度としての神よ。
表面しか無い故に我らが到達できない深淵をもつ神よ。
我々のたどり着けない遠くから神託を与える。
あなたは、我々に記号の消費を命令する。
我々はその言葉が聞こえたと言う自覚のないままに、その言葉に従い、至福の笑みを浮かべながら、自らその中に入ってくゆく、
——日曜日の夜。
厳かな、厳かな、儀式の始まり。
ここは聖なる場所。
我々はそのしきたりに従い互いに笑顔をかわし、騒がしくも美しいこの場所で祝詞を述べる。
我々は、ピカピカのビニールでコーティングされた聖典を開き、その神を讃える言葉を述べなければならない。
ボタンを押し。
——ハレルヤ。
私は運ばれて来たハンバーグに神を見なければいけない。
その受胎を感じなければならない。
間違っても、殺された牛の事を考えては行けない。
かき混ぜられる前の材料の固まりを思い浮かべてはいけない。
かき混ぜるミキサーの回転を考えてはいけない。
そのミキサーを回す力の起源を考えては行けない。
見えることが存在する事であり、その見える物、表面しか無い物体の内面を詮索してはいけない。
内面を保障する古い神のいないこの時代に、内面のない物体を結びつける現代の神を信じなければいけない。
あらゆるところに存在し不在する神よ。暗闇のない現代に表面に潜むそれよ。
日常よ。
なんの関わりもない君と私が結びつく、世界などと言う物がある事すら不思議だ。
ましてやそれが毎日よどみなく流れて行くなどとは。
ふと考え始めてしまうと、それはとてもありえないような奇跡のように思えてくるのだが。
しかし、それはある。
それは私をとらえ、同時代などと言う言葉でなにもかもを巻き込み進んで行く。
何のつながりもない物と物がたまたま横にいただけで無理矢理その意味を見つけないと行けないこの世界。
そのつながりを互いに分かったふりをしないと崩れてしまう世界。
昨日と今日のつながりの無く、瞬間だけがつぎつぎに過ぎて行く、そんな世界の中、信じたふりをしなければならないその世界で。
我々は、たまたまそばにある瞬間と瞬間に偽の歴史を感じ、他人と分かり合えているふりをしなければならない。
日常。
しかし、私は運ばれたハンバーグにナイフを入れた瞬間、その表面が切り裂かれたその瞬間、私は足下のぐらつくような目眩を感じた。
とつぜん時間が止まったかのようだった。
日常の表面が切り裂かれたそこには瞬間しか無かった。
偽のつながりが切り裂かれた日常は、その内側をさらけ出す。
そこには今しか無かった。
歴史は無かった。
意味はなかった。
物が、その瞬間だけがあり、零度の中に凍った。
人々はその動きを止めた。
何もかもが止まった。
音のない、静かな、一枚の絵のような光景だった。
コーヒーメーカーのたてる湯気が空中で止まっていた。
ウェイターの手は、皿をつかんだまま空中で止まっていた。
テーブルから落ちたナプキンは問い宙で浮いた様に止まっていた。
人々の表情もこの瞬間で止まり、凍り付いていた。
切り取られた日常の中には、様々な表情の人々がいた。
楽しそうな家族の笑いあっている顔。
言い合いをしているカップルの怒った瞬間の顔
休日も働いていたのだろうスーツの男は、たばこをくわえながらひどく疲れた顔。
子供がこぼれそうなくらいなみなみとコップに緑色のソーダを入れ、緊張した面もちで足を踏み出そうとしている。
誰かの悪口を言っている女の顔はゆがみ、その怒りを聞き流している男は何も考えずに宙を見る。
涙を浮かべたおばあさんはいったい何を思い出しているのか。
笑顔。
はしゃいでいた学生らしき集団は、その顔に笑顔を浮かべたまま。
——瞬間が切り取られたのだった。
時間が止まったその時の、様々な瞬間を人々は身にまとう。
幸せそうな瞬間、辛そうな瞬間。
楽しい瞬間、悲しそうな瞬間。
もしここで世界が終わったなら、それはずいぶんと不公平と思える。
もし最後の瞬間が永遠となるのなら、永遠の歓喜か、永遠の苦しみが保証されてしまうのなら。
それはとても不条理な事だと私は思う。
もし、瞬間が永遠に押し流されたら。
永遠が瞬間を運んだら。
その時に何をしていたかそれだけでその後の全てが決まってしまうならば、そんな馬鹿な話は無いと私は思う。
そんな悲惨はこの現代に起き得るものかと思う。
——しかし、それは起きたのだ。
——津波は瞬間を押し流した。
私がかつていたその瞬間も歴史と一緒に押し流されたのだ。
私は今、過去が大きく揺れ、津波に飲み込まれるのを見た。
日常が濁流に飲み込まれて行くのを。
その当時、何度も通ったその場所が、日常が、揺れる。
川を上り、港を進む、海が地を変える。
津波が進む。
千年前の古文書にも、日常が突然終わった事をしるされる。
この地で。
——私は津波の授業を受けたっけ。
津波。
沖では早く低い、岸に近づくにつれ、浅くなるのに比例してその高さを上げる、ソリトンである。
津波。
その時に学んだ数式で、この大地を飲み尽くした波の事を理解できるのだろうか。
起きてしまった後でさえ、それを信じる事ができるのだろうか。
その再現する数式を。
私は流された過去を見つける事ができるのだろうか。
分からない。
流される。
過去は、その瞬間は、飲み込まれ流される。
永遠に刹那が合する。
それは永遠にある。
瞬間は永遠にそのままにある。
この場所は、その瞬間とともにある。
歴史が、
——電気の消えた、暗い、ガラスの割れたファミレス。
津波の運んだ泥にまみれ、過去がその中に埋まる。
闇の中。
静かに、そのままにある。
この店内。
音も無く、暗く、誰もいない。
しかし、日常を捨てきれない、亡者達の満ちる。
その夜。
見えない子供達が駆け回る。
あらざる夜。
崩れ落ちた壁を通り抜けて。
あらざる人々が、まるで何も起こっていないかのように笑いながら日常をすごす。
この場所。
かつてあったものを演じる。
かつてあったように、そしてこの後も続く。
その、夢の中のような音のないモノクロの光景は、現実の後ろで今も続いている。
しかし、楽しげにはなされる、声のない言葉は、決して我々には届かないままに虚無に吸い込まれる。
暗闇に。
消える。
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そして私。
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