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お届けものです

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「あー!!コレってエリック隊長が今日使うって言ってた資料じゃないの!?」


 どうも!私の名前はティアと言います。地球アースで死んでマースに転生しました。パパはマースの神なんだよ。すごいでしょ?……ってやってる場合じゃなかった。


「ジュリアンおばあちゃん~。エリック隊長が忘れ物してる。昨日あれだけ今日必要なんだって言ってたのに。」


「あらあらエリックったら。ふふふ、なるほどね。エリックの考えてる事は大方分かったわ。ティアちゃん、その資料をエリックの所まで届けて来てあげて?」


 何がなるほどなの?エリック隊長、ジュリアンおばあちゃんに考えてる事ダダ漏れだったみたいだよ?私には分からないけど。


「それじゃあティアちゃん!行ってらっしゃい。」


「……え?…えぇ~!?」






 あれよあれよとお出かけ準備をさせられた私はリュックの中にエリック隊長に渡す資料を入れられ外へ。


 ジュリアンおばあちゃん曰く「急いでエリックに届けてあげてね。エリックは第1騎士団の執務室にいるはずだから。」とのこと。


 いくら治安はいいとは言え、よく私1人で行かせようと思ったな!養子とは言え私、一応貴族の一員になったんだよ。



 どうしようもないし、エリック隊長の所に行くけどね!!






♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

「マリー、ティアちゃんが歩き出したわ!」


「えぇ奥様!一定の距離を保って尾行…いえ追跡…これも違う。おほん!そう、見守りましょう!!」


「そうね!これは見守っているのであって決してストーカー紛いの事をしているわけではないわ!」


 このようにジュリアンと侍女長マリーは言っているが周りから見れば不審者にしか見えない。物陰に隠れ、フードのついたマントを着ており誰も近づくなというオーラを放っている。側を通った者はギョッとした顔をして早足でその場を離れて行く。人はヤバい人種とは関わりたくないのだ。巻き込まれないうちに離れるのが正解なのだ。


「あれは…セバス?」


「奥様、よーく見て下さい。ティア様の近くにはセバスの手下の者たちがたくさん居ますよ。」


「あら本当。セバス自ら動いているのを見る限り屋敷には今グレイしかいないって事かしら?あの人の反応が見たいわね。」


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

「いいですか。皆さんよく聞きなさい。ティア様が無事にエリック様のもとへとたどり着くように周辺をしっかり警備しなさい。怪しい輩がいたらすぐに対処しなさい。ティア様にちょっかいを出そうものなら視界に入れる前に潰しなさい。」


「「「はいセバス様!!全てはティアお嬢様の為に!!!」」」


 ルーゼルト家の使用人たちは皆実力者ばかりである。そんじょそこらの冒険者とは比べものにならないほど強い。全員がBランク冒険者と同等もしくはそれ以上である。


「それでは各班分かれて配置につきなさい」


 使用人たちはサッと消えた。ある者は冒険者に、ある者は通りすがりの旅人に、ある者は主婦のように扮して。さり気なくティアの周りを固めていた。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「えっと、、、ジュリアンおばあちゃんに貰った地図によるとここを右に曲がればいいのかな?」


 右に曲がろうとすると


「やべっ!道間違えちった!この先は行き止まりだったぜ、俺ダセェなーあははは」


 あからさまに大きな声で呟く男が出てきた。それを聞いていたティアは…


「え?行き止まりなの?おかしいな、地図によるとここじゃ…あっ!本当だ!ここの道じゃないや。もう一つ先の所だ。見間違っちゃってたや。」


 ティアは正しい道へと歩き出した。









「ナイスだ!」


「ちょっと雑じゃなかった?」


「いやいやティア様が気づいたから問題ないだろ。」


「よし!この調子で手助けするぞー」


 あからさまな声を出していたのはルーゼルト家の使用人だったのだ。ティアが道を間違えないようにわざとデカイ独り言を呟いて正しい道へ誘導していたのだ。もちろんティアはその事を知らない。















「ついに…到着!!イェーイ!」


 第1騎士団の本部でいいのかな。いつも遊びに行く第1騎士寮のすぐお隣にあるんだよね。いざエリック隊長がいるという執務室へ。でも、どうやって?うーむ。どうしたものか。まずは中へ入らなきゃだな。


「すみませーん。」


 騎士寮の方からじゃなくて第1騎士団本部の方の入り口から入る為に声をかける。入り口には2人の騎士が立っていた。


「ん?お嬢ちゃんどうした?」


 あ、初めて見る人だ。


「あー!ティアちゃん!!」


「なんだお前の知り合いか。」


「そっか、先輩は寮に居ないから初めてティアちゃんを見るんですね。こちらは隊長がそれはもう凄く溺愛している娘のティアちゃんですよ。」


 もう1人の方は何度か寮で見たことあるや。私の事説明してくれるのはありがたいんですよ。けど、凄く溺愛しているって…恥ずかしいよ。


「ほう。このお嬢ちゃんが隊長の…うん。可愛いな。」


 よしよしじゃないよ?撫で撫で楽しいの?


「あの~」


「おっ悪い悪い。可愛いなと思ったからつい撫でちまった。それで何か用があった来たんだよな?」


「うん!あのねエリック隊長が大切な資料を忘れちゃってたからお届けに来たの。」


「そうか。偉いなぁ。よーし俺が隊長の所まで案内してやろう!」


 やったー!これで中に入れる。


「少しの間ここを離れるが大丈夫か?」


「大丈夫ですよ。先輩がいなくたって問題ありませんし。」


「もうちょっと言い方ってもんがあるだろーが。そりゃあ滅多に問題が起こる事はないけどよぉ…じゃあ少しの間頼んだぞ」


 私と先輩騎士さんで中へと入る。


「隊長は今日は珍しく執務室にいるらしいんだ。いつもは訓練場で暴れたりしてるのにどんな風の吹き回しだろうと思っていたが…なんとなく予想がついてきたな。」


 ほぇ?エリック隊長いつも暴れてるの?


「ここが隊長の執務室だ。」


トントン


「隊長、隊長の娘さんが来られまし…」


バァン!!


「ティア~よく来たな。どうしたんだ?ん?何か用があって来たんだよな!例えば何か渡す為だったり、渡す為だったり、渡す為だったり!!」


 もはや渡す為だったりとしか言っていないぞエリックよ。


「ふふーん!はい、お届けものです!!エリック隊長が忘れて行った大切な資料だよ。」


「おぉ、ありがとな。助かったよ。いや~いいな。忘れ物を届けに可愛い可愛い娘が自ら届けに来てくれるとは。」


「あ~邪魔者は失礼しますね」


 先輩騎士さんは静かにドアを閉めて戻って行った。


「はぁ…なるほど。珍しく執務室で仕事をすると言い出したと思ったら自慢がしたかったのですね。忘れ物をわざわざ届けてくれるシチュエーションを試したかったと。その資料全くもって必要な…」


「この資料がないと続きが出来ない所だったんだ!本当にちょうどいいタイミングだったぞティア!……少し黙ってろよ、セシル(ボソッ)」


 素早くエリック隊長に耳を塞がれ2人の会話が聞こえない。


「だって見ろよ。ティアが届けてくれるんだぞ。騎士の奴らの中には弁当を届けに持ってきてくれる妻だったりがいるわけだろ?今までは羨ましいとか思わなかったがティアがもし俺の為にしてくれたらと思うと試したくなってだな。」


「くっ、それは確かに。私もティアにならして欲しい。「セシルの為に持ってきたよ」なんて言われたい!!」


「だろう!?」


 なにやらエリック隊長とセシルは意気投合しているようだが耳を塞がれていて分からない。手を離してとエリック隊長の手を叩いて知らせると気付いたエリック隊長は手は離してくれた。


「もぅ!!2人で何楽しそうに話してるの!私も仲間に入れてよー」


「悪い悪い。そう膨れるな。」


「ぷぅー!ぷぅーぷぅー!!」


「「クソ可愛い(ボソッ)」」



 ちょっと2人ともなんで壁に頭打ちつけてるの?頭痛いよ?


「ふぅ。落ち着け俺。ティアが可愛いのは世界の理だろう…」


 エリック隊長?もしもーし?セシル、エリック隊長が壊れたよって…


「ティアが可愛いすぎる件について報告書を作成しなければ…」


 こっちも壊れてた!!



「それじゃあ、私も失礼しまーす…」


 私はあの先輩騎士さん同様そっと部屋から退出して帰ったのだった。


 


 エリックとセシルはティアが消えた事にも気付かず、部下の騎士が1時間後に声をかけるまで壊れたままの状態だったそうだ。





♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「ただいまー!!」


「「「おかえりなさいませ!」」」


 無事に家にも帰ってきてホッと一息つく。


ダダダダダダ


「ティアちゃん、おかえりなさいっ!」


「うひゃ!?ジュリアンおばあちゃん?それとマリーさん。何故後ろからなの。ジュリアンおばあちゃんたちも出かけてたのなら、そこはただいまじゃないの?」


「いえ!私と奥様はずっとティア様の後ろを付けていたため後ろから……モゴッ!?」


「マリーちょっと静かにしておきましょうね?…私たちも少し出かけてたのよ。そうねこの場合はただいまの方だったわ。うっかり間違えちゃってね。」


 何かマリーさんが言いかけてたよね?


「ふーん。そうなんだ?まぁいいや。あのね、私ちゃんとエリック隊長の所までお届けものして来たよ。えっへん!」


「「「ご立派です!!!」」」


 セバスさんを含め、使用人の皆んなが涙ぐんでるような。て、照れるではないか(//∇//)












 その後もちょいちょい忘れ物をしていくエリック隊長にティアはこれはわざとだと気付き「もう知らない!」と怒られたのは余談である。


















 


 
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