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068:地下9階9
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「分かる範囲に4。ジャイアント・スパイダー1、青いの1、人型の2。他にもっと奥に大きいのがいそう」
「ボスとやるには他のやつがとにかく邪魔だな。釣れるやつはいるか?」
「普通のと人型のはいけそう? 青いのは反応するかも、しないかも、ぎりぎり?」
「いけるところから釣ってくれ。可能な限り削ろう」
青いジャイアント・スパイダーに対処するにも、ボスであろう魔物に対処するにもこの場所には魔物の数が多すぎる。とにかく1体でも削っておく必要があった。
部屋の中をのぞき左側へとダーツを投げたフリアが駆け戻る。
「1!」
そして姿を現した人型の魔物にエディが盾で殴りつけて引き取り、フェリクスとカリーナのファイアー・ボルトが命中、すかさずクリストが剣で切りつけると何もさせずに撃破に成功する。すぐさま部屋へと折り返したフリアが今度は右側へ少し入ってからすぐさま引き返してきて再び「1!」と言い置いて駆け抜ける。そして現れた人型の魔物を同じように倒すことができた。
「あとジャイアント・スパイダーはいけそう」
そして部屋へと戻っていったフリアが正面少し入ったところで投じたダーツに釣り出された普通のジャイアント・スパイダー。これも同じようにエディが引き取り、全員が攻撃を集中して撃破する。残りはボスと青いジャイアント・スパイダーか。
「ここからは全員で行った方がいいだろうな。青いやつは左か? 分かった。壁に沿って近づこう」
装備や魔法を確認したところで部屋へと入り、全員が固まって左手に壁を見ながら少しずつ進んでいく。しばらくすると先の方に大きなジャイアント・スパイダーが見えてくる。色はまだ分からないが、恐らくはあのテレポートを使う魔物だと考えていいだろう。その向こう、もっと奥にはそのジャイアント・スパイダーよりも高い位置に薄暗く何かがいることが分かってくる。それは人型のように見えて人型のクモのもっと大きなものかと予想された。
フリアがもう少し近づこうと前に出たところで不意にジャイアント・スパイダーの姿が消える。
「来るよ!」
フリアはそこから後退、エディが盾を構えて出現に備える。だが出現した位置はもっと後ろ、自分たちが入ってきた通路に近い位置だった。
全員の意識が一瞬そちらを向いた時、エディの盾にガアンッと何かが当たってはじけた。え、と意識を戻したクリストの視線の先で、弓を構える人がいた。鎧を身につけ弓を構える人だ。だがその人は上半身だけで、それはジャイアント・スパイダーの上に乗っていた。いやジャイアント・スパイダーの上に人の上半身が生えているのだ。それは弓を引き、放たれた矢はクリスト目掛けて飛ぶが、途中で方向をぐぐっと変え、またエディの盾に命中して音を立てる。
背後から迫る青いジャイアント・スパイダーにフェリクスがマジック・ミサイルを放つが、また途中で姿が消え、行き先を失った魔法の矢がそのまま背後の壁に当たってはじける。
エディの盾の近くにいれば矢の攻撃からは身を守れる。突然青いジャイアント・スパイダーが現れても近くにいれば身を守れるかもしれない。だが攻撃に転じるタイミングが見つからなかった。
弓を構えた魔物がそのまま移動を始め、姿が柱の向こうに隠れる。その移動したあとから、その場所には奥からもう1体青いジャイアント・スパイダーがこちらに向かって動き始めた。この魔物はこの場所に2体はいたのだ。そのまま向かってくるのなら何とか対処できるかとクリストが剣を構えると、柱の陰からこちらの頭上へと矢が放たれる。矢は陰から的外れな方向へ放たれたが、そこから曲がり落ちるような角度を付けてエディの方へと向かい、ヘルムに当たってはじけた。予想外の方向から衝撃を受けたエディがふらつくとそこへ消えていた青いジャイアント・スパイダーが現れ、殴りつけてまた消える。立て続けにダメージを受けたエディが片膝をついた。
クリストは自分の方へ迫っていた青いジャイアント・スパイダーへ剣を振るおうとしたが、その瞬間に相手は姿を消し、そして後方、カリーナの近くに現れると腕を振るう。だがそれは待ち構えられていた。
「マインド・ウィップ!」
カリーナから放たれた半透明のムチが相手を打ち、そのまま絡みつくようにまとわりついて動きを封じる。それを見たフェリクスがスコーチング・レイを放ち、まとめて青いジャイアント・スパイダーに命中する。さらにフリアが持っていたナイフを投げつけダメージを積む。
「エディ」
体勢を立て直したところへクリストが声をかける。
「俺はダークネスを使ってあいつをねらう。引きつけておいてくれ」
言いおくと剣を軽く振り、剣身からバアッと広がった闇に包まれて姿を隠す。その闇は壁際に動き、薄闇にまぎれた。
柱の陰に隠れていた人を乗せたような形のスパイダーがそこから横へ移動しながら矢を放ち、また柱に隠れるようにして動く。そこからはまた頭上へ曲射のような形で次を放つ。続けざまに放たれた矢はぐぐっと不自然な軌道を描いてエディの盾へ命中しはじけた。
エディを殴ったあと移動していた青いジャイアント・スパイダーがカリーナに捕まっている1体の後ろを通っていき、フリアがそちらにナイフを投じると姿を消した。フェリクスは動けずにいる相手に向かってマジック・ミサイルを放ち、まとめて受けたその1体がようやく地面に崩れ落ちる。だがその真上に現れたもう1体からの攻撃には対応できず、殴られて背後の壁にたたきつけられた。
エディは気を引くようにそちらに斧を振りながら前に一歩出て柱の陰になっていた人を乗せた形のスパイダーを視線に入れる。相手はこちらを視界に入れると弓を構えた。そこへ背後から闇に紛れて近づいたクリストが飛び出し、スパイダーの胴体へと深く剣を突き刺した。
不意を打たれた人を乗せたスパイダーが激しく動きクリストを引きずるようにして移動していく。さらにその途中で構えていた弓をクリストに向けて矢を放った。とっさに剣から手を離してそれをかわしたクリストが地面を転がる。クリストを振り落としたその魔物がまたエディたちの方を向き弓を構えると青いスパイダーがさっと離れていった。何か強い攻撃が来る予兆か。
「ライトニング・ボルト!」
フェリクスの雷撃の魔法がその人の体をとらえてダメージを与える。
「ファイアー・ボール!」
カリーナはそのあとに続けてファイアー・スタッフを振るい魔法を放った。人を乗せた形をしたスパイダーが炎の渦に包まれる。エディは青いスパイダーの出現を警戒し、クリストはようやく起き上がって腰のショート・ソードを抜いたところ。炎が消えたあとにはまだその魔物は立っていて、そして構えていた弓から矢を放った。その矢はエディの頭上へ向けて斜めに放たれ、頂点で地面へと向けて角度を変え、そしてエディの頭上を目掛けて落ちて行く途中で無数の矢へと分裂してから消えうせた。
え、と思った瞬間にエディ、フェリクス、カリーナを透明なつぶてのような塊が打ち据える。無数に当たるそれは消えた矢だろうか。実体を失ったことでエディの盾が受け止める機能を効果を発揮しなかったのか、次々とダメージを与えてくる。さらにそこに青いジャイアント・スパイダーが姿を現し、横から突っ込むようにしてフェリクス、カリーナを弾き飛ばした。2人が地面に転がる間にダメージをこらえながらエディが斧を振り回し、それを胴に受けた青いスパイダーが後退する。フリアがそこへ追撃のナイフを投げ込むが、当たる寸前にまたしても姿を消した。
エディは盾を構えフェリクスとカリーナを守るために位置を変える。2人はまだ起き上がれていないのだ。その前でまた人を乗せた形のスパイダーが弓を構え、上を向いて矢を放とうとした、そのタイミングに間に合ったクリストが横から突っ込むようにしてクモの体にショート・ソードを深く刺す。魔物は手を止めて弓をそちらに向けて矢を放とうとしたところへ、エディの背後でどうにか身を起こした2人が立ち上がるよりも前に魔法を放つ。「マジック・ミサイル!」
フェリクスは強化状態の魔法を、そしてカリーナはマジック・ミサイル・ワンドの力を借りて。そうして放たれた7本の魔法の矢がまとめて上半身へと殺到してダメージを与えると、魔物は身をのけ反らせ放たれた矢はクリストからは遠く離れた地面に突き刺さった。
立て直して再び矢を放とうと弓を構えたとき、その背後からクモの胴体へとフリアが駆け上がり、クリストが突き刺したままだった剣を蹴り飛ばしながら上半身に組み付くと首元にナイフを突き刺した。
ギャアアッと激しく叫ぶ魔物は手を後ろに回してくる。それを避けたフリアはそのまま足元の刺さったままの剣の柄を握り、振り回されるままにそれをぐりぐりとねじ込むように動かす。耐えられなくなった魔物が腰をドゥッと音をさせて地面に落とす。クリストはそこへ駆け込むと横腹に刺さったままのショート・ソードを足をかけて抜き、そのまま大きく首へと振ってたたきつけた。腕を断ち切り、首の半分まで剣が潜り込み止まる。その勢いに負けた魔物の上半身が反対側へ折れるように崩れて動きを止めた。
やったか、と思った瞬間だった。動かなくなった胴体から下りてくるフリアの背後に青いジャイアント・スパイダーが現れて殴りつけるとまた姿を消す。
ショート・ソードを首からはずしてそちらへ駆けつけようとクリストが動いた、その背後にまた青いジャイアント・スパイダーが現れて蹴りつける。エディが投げつけた斧が届いたことは幸運だった。うまくジャイアント・スパイダーの首元に当たりダメージを与え、動きが止まったことでフェリクスのマジック・ミサイルが間に合った。立て続けに命中した魔法の矢のダメージを受けてその青いジャイアント・スパイダーもようやく動きを止めたのだ。
「終わった、か? 皆、大丈夫か?」
蹴り飛ばされてスパイダーの胴体に寄りかかるような格好になっていたクリストが天井を見上げて息を吐く。地面に転がっていたフリアが起き上がり、エディの陰から2人も手を振った。
「セットでボス扱いだったのか、それとも消えていたからボス撃破でも影響がなかったのか、単にタイミングの問題か。よく分からんが最後のやつは予想外だったな」
「もうね、やるたびにはっきり強くなっていくのがきついわね。回復魔法をかけるから少し待ってね」
「おーい、集まれ集まれ。ふぅ、一度とにかく休憩にしよう」
一息ついたカリーナが回復魔法を使い、さらに休憩を取る。とにかく体力だけでなく気力も回復させる必要があった。それから後始末をして、そしてエリアの残り部分を調べて宝箱を回収しながら戻るのだ。
ボスの人の上半身を乗せた形をしたジャイアント・スパイダーからは弓と鎧も回収、他のスパイダーは魔石と体の一部、今回は足先で十分だが、それを回収していく。青いスパイダーのうち1体には今回与えたのとは別に傷があり、恐らく途中で遭遇した相手だろうと考えられた。帰り道の洞窟からは魔物は消えていて、そこでは一安心することができた。途中2カ所で宝箱を見つけ、1つからは宝石が10個、もう1つからはヘッドバンドが手に入った。
スタート地点に戻り、そこから階段を下りて中央の噴水まで移動すると、壁のランプの最後の1つも消灯していて、これで全てのエリアのクリアが確認できた。仲間が休憩の準備をしている間にクリストは正面の両開きの扉の先を見に行くと、奥の緑の光も消えていて、そして柱の上にあったはずの悪魔の像が全て消えていることが分かる。これで全ての準備が整ったといえるだろう。
鑑定の結果はボスの着けていた鎧は普通のチェインメイルだったが、弓はアキュラシー・ボウ、命中とダメージの判定に+3のボーナスを持ち、射程距離内の目標に対する命中率の低下効果を一切無視できるという性能を持っていた。残念ながら弓手を持たない自分たちでは使いこなせないが、価値は非常に高いだろうと想像された。
もう1つ、ヘッドバンドに関してはインテレクト・ヘッドバンド、知力を19に上昇させるという効果があるのだという。19という値が大きいのかどうかは分からず、そしてすでに19よりも高い知力があるのならば何の効果もないというのだから扱いに困る。明らかに知力の低い者が使う分には素晴らしい効果が望めるだろう。
今回の探索では思ったような成果は得られなかったが、とにかくこれで全てのエリアをクリアしたことにはなるのだ。今はとにかく十分な休憩を取って回復する時だ。そして次には正面、最後の場所へ挑むのだ。
「ボスとやるには他のやつがとにかく邪魔だな。釣れるやつはいるか?」
「普通のと人型のはいけそう? 青いのは反応するかも、しないかも、ぎりぎり?」
「いけるところから釣ってくれ。可能な限り削ろう」
青いジャイアント・スパイダーに対処するにも、ボスであろう魔物に対処するにもこの場所には魔物の数が多すぎる。とにかく1体でも削っておく必要があった。
部屋の中をのぞき左側へとダーツを投げたフリアが駆け戻る。
「1!」
そして姿を現した人型の魔物にエディが盾で殴りつけて引き取り、フェリクスとカリーナのファイアー・ボルトが命中、すかさずクリストが剣で切りつけると何もさせずに撃破に成功する。すぐさま部屋へと折り返したフリアが今度は右側へ少し入ってからすぐさま引き返してきて再び「1!」と言い置いて駆け抜ける。そして現れた人型の魔物を同じように倒すことができた。
「あとジャイアント・スパイダーはいけそう」
そして部屋へと戻っていったフリアが正面少し入ったところで投じたダーツに釣り出された普通のジャイアント・スパイダー。これも同じようにエディが引き取り、全員が攻撃を集中して撃破する。残りはボスと青いジャイアント・スパイダーか。
「ここからは全員で行った方がいいだろうな。青いやつは左か? 分かった。壁に沿って近づこう」
装備や魔法を確認したところで部屋へと入り、全員が固まって左手に壁を見ながら少しずつ進んでいく。しばらくすると先の方に大きなジャイアント・スパイダーが見えてくる。色はまだ分からないが、恐らくはあのテレポートを使う魔物だと考えていいだろう。その向こう、もっと奥にはそのジャイアント・スパイダーよりも高い位置に薄暗く何かがいることが分かってくる。それは人型のように見えて人型のクモのもっと大きなものかと予想された。
フリアがもう少し近づこうと前に出たところで不意にジャイアント・スパイダーの姿が消える。
「来るよ!」
フリアはそこから後退、エディが盾を構えて出現に備える。だが出現した位置はもっと後ろ、自分たちが入ってきた通路に近い位置だった。
全員の意識が一瞬そちらを向いた時、エディの盾にガアンッと何かが当たってはじけた。え、と意識を戻したクリストの視線の先で、弓を構える人がいた。鎧を身につけ弓を構える人だ。だがその人は上半身だけで、それはジャイアント・スパイダーの上に乗っていた。いやジャイアント・スパイダーの上に人の上半身が生えているのだ。それは弓を引き、放たれた矢はクリスト目掛けて飛ぶが、途中で方向をぐぐっと変え、またエディの盾に命中して音を立てる。
背後から迫る青いジャイアント・スパイダーにフェリクスがマジック・ミサイルを放つが、また途中で姿が消え、行き先を失った魔法の矢がそのまま背後の壁に当たってはじける。
エディの盾の近くにいれば矢の攻撃からは身を守れる。突然青いジャイアント・スパイダーが現れても近くにいれば身を守れるかもしれない。だが攻撃に転じるタイミングが見つからなかった。
弓を構えた魔物がそのまま移動を始め、姿が柱の向こうに隠れる。その移動したあとから、その場所には奥からもう1体青いジャイアント・スパイダーがこちらに向かって動き始めた。この魔物はこの場所に2体はいたのだ。そのまま向かってくるのなら何とか対処できるかとクリストが剣を構えると、柱の陰からこちらの頭上へと矢が放たれる。矢は陰から的外れな方向へ放たれたが、そこから曲がり落ちるような角度を付けてエディの方へと向かい、ヘルムに当たってはじけた。予想外の方向から衝撃を受けたエディがふらつくとそこへ消えていた青いジャイアント・スパイダーが現れ、殴りつけてまた消える。立て続けにダメージを受けたエディが片膝をついた。
クリストは自分の方へ迫っていた青いジャイアント・スパイダーへ剣を振るおうとしたが、その瞬間に相手は姿を消し、そして後方、カリーナの近くに現れると腕を振るう。だがそれは待ち構えられていた。
「マインド・ウィップ!」
カリーナから放たれた半透明のムチが相手を打ち、そのまま絡みつくようにまとわりついて動きを封じる。それを見たフェリクスがスコーチング・レイを放ち、まとめて青いジャイアント・スパイダーに命中する。さらにフリアが持っていたナイフを投げつけダメージを積む。
「エディ」
体勢を立て直したところへクリストが声をかける。
「俺はダークネスを使ってあいつをねらう。引きつけておいてくれ」
言いおくと剣を軽く振り、剣身からバアッと広がった闇に包まれて姿を隠す。その闇は壁際に動き、薄闇にまぎれた。
柱の陰に隠れていた人を乗せたような形のスパイダーがそこから横へ移動しながら矢を放ち、また柱に隠れるようにして動く。そこからはまた頭上へ曲射のような形で次を放つ。続けざまに放たれた矢はぐぐっと不自然な軌道を描いてエディの盾へ命中しはじけた。
エディを殴ったあと移動していた青いジャイアント・スパイダーがカリーナに捕まっている1体の後ろを通っていき、フリアがそちらにナイフを投じると姿を消した。フェリクスは動けずにいる相手に向かってマジック・ミサイルを放ち、まとめて受けたその1体がようやく地面に崩れ落ちる。だがその真上に現れたもう1体からの攻撃には対応できず、殴られて背後の壁にたたきつけられた。
エディは気を引くようにそちらに斧を振りながら前に一歩出て柱の陰になっていた人を乗せた形のスパイダーを視線に入れる。相手はこちらを視界に入れると弓を構えた。そこへ背後から闇に紛れて近づいたクリストが飛び出し、スパイダーの胴体へと深く剣を突き刺した。
不意を打たれた人を乗せたスパイダーが激しく動きクリストを引きずるようにして移動していく。さらにその途中で構えていた弓をクリストに向けて矢を放った。とっさに剣から手を離してそれをかわしたクリストが地面を転がる。クリストを振り落としたその魔物がまたエディたちの方を向き弓を構えると青いスパイダーがさっと離れていった。何か強い攻撃が来る予兆か。
「ライトニング・ボルト!」
フェリクスの雷撃の魔法がその人の体をとらえてダメージを与える。
「ファイアー・ボール!」
カリーナはそのあとに続けてファイアー・スタッフを振るい魔法を放った。人を乗せた形をしたスパイダーが炎の渦に包まれる。エディは青いスパイダーの出現を警戒し、クリストはようやく起き上がって腰のショート・ソードを抜いたところ。炎が消えたあとにはまだその魔物は立っていて、そして構えていた弓から矢を放った。その矢はエディの頭上へ向けて斜めに放たれ、頂点で地面へと向けて角度を変え、そしてエディの頭上を目掛けて落ちて行く途中で無数の矢へと分裂してから消えうせた。
え、と思った瞬間にエディ、フェリクス、カリーナを透明なつぶてのような塊が打ち据える。無数に当たるそれは消えた矢だろうか。実体を失ったことでエディの盾が受け止める機能を効果を発揮しなかったのか、次々とダメージを与えてくる。さらにそこに青いジャイアント・スパイダーが姿を現し、横から突っ込むようにしてフェリクス、カリーナを弾き飛ばした。2人が地面に転がる間にダメージをこらえながらエディが斧を振り回し、それを胴に受けた青いスパイダーが後退する。フリアがそこへ追撃のナイフを投げ込むが、当たる寸前にまたしても姿を消した。
エディは盾を構えフェリクスとカリーナを守るために位置を変える。2人はまだ起き上がれていないのだ。その前でまた人を乗せた形のスパイダーが弓を構え、上を向いて矢を放とうとした、そのタイミングに間に合ったクリストが横から突っ込むようにしてクモの体にショート・ソードを深く刺す。魔物は手を止めて弓をそちらに向けて矢を放とうとしたところへ、エディの背後でどうにか身を起こした2人が立ち上がるよりも前に魔法を放つ。「マジック・ミサイル!」
フェリクスは強化状態の魔法を、そしてカリーナはマジック・ミサイル・ワンドの力を借りて。そうして放たれた7本の魔法の矢がまとめて上半身へと殺到してダメージを与えると、魔物は身をのけ反らせ放たれた矢はクリストからは遠く離れた地面に突き刺さった。
立て直して再び矢を放とうと弓を構えたとき、その背後からクモの胴体へとフリアが駆け上がり、クリストが突き刺したままだった剣を蹴り飛ばしながら上半身に組み付くと首元にナイフを突き刺した。
ギャアアッと激しく叫ぶ魔物は手を後ろに回してくる。それを避けたフリアはそのまま足元の刺さったままの剣の柄を握り、振り回されるままにそれをぐりぐりとねじ込むように動かす。耐えられなくなった魔物が腰をドゥッと音をさせて地面に落とす。クリストはそこへ駆け込むと横腹に刺さったままのショート・ソードを足をかけて抜き、そのまま大きく首へと振ってたたきつけた。腕を断ち切り、首の半分まで剣が潜り込み止まる。その勢いに負けた魔物の上半身が反対側へ折れるように崩れて動きを止めた。
やったか、と思った瞬間だった。動かなくなった胴体から下りてくるフリアの背後に青いジャイアント・スパイダーが現れて殴りつけるとまた姿を消す。
ショート・ソードを首からはずしてそちらへ駆けつけようとクリストが動いた、その背後にまた青いジャイアント・スパイダーが現れて蹴りつける。エディが投げつけた斧が届いたことは幸運だった。うまくジャイアント・スパイダーの首元に当たりダメージを与え、動きが止まったことでフェリクスのマジック・ミサイルが間に合った。立て続けに命中した魔法の矢のダメージを受けてその青いジャイアント・スパイダーもようやく動きを止めたのだ。
「終わった、か? 皆、大丈夫か?」
蹴り飛ばされてスパイダーの胴体に寄りかかるような格好になっていたクリストが天井を見上げて息を吐く。地面に転がっていたフリアが起き上がり、エディの陰から2人も手を振った。
「セットでボス扱いだったのか、それとも消えていたからボス撃破でも影響がなかったのか、単にタイミングの問題か。よく分からんが最後のやつは予想外だったな」
「もうね、やるたびにはっきり強くなっていくのがきついわね。回復魔法をかけるから少し待ってね」
「おーい、集まれ集まれ。ふぅ、一度とにかく休憩にしよう」
一息ついたカリーナが回復魔法を使い、さらに休憩を取る。とにかく体力だけでなく気力も回復させる必要があった。それから後始末をして、そしてエリアの残り部分を調べて宝箱を回収しながら戻るのだ。
ボスの人の上半身を乗せた形をしたジャイアント・スパイダーからは弓と鎧も回収、他のスパイダーは魔石と体の一部、今回は足先で十分だが、それを回収していく。青いスパイダーのうち1体には今回与えたのとは別に傷があり、恐らく途中で遭遇した相手だろうと考えられた。帰り道の洞窟からは魔物は消えていて、そこでは一安心することができた。途中2カ所で宝箱を見つけ、1つからは宝石が10個、もう1つからはヘッドバンドが手に入った。
スタート地点に戻り、そこから階段を下りて中央の噴水まで移動すると、壁のランプの最後の1つも消灯していて、これで全てのエリアのクリアが確認できた。仲間が休憩の準備をしている間にクリストは正面の両開きの扉の先を見に行くと、奥の緑の光も消えていて、そして柱の上にあったはずの悪魔の像が全て消えていることが分かる。これで全ての準備が整ったといえるだろう。
鑑定の結果はボスの着けていた鎧は普通のチェインメイルだったが、弓はアキュラシー・ボウ、命中とダメージの判定に+3のボーナスを持ち、射程距離内の目標に対する命中率の低下効果を一切無視できるという性能を持っていた。残念ながら弓手を持たない自分たちでは使いこなせないが、価値は非常に高いだろうと想像された。
もう1つ、ヘッドバンドに関してはインテレクト・ヘッドバンド、知力を19に上昇させるという効果があるのだという。19という値が大きいのかどうかは分からず、そしてすでに19よりも高い知力があるのならば何の効果もないというのだから扱いに困る。明らかに知力の低い者が使う分には素晴らしい効果が望めるだろう。
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修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
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