DREAM

真亭 甘

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Dguma

銀羽

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天正を統治する銀羽の屋敷、古河城こがじょうでは四資が兄弟を攻め滅ぼし、守人となり名を「天覇てんは」と改めたことに、騒いでいた。兄弟や家族を殺めること自体が異例中の異例。ましてや名を変えるなど、親や国人などの許可など行わずに行うなどもってのほか。飯母や部田など家臣団は各々の主張を喋り、会議は進んで行かなかった。しかし、家臣団長の米童めいどうが手をかざした瞬間に、家臣団の自己主張は止み、代わりに米童が口を開いた。
「諸々の意見は拙者が、今一番にわかっている。血の繋がりは斬っても切り離せない運命。そして、自分の分身であり、唯一の味方。なのにあの男は私利私欲のために、討った。これはあってはならないことだ。」と、家臣団の主張を理解するようにまとめた。そして主人の銀羽に向き直した。
米童。天覇と月定の関係と同じく、銀羽の目付け役として天覇を補佐し続けた。また幼き頃から色々な家臣のアシスタントを務めていたため、政務などに優れ今の地位に登り詰めた。名前の米童は改名名であり、主食の米のように人に必要とされるように、そして権力に溺れないよう幼き無知の子供のようにと意味を込めて。
「ならばとっと召集をかけて、兵を募り戦でも始めるのでは、無いな?」
「そうであります。戦とは政策や統治においての窮地の際における最終手段。武をもって制しても徳はありません」
「う~ん、ならば・・・どうすれば?」
困惑して何も思いつかない銀羽は、米童に答えを求めた。
「何もする必要はありません。大義名分無き我らは例え国人であろうとも、力技で奪い取ってはそれは賊同様。ただ国人なりの攻め方をすれば良いのです。土地と権力差で四資と差を造り、国人特権として守人を変えさせる。それでいいのです」
そう言われて、銀羽も家臣団も納得。これまでの政策を続けていく事となった。


四資改め天覇は、上下地域などの有力都市を巡回していた。そこで特産品などを調べ上げて、他の各地に売り稼いだり、展示や景観なら集客を集めるために入国門である関所を無くした。それで得た収益で、納税を減らしていた。その為に軍備増強にはならず、不安で騒ぎ混乱を招くものもいた。
「民衆の声も大事だが、その前に我らの働きがあっての今がある。更なる軍備増強をし後々の安泰を得てからでも良いのに・・・重北様も思われないか?」
「勝孝、そのように申すな。多分殿は、我らとは違う何かを見ているのかもしれない」
しかし、天覇の行動はそんな不安では止まらず、さらに知尾地域と銀羽の領地の境を繋ぐ街道をくまなく視察する。天覇は自覚していた。手順を破り同族を殺めたことに、銀羽との戦の引き金になることを。


古河城では、天覇との差を付けるために、独自法律「銀事法典ぎんじほうてん」。30の項目からなる事細かな決まり事を示した法典。いわゆるルールブックである「銀事法典」に、新たな10の項目を付け加えた。このことにより回りくどい手続きを早める事にも繋がり、領国内は急激な加速成長を進めた。
「さすがは、国人銀羽、独自法律「銀羽法典」を持って、統治するではなくさらに改めて統治する」
「さよう、なればこその我らが選択は、間違っていなかった事であるぞ。飯母殿!」
「ですな、部田殿」
飯母と部田。この両者は兄弟での戦の際に、長兄の広秀を誅殺後。銀羽に身を寄せていた。その為に、藤幡城を明け渡し、古河城内の武家屋敷に住み着いていた。そこに一人の男性が、二人を訪ねてきた。
「こ、これは米童さま。こんな我ら下層家臣に・・・」
「硬い礼など、いい。そなたらには、これからの動きを願いたい」
「は、何なりとお申し付けください」


「米童。これで天覇を破門できるな!」
「いいえ、殿。これでは天覇を約定持っての、追放にはなりませぬ。意外と我らと向こう方の金銭差はあまりないようです」
「そんな!・・・それではこれまでの月日の努力は・・・。貴様が言ったんだぞ!何もする必要も無く普段通りのことをしていれば、差を持って制すと!」
頑張ってきた労力が実らずに逆上し、米童を責め立てる銀羽。米童を面白く思っていない家臣が口を開こうと発した瞬間に、米童が発した。
「殿、何をお怒りになさっているのですか?」
「な・・・き、貴様ぁ」
「拙者は約定による国人特権が使えないだけであると申したまで、天覇を攻め落とさないとは申しておりません」
「え、戦をするのか?それは賊同様と」
「賊同様は力技だけを振るってであります。理由を作って攻めれば良いのです」
「理由なら前回の、同族殺しと無許可の名を変更の大義名分があったが効力がないと」
「確かに、効力は弱いですが・・・こちらを加えると強大です」
米童は立ち上がり。歩いて部屋の扉を開けた。銀羽や家臣団は見るや驚き疑問にも思ったが、笑みを浮かべた。
「やはりそなたには、敵わないな(笑)。こんな鬼の手を打つとは・・・ははは」


岩袋城での激戦。轟々と燃え盛る城内を四資は突き進んでいく。家来を4~5人ほど連れて、奥へ奥へと。大広間の通りを歩いていると、突然障子扉が砕け散った。すると中から火の粉や煤汚れを付けながら、雅竹が斬りかかってきた。城内への城攻めでは、いつ何時敵と遭遇するのかわからないため、抜刀状態での潜入になる。列の中腹を奇襲されたが、四資は難なく剣を構え、雅竹の一撃を受け止めた。しかし、不意打ち。あくまで防御の構えをとるのが精一杯な四資は、押し飛ばされた。付き添いの家来たちは雅竹の奇襲に慌てて攻めかかるも、雅竹は一人一人斬り倒していくその姿は自然に歩く様に、付き添いが空中で止まっているかのように、右で斬ったら左を返し斬りしていく。
これは称賛に値しますぞ!四資殿。雅竹は振り返りながらしゃべり、そして打刀を肩にかけてさらに語る。
「前回光友の時にご一緒に戦った時は、我らに指揮を任せながら、自軍の指揮も上手くできない愚かな人物かと思っていたのだが、今回の采配を見ていたらとんだタヌキだな?四資殿」
「騙され偽りの餌に群がる愚かな肉親どもを食らいつくすまでよ」
「そして全員がまんまと騙されてしまったがな。しかし、俺には関係無いこと。俺は単なる戦いを、至極まっとうな戦いを・・・生と死の」
語り終えた瞬間、襲い掛かる。燃え朽ちて砕けた障子の欠片を刃先で引っ掛け、四資に振りまいた。
「ふん、ならば燃やせ貴様の心を、この燃え盛る業火のように」
迫りくる障子の欠片を切り払い、襲い掛かる雅竹との死闘を繰り広げる。四資は剣の特徴である両刃を左右前後返しにと、巧みに使いこなす。相対する雅竹は真っ直ぐな直刀では無く、反りのあるわん刀の打刀を使用する。勢いを殺さずになで斬りをしやすく、振り回して相手の体を引き裂く戦い方をする。両者の戦いは硬直状態に入り、城内の内装を斬りつけていくだけで、状況が偏らなかった。
「強いね、殿様、こんだけの力を見せずに隠し続けれたものよ。内心相当なストレスでも抱えてたのだろう」
「よー吠えるの、犬の遠吠えか?」
少しの間両者は沈黙していたが、雅竹が突然と笑いだし、くそがぁと吠えながら斬りかかる。
「我がアニマ、「宗文そうもん」の前にひれ伏せ」
左手を雅竹に向けた瞬間、手のひらから力の波動が爆発的に放出。雅竹は波動に飲み込まれ障子や壁を突き破り、城内の燃え盛る火の海の中へと消えていった。はずの雅竹が桜花の屋敷の台で寝ていた。体には、見慣れない細い赤・黄色・緑の三色の糸が繋がっていた。そして、その糸はチカチカと光る不思議な箱が取り囲んでいる中へと。あまりにも驚きの多い状況に、秋餅は後退りをした。すると背中が何かにぶつかった。恐る恐る後ろに振り返ってみると、桜火が立っていた。
「どうか、しました?」
「いえ、壁から声がするものですから、壁に寄り添いながら確かめていたら・・・。壁が急に動き、この部屋に来てしまったのです」


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