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084:国軍、水難を乗り越える。
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ホブゴブリン、ゴブリンとの連戦、集団戦を突破し8階に到達した軍の次の目標は9階へ下りるための階段の発見に移る。冒険者からの報告からこのフロアには湖があり、その中に浮かぶ島に階段がありそうだということまでは分かっていた。次は湖の確認、島の位置の確認、渡る場所の確保ということになる。
階段を下りた場所は十字路になっていて左は扉で行き止まり、正面と右は通路が続きそうだった。正面を調べに出たフロカートの部隊も右手を調べに出たクウレルの部隊もそのままオークと戦闘に入ってしまう。もっともオークが2体3体いたところでどうという話ではなかったのだが、階段を下りてすぐに戦闘に入ってしまうという状況自体はあまり良いことではなかった。
正面は丁字路、右は部屋になっていて右に扉正面に通路と確認される。そしてその正面の通路側に湖の存在が確認されたのは幸いだった。これでとにかく湖の方向が確定するのだ。そちら側の調査を優先として進行すると、部屋から湖に直接出ることができ、浅瀬でかなりの範囲を歩けそうだということも分かる。島は右前方に見えていて、浅瀬が壁沿いにそちら方向へと続いていたのだ。このエリアにメロウ、クオトアという水場の魔物が出現することは分かっていて、いるだろうと言われている魔物としてアボレスという未確認の魔物が分かっている。浅瀬の移動はいいのだが、相手が水中にいるという点が問題だった。浅瀬の幅は複数人が並んでも問題なさそうだということだったので、湖側に盾と槍を並べて壁を作り、その内側にそれ以外の者が並ぶという形で進むことを決定。これで水中からの襲撃は盾で止める形になる。突っ込んでこようにも槍が邪魔で思うようにはできないだろうという想定だ。
全員が並び、重心を低くして移動を開始する。ザブザブと水をかき分けて進んでいくと水中を移動する影が一つ二つと増えていく。当然のように魔物がこちらをうかがっているのだ。大きさから見ると来ているのはメロウだろうと思われた。内側を行く部隊も弓手は矢をつがえていつでも戦闘に入れるようにしながら進んでいく。
途中の襲撃は散発的だった。水中から飛び出したメロウが手に持った銛を投げつける。すぐ近くまで潜って近づいてから飛び出して盾や槍をつかんで水中に引きずり込もうとする。そういう動きだった。同時に多数がそういった行動に出ていれば手こずることもあったのだろうが、水中の動きが見えている上に襲撃が散発的だった時点で対応は簡単だった。遠ければ弓で射て、近ければ槍の位置を変えて突くだけだ。盾に手を掛けることに成功しても重心を落とした重装の兵士を動かすことは容易ではない。どっしり腰を降ろして耐える体勢に入った兵士を後ろから支え、そして左右からは槍が突っ込まれて終了だ。
警戒しながらの移動は時間のかかるものだったが、一人のけが人も出すことなく移動し終えたことが成果だろう。島の中にかがり火があり、そしてあずまやのような建物があるのが近くに見えるようになったところで部屋に到達。そこへ全員が上がることができたのだ。この部屋からが島に渡るには最も近いだろうと考えられた。次はどうやって渡るかという話になるのだが、これは当然用意があった。
まず1つはウォーター・ウォークの魔法の効果を発揮する魔道具。軍の保有する数が少なく今回は1つしか持ち出せなかった。全員分あれば何の問題もなく湖に到達した時点で使っていたのだが、1部隊分しかないのだから仕方がない。もう1つが新しく考案された水上に歩ける場所を作ってしまおうという魔道具だ。2本のロープを対岸に渡し、そのロープの間の水面を固形化して歩けるようにするもので、一定範囲の水を凍らせる魔法から発想を得て開発された。初採用となった魔道具で今回の成果が当然実績となる。
ウォーター・ウォークを使用したフロカートの部隊がロープの端を持って島へ渡る。周囲の水中に時折影が見えることがあるが、今のところ襲撃の気配はない。無事に渡り終えたところで地面にペグを刺し、ロープを固く結びつける。これで固形化の範囲が決まり、水面に向かって魔道具を使うとゆらゆらと揺らめいていた水が完全に固まって動かなくなる。槍の柄でたたいて問題ないことを確認したところでクウレルの部隊が渡りフロカートの部隊とともに警戒に当たる。次はパキの部隊、マリウスの部隊、イェレミアスの部隊と続く。
問題が発生したのはパキの部隊が渡っている最中だった。周辺の水中の影が一切見えなくなり、メロウは諦めたかと思えたその時、警戒していたクウレルの部隊がそれに気がついた。水中に巨大な黒い影が現れたのだ。
実物を見たという報告はない。だが6階のメモにはあった。落ちていたひげの鑑定結果からも実在することは分かっている。ヘビのような形をした黒い影。アボレスの可能性があった。
「アボレス! 警戒を! パキ、急げ!」
クウレルの声が響く。それを聞いたパキが部隊に全速を指示、駆け足で島へとたどり着き、そのままあずまやの屋根の下へと駆け込む。まだ渡っていないマリウス、イェレミアスの部隊は左右に盾と槍を並べた形を作ってから、水中から飛び出してくることを想定して姿勢は低く、いつでも伏せることができるようにして渡り始める。
水中の黒い影が渡る兵士たちの下をくぐっていく。通り過ぎ、遠ざかっていった。だが小さくなっていた影は反転し、そこから加速して突っ込んできた。水面が盛り上がり、その姿が見えてくる。渡る兵士たちは腰を落とし、盾を並べ、槍を構えて迎え撃つ。水面に躍り出たそれは長さが10メートルほどはあるだろうか、魚のようなヘビのような長細い丸みを帯びた体をしていて、全身がぬらぬらと輝いている。4本の触手のようなものがあり、甲羅のようなもので覆われた顔には鋭い牙の並んだ丸い大きな口があった。その口で兵士たちを飲み込もうというのだろうか。だが並んだ槍に切り払われうまくはいかず、頭上を越えると反対側に飛び込み激しい水しぶきを巻き上げる。
「全速! 渡り切れ!」
マリウスの声に2部隊が一気に移動を開始、次々と島へ上陸していく。すでに島で警戒にあたっていた部隊とともに一塊になってあずまや側へ集合した。
「また来ますかね?」
「どうだろうな。こちらを餌と見ていたのなら来そうなものだが、地上へ上がる魔物かどうかで決まるだろう。上がってくるのならば成果の一つにしたいところだ」
「そうですね。とはいえ、あー、階段まで到達していますから今回はここまでとしても問題はありません」
「ふむ、パキ、どうだ?」
「普通に階段ですよ。これで9階到達は確定ってことでいいのでは?」
「と、やつがいますね、回っている。来るようなら一撃入れてみますか」
「よし、盾を並べろ、槍を並べろ。でかいやつにはこちらもでかく見せることだ。やつの牙のようにこちらも槍を並べればいい。甲羅が固いのならば同じように盾を並べればいい。さあどうだ。こちらの方がでかいだろう」
かがり火の向こうで水面が盛り上がる。そこから現れたのはやはりアボレスだ。触手のようなものを足のように器用に使って地面の上へと進んでくる。かがり火の上に牙の並んだ大きな口が浮かび上がる。だがこちらの規模に手を出す場所を見いだせず、すぐには攻撃してこない。
「弓、放て!」
相手の動きの悪さを見た指示を受け、槍が並ぶその内側で待機していた弓手から一斉にその開いた口を目掛けて矢が放たれる。
「ほう、口の中に当たっても動じないか。これは固いな」
「ブラスト・ボールを使ってみますか」
そう言いながらアエリウスが手のひらサイズの黒い球体を手に取る。ファイアー・ボールを発生させる魔道具だ。さっきから大口を開けているのだからもう一度近づいたところでそこへ投げ込むのだ。
「弓手は階段へ。次で一発入れて駄目なようならこのまま9階だ」
アボレスが接近を再開する。2本の触手がひるがえり、尾まで地上へと進んでくる。
迎え撃つ部隊はあずまやを頭に見立ててその前に盾を並べ、槍を並べて迎え撃つ。
アボレスが口を軽くすぼませると、兵士たちは軽い違和感を覚え、その中から2人、ぼうぜんとした顔で立ち上がり、盾や槍を取り落とすものが現れた。
「いかん、精神攻撃の類いか。階段に引っ張り込め!」
立ち尽くす2人を力ずくで階段に引きずり込み、盾も槍もそのまま放り込む。
「これは良くないですね。やるならもっとちゃんとした準備が必要そうですよ」
「そうだな、配置を減らすぞ。フロカート、クウレル、入り口を埋めろ。他のものは階段へ。一発入れたら撤収だ」
再び接近してくるアボレスが尾を振り上げる。すでに多くの兵士があずまやへ入り、壁役を務める2部隊の盾と槍が並ぶところを目掛け、横から振り回されたそれがあずまやを激しく打ち、大きな音と衝撃が響く。続けてアボレスが大口を開けて迫るがそれを槍で迎え撃つ。そしてその口が目の前に来たところでアエリウスがその中目掛けてブラスト・ボールを投げ込むと、口の中で爆発が起き炎が吹き上がった。
その衝撃から一度頭部を持ち上げたアボレスが、もう一度尾を振り上げる。
「後退!」
並べた盾と槍がすっとあずまやの中へ引っ込んでいく。そのまま階段を下り始めた頭上であずまやを激しく打ち据える音が響き渡った。
「あれでもまだやる気とは、なかなか頑丈そうですね」
「まとめて食らわせんと駄目なようだな。仕方がない。今回はあれが目当てではないからな」
「精神攻撃対策と、高威力の道具を相応の数用意すればいけそうではありましたね」
「うむ。やはりでかいやつにはでかく見せると効果がある。あの止まったところをたたくか、それとも無理やり突っ込んできたところをたたくか。準備が必要だな」
これでアボレスは見た。攻撃手段としては触手、尾、そしてあの精神攻撃か。あの状態がまだ続いているようであれば相当強力だとみた方がいいだろう。アボレスを倒すことを考えるのならば対策が必要だ。だがこちらの攻撃は効果があった。普通の矢弾で通らずともブラスト・ボールが通るのならば無敵ではない。攻撃が通るのだ。こちらが盾と槍を並べたことで水面での攻撃は不発にでき、地上でも足を止めさせることができた。対抗手段はもう分かった。次やることがあれば倒すことも可能だろう。
とにかくこれで8階も突破だ。これまでにないほど階段が長いことに違和感は覚えるがいずれにせよ次は9階だ。できれば回復のための時間と場所が確保できると良いが、無理なようならば2人はパキの部隊で監視しつつ、前線3部隊を組み直すことになるだろう。けが人含め損失が多少出てしまっていることが残念だった。
階段を下りた場所は十字路になっていて左は扉で行き止まり、正面と右は通路が続きそうだった。正面を調べに出たフロカートの部隊も右手を調べに出たクウレルの部隊もそのままオークと戦闘に入ってしまう。もっともオークが2体3体いたところでどうという話ではなかったのだが、階段を下りてすぐに戦闘に入ってしまうという状況自体はあまり良いことではなかった。
正面は丁字路、右は部屋になっていて右に扉正面に通路と確認される。そしてその正面の通路側に湖の存在が確認されたのは幸いだった。これでとにかく湖の方向が確定するのだ。そちら側の調査を優先として進行すると、部屋から湖に直接出ることができ、浅瀬でかなりの範囲を歩けそうだということも分かる。島は右前方に見えていて、浅瀬が壁沿いにそちら方向へと続いていたのだ。このエリアにメロウ、クオトアという水場の魔物が出現することは分かっていて、いるだろうと言われている魔物としてアボレスという未確認の魔物が分かっている。浅瀬の移動はいいのだが、相手が水中にいるという点が問題だった。浅瀬の幅は複数人が並んでも問題なさそうだということだったので、湖側に盾と槍を並べて壁を作り、その内側にそれ以外の者が並ぶという形で進むことを決定。これで水中からの襲撃は盾で止める形になる。突っ込んでこようにも槍が邪魔で思うようにはできないだろうという想定だ。
全員が並び、重心を低くして移動を開始する。ザブザブと水をかき分けて進んでいくと水中を移動する影が一つ二つと増えていく。当然のように魔物がこちらをうかがっているのだ。大きさから見ると来ているのはメロウだろうと思われた。内側を行く部隊も弓手は矢をつがえていつでも戦闘に入れるようにしながら進んでいく。
途中の襲撃は散発的だった。水中から飛び出したメロウが手に持った銛を投げつける。すぐ近くまで潜って近づいてから飛び出して盾や槍をつかんで水中に引きずり込もうとする。そういう動きだった。同時に多数がそういった行動に出ていれば手こずることもあったのだろうが、水中の動きが見えている上に襲撃が散発的だった時点で対応は簡単だった。遠ければ弓で射て、近ければ槍の位置を変えて突くだけだ。盾に手を掛けることに成功しても重心を落とした重装の兵士を動かすことは容易ではない。どっしり腰を降ろして耐える体勢に入った兵士を後ろから支え、そして左右からは槍が突っ込まれて終了だ。
警戒しながらの移動は時間のかかるものだったが、一人のけが人も出すことなく移動し終えたことが成果だろう。島の中にかがり火があり、そしてあずまやのような建物があるのが近くに見えるようになったところで部屋に到達。そこへ全員が上がることができたのだ。この部屋からが島に渡るには最も近いだろうと考えられた。次はどうやって渡るかという話になるのだが、これは当然用意があった。
まず1つはウォーター・ウォークの魔法の効果を発揮する魔道具。軍の保有する数が少なく今回は1つしか持ち出せなかった。全員分あれば何の問題もなく湖に到達した時点で使っていたのだが、1部隊分しかないのだから仕方がない。もう1つが新しく考案された水上に歩ける場所を作ってしまおうという魔道具だ。2本のロープを対岸に渡し、そのロープの間の水面を固形化して歩けるようにするもので、一定範囲の水を凍らせる魔法から発想を得て開発された。初採用となった魔道具で今回の成果が当然実績となる。
ウォーター・ウォークを使用したフロカートの部隊がロープの端を持って島へ渡る。周囲の水中に時折影が見えることがあるが、今のところ襲撃の気配はない。無事に渡り終えたところで地面にペグを刺し、ロープを固く結びつける。これで固形化の範囲が決まり、水面に向かって魔道具を使うとゆらゆらと揺らめいていた水が完全に固まって動かなくなる。槍の柄でたたいて問題ないことを確認したところでクウレルの部隊が渡りフロカートの部隊とともに警戒に当たる。次はパキの部隊、マリウスの部隊、イェレミアスの部隊と続く。
問題が発生したのはパキの部隊が渡っている最中だった。周辺の水中の影が一切見えなくなり、メロウは諦めたかと思えたその時、警戒していたクウレルの部隊がそれに気がついた。水中に巨大な黒い影が現れたのだ。
実物を見たという報告はない。だが6階のメモにはあった。落ちていたひげの鑑定結果からも実在することは分かっている。ヘビのような形をした黒い影。アボレスの可能性があった。
「アボレス! 警戒を! パキ、急げ!」
クウレルの声が響く。それを聞いたパキが部隊に全速を指示、駆け足で島へとたどり着き、そのままあずまやの屋根の下へと駆け込む。まだ渡っていないマリウス、イェレミアスの部隊は左右に盾と槍を並べた形を作ってから、水中から飛び出してくることを想定して姿勢は低く、いつでも伏せることができるようにして渡り始める。
水中の黒い影が渡る兵士たちの下をくぐっていく。通り過ぎ、遠ざかっていった。だが小さくなっていた影は反転し、そこから加速して突っ込んできた。水面が盛り上がり、その姿が見えてくる。渡る兵士たちは腰を落とし、盾を並べ、槍を構えて迎え撃つ。水面に躍り出たそれは長さが10メートルほどはあるだろうか、魚のようなヘビのような長細い丸みを帯びた体をしていて、全身がぬらぬらと輝いている。4本の触手のようなものがあり、甲羅のようなもので覆われた顔には鋭い牙の並んだ丸い大きな口があった。その口で兵士たちを飲み込もうというのだろうか。だが並んだ槍に切り払われうまくはいかず、頭上を越えると反対側に飛び込み激しい水しぶきを巻き上げる。
「全速! 渡り切れ!」
マリウスの声に2部隊が一気に移動を開始、次々と島へ上陸していく。すでに島で警戒にあたっていた部隊とともに一塊になってあずまや側へ集合した。
「また来ますかね?」
「どうだろうな。こちらを餌と見ていたのなら来そうなものだが、地上へ上がる魔物かどうかで決まるだろう。上がってくるのならば成果の一つにしたいところだ」
「そうですね。とはいえ、あー、階段まで到達していますから今回はここまでとしても問題はありません」
「ふむ、パキ、どうだ?」
「普通に階段ですよ。これで9階到達は確定ってことでいいのでは?」
「と、やつがいますね、回っている。来るようなら一撃入れてみますか」
「よし、盾を並べろ、槍を並べろ。でかいやつにはこちらもでかく見せることだ。やつの牙のようにこちらも槍を並べればいい。甲羅が固いのならば同じように盾を並べればいい。さあどうだ。こちらの方がでかいだろう」
かがり火の向こうで水面が盛り上がる。そこから現れたのはやはりアボレスだ。触手のようなものを足のように器用に使って地面の上へと進んでくる。かがり火の上に牙の並んだ大きな口が浮かび上がる。だがこちらの規模に手を出す場所を見いだせず、すぐには攻撃してこない。
「弓、放て!」
相手の動きの悪さを見た指示を受け、槍が並ぶその内側で待機していた弓手から一斉にその開いた口を目掛けて矢が放たれる。
「ほう、口の中に当たっても動じないか。これは固いな」
「ブラスト・ボールを使ってみますか」
そう言いながらアエリウスが手のひらサイズの黒い球体を手に取る。ファイアー・ボールを発生させる魔道具だ。さっきから大口を開けているのだからもう一度近づいたところでそこへ投げ込むのだ。
「弓手は階段へ。次で一発入れて駄目なようならこのまま9階だ」
アボレスが接近を再開する。2本の触手がひるがえり、尾まで地上へと進んでくる。
迎え撃つ部隊はあずまやを頭に見立ててその前に盾を並べ、槍を並べて迎え撃つ。
アボレスが口を軽くすぼませると、兵士たちは軽い違和感を覚え、その中から2人、ぼうぜんとした顔で立ち上がり、盾や槍を取り落とすものが現れた。
「いかん、精神攻撃の類いか。階段に引っ張り込め!」
立ち尽くす2人を力ずくで階段に引きずり込み、盾も槍もそのまま放り込む。
「これは良くないですね。やるならもっとちゃんとした準備が必要そうですよ」
「そうだな、配置を減らすぞ。フロカート、クウレル、入り口を埋めろ。他のものは階段へ。一発入れたら撤収だ」
再び接近してくるアボレスが尾を振り上げる。すでに多くの兵士があずまやへ入り、壁役を務める2部隊の盾と槍が並ぶところを目掛け、横から振り回されたそれがあずまやを激しく打ち、大きな音と衝撃が響く。続けてアボレスが大口を開けて迫るがそれを槍で迎え撃つ。そしてその口が目の前に来たところでアエリウスがその中目掛けてブラスト・ボールを投げ込むと、口の中で爆発が起き炎が吹き上がった。
その衝撃から一度頭部を持ち上げたアボレスが、もう一度尾を振り上げる。
「後退!」
並べた盾と槍がすっとあずまやの中へ引っ込んでいく。そのまま階段を下り始めた頭上であずまやを激しく打ち据える音が響き渡った。
「あれでもまだやる気とは、なかなか頑丈そうですね」
「まとめて食らわせんと駄目なようだな。仕方がない。今回はあれが目当てではないからな」
「精神攻撃対策と、高威力の道具を相応の数用意すればいけそうではありましたね」
「うむ。やはりでかいやつにはでかく見せると効果がある。あの止まったところをたたくか、それとも無理やり突っ込んできたところをたたくか。準備が必要だな」
これでアボレスは見た。攻撃手段としては触手、尾、そしてあの精神攻撃か。あの状態がまだ続いているようであれば相当強力だとみた方がいいだろう。アボレスを倒すことを考えるのならば対策が必要だ。だがこちらの攻撃は効果があった。普通の矢弾で通らずともブラスト・ボールが通るのならば無敵ではない。攻撃が通るのだ。こちらが盾と槍を並べたことで水面での攻撃は不発にでき、地上でも足を止めさせることができた。対抗手段はもう分かった。次やることがあれば倒すことも可能だろう。
とにかくこれで8階も突破だ。これまでにないほど階段が長いことに違和感は覚えるがいずれにせよ次は9階だ。できれば回復のための時間と場所が確保できると良いが、無理なようならば2人はパキの部隊で監視しつつ、前線3部隊を組み直すことになるだろう。けが人含め損失が多少出てしまっていることが残念だった。
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