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俺、今、女子リア重
俺、今、女子ドン引き中
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さて、イケメンをコミケに連れて来て生田家との縁談は無い方向に持っていく。と言う基本方針は固まった。
まあ俺が生田緑としてキモさの天元突破を見せたなら、たいていの男は逃げていくだろう自信はあるが……。
でも、——そもそもだ。
どうやって、あのおぼっちゃんをコミケに連れてくる? コミケが、俺の孤高のキモスキルを見せつける絶好の機会なのは間違いないけど、相手がやってこないんじゃしょうがない。
俺は、そんな根本的なことを忘れていた。
どうする?
相手が来てくれたら成功間違いなしだ! ——と思うが、来てくれなきゃどうしようもない。
もちろん、会うことはすぐにできる。俺があの会食のあとに、「敬一さんとはまた会って見たい」と渋沢家に伝えたら、それならば早速若いものどうしでと、すぐにそんな見合いの典型的な返事がかえってきていた。
おまけに、その後具体的な合う日を決めないでいたら、早く、早く、善は急げ的な話が散々相手側から入ってきているようだった。明日にでも、いや今日これからでもと、息子の都合も聞かないまま毎日のようにじいさんの秘書のところに連絡が入っているとのことだった。
だから会うと言ったらどこへでも……でもコミケと言ったら来てくれるだろうか?
「待てよ……」
「…………?」
「お台場ってだけ言えば良いか——デートスポットだし」
「何をよ?」
「いや、こっちの話……」
秋葉原中央通り。お盆近くで人気の心持ち少ない都内であるが、コミケを前にしての上京組でも来ているのかいつもの週末以上の混雑である。その通りを俺と喜多見美亜は歩いていた。
「……?」
俺が脈絡なくつぶやいた一言に不審そうな様子のあいつ。
「いや、ちょっと悩んでいたことあったんだけど——大丈夫になった」
別にこいつに報告するほどの話じゃないしな。なんとかなりそうだし。下手に相談するといろいろ指示してきたり、ダメだししてきそうだし。
ほんと、こいつ能天気な割にへんなところでうざいくらいに完璧主義だったりするんだよな。
「……⁇ まあ、いいけど、それより、花奈ちゃんの方はうまくいってるみたいね」
「ああ」
下北沢花奈はコミケでおまけのプレゼントに配るイラストを一枚完成させると言って、俺たちから別れて、例のぼろアパートの仕事場に向かった。そこでは斎藤フラメンコの他のメンバーもいてそれぞれがプレゼント用イラストを作成中とのことだった。
下北沢花奈の他、公子さんと律さん。斎藤フラメンコというのはサークル名であり三人の共同ペンネームであったのだが、あまりの才能の差にやる気を無くしていたお姉様方二人は、集まっても酒飲んでグダッているだけ、実質下北沢花奈の個人のペンネームとなっていたのだった。
しかし、俺が体が入れ替わった時のあれやこれを通じて、また三人で協力しながら作品を作り出すことを初めた。それは下北沢花奈一人では決して達することのできない新たな領域に彼女自身をも押し上げることになった。
……と思いたいね。まあ、先に読ませてもらったコミケ出展用の作品は、まさしくニュー花奈ちゃんを思わせ出色のできであるし、お姉様方二人の影響もあちこちに感じられて、内情を知る者としては嬉しくかつほっこりするような作品であったが。
その後も、三人の良い状態は続いているようだ。それぞれがプレゼントイラストを書くなんて、ちょっと前までの斎藤フラメンコであれば考えられないことだと思われた。もちろん正直、絵のクオリティは下北沢花奈が図抜けているのは間違いないだろうけど、でも残りの二人だって世にでるべき実力は十分に持っていて……。
「いいわね、あの三人」
「ああ」
俺は感慨深げに首肯する。
ほんと色々あったけど、あの三人には今後も仲良く互いを高めていって欲しいと思う。それがきっと彼女らの作品もよくするのだろうという斎藤フラメンコの大フアンである俺の打算的な感情も含めてだけど、ほんと「他人」事ではなかったあのサークルのごたごたと解決は俺になんとも特別な感情をもたらすのだった。
というか、体の入れ替わるたびに「他人」でない人が増えていってしまう俺の現状だけど、
「まあ、あの三人はもう大丈夫として、次は緑の件よね」
「ああ」
今回の女帝の件は、あんまり感情移入できない「他人」事のままで終わる気がする。なんか住む世界が違うんだよね。
「……なんとかここでうまくイケメン撃退して、さっさと入れ替わらないと、あんたもつらいでしょ」
「ああ」
また深く首肯する俺であった。
やっぱり生田家でうまく立ち回るには俺では力不足だ。
いつも俺に厳しい喜多見美亜も、今回ばかりは同情的だ。
だからこいつの協力ももらって、コミケでなんとかうまく破談に持っていきたいところだ。
そのためには、この後残された時間で万全を期する必要がある。
俺のキモさを最大限にまで高める必要があるのだった。
だから、
「……じゃあ、秋葉をちらっと散策していくか」
「はあ?」
「エネルギーのチャージがいる。俺のキモさを高めるために萌エルギーをこの場所で充填する必要がある」
「……まあ、わからないでもないけど」
「別にいいぞ」
「へ? 『いいぞ』ってなにが?」
「ついてこなくていいぞ。ここから先は素人には危険だ」
俺は、これからこの街で突き抜けるであろう死線の数々を思いながら、喜多見美亜の決意を問うのだが、
「なにを大げさなこと言ってるのよ! あんたみたいなヘタレオタクがいくところくらいで私がビビるわけないでしょ」
おお、そうか。その言葉に偽りはないんだな。俺はもう世間体も気にせずに全力をだすぞ。 喜多見美亜の体にいるときは少し遠慮してたんだが、女帝からはなんでもやっていいと許可もらってるのだ。遠慮して失敗したら逆に失礼に当たるだろう。
俺は……やるぜ?
「はん? ヘタレの全力を見せてもらおうじゃないの。この私をビビらせることができるとでも思っているのかしら」
おお。その言葉もう取り消せないぜ。
「さあ、さっさといきましょうその、危険だとかいう真の戦場へ」
「そうか……なら」
なんだか、俺の脅しにビビるどころか、むしろノリノリの喜多見美亜と一緒に、俺は戦士へと変わりこの戦さ場の中へ入っていくのだった。
が……。
「きゃー。なにこれ可愛い。このフィギュアほしい! アニメから抜け出してきたみたい」
「ううん、こっちは、これはキモい。キモいくらいに胸でかい。でもこれは良いキモさね。なかなかこんな造形できるもんじゃないわ」
「うわ、この夏アニメもう同人誌できてる。原作付きならともかく、アニオリの同人をこの時期出してるなんて随分仕事早いね」
「うわ。これはきてますぞ。大変ですぞ。拙者感服しましたぞ。このカバーイラスト期待できますぞ。うひ。妹ものですか。これは是非とも拝見せざるをえないですな。ひひひ」
「…………」
俺は、もはや隠すつもりもなさそうなリア充様のオタ充ぶりを眺めながら、正直ドン引きしているところだった。いや、もうこれキャラ崩壊どころじゃなくて、人格何かに乗っ取られているだろ。なんだい拙者って……妹好きキャラは拙者のほうじゃないだろ——って、ともかく……。
人が欲望に忠実に、恥も外聞もすてるこういう姿を見ると、なんだか一気に冷静になってしまう俺であった。もし、今日、俺一人なら、喜多見美亜と同じようなオタ充ぶりを存分に発揮していた自身はあるが、なぜだか、こいつの前では、心に少し遠慮というか、——てらいって言うのかな、なんかちょっとカッコつけてしまうような心持ちが俺にあるのだった。
でも、俺は、その曖昧で捉えどころがなく、少し複雑な感情をその時には紐解くことができない。その思いの真の意味に気づかずに、
「はあ……」
アニメキャラのフィギュアを持ち上げてにたにたと笑うあいつを見て、俺は、ただ大きな嘆息をするだけ。
夏の午後。ジリジリと照りつける太陽の下、蒸し暑い機構をさらに暑苦しくしている熱気あふれる強敵たちの行き交うこの街。
俺は、そのあいつの肩越しに見える秋葉の街の喧騒を眺めながら、そのいつもにも増して精強そうな強敵の多さに、いつのまにかコミケもあさってとなっていることを改めて思う。
ああ、つまり、俺の本当の戦いはこれからだ……。
じゃなくて——。
もうすぐそこに迫ってしまっていると言うことなのだった。
まあ俺が生田緑としてキモさの天元突破を見せたなら、たいていの男は逃げていくだろう自信はあるが……。
でも、——そもそもだ。
どうやって、あのおぼっちゃんをコミケに連れてくる? コミケが、俺の孤高のキモスキルを見せつける絶好の機会なのは間違いないけど、相手がやってこないんじゃしょうがない。
俺は、そんな根本的なことを忘れていた。
どうする?
相手が来てくれたら成功間違いなしだ! ——と思うが、来てくれなきゃどうしようもない。
もちろん、会うことはすぐにできる。俺があの会食のあとに、「敬一さんとはまた会って見たい」と渋沢家に伝えたら、それならば早速若いものどうしでと、すぐにそんな見合いの典型的な返事がかえってきていた。
おまけに、その後具体的な合う日を決めないでいたら、早く、早く、善は急げ的な話が散々相手側から入ってきているようだった。明日にでも、いや今日これからでもと、息子の都合も聞かないまま毎日のようにじいさんの秘書のところに連絡が入っているとのことだった。
だから会うと言ったらどこへでも……でもコミケと言ったら来てくれるだろうか?
「待てよ……」
「…………?」
「お台場ってだけ言えば良いか——デートスポットだし」
「何をよ?」
「いや、こっちの話……」
秋葉原中央通り。お盆近くで人気の心持ち少ない都内であるが、コミケを前にしての上京組でも来ているのかいつもの週末以上の混雑である。その通りを俺と喜多見美亜は歩いていた。
「……?」
俺が脈絡なくつぶやいた一言に不審そうな様子のあいつ。
「いや、ちょっと悩んでいたことあったんだけど——大丈夫になった」
別にこいつに報告するほどの話じゃないしな。なんとかなりそうだし。下手に相談するといろいろ指示してきたり、ダメだししてきそうだし。
ほんと、こいつ能天気な割にへんなところでうざいくらいに完璧主義だったりするんだよな。
「……⁇ まあ、いいけど、それより、花奈ちゃんの方はうまくいってるみたいね」
「ああ」
下北沢花奈はコミケでおまけのプレゼントに配るイラストを一枚完成させると言って、俺たちから別れて、例のぼろアパートの仕事場に向かった。そこでは斎藤フラメンコの他のメンバーもいてそれぞれがプレゼント用イラストを作成中とのことだった。
下北沢花奈の他、公子さんと律さん。斎藤フラメンコというのはサークル名であり三人の共同ペンネームであったのだが、あまりの才能の差にやる気を無くしていたお姉様方二人は、集まっても酒飲んでグダッているだけ、実質下北沢花奈の個人のペンネームとなっていたのだった。
しかし、俺が体が入れ替わった時のあれやこれを通じて、また三人で協力しながら作品を作り出すことを初めた。それは下北沢花奈一人では決して達することのできない新たな領域に彼女自身をも押し上げることになった。
……と思いたいね。まあ、先に読ませてもらったコミケ出展用の作品は、まさしくニュー花奈ちゃんを思わせ出色のできであるし、お姉様方二人の影響もあちこちに感じられて、内情を知る者としては嬉しくかつほっこりするような作品であったが。
その後も、三人の良い状態は続いているようだ。それぞれがプレゼントイラストを書くなんて、ちょっと前までの斎藤フラメンコであれば考えられないことだと思われた。もちろん正直、絵のクオリティは下北沢花奈が図抜けているのは間違いないだろうけど、でも残りの二人だって世にでるべき実力は十分に持っていて……。
「いいわね、あの三人」
「ああ」
俺は感慨深げに首肯する。
ほんと色々あったけど、あの三人には今後も仲良く互いを高めていって欲しいと思う。それがきっと彼女らの作品もよくするのだろうという斎藤フラメンコの大フアンである俺の打算的な感情も含めてだけど、ほんと「他人」事ではなかったあのサークルのごたごたと解決は俺になんとも特別な感情をもたらすのだった。
というか、体の入れ替わるたびに「他人」でない人が増えていってしまう俺の現状だけど、
「まあ、あの三人はもう大丈夫として、次は緑の件よね」
「ああ」
今回の女帝の件は、あんまり感情移入できない「他人」事のままで終わる気がする。なんか住む世界が違うんだよね。
「……なんとかここでうまくイケメン撃退して、さっさと入れ替わらないと、あんたもつらいでしょ」
「ああ」
また深く首肯する俺であった。
やっぱり生田家でうまく立ち回るには俺では力不足だ。
いつも俺に厳しい喜多見美亜も、今回ばかりは同情的だ。
だからこいつの協力ももらって、コミケでなんとかうまく破談に持っていきたいところだ。
そのためには、この後残された時間で万全を期する必要がある。
俺のキモさを最大限にまで高める必要があるのだった。
だから、
「……じゃあ、秋葉をちらっと散策していくか」
「はあ?」
「エネルギーのチャージがいる。俺のキモさを高めるために萌エルギーをこの場所で充填する必要がある」
「……まあ、わからないでもないけど」
「別にいいぞ」
「へ? 『いいぞ』ってなにが?」
「ついてこなくていいぞ。ここから先は素人には危険だ」
俺は、これからこの街で突き抜けるであろう死線の数々を思いながら、喜多見美亜の決意を問うのだが、
「なにを大げさなこと言ってるのよ! あんたみたいなヘタレオタクがいくところくらいで私がビビるわけないでしょ」
おお、そうか。その言葉に偽りはないんだな。俺はもう世間体も気にせずに全力をだすぞ。 喜多見美亜の体にいるときは少し遠慮してたんだが、女帝からはなんでもやっていいと許可もらってるのだ。遠慮して失敗したら逆に失礼に当たるだろう。
俺は……やるぜ?
「はん? ヘタレの全力を見せてもらおうじゃないの。この私をビビらせることができるとでも思っているのかしら」
おお。その言葉もう取り消せないぜ。
「さあ、さっさといきましょうその、危険だとかいう真の戦場へ」
「そうか……なら」
なんだか、俺の脅しにビビるどころか、むしろノリノリの喜多見美亜と一緒に、俺は戦士へと変わりこの戦さ場の中へ入っていくのだった。
が……。
「きゃー。なにこれ可愛い。このフィギュアほしい! アニメから抜け出してきたみたい」
「ううん、こっちは、これはキモい。キモいくらいに胸でかい。でもこれは良いキモさね。なかなかこんな造形できるもんじゃないわ」
「うわ、この夏アニメもう同人誌できてる。原作付きならともかく、アニオリの同人をこの時期出してるなんて随分仕事早いね」
「うわ。これはきてますぞ。大変ですぞ。拙者感服しましたぞ。このカバーイラスト期待できますぞ。うひ。妹ものですか。これは是非とも拝見せざるをえないですな。ひひひ」
「…………」
俺は、もはや隠すつもりもなさそうなリア充様のオタ充ぶりを眺めながら、正直ドン引きしているところだった。いや、もうこれキャラ崩壊どころじゃなくて、人格何かに乗っ取られているだろ。なんだい拙者って……妹好きキャラは拙者のほうじゃないだろ——って、ともかく……。
人が欲望に忠実に、恥も外聞もすてるこういう姿を見ると、なんだか一気に冷静になってしまう俺であった。もし、今日、俺一人なら、喜多見美亜と同じようなオタ充ぶりを存分に発揮していた自身はあるが、なぜだか、こいつの前では、心に少し遠慮というか、——てらいって言うのかな、なんかちょっとカッコつけてしまうような心持ちが俺にあるのだった。
でも、俺は、その曖昧で捉えどころがなく、少し複雑な感情をその時には紐解くことができない。その思いの真の意味に気づかずに、
「はあ……」
アニメキャラのフィギュアを持ち上げてにたにたと笑うあいつを見て、俺は、ただ大きな嘆息をするだけ。
夏の午後。ジリジリと照りつける太陽の下、蒸し暑い機構をさらに暑苦しくしている熱気あふれる強敵たちの行き交うこの街。
俺は、そのあいつの肩越しに見える秋葉の街の喧騒を眺めながら、そのいつもにも増して精強そうな強敵の多さに、いつのまにかコミケもあさってとなっていることを改めて思う。
ああ、つまり、俺の本当の戦いはこれからだ……。
じゃなくて——。
もうすぐそこに迫ってしまっていると言うことなのだった。
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