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「……さて。おバカな王子様の『粗大ゴミ回収車』は、たった今出発したようですわね」
嵐が去った後の静寂が戻った夜会会場。
私は、衛兵に引きずられていくレオナルド王子の背中を見送りながら、手元の扇子をパチンと閉じました。
しかし、会場にはまだ、処理すべき「燃えないゴミ」がもう一つ残っていました。
ホールの隅で、腰を抜かしたままガタガタと震えているシャロン様です。
「あ……あわわ……。嘘ですわ、こんなの嘘……! レオ様が廃嫡なんて、じゃあ私の『王妃様ライフ』はどうなるの!? 私の宝石は!? 私の贅沢は!?」
「あら、シャロン様。まだ夢から覚めていらっしゃらないの? あなたの『王妃様ライフ』は、先ほど王子の継承権と共に、音を立てて崩壊いたしましたわよ。……もっとも、最初からそれは、あなたが砂の上に建てた、今にも崩れそうな欠陥住宅でしたけれど」
私は、アルスター公爵の腕を借りて、ゆっくりと彼女の前に歩み寄りました。
彼女を見下ろす私の視線は、極寒の地の氷山よりも冷たかったに違いありません。
「ひっ……! ナナシー様、助けて! 私、悪くないんですの! 全部、レオ様が『君は可愛いから何もしなくていい』って言ったから……! 私はただ、愛に従っただけなんですのよ!」
「愛、ですか。……あなたの辞書には、愛と書いて『強欲』と読むルビでも振ってあるのかしら? 他人の婚約者を奪い、国庫を私物化しようとした行為を愛と呼ぶなら、この世の全ての犯罪者が聖人になってしまいますわ」
私は冷ややかに鼻で笑いました。
そこへ、国王陛下の命を受けた法務官が、一通の羊皮紙を持って現れました。
「シャロン・ド・モルト男爵令嬢。貴殿には、王族を唆した罪、および公金横領の幇助、さらにはブランドン公爵令嬢への名誉毀損の疑いにより……聖地アルカディアの修道院への終身送致を命ずる」
「し、修道院!? そんな、あんな何もない、お祈りばかりの場所なんて嫌ですわ! 私のドレスは!? 私のマカロンは!?」
「修道院には、質の良い『質素』と、たっぷりの『反省の時間』がございますわ。マカロンの代わりに、自給自足のジャガイモでも召し上がって、その膨らみきった物欲をデトックスしてはいかがかしら?」
私が提案すると、シャロン様は狂ったように首を振りました。
「嫌よ! 私、まだ若いの! もっとチヤホヤされたいのよ! ナナシー様、あなただって、私が羨ましかったんでしょう!? レオ様に愛される私が!」
「羨ましい……? ふふ、ははははは!」
私は、今日一番の大きな笑い声を上げました。
あまりのおかしさに、アルスターの肩を借りなければ倒れてしまいそうでした。
「シャロン様、あなた、本当に最高級の喜劇役者ですわね。……私が、あの書類もまともに読めないおバカな王子の愛を欲しがるとでも? 私にとって、彼との時間は『無償のボランティア』以外の何物でもありませんでしたわよ」
私は、笑いすぎて滲んだ涙を指先で拭いました。
「……さて、衛兵さん。彼女を連れて行って。これ以上、この会場に彼女の『知性の欠片もない悲鳴』を響かせないでくださる? せっかくのシャンパンが、彼女の叫び声で酸っぱくなってしまいますわ」
「離して! 離しなさいよ! 私、こんなの認めないわぁぁぁ!」
無様な叫び声を上げながら、シャロン様もまた、会場から排除されていきました。
私は、彼女が消えた扉に向かって、最後の手向け……いえ、トドメの一言を投げかけました。
「シャロン様! 修道院に着いたら、まずは冷たい井戸水で顔を洗って出直してきてくださいな。……あ、もちろん、その腐りきった『心』も一緒に洗うことをお忘れなくね!」
私の煽り……失礼、教育的指導が最後の一言となり、扉は重々しく閉まりました。
「……ふぅ。これでようやく、視界からノイズが消えましたわ。公爵、見ていらした? これが私の『掃除術』ですわよ」
「素晴らしい。……ナナシー、君のその容赦のないトドメ、やはり惚れ直した。修道院へ送るよりも、私の隣で一生、私を罵倒し続けてもらう方が、世界平和のためにも良いと思わないか?」
「世界平和のために私を犠牲にするなんて、とんだ偽善者ですわね。……でも、まあいいわ。あんなゴミたちのお相手をするよりは、あなたという『最強の変態』を観察している方が、少しは知的な刺激になりそうですもの」
私はアルスターを見上げ、今日初めて、少しだけ本物の微笑みを浮かべました。
悪役令嬢としての役目は、これでおしまいです。
ここからは、自由と、そして少しばかり騒がしい愛に満ちた、私の新しい物語が始まるのです。
嵐が去った後の静寂が戻った夜会会場。
私は、衛兵に引きずられていくレオナルド王子の背中を見送りながら、手元の扇子をパチンと閉じました。
しかし、会場にはまだ、処理すべき「燃えないゴミ」がもう一つ残っていました。
ホールの隅で、腰を抜かしたままガタガタと震えているシャロン様です。
「あ……あわわ……。嘘ですわ、こんなの嘘……! レオ様が廃嫡なんて、じゃあ私の『王妃様ライフ』はどうなるの!? 私の宝石は!? 私の贅沢は!?」
「あら、シャロン様。まだ夢から覚めていらっしゃらないの? あなたの『王妃様ライフ』は、先ほど王子の継承権と共に、音を立てて崩壊いたしましたわよ。……もっとも、最初からそれは、あなたが砂の上に建てた、今にも崩れそうな欠陥住宅でしたけれど」
私は、アルスター公爵の腕を借りて、ゆっくりと彼女の前に歩み寄りました。
彼女を見下ろす私の視線は、極寒の地の氷山よりも冷たかったに違いありません。
「ひっ……! ナナシー様、助けて! 私、悪くないんですの! 全部、レオ様が『君は可愛いから何もしなくていい』って言ったから……! 私はただ、愛に従っただけなんですのよ!」
「愛、ですか。……あなたの辞書には、愛と書いて『強欲』と読むルビでも振ってあるのかしら? 他人の婚約者を奪い、国庫を私物化しようとした行為を愛と呼ぶなら、この世の全ての犯罪者が聖人になってしまいますわ」
私は冷ややかに鼻で笑いました。
そこへ、国王陛下の命を受けた法務官が、一通の羊皮紙を持って現れました。
「シャロン・ド・モルト男爵令嬢。貴殿には、王族を唆した罪、および公金横領の幇助、さらにはブランドン公爵令嬢への名誉毀損の疑いにより……聖地アルカディアの修道院への終身送致を命ずる」
「し、修道院!? そんな、あんな何もない、お祈りばかりの場所なんて嫌ですわ! 私のドレスは!? 私のマカロンは!?」
「修道院には、質の良い『質素』と、たっぷりの『反省の時間』がございますわ。マカロンの代わりに、自給自足のジャガイモでも召し上がって、その膨らみきった物欲をデトックスしてはいかがかしら?」
私が提案すると、シャロン様は狂ったように首を振りました。
「嫌よ! 私、まだ若いの! もっとチヤホヤされたいのよ! ナナシー様、あなただって、私が羨ましかったんでしょう!? レオ様に愛される私が!」
「羨ましい……? ふふ、ははははは!」
私は、今日一番の大きな笑い声を上げました。
あまりのおかしさに、アルスターの肩を借りなければ倒れてしまいそうでした。
「シャロン様、あなた、本当に最高級の喜劇役者ですわね。……私が、あの書類もまともに読めないおバカな王子の愛を欲しがるとでも? 私にとって、彼との時間は『無償のボランティア』以外の何物でもありませんでしたわよ」
私は、笑いすぎて滲んだ涙を指先で拭いました。
「……さて、衛兵さん。彼女を連れて行って。これ以上、この会場に彼女の『知性の欠片もない悲鳴』を響かせないでくださる? せっかくのシャンパンが、彼女の叫び声で酸っぱくなってしまいますわ」
「離して! 離しなさいよ! 私、こんなの認めないわぁぁぁ!」
無様な叫び声を上げながら、シャロン様もまた、会場から排除されていきました。
私は、彼女が消えた扉に向かって、最後の手向け……いえ、トドメの一言を投げかけました。
「シャロン様! 修道院に着いたら、まずは冷たい井戸水で顔を洗って出直してきてくださいな。……あ、もちろん、その腐りきった『心』も一緒に洗うことをお忘れなくね!」
私の煽り……失礼、教育的指導が最後の一言となり、扉は重々しく閉まりました。
「……ふぅ。これでようやく、視界からノイズが消えましたわ。公爵、見ていらした? これが私の『掃除術』ですわよ」
「素晴らしい。……ナナシー、君のその容赦のないトドメ、やはり惚れ直した。修道院へ送るよりも、私の隣で一生、私を罵倒し続けてもらう方が、世界平和のためにも良いと思わないか?」
「世界平和のために私を犠牲にするなんて、とんだ偽善者ですわね。……でも、まあいいわ。あんなゴミたちのお相手をするよりは、あなたという『最強の変態』を観察している方が、少しは知的な刺激になりそうですもの」
私はアルスターを見上げ、今日初めて、少しだけ本物の微笑みを浮かべました。
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