DREAM

真亭 甘

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FANCY

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アナウンス「さぁお待たせしました。皆さま、これよりDグループの試合を始めます。先程のAグループの試合みたいに、観客を沸かせてくれよ!Dグループのメンバー!」

Dグループメンバー「うおおおお」

Dグループのメンバー達は、大声をあげている。しかし、ただ一人だけ大声を出さない者がいた。その者の名は、ロイ!

ロイはまだフェグの事を気にしていた。フェグに何も声をかけれなかった。フェグのお見舞いに行こうとしていたのにと。あのときに、治療所でベットの上にいるフェグと一瞬目が合ったのに、いくら転送だからといっても、「俺は勝ってくる」って言えなかったんだ?あれじゃあ、前と同じじゃねえかよ!戦ってもいないのにフェグを、馬鹿にした連中にも、そうだ!俺は、彼らに何も言えなかった。それはもう俺は・・


バッシーン!

ロイは、殴られて倒れた。

フブル「なんだ?コイツ!全然動かね?システムか?邪魔だなぁ」

アナウンス「あーと?いろいろな大会などに参加している、フブル選手がロイを殴り飛ばした!しかし、ロイ選手。それでも動かない!どうした、どうした?」

ロイ「そう言えば、今試合をしているんだっけ?」

寝転がりながら、試合していることに気づく。しかし、ロイは立ち上がろうとしない。それどころか、フブルにお腹を蹴られて、場外に落とされようとしている。

フブル「なんだ、コイツ?やる気無いなら、リタイアしろ!それか、気を失え」


アナウンス「なんてことだ!ロイ選手どうした?フブル選手に一方的に蹴りを入れられています。その光景は、じわりじわりと舞台の外へと、ズレ動いています」

観客「なんだ?やる気無いなら、引っ込め!」「試合を、馬鹿にしているのか?」「試合なんかに出てくるんじゃねえ!」

さすがに俺のやる気の無さには、観客も嫌気が差すよな…俺もこんな試合を見てても面白くないしなぁ。しかし、何でだよ?蹴りを入れられても痛いとも、辛いとも思わねぇ、気を失うなって、難しいよ。それどころか、今まで蹴られてたの?



アナウンス「あーあー、これなら先程戦ったフェグ選手を何度も見ていたかったです。こんなやる気の無い選手がいては、今大会のレベルは猿以下です」

そりゃもちろん、こんなのがいたら大会のレベルも猿以下だよなぁ…

ちょっと待って、Dグループのメンバーじゃなくて、今大会のメンバーだと?
それはおかしいだろ?Dグループのメンバーならわかるが、今大会のメンバーって、フェグとかバントやダウトらもいるのだぞ!まさか俺のせいか?


そう思うと、ロイはすぐさまに立ち上った。




フブル「なんだよ、やる気の無さに、リタイアするのか?」

ロイ「いや、リタイアなんかしない。リタイアしてしまったら、俺やDグループのメンバーだけじゃなくて、フェグなどの今大会のメンバーのことも、笑われてしまう。それは認めない!」


フブル「それならば、最初からちゃんとやれ!フェグの関係者か知らんが、フェグも弱いヤツだけど、お前も同じだろ」



ロイ「フェグは、弱くない。フェグは、弱くない。フェグのことを言うのは、やめろ」

フブル「何をごちゃごちゃボソボソ言っているのだ、小言で聞こえんは」

舞台の上は、他の選手らが争い合い、剣の音や爆発音が鳴り響き、観客の声援もあり会話が成り立たない状態であった。

フブル「もうめんどくさいで、俺に倒されろ」

フブルは、ロイにそう吐き捨てて、ダッシュして殴りかかった。
フブルの右拳がロイに顔面を捕らえようとした瞬間、フブルの右拳が急にピタッと止まった。と思ったら、ずるずると下がっていき、地面にパタッと着いて、フブル自体もうつ伏せに倒れていた。ただ、フブルの上には黒色の円い輪っか・・・タイヤが上に載っかっていた。


フブル「くそぉ、なんでタイヤが降ってくるのだよ・・・」

と言い残して、フブルは気を失った。

ロイ「俺もタイヤを思い浮かべるつもりは、無かった!しかし、急に襲ってくるから、とっさに黒いものって考えていたら、馬車が目に浮かんで、タイヤを思いついた!もう少し格好いい演出したかったのに…」



アナウンス「なんてことだ、さっきまでやる気のなかったロイ選手を攻撃していたフブル選手が、逆にロイ選手に返り討ちにあっているではないか!しかも、フブル選手の上にはタイヤが乗っかっている。これは一体どういうことだ」

アナウンスの音声に一人の男が手を止めて、ロイの方を見る男がいた。その男の名はテラゾ。今大会での優勝候補の筆頭である。灰色の作業服を着た、いかにも職人を表に出している様な男である。
テラゾはただロイを見たが、何も仕掛けることも無く、ただ自分の周りの戦闘へと戻っていった。



ロイはアナウンスの音声も、ましてや自分のことを見ていたテラゾと言う男のことも知らなかった。ただ自分はまずこのDグループで戦い抜き、勝利を収めることしか考えていなかった。そうそれは、自分ができるフェグへのお見舞いだと、思い込むことで精一杯だった。

そして、タイヤを持ち上げて、選手が大勢集まっている場所に向けて、振り投げた。
振り投げたタイヤは、空中で黒く大きな輪の形態から、横長の長方形の鉄板に形を変えた。
自分の戦いに夢中な選手達は、鉄板が襲って来るのに気が付かなかった。何かが襲って来るにも、鉄板が舞台の上に飛んでいるとは思わない。気付いた頃にはもう手遅れで、鉄板によって舞台の上から押し出された。



アナウンス「なんだ、なんだ。今までやる気の無かったロイ選手が、急遽やる気を出したかと思ったら、一気に選手大勢場外に叩き落としたではないか!」

このアナウンスには、それまで興味のなかった選手の注目を集めた。
人というものは、誰か人気や1つ頭を出すと面白くないのか、それとも自分よりも上と思えるのが気に入らないのか、それまでバラバラに戦っていた選手たちが、一気にロイに向かって襲いだした。
1人、2人、3人とロイに殴りかかるもの、ロイは読みと体使いで巧みに避けた。それでもまだ選手はたくさんいる、剣で斬りかかってきたり、棒で打ち付けてきたり、槍で突いてきたりとロイの逃げる先にうじゃうじゃと、それでもロイは逃げ回るが、とうとう囲まれてしまう。



アナウンス「あ~と、ロイ選手。大勢の集団に襲われていても、なんとか体を使いこなして避けていたが、とうとう囲まれてしまった!これは絶体絶命。どうする」

すると、ロイは舞台の上に手を翳した。するとタイル張りになっていた舞台の目地から、黒い網が浮き上がり、その周りを囲った選手達が宙に浮き始めた。
それは、タイル目地に合わせてできた網に足を取られて身動きができないでいるからである。タイルは縦300㎜の横300㎜の正方形から出来ているどんなに足のサイズが大きい大人の人でも、この幅には足を抜けて落としてしまう。しかし、ロイが平然と立っているのは、ロイの場所だけ網が出来ずに浮いたからである。さらにロイのこれから射出と言ったのは冗談ではない。周りにいる選手達を持ち上げている網を消すことによって、無抵抗に一斉に地上に向かって落ちていく。飛行魔法の使えるものなら、生き残りは可能だが、そんなことのできる者は、まずこの島にいない。そのまま網は消え去り、それまでロイの周りを囲んでいた選手は、一斉に地面に転がり落ちた。その瞬間にリタイアが決まった。

喜んでいる暇もなくロイに、水が襲い掛かってきた。場外に押し出されることは無いが、その場に転倒した。



シーシング「ちぃいい、この俺に水を浴びても場外に飛ばされないとは」

ロイ「そんなバケツをひっくり返した程度の水で、場外まで飛ばされるかよ」

シーシング「なんだと!」

怒りに身を任せて、シーシングの片手から水を放つがロイはすぐさまに飛び跳ねて、水から避けた。空中でロイは、右拳に黒い炎を燃やしシーシングに言い放った。



ロイ「お前の水がそんなにもすごいのなら、この俺の感情の黒い炎を冷ますことができるか」

シーシング「ほざけぇ、そんなちっぽけな炎。この俺の水が消してやる」

シーシングから出てくる水に向かって、ロイは黒い炎で燃えている右拳を殴りつけた。しかし、黒い炎は水で消えずに水の中を突き抜け、シーシングの顔を殴り飛ばした。



アナウンス「強い、強い。強いぞぉ!最初のやる気の無さはどこへ行ったのだ。ひしめくままに大勢のDグループの選手があっという間に、」

テラゾ「別に強いとかの問題じゃねぇ。システムやまともにアニマを使いこなすことができないわけだ、まぁある意味この大会のレベルが低いとも言えるが、正確には強いのと弱いのとの差が、離れすぎていることだ」

舞台の反対側で戦っていたテラゾは、そう喋りながら近づいてきた。しかし、テラゾが近づいてきた瞬間に、シーシングは立ち上がり二人に向かって水を放水した。不意打ちにも関わらずに水を避けて、1発殴りシーシングを沈めた。

テラゾ「おいおい、倒したならちゃんと気を失わせるように、止めさしとかないと。これじゃお前さんが最後の一人になった時に、不意をつかれておしまいだぞ!まぁそんなことになることはないが」

そう言うと、テラゾはファイティングポーズを構えだした。
鼻と口から血を噴き出して、倒れいくシーシング。あそこまで相手にダメージを与えるのは何らかの能力なのか?それともただの格闘専門で鍛えた人か?それよりも構えだした途端に、寒気ぼろがしだした。この感覚は、この前ルナと一緒に倒したパンクウルフと出会した時に感じた物と一緒だった。

アナウンス「さぁさぁDグループも後、残すところ2人だけとなりました。どちらが勝つでしょうか?片方はテラゾ選手、今大会優勝候補と言われた彼はキューブで塔を60階まで登りました。しかし、テラゾ選手を語るには、匠の方が最適でしょう。テラゾ選手は主に石工関係の制作を得意として、C級30作、B級10作、A級3作を築き上げてきました。」

アナウンスのテラゾの解説により観客が、大歓声を上げる。そして、次に述べる俺にアナウンスは向けられた。

アナウンス「さぁ続きましては、ロイ選手。ロイ選手はテラゾ選手と違ってキューブには、未出場であってまだ主な記録はありません。しかし、ロイ選手は追先ほどネオル島上級難易度設定されているCランクモンスターのパンクウルフの狩りをしてきた記録があります。」

ネオル島上級難易度を倒した発表により、観客の歓声は大きくなった。

アナウンス「両者それなりの大カードとなり、このDグループで相交わり合います。片やキューブの達人。片や、上級ハンター。さぁこの試合はどちらが勝つのでしょうか。そして、両者は互いに飛び合い、舞台の中心で激突しました。」

アナウンスの言う通りに、俺とテラゾは右拳をぶつけ合った。まだ燃えている右拳に躊躇なくテラゾも右拳をぶつけてきた。すると、右手に激痛が襲ってきた。まさかの激痛に俺はその場で、両膝をついて四つん這いになった。

ロイ「うがぁああ」

テラゾ「ほら、お前さんが勝つことは無くなった。」

右足で俺の顔面を蹴られた反動で、俺は仰向けになった。

ロイ「がっはぁ。なんだ、これ石器具でぶたれているような感覚だ」

テラゾ「あたりだよ。俺のアニマは、体の10分の1を鉱石に変える。変に石を纏うよりも動きやすくていいぞ。殴っても痛いのは相手だけ、済む。では、俺の勝利を決めさせてもらうか」

そして、テラゾは再び蹴ろうとした。今度は顔面に向けて。
その瞬間、テラゾの身体は宙に浮いた。ロイの右手には、フェグの大剣に似た黒い剣が握られていた。

テラゾ「ぶっはぁ・・・ハァハァなんだ、その剣は、その形は。いつ現れた、お前の能力は具現化なのか?」

ロイはゆっくりと起き上がり、テラゾを見て行った。

ロイ「この剣は、先の試合で活躍したフェグの剣を似せたものだ。それより、どうしたテラゾ。左肩から血が出ているぞ、鉱石みたいに硬いんじゃないのか。」

テラゾ「ほざけぇ」

ロイ「どうやら肉弾戦は強くても、武器に攻撃されたら傷は付くのだな」

ダッシュしてテラゾに迫り、おおきく振りかぶった。テラゾも殴り返し合わさった。押し合いになったが、模造品で剣が砕けた。しかし、砕けた刃先がテラゾの右肩を斬り付けた。

テラゾ「あ、がぁああ」

その瞬間に片膝をついたテラゾ。顔を上げるとロイに、思いっきり折れた剣の面で叩き込まれた。
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