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本編
パッチーナ攻防戦 2
しおりを挟む「ここからは当初予定していた通り、二手に分かれます。デュース師長。」
「…うん。…気をつけてね。……地下…行ってくる。」
「はい。デュース師長もご武運を。」
デュースとキャスは大きく2つに分かれた救出隊を率いて、それぞれ二手に分かれた。
デュースをサポートするのは、青薔薇のシャーグである。ウォンもまたシャーグに付いて動く。キャスと別れ、無言となった地下の人質救出隊。先ほどまではキャスがなんだかんだ「次は右です!」「急ぎますよ!」とか声を掛けていたおかげで何とも思わなかったが、キャスの救出隊と別れてみると、無言である。
シャーグたち青薔薇は隠密には長けており、苦だと感じることはないが一般の冒険者たちは違う。普通であれば、変に力が入り、緊張するような雰囲気だ。だが、それがこの場にはない。シャーグは前を走るデュースに目をさり気なく移す。
「(不思議な人だ。彼に付いていけば大丈夫だと頼もしさすら感じる。故に皆が信頼して付いていける。流石が国のトップ魔法師長だ。ただ欲を言えば、コミュニケーションをもう少し取りやすいと有り難いのだが…)」
「……なに?」
シャーグはまさか気づかれていたとは思わず、驚く。
「…っ!いえ!すみません、見過ぎでしたか?」
「…べつに。…何か気になることあるなら……遠慮しないで言って…。」
「いえ、大丈夫です。」
「…そ。…なら…いい。」
プイッと再び前を向いて走るデュースに苦笑するシャーグ。
デュースたちはモッサのもたらした情報通りの場所…目的地である地下牢の扉にたどり着いた。その間、敵との交戦も多少は交えたが大きな被害はなく進むことができた。
「ここを開けたら情報通りなら地下牢ですね。作戦はどうしますか?かなり分厚い扉で解錠に時間がかかりそうです。」
「………下がって。」
「え??」
「…下がってて。」
「は、はい。」
シャーグたちはデュースから距離をとると、追って来た敵の相手に専念し、デュースの邪魔はさせぬよう立ち回る。
「…セシィ…来て。」
〈どうされました?〉
「…扉……壊す。……サポート…宜しく。」
〈ええ、分かりましたわ。〉
デュースは一息つくと扉と向かい合い、詠唱を始める。そして…
「……アクアレギア。………スチームバースト!」
扉に魔法陣が浮かび上がり、扉が水…いや金属を溶かす液体が覆った。その上をさらに水のクッションという名の壁をつくり、さらに厚い水の壁を展開して覆うという三重構造をとった。そしてある程度、扉が溶かされていくと、脆くなった魔法の掛けられた施錠部分を中心として水蒸気を発生させ爆発させた。爆発の衝撃を第2の水壁が緩和し、勢いを殺した飛び散る扉の破片を第3の水壁がキャッチした。
「……すげぇ。」
その光景に敵も味方も釘付けになり、思わずといった衝撃の言葉がちらほらと聞こえて来る。
「…くっ。」
〈大丈夫??〉
「…ん。…問題ない。」
デュースは額に浮かぶ汗を拭うと扉へと目向ける。扉はボロボロになり、扉としての機能をほぼ果たしていない状態にまでなっていた。それでも完全に壊れていないのは、扉の内側に人質がいた時のことを考えて威力を調整したからだ。
「…あとは…軽く壊すだけ…」
「それは私がしますので、少し息を整えられて下さい。」
「…ん。…ありがと。」
シャーグはあれだけの細かい作業を一寸の狂いもなく、調整し、複数展開して行ったデュースに魅入られていたが、ハッとして声をかけた。
「(あんな繊細かつ的確な魔法調整。かなりの魔力や神経を使うはずだ。)」
シャーグは扉を斬り刻むようにして刃を振るった。デュースがせっかく破片を飛ばさぬようにしたのだ。シャーグも衝撃を与えすぎないよう、最低限の通れるスペースをあける形で破壊した。
「…行くよ。」
「「「おうーっ!!!」」」
シャーグがあけた箇所をみて、デュースは声をかける。救出隊は一気に士気が上がり、それに怯えた一部の交戦していた敵は逃げるように元来た道へと走り去って行った。
デュースたちは一気に片をつけるべく、すぐさま扉内へと侵入して行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
救出隊のお話は一旦ここまで。次は同時刻での防衛隊のお話になります。今回はだいぶ長文になりました!
アクアレギア→王水
日本語訳すると王水になるそうです。王水は金や白金といった多くの金属を溶かすことができるそうです(Wikipedia参照)。
スチームバースト→水蒸気爆発
水が非常に温度の高い物質と接触することで起きる爆発現象とのこと(Wikipedia参照)。
詳しくは私も知らないのですが、これらが同時に起きることは現実ではおそらくないとは思います(笑)。そこは軽く流していただけたらと思います。「扉を溶かして、爆発させた!」という程度の認識をしていただけたらと思います。
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