混成魔獣は牙を剥く

第一章

第零話 【誕生】

『ここは……何処だろ……………。』


初めて目に映ったものは、純白の世界だった。


『……誰かが叫んでる？よく聞こえない………。』

『…足音？………かな…………。』

『…………こっちに来る？……怖いな…………。』


ゆっくりとした足踏みで何かが近づいてきた。


「あぁ…そんな所にいたのか……。」

「今そっちへ行こう……。」


僕の目の前に立って優しく語りかけてきた。


「こんなにツギハギだらけの身体なのか…。」

「ふふ…そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。」

「私は、君の生みの親なのだから。」


とても心地のいい声だった。

その方は女にしては力強く、男にしては妖艶だった。


「おとう…さん………？」

「ああ、そっちの呼び方を選んだか…我が家へ帰ろう。」

「………うん。」


彼は僕を育ててくれた。

僕が何者なのか教えてくれた、僕が持っている力の使い方も教えてくれた。

そして、彼は日に日に僕に近づかなくなって行った。

部屋にこもり、毎日毎日ヒトリゴトを喋っていた。

11年の歳月がたとうとした時、彼が久しぶりに呼んでくれた。

嬉しさを抑えきれずに走り出した。


『やった…呼んでくれた！力になりたい！！』


そして彼の部屋へ飛び込んだ時…目に映った光景が信じられなかった。

もう1人の僕がいた。ツギハギの傷がないキレイな僕。


『え………なん…で？………。』


そう思った瞬間、彼の言葉に耳を疑った。


「ん？…まだ居たのか……君にはもう用はない。」

「君は…失敗作だ。」

「どう……どうして？？………。」

「どうして？………君は不完全だからだ。」


恐ろしくて声が出なかった。怖くて身体が動かなかった。

彼の手が僕の顔を覆った瞬間…その瞬間からは何も覚えていない。

自分が誰で、【何者】なのかを。