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翌朝。
私は小鳥のさえずりよりも正確な体内時計で目を覚ました。
時刻は六時〇〇分。
いつもなら、この時間は王太子の寝室へ向かい、低血圧で起きられない彼を叩き起こし(物理)、その日のスケジュールの読み合わせを行っている頃だ。
だが、今は違う。
「……素晴らしい」
私はベッドの上で大きく伸びをした。
重苦しい王都の空気とは違う、自由の味がする。
今日から私は、他人の尻拭いをする必要がないのだ。
自室のベルを鳴らすと、昔馴染みのメイドが入ってきた。
「おはようございます、お嬢様。朝食の準備が整っております」
「ありがとう。……ああ、それと」
私はふと思い出し、サイドテーブルのメモ用紙を指さした。
「出発までに荷物の再点検(ダブルチェック)をお願い。特に、対寒冷地用の発熱魔道具と、予備の計算機用魔石は多めにね」
「かしこまりました。……本当に行かれるのですね」
メイドは少し寂しそうに眉を下げた。
「ええ。より良い労働条件(オファー)があったのですもの。行かない理由がありませんわ」
「ふふ、お嬢様らしいです。向こうでも、どうぞお元気で」
「貴女もね。父様と母様の無駄遣いを監視しておいて頂戴」
私は軽快にウィンクをして、着替えを済ませた。
ダイニングに降りると、既に両親が優雅にコーヒーを飲んでいた。
「おはよう、エーミール。昨夜の宴は楽しかったな」
父が上機嫌で新聞を広げている。
「おはようございます、お父様。昨夜のワイン、ヴィンテージものでしたわね。経費計上しておきましたか?」
「当然だ。『交際費』だ」
「さすがです」
母もニコニコしながら、一枚の紙を差し出してきた。
「エーミール、これを持っていきなさい」
「これは?」
「我が家が懇意にしている、北部の商人リストよ。物資の調達や、裏情報の収集に使いなさい。あと、この『空手形』も何枚か」
「お母様……!」
私は感激に胸を打たれた。
ただの母親ではない。優秀な『商売の師匠』だ。
「ありがとうございます。有効活用させていただきます」
「ええ。ギルバート辺境伯は金払いが良さそうだから、ふんだくれるだけふんだく……ゴホン、正当な対価を頂きなさい」
「御意に」
私たちは朝食のトーストをかじりながら、今後の資産運用について建設的な議論を交わした。
そして八時。
屋敷の前に、再びあの黒塗りの馬車が到着した。
「迎えに来たぞ、エーミール」
ギルバート様が馬車から降り立つ。
昨夜の夜会服とは違い、今日は動きやすい騎士服姿だ。それがまた、彼の鍛え上げられた肉体を強調しており、屋敷のメイドたちが色めき立っている。
「おはようございます、閣下。時間通りですね」
「軍人に遅刻はあり得ないからな。準備は?」
「万端です。――では、行って参ります」
私は両親に一礼し、躊躇なく馬車へと乗り込んだ。
涙の別れ? そんな非効率なものは我が家にはない。
「定期的に送金します」
「うむ。利回りの良い投資案件があったら連絡しろ」
「体には気をつけてね(医療費がかかるから)」
交わされた言葉はそれだけ。
しかし、そこには確かな信頼関係があった。
馬車が動き出す。
窓の外を流れる王都の景色。
私はそれを眺めながら、心の中で小さく呟いた。
(さあ、新しい仕事(ビジネス)の始まりですわ)
***
一方その頃、王城では。
地獄の蓋が開こうとしていた。
「……おい、どうなっているんだ!?」
執務室で、クラーク王太子は悲鳴を上げていた。
彼の目の前には、人の背丈ほどもある書類の山が築かれていたのだ。
「で、殿下! 決裁をお願いします! 財務省から『予算承認が遅れている』と苦情が!」
「殿下! 隣国への親書、まだ書き上がっていないのですか!? 使者がもう到着しています!」
「殿下! 午後の視察のスケジュールですが、ダブルブッキングしています! どちらを優先するのですか!?」
次々と飛び込んでくる文官たちの怒号。
クラークは頭を抱えた。
「う、うるさい! いっぺんに喋るな! ていうか、いつもはどうなっていたんだ!?」
「いつもは、エーミール様が朝の時点で全て仕分けし、緊急度の高いものから順に殿下の机に並べておられました!」
「親書の下書きも、エーミール様が済ませておられました!」
「スケジュール調整も、エーミール様が……!」
返ってくる答えは、すべて「エーミール」だった。
クラークは呆然とした。
「あ、あの女……あんな涼しい顔をして、これだけの量をこなしていたのか……?」
「殿下ぁ……」
そこへ、部屋の隅で縮こまっていたミーナがおずおずと声をかけた。
「私、何かお手伝いしましょうか……? お茶を淹れるとか……」
「おお、ミーナ! 頼む! 喉がカラカラなんだ!」
クラークは救世主を見る目でミーナを見た。
そうだ、エーミールはいなくなったが、僕にはこの愛らしいミーナがいる。彼女の淹れたお茶を飲めば、きっとリフレッシュして仕事も捗るはずだ。
ミーナはフリルたっぷりのドレスを揺らしながら、ワゴンのお茶セットに向かった。
「えーっと、これにお湯を入れて……」
カチャカチャとぎこちない手つき。
そして。
「あっ、熱っ!?」
ガシャーン!!
派手な音がして、ティーポットが床に落下した。
熱湯が飛び散り、近くの絨毯を濡らす。
「きゃああん! 火傷しちゃったぁ!」
「ミーナ!?」
クラークが慌てて駆け寄る。
「大丈夫か!?」
「うぅ……痛いぃ……。ごめんなさい殿下、私、ドジで……」
「い、いいんだ。君の怪我の方が大事だ。誰か! 医者を呼べ!」
執務室は大騒ぎになった。
その様子を、入口付近に立っていた宰相補佐官が、冷ややかな目で見つめていた。
「……殿下。お戯れはその辺にしていただきたい」
「なんだと!? ミーナが怪我をしたんだぞ!」
「指先が赤くなった程度です。それよりも、この書類」
補佐官は、床に散らばった書類の一枚を拾い上げた。
先ほどのお茶騒動で、インクが滲んで読めなくなっている。
「これは『北の砦』への補給物資申請書です。今日中に承認印を押さなければ、来週には兵士たちの食料が尽きます」
「な……っ」
「再発行には時間がかかります。どう責任を取られるおつもりで?」
「そ、そんなこと言われても……悪いのはポットを落としたミーナで……」
「殿下」
補佐官の声が、氷点下まで下がった。
「以前、エーミール様がいらした時は、執務室内での『お茶汲み』などという非効率な作業は禁止されておりました。水分補給は、魔道具によって適温に保たれた水筒で行うのがルールでした」
「う……」
「そもそも、エーミール様はこのような初歩的なミス(・・・・・・)はなさいませんでしたが」
その言葉は、鋭い刃となってクラークとミーナに突き刺さった。
「ひ、ひどい……! 私だって頑張ってるのに!」
ミーナが泣き出す。
いつもなら「可哀想に」と同情してくれる周囲の視線も、今は冷たい。
文官たちは皆、徹夜続きで殺気立っているのだ。
「泣いている暇があったら、雑巾で床を拭いてください」
一人の女性文官が吐き捨てるように言った。
「え……? 私が? 雑巾がけを?」
「当然でしょう。貴女が汚したのですから。それとも、未来の王太子妃になろうという方が、自分の尻拭いもできないのですか?」
「っ……!」
ミーナは屈辱に顔を歪め、クラークに助けを求めた。
しかし、クラーク自身も補佐官に詰め寄られ、それどころではない。
「殿下、サインを! 早く!」
「わ、分かった! 書けばいいんだろう!」
クラークは震える手で羽ペンを取った。
だが、インク壺は空だった。
「インクがないぞ!?」
「補充係はエーミール様が兼任しておられました」
「ああもう! クソッ! なんで何もかもあの女なんだ!」
クラークは机を叩いた。
怒りで頭が沸騰しそうだ。
だが、心のどこかで、冷たい恐怖が広がり始めていた。
(もしかして……僕は、とんでもない過ちを犯したのではないか?)
エーミールという『土台』を失った玉座。
それがどれほど脆く、不安定なものか。
彼らが本当の意味で理解するのは、まだもう少し先の話である。
***
そんな王城の惨状など知る由もなく。
私は揺れる馬車の中で、優雅に紅茶を啜っていた。
「良い香りだ。これは?」
「実家から持参した『ゴールデン・ダージリン』です。一杯いかがです、閣下?」
「頂こう」
ギルバート様はカップを受け取り、一口飲んで満足げに頷いた。
「美味い。……それにしても、君は落ち着いているな。王都を出て寂しくはないのか?」
「全く」
私は即答した。
「過去を振り返っても一銭の得にもなりません。私が興味あるのは、未来の利益と、これからの仕事だけです」
「ハハッ、徹底しているな」
ギルバート様は窓の外へ視線を向けた。
王都の城壁が遠ざかっていく。
「なら、期待していてくれ。俺の領地は、君のその能力(スキル)を飢えるほど求めている。……退屈はさせない」
「ええ。骨の髄までしゃぶり尽くさせていただきますわ、その『素材』」
私たちは共犯者のように笑い合った。
馬車は北へ。
目指すは極寒の地、辺境伯領。
そこで待っているのは、私の常識すら覆すような、破天荒な『脳筋』騎士団との出会いだった。
(さあ、まずは帳簿の監査から始めましょうか……!)
私は懐の計算機を撫でながら、不敵に微笑んだ。
私は小鳥のさえずりよりも正確な体内時計で目を覚ました。
時刻は六時〇〇分。
いつもなら、この時間は王太子の寝室へ向かい、低血圧で起きられない彼を叩き起こし(物理)、その日のスケジュールの読み合わせを行っている頃だ。
だが、今は違う。
「……素晴らしい」
私はベッドの上で大きく伸びをした。
重苦しい王都の空気とは違う、自由の味がする。
今日から私は、他人の尻拭いをする必要がないのだ。
自室のベルを鳴らすと、昔馴染みのメイドが入ってきた。
「おはようございます、お嬢様。朝食の準備が整っております」
「ありがとう。……ああ、それと」
私はふと思い出し、サイドテーブルのメモ用紙を指さした。
「出発までに荷物の再点検(ダブルチェック)をお願い。特に、対寒冷地用の発熱魔道具と、予備の計算機用魔石は多めにね」
「かしこまりました。……本当に行かれるのですね」
メイドは少し寂しそうに眉を下げた。
「ええ。より良い労働条件(オファー)があったのですもの。行かない理由がありませんわ」
「ふふ、お嬢様らしいです。向こうでも、どうぞお元気で」
「貴女もね。父様と母様の無駄遣いを監視しておいて頂戴」
私は軽快にウィンクをして、着替えを済ませた。
ダイニングに降りると、既に両親が優雅にコーヒーを飲んでいた。
「おはよう、エーミール。昨夜の宴は楽しかったな」
父が上機嫌で新聞を広げている。
「おはようございます、お父様。昨夜のワイン、ヴィンテージものでしたわね。経費計上しておきましたか?」
「当然だ。『交際費』だ」
「さすがです」
母もニコニコしながら、一枚の紙を差し出してきた。
「エーミール、これを持っていきなさい」
「これは?」
「我が家が懇意にしている、北部の商人リストよ。物資の調達や、裏情報の収集に使いなさい。あと、この『空手形』も何枚か」
「お母様……!」
私は感激に胸を打たれた。
ただの母親ではない。優秀な『商売の師匠』だ。
「ありがとうございます。有効活用させていただきます」
「ええ。ギルバート辺境伯は金払いが良さそうだから、ふんだくれるだけふんだく……ゴホン、正当な対価を頂きなさい」
「御意に」
私たちは朝食のトーストをかじりながら、今後の資産運用について建設的な議論を交わした。
そして八時。
屋敷の前に、再びあの黒塗りの馬車が到着した。
「迎えに来たぞ、エーミール」
ギルバート様が馬車から降り立つ。
昨夜の夜会服とは違い、今日は動きやすい騎士服姿だ。それがまた、彼の鍛え上げられた肉体を強調しており、屋敷のメイドたちが色めき立っている。
「おはようございます、閣下。時間通りですね」
「軍人に遅刻はあり得ないからな。準備は?」
「万端です。――では、行って参ります」
私は両親に一礼し、躊躇なく馬車へと乗り込んだ。
涙の別れ? そんな非効率なものは我が家にはない。
「定期的に送金します」
「うむ。利回りの良い投資案件があったら連絡しろ」
「体には気をつけてね(医療費がかかるから)」
交わされた言葉はそれだけ。
しかし、そこには確かな信頼関係があった。
馬車が動き出す。
窓の外を流れる王都の景色。
私はそれを眺めながら、心の中で小さく呟いた。
(さあ、新しい仕事(ビジネス)の始まりですわ)
***
一方その頃、王城では。
地獄の蓋が開こうとしていた。
「……おい、どうなっているんだ!?」
執務室で、クラーク王太子は悲鳴を上げていた。
彼の目の前には、人の背丈ほどもある書類の山が築かれていたのだ。
「で、殿下! 決裁をお願いします! 財務省から『予算承認が遅れている』と苦情が!」
「殿下! 隣国への親書、まだ書き上がっていないのですか!? 使者がもう到着しています!」
「殿下! 午後の視察のスケジュールですが、ダブルブッキングしています! どちらを優先するのですか!?」
次々と飛び込んでくる文官たちの怒号。
クラークは頭を抱えた。
「う、うるさい! いっぺんに喋るな! ていうか、いつもはどうなっていたんだ!?」
「いつもは、エーミール様が朝の時点で全て仕分けし、緊急度の高いものから順に殿下の机に並べておられました!」
「親書の下書きも、エーミール様が済ませておられました!」
「スケジュール調整も、エーミール様が……!」
返ってくる答えは、すべて「エーミール」だった。
クラークは呆然とした。
「あ、あの女……あんな涼しい顔をして、これだけの量をこなしていたのか……?」
「殿下ぁ……」
そこへ、部屋の隅で縮こまっていたミーナがおずおずと声をかけた。
「私、何かお手伝いしましょうか……? お茶を淹れるとか……」
「おお、ミーナ! 頼む! 喉がカラカラなんだ!」
クラークは救世主を見る目でミーナを見た。
そうだ、エーミールはいなくなったが、僕にはこの愛らしいミーナがいる。彼女の淹れたお茶を飲めば、きっとリフレッシュして仕事も捗るはずだ。
ミーナはフリルたっぷりのドレスを揺らしながら、ワゴンのお茶セットに向かった。
「えーっと、これにお湯を入れて……」
カチャカチャとぎこちない手つき。
そして。
「あっ、熱っ!?」
ガシャーン!!
派手な音がして、ティーポットが床に落下した。
熱湯が飛び散り、近くの絨毯を濡らす。
「きゃああん! 火傷しちゃったぁ!」
「ミーナ!?」
クラークが慌てて駆け寄る。
「大丈夫か!?」
「うぅ……痛いぃ……。ごめんなさい殿下、私、ドジで……」
「い、いいんだ。君の怪我の方が大事だ。誰か! 医者を呼べ!」
執務室は大騒ぎになった。
その様子を、入口付近に立っていた宰相補佐官が、冷ややかな目で見つめていた。
「……殿下。お戯れはその辺にしていただきたい」
「なんだと!? ミーナが怪我をしたんだぞ!」
「指先が赤くなった程度です。それよりも、この書類」
補佐官は、床に散らばった書類の一枚を拾い上げた。
先ほどのお茶騒動で、インクが滲んで読めなくなっている。
「これは『北の砦』への補給物資申請書です。今日中に承認印を押さなければ、来週には兵士たちの食料が尽きます」
「な……っ」
「再発行には時間がかかります。どう責任を取られるおつもりで?」
「そ、そんなこと言われても……悪いのはポットを落としたミーナで……」
「殿下」
補佐官の声が、氷点下まで下がった。
「以前、エーミール様がいらした時は、執務室内での『お茶汲み』などという非効率な作業は禁止されておりました。水分補給は、魔道具によって適温に保たれた水筒で行うのがルールでした」
「う……」
「そもそも、エーミール様はこのような初歩的なミス(・・・・・・)はなさいませんでしたが」
その言葉は、鋭い刃となってクラークとミーナに突き刺さった。
「ひ、ひどい……! 私だって頑張ってるのに!」
ミーナが泣き出す。
いつもなら「可哀想に」と同情してくれる周囲の視線も、今は冷たい。
文官たちは皆、徹夜続きで殺気立っているのだ。
「泣いている暇があったら、雑巾で床を拭いてください」
一人の女性文官が吐き捨てるように言った。
「え……? 私が? 雑巾がけを?」
「当然でしょう。貴女が汚したのですから。それとも、未来の王太子妃になろうという方が、自分の尻拭いもできないのですか?」
「っ……!」
ミーナは屈辱に顔を歪め、クラークに助けを求めた。
しかし、クラーク自身も補佐官に詰め寄られ、それどころではない。
「殿下、サインを! 早く!」
「わ、分かった! 書けばいいんだろう!」
クラークは震える手で羽ペンを取った。
だが、インク壺は空だった。
「インクがないぞ!?」
「補充係はエーミール様が兼任しておられました」
「ああもう! クソッ! なんで何もかもあの女なんだ!」
クラークは机を叩いた。
怒りで頭が沸騰しそうだ。
だが、心のどこかで、冷たい恐怖が広がり始めていた。
(もしかして……僕は、とんでもない過ちを犯したのではないか?)
エーミールという『土台』を失った玉座。
それがどれほど脆く、不安定なものか。
彼らが本当の意味で理解するのは、まだもう少し先の話である。
***
そんな王城の惨状など知る由もなく。
私は揺れる馬車の中で、優雅に紅茶を啜っていた。
「良い香りだ。これは?」
「実家から持参した『ゴールデン・ダージリン』です。一杯いかがです、閣下?」
「頂こう」
ギルバート様はカップを受け取り、一口飲んで満足げに頷いた。
「美味い。……それにしても、君は落ち着いているな。王都を出て寂しくはないのか?」
「全く」
私は即答した。
「過去を振り返っても一銭の得にもなりません。私が興味あるのは、未来の利益と、これからの仕事だけです」
「ハハッ、徹底しているな」
ギルバート様は窓の外へ視線を向けた。
王都の城壁が遠ざかっていく。
「なら、期待していてくれ。俺の領地は、君のその能力(スキル)を飢えるほど求めている。……退屈はさせない」
「ええ。骨の髄までしゃぶり尽くさせていただきますわ、その『素材』」
私たちは共犯者のように笑い合った。
馬車は北へ。
目指すは極寒の地、辺境伯領。
そこで待っているのは、私の常識すら覆すような、破天荒な『脳筋』騎士団との出会いだった。
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