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おまけ
しおりを挟む神官が前座のように神の教えを説き、晴れ渡る今日と言う素晴らしい日に、伯爵令息である俺は美人で有名なエルフ族の娘と結婚する。
元々は伯爵令嬢である姉の方と結婚する予定だったが、姉の方はどんな時でものんびりしている性格が俺には合わず、一緒に居ると俺だけが何事にもイライラして仕方がなかった。それに比べて妹の方は俺と考え方も似ていてテンポよく会話が弾み、性格も可愛らしく好ましいものだった。結婚するなら俺と相性の良い妹の方がいいと考え、こっそり妹と逢瀬を重ねてアピールし続け、見事恋仲になり、鞍替えに成功したのだ。ただ婚約者の姉側には俺と性格が合わない以外に不足はない為、俺との婚約破棄が叶いそうになかった。なんであれ貴族間で結ばれた契約は、穏便に破棄する事が難しいことぐらい俺でも理解していたからな。…俺の誕生日パーティーで婚約破棄と俺と妹の仲を宣言すると言う強引なやり方に関しては怒られたが、狙った相手と結婚を許されたんだから俺のやり方は間違ってなかったと今でも思っている。そもそも妹と結婚するのだから破棄となっても家同士の繋がり等、特に問題ないとは思っていたのだが、そこはあちらの家庭問題が関係のせいなのだから俺は悪くないだろうに。
何でも妹である彼女は正確には伯爵令嬢の実の妹ではなく、養女として引き取った義理の妹であるらしいのだが、その辺話半分にしか聞いてなかった。どうせあちらの家の両親どちらかの愛人の子供とかで、利権の問題で養女としてしか引き取れなかっただけだろうし。これだけ姉にそっくりなんだ、血の繋がりがないなんてあり得ないだろうに変な言い訳するなんて潔くない家族だな。ま、姉の方も元々外見だけは俺の好みだったのだから、外見は姉にそっくりで中身は俺好みの彼女は俺にとって選ばれし完璧な妻となる訳で。むふふふ、散々美人な婚約者が居る事を自慢し羨ましがらせていた悪友達に対しても、俺の面子は守れるし更に胸を張って自慢も出来るってもんだ。全く問題ないな!
ただ不満に思う事がある。結婚相手が次女となってしまった為、俺の婿入りの予定が消えて、俺の持つ爵位が父から結婚と共に譲られる男爵位に下がってしまうのがなぁ。まぁ伯爵を継ぐと田舎暮らし決定だし、それよりも都会である王都で暮らす方が俺には合っているから、その点は我慢するしかないか。騎士が通う学校には試験に落ちた為通えなかったが、引退した騎士を雇って剣をずっと習ってきたから腕に自信がある。王都に行けば騎士になれるかもしれない。
おっと、それよりも今は夫婦となる為の式が大事だ。コレが終われば正式に男爵家の当主となって、王都に結婚祝いで急遽買ってもらった家で暮らせるのだから失敗しないように集中集中…。神を前に夫婦となる事の誓いが終われば、婚姻届けにサインしてその場で神官に提出。両家の両親と招待客への挨拶回りをして、その足で王都に向かう送迎馬車に乗る。王都に家に着くまで20日は掛かるし、初夜は王都の家でと二人で決めたからそれまで我慢だが、その日が楽しみだ!
――その後、俺は初夜にて彼女の『本来の姿』を見て『今までの姿』との激しいギャップに混乱し、気絶するはめになるなんて夢にも思っていなかった。更には彼女の普段の姿が愛の証として厳つい俺の姿そっくりに変わってしまい、中身は彼女のままであるだけに余計頭を抱えることになるなんて知りもしなかった。
…ついでに更に未来の話をすれば、妻への長年の説得により普段は女の姿を取ってくれるようになったが、『俺が女になったら』といった感じのままの姿だったのは言うまでもない。
もっと未来の話を言えば子供も男の子三人、女の子二人を出産してくれたけど、全員ミミック族の上に普段は俺の子供の時そっくりの外見で生活する始末。俺は子供の頃から体格は良かったから…家族全員が揃えば家の中が狭すぎて大変なのだ。子供全員、『本来の姿』は妻に似て小柄な癖に!
――かつて師事した事のある元騎士の先生の伝手で騎士団への紹介状を貰い受け、正式に騎士団から剣の腕前が認められ城の門番などを任せられる下級の騎士にはなれたし、色々思い違いはあれど幸せな家庭と言えなくもない暮らし。だが、たまに遊びに来る元婚約者である義姉の変わらぬ美しい姿を見かけて少しばかり涙が出そうになるのは、俺が選ばなかった選択をした場合の可能性をつい考えてしまうからなんだろうな…。
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