78 / 99
俺、今、女子リア重
俺、今、女子リア重
しおりを挟む
夜明けの早い夏とはいえ、まだ薄暗い早朝。早起きな老人たちでもまだまだ、まどろむ時間に、その怪鳥のような叫び声が響く。
「キェーイ!」
「いかーん! たるんどるぞ緑!」
「は、はい。キ? キェーイ?」
「なんじゃ、腹に力が入っておらん! もう一回!」
「キ、キ、キェー……ごほっ、ごほ……」
「なんじゃ! むせるとは、ふざけるでない! 真面目にやれ!」
「キェーイ!」
「まだじゃ! もう一回!」
「キェーイ!」
「もう、一回!」
「キェーイ!」
「まだ、まだ! もう一回!」
「キェーイ!」
「よし! もう一回!」
「キェーイ!」
「まだ、まだ! もう一回!」
「キェーイ!」
「だめだめ! もう一回!」
「キェーイ! キェーイ!」
「おっ! よいぞ! もう一回!」
「キェーイ! キェーイ! キェーイ!」
「よし! もう一回!」
「キキキキ——キェェェェェェェェェェェェェェェェェェェーイ!」
*
俺は、朝から木刀の素振りをして、くたくたになった汗だくの体を、ひどくダルそうに引きずりながら道場から出ようとする。
「緑! たるんどる!」
「は、はい!」
十メートルくらい離れているのに鼓膜が破れるんじゃないかと思うような声での、気合一閃を浴びて、俺は一瞬で背筋を伸ばしてしゃんとする。
「……山にこもると聞いたので、もっと成長して帰ってくることを期待したが、やはりマダマダのようじゃな……」
「……はい?」
はあ? 山って、生田緑は、あの野外イベントに行くのそう言ってごかましたのか! この爺さんにそんな嘘を……って山にこもったのはまったく嘘でもないが……、
「んっ? なんか不満でもあるのかな?」
「いえ! まったくありません!」
ともかく、この鬼のような老人に、あんなパーティに行ってたなんてバレたらどんな怒られるかわからん。おまけに行ったのは女帝なのに、怒られるのは俺じゃ割りに合わん。
「まあ良い! さっさと身体を清めてこい!」
俺は、余計な詮索を受ける前に、もう三日目となるが全く慣れる気配もない、とても怖い女帝の爺さんの命令に従って、言われたとおりに汗をかいた体をすっきりさせに行くのだった。
と言っても、シャワーを浴びるとか、ましてや湯船につかってゆっくりと体をリラックスなんてことは望むべくもなく、
「ああ……」
俺は今までいた板間の道場のような部屋の引き戸を開け、庭の一角に作られた井戸を見て嘆息をする。
「ん!」
「な、何でもありません!」
振り返らなくてもわかる、鋭く睨む視線に気づいて、観念した俺はそのまま裸足で庭に降りると、井戸に木桶をおろして中の水を汲む。
ああ、ずっと平々凡々の親に生まれ、平々凡々の子供としてそだった庶民派オタクボッチの俺としては、庭に井戸が在るなんていう生活は体験したこともあるわけもなく。こんな機会でもなければきっと一生知ることもなかったのだろうが、
「……くっ」
ああ、井戸水って、
「チュメ、ティエエエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーーーーーーイ!」
夏でもとっても冷たいんだぞ。
*
とはいえ、今は夏。道着の上から水を浴びて体がびしょびしょになったところで、しばらくすれば照りつける太陽のうだるような暑さで直ぐに体は暖まる。
いや生田緑と入れ替わったのが夏でよかった。どうもこの家では、こんな朝の鍛錬を一年中やってるらしく、エアコンなんてあるわけもない板間で裸足で素振りをすると考えただけでも気が遠くなるが、庭で冬に水浴びて気合い入れるなんてそれはもう想像を絶する。
これは、絶対夏のうちに女帝の体から抜けださないといけないなと思うのだった。
しかし……だ。
その女帝の方は、そんな簡単には元に戻る気はないようで、入れ替わった喜多見美亜の体で自由を満喫している。
昨日も、
「そろそろどうですかね……」
と揉み手しながら近づいて、やんわりとそろそろ喜多見美亜の体に戻らしてほしい旨をお伝え申し上げたのだが、
「まだね」
と冷たく言い放たれれば、体は生田緑となっても、中身は女帝には程遠い小心者のボッチ男子高校生はそれ以上何もいえないまま黙ってしまうのであった。
かえすがえずも悔やまれるのは、前の土曜、野外パーティの最後の夜に、周りをよく確認もしないまま、パーティーピーポー経堂萌夏の体に戻ったこと。キスをすれば相手と体が入れ替わる。そんな超常現象を起こす特異体質になってしまったという俺の秘密を、大声で話しながら入れ替わってしまったこと。
いや、その時。萌さんの件も大詰め、彼女の従兄の建人氏とのレイプ未遂事件を解決する最終段階だったから、テンションが上がった俺や萌さんが大声になってしまったのはしょうがない。
しかし、その後、冷静に対処したらもうちょっとなんとかなったのではないか?
俺は、いまさらだが、そう思わないでもないのであった。
あの時、確かに『キスで体が元に戻る』と萌さんが言ったのを聞かれてしまたのだが、体入れ替わりなんてありえないようなことが本当に起きているかなんて、流石に女帝も半信半疑だったと思う。『試しに』なんて言われても、『そんなバカなこと』とか言って固辞してたら、『やっぱり、それはないかな……』なんて諦めてくれたのでは? とか、聞いてみたら、
「確かにそうだったかもね」
生田緑りあっさりと肯定されて、がっくりと肩を落とす俺。
「でも、もうあなたたちの秘密はもう知っちゃったから」
「「…………っ」」
追い討ちをかけられてさらに肩を落とす喜多見美亜と俺がいるのは朝の多摩川。
夏の早い日の出時間なのにも関わらず、まだ薄暗いうちから朝行を行なっていた生田家なので、喜多見美亜の日課の朝のジョギングに合わせてここで合流した今の時間でも、世間的にはまだまだ早朝と言える時間。ラジオ体操の小学生もまだまだ寝床にいるような時間であった。
でも、ならば、夏の灼熱太陽も、この時間ならばまだなんとか耐えられる。というか、井戸水で冷やした体を走って温めてポカポカになったあと、こうやって橋の作る日陰で涼みながら、川を吹き抜けてくる爽やかな風をあびてジョギングの汗を乾かすのはとても気持ち良い。
疲れた体を土手にどかっと投げ出して、目を軽くつむって空の光をまぶた越し人感じるのならば、さっきまでの生田家での緊張もとけて、このままずっとここから動きたくない。そんな気分になるのだった。
だが、
「悪いけど。今日の身代わりはよろしくお願いするから」
そんなわけには行かない今日の生田緑のリアル。
それは、なんとも重く、
——はあ……。
俺は、今日のこれからの大変一日を思い、大きな嘆息を漏らす。
なんとも……。
なんとかなるなら、なんとかしてほしい。なんとかならなくても何とかして欲しい。
でも、なんともならなさそうなので、彼女に課せられた重い十字架を俺が背負うことになるのだろう。
そう、俺が今度入れ替わった、クラスのリア充カーストトップの女帝こと生田緑。その本当の姿は、思っていたのとかなり違ってとてもとても重苦しいものだったのである。
ああ……。
——俺、今、女子リア重。
こんどのJK生活ははそんな充(重)実を俺に向かって課してきたのであった。
「キェーイ!」
「いかーん! たるんどるぞ緑!」
「は、はい。キ? キェーイ?」
「なんじゃ、腹に力が入っておらん! もう一回!」
「キ、キ、キェー……ごほっ、ごほ……」
「なんじゃ! むせるとは、ふざけるでない! 真面目にやれ!」
「キェーイ!」
「まだじゃ! もう一回!」
「キェーイ!」
「もう、一回!」
「キェーイ!」
「まだ、まだ! もう一回!」
「キェーイ!」
「よし! もう一回!」
「キェーイ!」
「まだ、まだ! もう一回!」
「キェーイ!」
「だめだめ! もう一回!」
「キェーイ! キェーイ!」
「おっ! よいぞ! もう一回!」
「キェーイ! キェーイ! キェーイ!」
「よし! もう一回!」
「キキキキ——キェェェェェェェェェェェェェェェェェェェーイ!」
*
俺は、朝から木刀の素振りをして、くたくたになった汗だくの体を、ひどくダルそうに引きずりながら道場から出ようとする。
「緑! たるんどる!」
「は、はい!」
十メートルくらい離れているのに鼓膜が破れるんじゃないかと思うような声での、気合一閃を浴びて、俺は一瞬で背筋を伸ばしてしゃんとする。
「……山にこもると聞いたので、もっと成長して帰ってくることを期待したが、やはりマダマダのようじゃな……」
「……はい?」
はあ? 山って、生田緑は、あの野外イベントに行くのそう言ってごかましたのか! この爺さんにそんな嘘を……って山にこもったのはまったく嘘でもないが……、
「んっ? なんか不満でもあるのかな?」
「いえ! まったくありません!」
ともかく、この鬼のような老人に、あんなパーティに行ってたなんてバレたらどんな怒られるかわからん。おまけに行ったのは女帝なのに、怒られるのは俺じゃ割りに合わん。
「まあ良い! さっさと身体を清めてこい!」
俺は、余計な詮索を受ける前に、もう三日目となるが全く慣れる気配もない、とても怖い女帝の爺さんの命令に従って、言われたとおりに汗をかいた体をすっきりさせに行くのだった。
と言っても、シャワーを浴びるとか、ましてや湯船につかってゆっくりと体をリラックスなんてことは望むべくもなく、
「ああ……」
俺は今までいた板間の道場のような部屋の引き戸を開け、庭の一角に作られた井戸を見て嘆息をする。
「ん!」
「な、何でもありません!」
振り返らなくてもわかる、鋭く睨む視線に気づいて、観念した俺はそのまま裸足で庭に降りると、井戸に木桶をおろして中の水を汲む。
ああ、ずっと平々凡々の親に生まれ、平々凡々の子供としてそだった庶民派オタクボッチの俺としては、庭に井戸が在るなんていう生活は体験したこともあるわけもなく。こんな機会でもなければきっと一生知ることもなかったのだろうが、
「……くっ」
ああ、井戸水って、
「チュメ、ティエエエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーーーーーーイ!」
夏でもとっても冷たいんだぞ。
*
とはいえ、今は夏。道着の上から水を浴びて体がびしょびしょになったところで、しばらくすれば照りつける太陽のうだるような暑さで直ぐに体は暖まる。
いや生田緑と入れ替わったのが夏でよかった。どうもこの家では、こんな朝の鍛錬を一年中やってるらしく、エアコンなんてあるわけもない板間で裸足で素振りをすると考えただけでも気が遠くなるが、庭で冬に水浴びて気合い入れるなんてそれはもう想像を絶する。
これは、絶対夏のうちに女帝の体から抜けださないといけないなと思うのだった。
しかし……だ。
その女帝の方は、そんな簡単には元に戻る気はないようで、入れ替わった喜多見美亜の体で自由を満喫している。
昨日も、
「そろそろどうですかね……」
と揉み手しながら近づいて、やんわりとそろそろ喜多見美亜の体に戻らしてほしい旨をお伝え申し上げたのだが、
「まだね」
と冷たく言い放たれれば、体は生田緑となっても、中身は女帝には程遠い小心者のボッチ男子高校生はそれ以上何もいえないまま黙ってしまうのであった。
かえすがえずも悔やまれるのは、前の土曜、野外パーティの最後の夜に、周りをよく確認もしないまま、パーティーピーポー経堂萌夏の体に戻ったこと。キスをすれば相手と体が入れ替わる。そんな超常現象を起こす特異体質になってしまったという俺の秘密を、大声で話しながら入れ替わってしまったこと。
いや、その時。萌さんの件も大詰め、彼女の従兄の建人氏とのレイプ未遂事件を解決する最終段階だったから、テンションが上がった俺や萌さんが大声になってしまったのはしょうがない。
しかし、その後、冷静に対処したらもうちょっとなんとかなったのではないか?
俺は、いまさらだが、そう思わないでもないのであった。
あの時、確かに『キスで体が元に戻る』と萌さんが言ったのを聞かれてしまたのだが、体入れ替わりなんてありえないようなことが本当に起きているかなんて、流石に女帝も半信半疑だったと思う。『試しに』なんて言われても、『そんなバカなこと』とか言って固辞してたら、『やっぱり、それはないかな……』なんて諦めてくれたのでは? とか、聞いてみたら、
「確かにそうだったかもね」
生田緑りあっさりと肯定されて、がっくりと肩を落とす俺。
「でも、もうあなたたちの秘密はもう知っちゃったから」
「「…………っ」」
追い討ちをかけられてさらに肩を落とす喜多見美亜と俺がいるのは朝の多摩川。
夏の早い日の出時間なのにも関わらず、まだ薄暗いうちから朝行を行なっていた生田家なので、喜多見美亜の日課の朝のジョギングに合わせてここで合流した今の時間でも、世間的にはまだまだ早朝と言える時間。ラジオ体操の小学生もまだまだ寝床にいるような時間であった。
でも、ならば、夏の灼熱太陽も、この時間ならばまだなんとか耐えられる。というか、井戸水で冷やした体を走って温めてポカポカになったあと、こうやって橋の作る日陰で涼みながら、川を吹き抜けてくる爽やかな風をあびてジョギングの汗を乾かすのはとても気持ち良い。
疲れた体を土手にどかっと投げ出して、目を軽くつむって空の光をまぶた越し人感じるのならば、さっきまでの生田家での緊張もとけて、このままずっとここから動きたくない。そんな気分になるのだった。
だが、
「悪いけど。今日の身代わりはよろしくお願いするから」
そんなわけには行かない今日の生田緑のリアル。
それは、なんとも重く、
——はあ……。
俺は、今日のこれからの大変一日を思い、大きな嘆息を漏らす。
なんとも……。
なんとかなるなら、なんとかしてほしい。なんとかならなくても何とかして欲しい。
でも、なんともならなさそうなので、彼女に課せられた重い十字架を俺が背負うことになるのだろう。
そう、俺が今度入れ替わった、クラスのリア充カーストトップの女帝こと生田緑。その本当の姿は、思っていたのとかなり違ってとてもとても重苦しいものだったのである。
ああ……。
——俺、今、女子リア重。
こんどのJK生活ははそんな充(重)実を俺に向かって課してきたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる