DREAM

真亭 甘

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Dguma

モザイク

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走り込むように、合流地点に到着した天覇。しかし、そこで源平兄弟ら本隊が吉継や桜火らに斬り殺された瞬間だった。
「おい・・・何してんだよ・・・桜・・・火、吉継!」
「わりぃ天覇」
天覇は剣を握りしめ飛び出すも、付き添いの兵らが吉継の兵に矢で撃ち取られ、次々と倒れていく。桜火を斬りかかろうとする天覇。しかし、大人と子供のように、天覇の怒りと悲しみの剣はただ泣きわめく子供のように振り回されている剣だった。そんな戦い方をする天覇を見て、桜火は笑う。
「どうしたのです?それでは物を強請る子供ではないですか?何か欲しいのですか?」
「貴様が欲しい・・・貴様の命が・・・そして、吉継を斬る」
「そうですか・・・なら」
天覇の荒れ狂う剣に、自ら向かい剣に首を刎ねられる桜火。
「え、先生」
桜火が斬られたことにより慌てる吉継。小さい頃から家族に見放され、裏切りには容赦ない仕打ちを知っていた。現に弟の源五郎や母親の夫差の殺し方には、異常すぎる程。その天覇が自分に向かってくるのは恐ろしかったが、肩に刀を刺されて倒れ掛かる天覇。しかし、天覇を刺したのも驚きだった。首を切り落とされた桜火の胴体が突き刺していた。
「桜火・・・貴様・・・人間では無いな!」
「桜火様・・・・ひぇ、ば、バケモノ」
刀を抜き取り、桜火が異形の姿に恐れ逃げ去る兵を瞬殺。自分の首を拾い上げて元の位置に置くと、斬られた断面同士が合わさり急速な回復をした。瞳孔に光を取り戻し、目を回し首を回してから話した。


「どうやら君では私は殺せないようですね・・・」
「おい、人の話を無視するな」
「あ~そうでしたね・・・でも失礼だな。これまで一緒にいて修行を重ねた人に向かって、人間では無いなって。まぁあの辺の兵よりは、マシですが・・・人様をバケモノって・・・って傷つきます」
「話をはぐらかすな!うぬは一体何者なんだ」
「15までは私も普通の人でしたよ。しかし、ユルシア大陸に学識のための遠征中に、生死を彷徨う出来事が起きました。しかし、ある者から命を救われました。その代償・・・というより力を手に入れました。そして、私は私を救ってくれたものからコアの凄さに知って感動しました。そのコアにしたがうようになった。それだけです」
桜火が自分の話を語った同じ瞬間に、西の方を突然の大火が発生した。その場所では、全身鎧を纏った男が銀羽軍を焼き払っていた。
「弱いな、銀羽の主力ってのはよぉ?」


「ちょうどタイミングがいいですね。雅竹って知っていますか?この前あなた様と対峙して、火の海へと突き飛ばした二蔵の将です。あの後彼を救い出して、コアの施術を施しました。そしてあの者は炎を身に宿して生き返りました。そしてあの者もコアに忠誠を誓うしもべとなったのです」
桜火が語っていると、綾が斬りかかってきた。
「これは驚きです。まさかこんなところに君が来るとは・・・」
「それは俺も驚きです。長立を制圧後先生が見つからないから、山の方に続く死体を追っていったらこの方から兵の悲鳴が聞こえてきた」
「持ち場を離れるとは何ということですか?それにこの場所は軍議の真っ最中です。部外者が立ち入っていい場所ではありません」
「何芝居をなさっているのですか?コアの桜火?」
「・・・はぁ~ばれちゃいましたね!ただコアの桜火では無いですよ!コアのコードネームは、「モザイク」です!・・・吉継君、綾君をやりなさい!」
「は」
呼応すると、吉継は綾に斬りかかる。綾も応戦し吉継と戦う。

「辞めろ!吉継、仲間だろう!俺より天覇と共に過ごしてきただろう」
「あぁそうだよ!だがなぁ、それと同時にあいつと一緒にいて落ち着く日々は無かった。あいつの周りには仲間を思いやる人誰一人いない、それどころかゴミ扱い!もう嫌なんだよ」
「それだからって・・・」
「それに俺は王様になりたいのだよ!俺なら仲間を見捨てない、あいつなんかよりいい統治ができるんだよ!それなのに源平兄弟らは分かってくれなかった・・・だから、俺は殺した。お前もそうだ、俺の邪魔して!」
「さぁて、邪魔者いなくなりましたね!私モザイクは、この天生を神宮での営業拠点として、この地に戻ってきました。まずあなたたちを育て兵隊にしたら、御父上様の秀桃を殺して家督争いに。兄弟同士争って、国人銀羽を殺してあなたを殺したら完了って計画なのです」
「そのために吉継を担ぎ上げたわけか!」
「そうです」と言った瞬間に、吉継は綾に上段斬りを受けた。
「そんな考え方だったら、いい統治はできない。自分勝手の考え方では」
「うるさい!モザイク・・・俺にもコアの力を・・・」
桜火・・・いやモザイクに、手を伸ばし続けた。モザイクはただ眺めているだけで何もしない、それでも吉継は手を伸ばし、命尽きると同時に手を降ろしかけた瞬間、吉継の体が爆発した。


「吉継!!!」
「お前なんか、ただの傀儡なんだよ!」
体をマントに覆われている少年が、近づいてきた。肌や髪は白く目は大きく開ききって、頬に斑な赤い模様があるのが特徴だったが、その少年の風貌か秋餅の面影を感じ取れた。
「あ、秋餅?」
「ホント君には、驚かされます!何もかも計画が台無しに・・・」
「ごちゃごちゃ何言っているのだ?ラエル様だぁ!」
筒にへと変貌した左腕を綾たちに向けて、砲撃した。
「すみません。彼は「ラエル」人造魔導「BBベット」を施した秋餅なのですが、術後の後遺症で、人格変貌と以前の記憶喪失となっています。まぁ「BBベット」は生前に取り込み、死後に覚醒する魔導器なのですが、多分それが問題なのでしょう」
モザイクは俺たちが秋餅ことラエルとの戦闘中に語った。ラエルは右腕を刃に変形させ、襲い掛かる。距離をとっても砲に変形し、状況は不利になった。開戦から戦闘を繰り返しているため、疲労はピークを達しているため、足がもたれついてしまった。
「鬼ごっこは、そこまでだ!」


ラエルが砲を向けた瞬間、ラエルの後ろから騎馬武者が突撃してきた。綾が倒した飯母が白蓮たちの拘束から逃げ出したのだ。突如現れた飯母にラエルは驚き、馬の後ろ脚に蹴られて倒れた。
「お、おおいここは一体!桜火!貴様の首、この飯母が討ち取る」
下馬してモザイクに飛びかかる飯母。しかし、モザイクは一瞬に飯母を斬った。
「綾、倒した敵はちゃんと最後まで仕留めましょう」
「お前もなぁああああ!」
モザイクに斬られても、まだ死んでいない飯母は、下半身に飛びかかり寝技に押し倒した。飯母とモザイクがもみ合いしている中、綾は言った。
「今のうちに逃げるぞ!」
「何をほざけたことを、俺は逃げん!」
「今なら、モザイクも動けない。ラエルも死んだか気を失ってすぐには動けない。逃げるなら今だ!今逃げないと、俺らは殺される。奴らの目的は天生の乗っ取りだ!それだけは絶対に阻止する。その為にも今は生きていつかこの怒りを」
天覇は綾の考えに賛同し、飯母の乗ってきた馬に跨り、逃げる。
「はぁ~やってしまいました」
動かなくなった飯母を持ち上げて、逃げ去っていく彼らを見送った。ラエルも起き上がる。
「いいのかい?逃がしてしまうことになるぞ」
「いいのです!恐らく天坊衆の連中が見張っています。この飯母って男に、落葉の気配が感じられました。「落葉」は守霊の術に使われやすく、物を操る術として知られる技。そして、この飯母の感じから、綾に斬り殺された飯母を操り、我々にしむけた、そしてそれをやるのは恐らく地蔵かもしくは月定!・・・まぁいいですよ、これも楽しみ一旦君たちをコアに紹介しなくてはいけなかったし」


難を逃れた綾と天覇は、洲番城へと逃げ込んだ。綾は一目散に定巖院の秋餅の埋めた場所に向かうも、そこには人が掘り返したような跡があり、掘り返しても秋餅の遺体は無かった。一同同然のショックであったが、一番ショックだったのが稟だった。俺と稟はよく秋餅と話していたため、思い入れが多かった。その後天覇は、月定や地蔵に駆け寄った。モザイクの予想通りにあの飯母は地蔵が送った落葉だった。
その後天覇は小間荷城へと移り、戦勝祝いを行い国人へと天生の地に宣言した。それから、モザイクの屋敷をすべてくまなく調査し、ありとあらゆるものを調べつくし、モザイク、ラエル、雅竹を指名手配して三有谷の決戦は幕を閉じた。


それから半年後、廃屋組はそれぞれ旅に出ていくこととなった。千年の旅立ちから、決戦後にすぐ花冠が天覇のもとへと移ったのをきっかけに、自由人の白蓮が姿を消し、落ち込んでいた稟と二人の失踪から、旅立ちが自動的に決まった。しかし俺は、もう少し修行を使用としたが、地蔵もモザイクを仕留めるために旅立っていったために、すぐに旅立とうとしたが月定が修行を見てくれることとなり、半年後の旅立ちとなった。綾15歳。
「気を付けてね・・・桜火先生・・・モザイクいなくても、無事に帰ってきてね。みんな旅立ってから誰も帰ってこないから」
「わかっている。花冠、俺は帰ってくるよ!それに夫以外の人を心配してはいけないだろ」
「でも、私にとってはみんなも家族なんだから!それに天覇も、少し寂しがっていたから」
「わかったよ」
「気を付けて」
そうやってこれから、俺「綾」の旅が始まる。花冠には言われたが、ラエルとモザイクそして・・・ふたりの後ろにいる組織、コアについて・・・
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