【完結】深く青く消えゆく

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5.ミッシェルは

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ミッシェルはいつでも自分は自分だと思っている。毎日の暮らしの中で、男か女か自分でもわからなくなる。だから、自分は自分だと思うことにした。父親の夢を叶えたい気持ちと他の女のように着飾ってレオとデートしてみたい気持ちが、自分の中で行ったり来たりした。
「まぁ、中間でいいか」
そう決めて、お休みの日にレオを誘った。
武器を見に行こうと。服装は、普通の男らしく、髪を結うリボンの色をレオの瞳の色にした。気づかないと思って。

「ミッシェル、そのリボン」
待ち合わせ場所でのレオの第一声だ。絶対気づかないと思っていたミッシェルは急に恥ずかしくなった。やめようと思ったら、レオがやたらにうれしそうだから、もう気にしないことにした。プロポーズされた仲なのだから、これくらいは当然なのだ。ミッシェルは変な汗をかいていた。まるで自分らしくない。たかがリボンのことで。レオのことは昔から親友として大好きだった。それが、婚約することになって、大好きはもっと増えた気がする。

「ミッシェル、その杖、魔法補助にいいんじゃない?」
レオの穏やかな声で我に帰ったミッシェルは、苦し紛れに持って見ていた杖を改めてじっくり見直した。値段にしてはかなりのよい出来だ。
「買おうかな」
「じゃあ、俺がプレゼントするよ。記念に」
「いいよ、記念ってなんだよ?」
レオをにらみつけてみるが、へらへら笑ってこう言う。
「もちろん初デート記念だよ」
その考えだと何でも記念になってしまう。破産する気か?とミッシェルは思ったが、もらえるものはもらっておこうと方向を変え、杖を買ってもらった。

「試したいな」
「そう言うと思った。鍛錬場に行く?」
「いや、そこの森で大丈夫だ」
森は国中を囲んでいる。危険な生き物が多いため、好んで入る人はいない。
「ミッシェル、森は危ないよ」
いつものミッシェルなら、言うことを聞いて鍛錬場に行っただろう。浮かれていたのだ。常識を失っていた。
「森で試す」
レオは急ぎ足のミッシェルに追いつくと、警戒しながら、一緒に森に入った。最初はよかった。杖の力がじゅうぶんに働いて魔物たちを順調に倒して行った。だが、森にはたくさんの魔物たちがいる。倒しても倒しても湧き出てくる。
「ミッシェル、もう危ないよ、逃げよう」
ミッシェルも我に帰って、逃げ道を探して絶望した。せめて巻き込んだレオだけでも助けたい。

ミッシェルは命を込めて魔法を打った。ミッシェルは無事では済まないだろうが、レオを逃す時間は稼げる。レオが助かりますようにと祈った。ミッシェルの意識はそこで途絶えた。
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