王子の恋愛を応援したい気持ちはありましてよ?

もふっとしたクリームパン

文字の大きさ
2 / 13

2、王妃様の庭で面会です。

しおりを挟む
 呼び出しの場として用意されていた場所は、王宮内にある王妃様が管理する美しい中庭でした。

 この中庭で咲き誇る花々に囲まれて催される王妃様のお茶会は、参加出来た貴族にとって自慢話の一つになるほど、大変名誉なことであるとされています。私も何度かお声掛けがあり参加させて頂きましたが、緊張したのは最初だけでそれはもう素敵な時間となりました。

 時間となり王宮に勤める近衛兵と王妃付きである女官に案内されたその中庭に、用意されたテーブルはただ一つだけ。その席には数日前から王宮に出向いていた私の両親の姿がありました。国王陛下と王妃様もすでに席に着いておられますが、王家を筆頭に赤髪か茶髪を持つ者が多いこの国において、髪色ですぐに両親が分かりますのは他国の血が流れる家の特権かもしれませんわね。お母様は金髪に明るい茶色の目をお持ちですが、お父様は黒髪と青空のような目をお持ちです。私はお母様から金の髪と、お父様からは青い目を受け継いでおりますの。


「ヴィオラ、いらっしゃい。挨拶はお互いに略しましょう。さぁさぁ、お座りなさい」

「…はい、ではそのようにさせて頂きます」


 カーテシーをする前に止められた私は、空けられていた両親の間の席にそっと座る。

 にこやかに笑うお母様と無表情のお父様。一見、仮面夫婦に見えるけれど、この二人が恋愛結婚であることは有名な話。娘の私から見れば、常に寄り添う両親をよく見ておりますので、どこが仮面夫婦に見えるのかと言いたいところですが。


「ヴィオラよ、良く来てくれた。本日の召喚に関しては、例の婚約についての正式な話となるのでな。少しでも気分が良くなるよう、王妃にこの中庭の提供を頼んだのだ」

「陛下のお心遣いに深く感謝致します」

「良い良い。最近ではこうして王妃共に、時間を作れなんだからな、余のためでもある」


 そう言って優しく微笑まれた国王陛下は現在、同盟国を挟んだ向かい側にあるアリエン帝国の怪しい動きに対応されており、側近も含めて多忙の身なのです。最近では国内のことは王妃様を筆頭に側妃様方が協力し合い、それぞれの得意分野を生かして取り計らっていらっしゃるぐらいですから、余程のことなのでしょう。

 そんな中でこのような面会の場を作って下さった国王陛下並びに王妃様のお心遣いには、感謝するしかありません。


「…さて、後はジオルドか…」

「えぇ、そうですわね。ヴィオラより先に来るよう呼び出したはずなのですけどね」


 穏やかだった国王夫妻の雰囲気が一瞬にして冷えた気がします。そこへ、一人の王妃付きの女官が王妃様の元へ進み出て、何かを伝えておりました。


「……そう。…ええ、そうね、そのようにしてちょうだい」

「…どうした」

「……この場に相応しくない者を連れてこようと画策していたようですわ。今からこちらに一人で来るよう取り計らいました」

「そうか」


 ますます冷えてきた気がします。それも、前方の国王夫妻…というよりも、両隣から冷気のようなものが湧き出して来ているような…。

 アンナとお茶を楽しんだおかげで私の身体は温まっておりますが、早くジオルド殿下には来て頂きたいものですね……と、思っていたのですが。


「父上。何故、第二王子である私の大事な話しを中庭とは言え、こんな野外でしなければならないのですか」


 遅れて来られたジオルド殿下の第一声が、コレでした。

 もはや冷気を通り越して、周囲が凍てついてゆくような気すら感じられます。…こんなに悪化させるくらいならば、いっそ来てほしくなかったかもしれません…。


「……ジオルド、遅れた詫びどころかまともな挨拶すら出来ぬのか」

「遅れたことに関しては明確な理由があります、私の」

「もう良い、とにかく話を始めよう。そこに座ると良い」


 ジオルド殿下の話を遮って、陛下が着席を促されます。殿下の席は、同じテーブルであっても、国王夫妻とは離れた位置に用意されておりました。


「…私の席はここなのですか?」

「見てのとおりだ。早く座ると良い」


 不満を隠さない殿下でしたが、話を進める方を優先したのか、しぶしぶ着席なさったのでした。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。

あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。 そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。 貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。 設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。

【完結済み】婚約破棄したのはあなたでしょう

水垣するめ
恋愛
公爵令嬢のマリア・クレイヤは第一王子のマティス・ジェレミーと婚約していた。 しかしある日マティスは「真実の愛に目覚めた」と一方的にマリアとの婚約を破棄した。 マティスの新しい婚約者は庶民の娘のアンリエットだった。 マティスは最初こそ上機嫌だったが、段々とアンリエットは顔こそ良いが、頭は悪くなんの取り柄もないことに気づいていく。 そしてアンリエットに辟易したマティスはマリアとの婚約を結び直そうとする。 しかしマリアは第二王子のロマン・ジェレミーと新しく婚約を結び直していた。 怒り狂ったマティスはマリアに罵詈雑言を投げかける。 そんなマティスに怒ったロマンは国王からの書状を叩きつける。 そこに書かれていた内容にマティスは顔を青ざめさせ……

まさか、今更婚約破棄……ですか?

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
チャールストン伯爵家はエンバー伯爵家との家業の繋がりから、お互いの子供を結婚させる約束をしていた。 エンバー家の長男ロバートは、許嫁であるチャールストン家の長女オリビアのことがとにかく気に入らなかった。 なので、卒業パーティーの夜、他の女性と一緒にいるところを見せつけ、派手に恥を掻かせて婚約破棄しようと画策したが……!? 色々こじらせた男の結末。 数話で終わる予定です。 ※タイトル変更しました。

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

ある愚かな婚約破棄の結末

オレンジ方解石
恋愛
 セドリック王子から婚約破棄を宣言されたアデライド。  王子の愚かさに頭を抱えるが、周囲は一斉に「アデライドが悪い」と王子の味方をして…………。 ※一応ジャンルを『恋愛』に設定してありますが、甘さ控えめです。

覚悟はありますか?

翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。 「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」 ご都合主義な創作作品です。 異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。 恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった

有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。 何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。 諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~

桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」 ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言? ◆本編◆ 婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。 物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。 そして攻略者達の後日談の三部作です。 ◆番外編◆ 番外編を随時更新しています。 全てタイトルの人物が主役となっています。 ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。 なろう様にも掲載中です。

処理中です...