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第十五話
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ナティは懸命にドレスを作っていた。デザインが決まったとはいえ、実際に作ってみると微調整は必要だ。
最終的には試着してもらって、その場で仕上げる。今日中には作る予定だ。
時間がないのだ。普通のドレスのようにはいかない。
なんとか、ほぼ出来上がったところで、待たせていたセルジーンとまた公爵邸へ向かう。セルジーンの目はキラキラしていた。
「母上はかわいいものが大好きなのです。ナティ様のこともお気に入ったようです。もちろんドレスを楽しみにされています」
「ありがとうございます。セルジーン様。私も夫人に喜んでいただけたら、幸せです」
ナティは自分まで褒められて少し照れた。でも、今までの人生から、ナティにはわかっていた。自分は可愛くない。
可愛かったら、何度も捨てられたりしないだろう。
ファイルナ公爵夫人に試着していただく。これが思っていたより、時間がかかった。侍女たちは体力のない夫人相手に着替えさせることに慣れていた。けれど、ドレスとなると普通でも時間がかかる。もちろん寝たきりの夫人に合わせて、ナティのドレスも脱ぎ着しやすくコルセットは不要な作りにしてある。
「まぁ」
鏡の近くに、夫人は車椅子で運ばれた。
「こんな短時間に!魔法のようね。」
ナティは、夫人が喜んでくれてうれしかった。少し離れたところでセルジーンも泣いていた。
血のつながりのない息子があんなにも心砕いているのだ。夫人は素晴らしい方にちがいない。
「ナティ、我儘を言ってごめんなさい。最後にどうしても貴方の綺麗なドレスを着てみたかったの」
試着のあとの見直しはできなかった。夫人が疲れ切ってしまったのだ。
そして、
「貴方には申し訳ないけれど、私はこのドレスが大好きよ。細かな直しはしなくていいわ。ありがとう、ナティ」
職人としては残念だった。だけれど、夫人の輝く瞳を見て思った。ドレスは、ナティにとってのルダになったのではないか。そうであれば、ナティの人生はこのためにあるのではないか。
最終的には試着してもらって、その場で仕上げる。今日中には作る予定だ。
時間がないのだ。普通のドレスのようにはいかない。
なんとか、ほぼ出来上がったところで、待たせていたセルジーンとまた公爵邸へ向かう。セルジーンの目はキラキラしていた。
「母上はかわいいものが大好きなのです。ナティ様のこともお気に入ったようです。もちろんドレスを楽しみにされています」
「ありがとうございます。セルジーン様。私も夫人に喜んでいただけたら、幸せです」
ナティは自分まで褒められて少し照れた。でも、今までの人生から、ナティにはわかっていた。自分は可愛くない。
可愛かったら、何度も捨てられたりしないだろう。
ファイルナ公爵夫人に試着していただく。これが思っていたより、時間がかかった。侍女たちは体力のない夫人相手に着替えさせることに慣れていた。けれど、ドレスとなると普通でも時間がかかる。もちろん寝たきりの夫人に合わせて、ナティのドレスも脱ぎ着しやすくコルセットは不要な作りにしてある。
「まぁ」
鏡の近くに、夫人は車椅子で運ばれた。
「こんな短時間に!魔法のようね。」
ナティは、夫人が喜んでくれてうれしかった。少し離れたところでセルジーンも泣いていた。
血のつながりのない息子があんなにも心砕いているのだ。夫人は素晴らしい方にちがいない。
「ナティ、我儘を言ってごめんなさい。最後にどうしても貴方の綺麗なドレスを着てみたかったの」
試着のあとの見直しはできなかった。夫人が疲れ切ってしまったのだ。
そして、
「貴方には申し訳ないけれど、私はこのドレスが大好きよ。細かな直しはしなくていいわ。ありがとう、ナティ」
職人としては残念だった。だけれど、夫人の輝く瞳を見て思った。ドレスは、ナティにとってのルダになったのではないか。そうであれば、ナティの人生はこのためにあるのではないか。
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