【完結】令嬢は愛されたかった・冬

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「そこで止まれ」
アビゼル・クォーツの第一声にファリナはぴたっと足を止めた。
魔法使いは、ファリナの頭から足までをさっと見た。
「座れ」
アビゼルの指示にしたがい、ファリナは部屋にあったソファに座った。
「面倒なことは嫌いだが、お前の魔力量は半端じゃない。このままコントロールを覚えずに成人したら、王国まるごとなくなるかもしれない」

だから、とアビゼルは嫌そうな表情のまま続けた。
「お前を俺の弟子にする」
さらに、今日からここで暮らす、必要なものを俺と買いに行く。とアビゼルは言った。
ファリナは誰かと一緒に買い物をしたことがなかった。メリーは足が悪かったから、一緒に出かけられなかったし、伯爵は必要なものを渡すだけだった。
アビゼルは嫌そうな顔をしているが、
一緒に買い物に行ってくれる。ファリナは胸がドキドキと弾んだ。

自分のための買い物をするのは生まれて初めてだった。
伯爵邸でも、不足なくドレスや宝飾品を買ってもらっていたが、あくまで伯爵令嬢としてふさわしいものを事務的に与えられていた。ファリナの希望を聞かれることは一切なかった。
ファリナがほしいのは高価なものではない。一緒に買いに行った誰かと一生懸命選んだものだ。

アビセルは、扉から出ようとするファリナを引き止めた。
「出かけるなら、ここからだ」
緑色の魔法陣にアビセルとファリナは乗った。
アビセルが簡単に何かつぶやいた。
すると、一瞬でファリナは王都にいた。
馬車や人の往来の激しい場所ではない。
少し人から見えにくい空き地に着いていた。
ファリナは驚いた。自分もこんなことができるようになるのだろうか?

「おい、どこを見てる。迷子になるなよ」
アビセルは手をつないだりはしなかった。まだ10歳のファリナだが、メリー以外には甘やかされたことがないから、迷子になったりはしない。
アビセルは知らないが、ファリナは年齢よりもずっと大人だ。そうでなければならなかった。
メリー以外には決して弱音を吐かないで生きてきた。
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