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「……ねえ、シグルド様」
「なんだ」
「この新聞の見出し、どう思います?」
舞踏会の翌朝。
私は相談所のカウンターで、刷りたての王都新聞を広げていた。
一面を飾っているのは、昨夜の舞踏会のハイライト写真だ。
ポージングを決めるガレス団長と、それをうっとりと見上げるミナ様。
そして、端の方で白目を剥いているクロード殿下。
見出しはこうだ。
『王太子、筋肉に敗れる! 男爵令嬢が選んだのは「権力」より「僧帽筋」!?』
「……傑作だな」
向かいの席でトーストを齧っていたシグルド様が、満足げに頷く。
「記事も秀逸だ。『王太子の細腕では、彼女の愛を受け止めるには重量不足だったようだ』と書いてある」
「重量不足って。荷物じゃないんですから」
私は呆れつつ、もう一つの記事に目を落とした。
そちらには、私とシグルド様が踊っている優雅な(自分で言うのもなんだが)写真が掲載されている。
『氷の公爵、ついに解凍!? 元悪役令嬢との熱い抱擁! 二人はすでに「秘密の関係」か?』
「……こっちの記事は、随分と飛ばしてますね。『熱い抱擁』って、ただのダンスのホールドですよ」
「事実無根ではない」
シグルド様は真顔で言った。
「秘密の関係(パトロンと相談員)だし、私はお前に熱を上げている(仕事仲間として)。何も間違っていない」
「括弧書きの補足が重要なんですけど! 世間が誤解しますよ!」
「誤解させておけばいい。これで他の男はお前に手を出せなくなる」
シグルド様はニヤリと笑い、足元のダンボール箱を指差した。
「気に入ったので、その新聞は千部ほど買い占めておいた」
「千部!? 資源の無駄遣いですよ! 何に使うんですか、そんなに!」
「領地の屋敷の壁紙にする」
「やめてください、呪われますよ」
朝から頭の痛い会話をしていると、裏口のドアが勢いよく開いた。
「おはようございまーす! マッスル!」
元気な挨拶と共に現れたのは、ミナ様だった。
彼女はなぜか、両手に巨大な骨付き肉を抱えている。
「あら、ミナ様。……その挨拶と荷物は?」
「差し入れです! 朝市でいい赤身肉が手に入ったので!」
ミナ様はドサッと肉をテーブルに置き、爽やかな笑顔を見せた。
憑き物が落ちたように晴れ晴れとしている。
「昨日はありがとうございました! おかげでスッキリしました!」
「それは良かったわ。……でも、大丈夫? 新聞、見た?」
私は恐る恐る新聞を指差した。
『筋肉男爵令嬢、誕生』という不名誉なレッテルが貼られているのだが。
ミナ様は新聞を一瞥し、フフンと鼻を鳴らした。
「ええ、見ました。最高です! おかげで今朝から、家の前にプロテインやダンベルの差し入れが山のように届いてるんです!」
「……そう」
「それに、父も『お前がそこまで筋肉好きだったとは……よし、ワシも鍛え直すか!』って張り切っちゃって。我が家は今、空前の筋肉ブームです!」
「順応性が高すぎるわね、あなたの家……」
どうやら心配は無用だったようだ。
彼女は「可憐なヒロイン」の仮面を捨て、「筋肉フェチの元気娘」として力強く生きていく覚悟を決めたらしい。
「それで? クロード殿下からは何か?」
「あ、それが……」
ミナ様の表情が少し曇った。
「昨日の夜、手紙が届いたんです。これなんですけど……」
彼女が差し出したのは、涙で濡れたような跡がある便箋だった。
『ミナへ。君が筋肉を愛しているとは知らなかった。僕はショックだ。でも、君の幸せを願うのが真の王子だ。君は、あの暑苦しい騎士団長と筋肉の話でもしていればいい。僕は……僕を本当に理解してくれる人の元へ帰ることにする』
「……『本当に理解してくれる人』?」
私は嫌な予感がして、眉をひそめた。
「誰のことでしょう? 殿下にそんな相手、いましたっけ?」
ミナ様が首をかしげる。
「まさか、隣国の王女とか?」
「シャルロット王女? ありえないわ。あの方は殿下を『案山子(かかし)』呼ばわりしてたもの」
「じゃあ、他に……」
その時。
シグルド様が、持っていたコーヒーカップをコトリと置いた。
「……アンズ」
「はい?」
「お前だ」
「は?」
「あいつの思考回路を忘れたか? 『ミナは筋肉に行ってしまった。なら、僕に残された理解者は、十二年間僕に尽くしてくれた元婚約者しかいない』。……そう変換されている可能性が高い」
私は背筋がゾッとした。
「まさか。昨日の舞踏会で、あんなに嫌味を言ったんですよ? 『秘密がある』とか煽ったし」
「それを『僕の気を引くための駆け引きだったんだね!』と解釈するのが、クロードという男だ」
「うわぁ……」
ありえる。
あのおめでたい脳みそなら、十分にありえる。
「それに、昨夜の会場で、お前と私が踊っているのを見た時、あいつは悔しがっていた。それは『アンズを取られた』という独占欲に火をつけたかもしれん」
シグルド様の分析は、恐ろしいほど的確だった。
「つまり、ターゲットが私に戻ってくる、と?」
「十中八九な」
私はテーブルに突っ伏した。
「勘弁してください……。私はもう、あの『観察対象』とは関わりたくないんです」
「アンズ様、逃げましょう」
ミナ様が真剣な顔で提案する。
「私と一緒に、山に籠もって修行しませんか? 滝に打たれれば、煩悩も王子のことも忘れられますよ!」
「修行は遠慮しておくわ。筋肉痛になりたくないもの」
私たちが対策を練ろうとした、その時だった。
店の表から、またしても騒がしい音が聞こえてきた。
「開けろ! アンズ! いるのは分かっている!」
「……来たわね」
私とシグルド様は顔を見合わせた。
この声、この間の悪さ。
間違いなく、クロード殿下だ。
「どうします? また居留守を使います?」
「いや、今回は私が相手をしよう」
シグルド様が立ち上がった。
その顔には、獲物を前にした肉食獣のような笑みが浮かんでいる。
「昨夜のダンスの邪魔をされた借りを、まだ返していなかったからな」
「ほどほどにお願いしますね。一応、次期国王ですので」
「善処する」
シグルド様がドアを開けると、そこには案の定、大きな花束(真っ赤なバラ)を抱えたクロード殿下が立っていた。
「アンズ! 僕が悪かっ……た……げっ、兄上!?」
「よう、クロード。朝から元気だな。その花は、私の店の開店祝いか?」
「ち、違う! アンズに……いや、兄上には関係ない!」
殿下は強引に店に入ろうとするが、シグルド様が壁のように立ちはだかる。
「アンズは今、取り込み中だ。筋肉痛で動けないらしい」
「はぁ!? まさかアンズまで筋肉に!?」
「冗談だ。……で、何をしに来た? 昨日、ミナ嬢にフラれたばかりだろう。少しは謹慎したらどうだ」
「うぐっ……! だ、だからこそだ! 僕は気づいたんだ!」
殿下は花束を握りしめ、叫んだ。
「ミナは、一時的な迷いだったのだ! そして僕も目が覚めた! やはり、僕の隣にふさわしいのは、長年苦楽を共にしたアンズしかいないと!」
「……ほう」
「兄上、そこをどいてくれ! 僕はアンズに謝罪し、そして……もう一度、プロポーズをするんだ!」
「プロポーズ?」
店内の空気が凍りついた。
私はカウンターの陰で頭を抱え、ミナ様は「うわぁ」と口元を押さえている。
シグルド様の目が、スッと細められた。
「……クロード。お前、死にたいのか?」
「は、はい?」
「私が『アンズは私のパートナーだ』と宣言したのを聞いていなかったのか? 他人の女に手を出すとは、随分といい度胸だな」
「た、他人じゃない! 元はと言えば僕の婚約者だ! 兄上が横取りしたんだ!」
「捨てたのはお前だ。拾ったのは私だ。所有権は移転している」
シグルド様は一歩踏み出した。
「帰れ。さもなくば、その花束を貴様の口にねじ込むぞ」
「ひぃっ!?」
クロード殿下は後ずさりした。
さすがに、本気で怒っている『氷の公爵』には勝てないと思ったらしい。
「く、くそっ……! 覚えてろ! 僕は諦めないぞ! 必ずアンズを取り戻してやる!」
殿下は花束を地面に叩きつけ(後で掃除するのは私だ)、逃走していった。
「……やれやれ」
シグルド様は扉を閉め、振り返った。
「聞いたか、アンズ。公開プロポーズの予告だ」
「聞きたくありませんでした……」
私はげっそりと顔を上げた。
「どうして私の周りの男は、こうも話が通じないんでしょう」
「安心しろ。私の耳には、お前の言葉はちゃんと届いている」
シグルド様は私の隣に座り、落ちた花束から無事なバラを一輪拾い上げて、私の髪に挿した。
「……似合うぞ」
「……どうも」
不意打ちの優しさに、また心臓が跳ねる。
この公爵様も、ある意味では「私の言葉(拒絶)」を聞いていない気もするが、嫌な気分ではないのが悔しい。
「さて、ミナ様。あなたも当分は警戒した方がいいわね。殿下がまた『やっぱり筋肉より僕を』とか言い出すかもしれないし」
「大丈夫です! その時はガレス団長を呼び出して、ダブルバイセップスで威嚇してもらいます!」
「……頼もしいわね」
こうして、舞踏会の余波は、新たなトラブルの種を撒き散らして過ぎ去った。
筋肉に目覚めた元ヒロイン。
復縁を狙うストーカー王子。
そして、私を囲い込もうとする最強の公爵。
私の「平穏な」相談所ライフは、ますますカオスな方向へと突き進んでいくのだった。
「なんだ」
「この新聞の見出し、どう思います?」
舞踏会の翌朝。
私は相談所のカウンターで、刷りたての王都新聞を広げていた。
一面を飾っているのは、昨夜の舞踏会のハイライト写真だ。
ポージングを決めるガレス団長と、それをうっとりと見上げるミナ様。
そして、端の方で白目を剥いているクロード殿下。
見出しはこうだ。
『王太子、筋肉に敗れる! 男爵令嬢が選んだのは「権力」より「僧帽筋」!?』
「……傑作だな」
向かいの席でトーストを齧っていたシグルド様が、満足げに頷く。
「記事も秀逸だ。『王太子の細腕では、彼女の愛を受け止めるには重量不足だったようだ』と書いてある」
「重量不足って。荷物じゃないんですから」
私は呆れつつ、もう一つの記事に目を落とした。
そちらには、私とシグルド様が踊っている優雅な(自分で言うのもなんだが)写真が掲載されている。
『氷の公爵、ついに解凍!? 元悪役令嬢との熱い抱擁! 二人はすでに「秘密の関係」か?』
「……こっちの記事は、随分と飛ばしてますね。『熱い抱擁』って、ただのダンスのホールドですよ」
「事実無根ではない」
シグルド様は真顔で言った。
「秘密の関係(パトロンと相談員)だし、私はお前に熱を上げている(仕事仲間として)。何も間違っていない」
「括弧書きの補足が重要なんですけど! 世間が誤解しますよ!」
「誤解させておけばいい。これで他の男はお前に手を出せなくなる」
シグルド様はニヤリと笑い、足元のダンボール箱を指差した。
「気に入ったので、その新聞は千部ほど買い占めておいた」
「千部!? 資源の無駄遣いですよ! 何に使うんですか、そんなに!」
「領地の屋敷の壁紙にする」
「やめてください、呪われますよ」
朝から頭の痛い会話をしていると、裏口のドアが勢いよく開いた。
「おはようございまーす! マッスル!」
元気な挨拶と共に現れたのは、ミナ様だった。
彼女はなぜか、両手に巨大な骨付き肉を抱えている。
「あら、ミナ様。……その挨拶と荷物は?」
「差し入れです! 朝市でいい赤身肉が手に入ったので!」
ミナ様はドサッと肉をテーブルに置き、爽やかな笑顔を見せた。
憑き物が落ちたように晴れ晴れとしている。
「昨日はありがとうございました! おかげでスッキリしました!」
「それは良かったわ。……でも、大丈夫? 新聞、見た?」
私は恐る恐る新聞を指差した。
『筋肉男爵令嬢、誕生』という不名誉なレッテルが貼られているのだが。
ミナ様は新聞を一瞥し、フフンと鼻を鳴らした。
「ええ、見ました。最高です! おかげで今朝から、家の前にプロテインやダンベルの差し入れが山のように届いてるんです!」
「……そう」
「それに、父も『お前がそこまで筋肉好きだったとは……よし、ワシも鍛え直すか!』って張り切っちゃって。我が家は今、空前の筋肉ブームです!」
「順応性が高すぎるわね、あなたの家……」
どうやら心配は無用だったようだ。
彼女は「可憐なヒロイン」の仮面を捨て、「筋肉フェチの元気娘」として力強く生きていく覚悟を決めたらしい。
「それで? クロード殿下からは何か?」
「あ、それが……」
ミナ様の表情が少し曇った。
「昨日の夜、手紙が届いたんです。これなんですけど……」
彼女が差し出したのは、涙で濡れたような跡がある便箋だった。
『ミナへ。君が筋肉を愛しているとは知らなかった。僕はショックだ。でも、君の幸せを願うのが真の王子だ。君は、あの暑苦しい騎士団長と筋肉の話でもしていればいい。僕は……僕を本当に理解してくれる人の元へ帰ることにする』
「……『本当に理解してくれる人』?」
私は嫌な予感がして、眉をひそめた。
「誰のことでしょう? 殿下にそんな相手、いましたっけ?」
ミナ様が首をかしげる。
「まさか、隣国の王女とか?」
「シャルロット王女? ありえないわ。あの方は殿下を『案山子(かかし)』呼ばわりしてたもの」
「じゃあ、他に……」
その時。
シグルド様が、持っていたコーヒーカップをコトリと置いた。
「……アンズ」
「はい?」
「お前だ」
「は?」
「あいつの思考回路を忘れたか? 『ミナは筋肉に行ってしまった。なら、僕に残された理解者は、十二年間僕に尽くしてくれた元婚約者しかいない』。……そう変換されている可能性が高い」
私は背筋がゾッとした。
「まさか。昨日の舞踏会で、あんなに嫌味を言ったんですよ? 『秘密がある』とか煽ったし」
「それを『僕の気を引くための駆け引きだったんだね!』と解釈するのが、クロードという男だ」
「うわぁ……」
ありえる。
あのおめでたい脳みそなら、十分にありえる。
「それに、昨夜の会場で、お前と私が踊っているのを見た時、あいつは悔しがっていた。それは『アンズを取られた』という独占欲に火をつけたかもしれん」
シグルド様の分析は、恐ろしいほど的確だった。
「つまり、ターゲットが私に戻ってくる、と?」
「十中八九な」
私はテーブルに突っ伏した。
「勘弁してください……。私はもう、あの『観察対象』とは関わりたくないんです」
「アンズ様、逃げましょう」
ミナ様が真剣な顔で提案する。
「私と一緒に、山に籠もって修行しませんか? 滝に打たれれば、煩悩も王子のことも忘れられますよ!」
「修行は遠慮しておくわ。筋肉痛になりたくないもの」
私たちが対策を練ろうとした、その時だった。
店の表から、またしても騒がしい音が聞こえてきた。
「開けろ! アンズ! いるのは分かっている!」
「……来たわね」
私とシグルド様は顔を見合わせた。
この声、この間の悪さ。
間違いなく、クロード殿下だ。
「どうします? また居留守を使います?」
「いや、今回は私が相手をしよう」
シグルド様が立ち上がった。
その顔には、獲物を前にした肉食獣のような笑みが浮かんでいる。
「昨夜のダンスの邪魔をされた借りを、まだ返していなかったからな」
「ほどほどにお願いしますね。一応、次期国王ですので」
「善処する」
シグルド様がドアを開けると、そこには案の定、大きな花束(真っ赤なバラ)を抱えたクロード殿下が立っていた。
「アンズ! 僕が悪かっ……た……げっ、兄上!?」
「よう、クロード。朝から元気だな。その花は、私の店の開店祝いか?」
「ち、違う! アンズに……いや、兄上には関係ない!」
殿下は強引に店に入ろうとするが、シグルド様が壁のように立ちはだかる。
「アンズは今、取り込み中だ。筋肉痛で動けないらしい」
「はぁ!? まさかアンズまで筋肉に!?」
「冗談だ。……で、何をしに来た? 昨日、ミナ嬢にフラれたばかりだろう。少しは謹慎したらどうだ」
「うぐっ……! だ、だからこそだ! 僕は気づいたんだ!」
殿下は花束を握りしめ、叫んだ。
「ミナは、一時的な迷いだったのだ! そして僕も目が覚めた! やはり、僕の隣にふさわしいのは、長年苦楽を共にしたアンズしかいないと!」
「……ほう」
「兄上、そこをどいてくれ! 僕はアンズに謝罪し、そして……もう一度、プロポーズをするんだ!」
「プロポーズ?」
店内の空気が凍りついた。
私はカウンターの陰で頭を抱え、ミナ様は「うわぁ」と口元を押さえている。
シグルド様の目が、スッと細められた。
「……クロード。お前、死にたいのか?」
「は、はい?」
「私が『アンズは私のパートナーだ』と宣言したのを聞いていなかったのか? 他人の女に手を出すとは、随分といい度胸だな」
「た、他人じゃない! 元はと言えば僕の婚約者だ! 兄上が横取りしたんだ!」
「捨てたのはお前だ。拾ったのは私だ。所有権は移転している」
シグルド様は一歩踏み出した。
「帰れ。さもなくば、その花束を貴様の口にねじ込むぞ」
「ひぃっ!?」
クロード殿下は後ずさりした。
さすがに、本気で怒っている『氷の公爵』には勝てないと思ったらしい。
「く、くそっ……! 覚えてろ! 僕は諦めないぞ! 必ずアンズを取り戻してやる!」
殿下は花束を地面に叩きつけ(後で掃除するのは私だ)、逃走していった。
「……やれやれ」
シグルド様は扉を閉め、振り返った。
「聞いたか、アンズ。公開プロポーズの予告だ」
「聞きたくありませんでした……」
私はげっそりと顔を上げた。
「どうして私の周りの男は、こうも話が通じないんでしょう」
「安心しろ。私の耳には、お前の言葉はちゃんと届いている」
シグルド様は私の隣に座り、落ちた花束から無事なバラを一輪拾い上げて、私の髪に挿した。
「……似合うぞ」
「……どうも」
不意打ちの優しさに、また心臓が跳ねる。
この公爵様も、ある意味では「私の言葉(拒絶)」を聞いていない気もするが、嫌な気分ではないのが悔しい。
「さて、ミナ様。あなたも当分は警戒した方がいいわね。殿下がまた『やっぱり筋肉より僕を』とか言い出すかもしれないし」
「大丈夫です! その時はガレス団長を呼び出して、ダブルバイセップスで威嚇してもらいます!」
「……頼もしいわね」
こうして、舞踏会の余波は、新たなトラブルの種を撒き散らして過ぎ去った。
筋肉に目覚めた元ヒロイン。
復縁を狙うストーカー王子。
そして、私を囲い込もうとする最強の公爵。
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