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内乱
ウーゾイル共和国内乱 七
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アンセルムとカンタンのふたりはなんとか反乱者に占拠されたニロロ村を逃れていた。
ニロロ村を囲む森は、木々が高く日を遮り、勾配もあった。ふたりは東へ東へ歩いていたつもりだった‥。
この辺りの森は、方位磁石を狂わせる磁気を強く出す石がいくつも地面に埋まっているのだった。
まるで頓珍漢になってしまった方位磁石を諦め、太陽の位置により方角を確認して歩きだした。しかし森の怖さは底が深い。
こんどは二人の頭のなかにある方位磁石である方向感覚がくるい、方角を知るための太陽も西へ沈みつつある。
結論から言えば、二人は東に行くつもりで南へ歩いていたのだった。
南と言えば、鉱山と鉱夫の村であるフェイユ村がある。習俗の村であるニロロ村とは一本の細道でつながっているのみで、その道の細さが村同士の交流の薄さを語っている。
道すがら二人はこんな話をした。
ロゴスの怪物の話だ。
それは古代の伝承であり、世界を秩序だった論理で支配しようとした王が、心の通わぬ怪物に姿を変えてしまったと言うものだ。
「新聞の記事で王政を完全否定したこの国は、そのロゴスの怪物に支配されつつあるとガナムは書いた。そうあいつらの仲間さ」
アンセルムはこの逃避行の出口のなさに舌を打ち、なんとか気をまぎらわそうとしていた。
「たしか毒舌で有名な評論家!この国の民主主義を批判して総バッシングされたんだっけ」
「しかしガナムが味方するやつらだって怪物じゃないか。絵に描いたようなグロテスクな怪物だ」
「そうだな。アンセルム。これに懲りたらもう怪しい話には乗るなよ。君は彼女と幸せに慎ましく暮らすんだ」
アンセルムは少しいじけて座り混んでみせた。彼の視界に鮮やかな紅色のきのこが見えた。
「そういやお腹が空いたな」
「アンセルム!やめろ!そのきのこは毒きのこだ!」
カンタンに制止され、彼は伸ばしかけた腕を引っ込めた。
そしてカンタンからのアンセルムに対するお小言がはじまった。
「みんなが山にきのこ採りに行っても君はサボって本ばかり読んでいたじゃないか!君は詩人きどりをやめて実社会と言うものを知ったほうがいい」
「説教かよ。うるさいな。詩集や哲学書からもあんがい学べるもんだぜ」
「詩集や哲学書がなんだ!いまの君は僕がとめなきゃ毒きのこを食べて死んでたじゃないか!」
今までアンセルムの浮わついた部分が心配で着いてきたカンタンも、がまんしきれなくなった。一連の危機、地味でも着実に生きるべきと信じるカンタンには面喰らうものであった。
アンセルムは、感情的にはならず、カンタンの怒りを受け止めていた。
「悪かったよ。俺にきのこの見分け方を教えてくれよ。お前も腹減っただろ?」
二人は黙ってきのこを採り、火を起こし、調理し、野宿の用意を済ませた。ツチラトは気を効かせて野宿用のキットまで持たせてくれたのだった。
アンセルムもカンタンも、ツチラトだけはあの一味のなかで尊敬できると思った。
翌朝、二人はフェイユ村から薪拾いに出てきたオロールと言う女性に出くわした。そこではじめて自分たちが見当ちがいな方向へ歩いてきたと知るのだった。
ニロロ村を囲む森は、木々が高く日を遮り、勾配もあった。ふたりは東へ東へ歩いていたつもりだった‥。
この辺りの森は、方位磁石を狂わせる磁気を強く出す石がいくつも地面に埋まっているのだった。
まるで頓珍漢になってしまった方位磁石を諦め、太陽の位置により方角を確認して歩きだした。しかし森の怖さは底が深い。
こんどは二人の頭のなかにある方位磁石である方向感覚がくるい、方角を知るための太陽も西へ沈みつつある。
結論から言えば、二人は東に行くつもりで南へ歩いていたのだった。
南と言えば、鉱山と鉱夫の村であるフェイユ村がある。習俗の村であるニロロ村とは一本の細道でつながっているのみで、その道の細さが村同士の交流の薄さを語っている。
道すがら二人はこんな話をした。
ロゴスの怪物の話だ。
それは古代の伝承であり、世界を秩序だった論理で支配しようとした王が、心の通わぬ怪物に姿を変えてしまったと言うものだ。
「新聞の記事で王政を完全否定したこの国は、そのロゴスの怪物に支配されつつあるとガナムは書いた。そうあいつらの仲間さ」
アンセルムはこの逃避行の出口のなさに舌を打ち、なんとか気をまぎらわそうとしていた。
「たしか毒舌で有名な評論家!この国の民主主義を批判して総バッシングされたんだっけ」
「しかしガナムが味方するやつらだって怪物じゃないか。絵に描いたようなグロテスクな怪物だ」
「そうだな。アンセルム。これに懲りたらもう怪しい話には乗るなよ。君は彼女と幸せに慎ましく暮らすんだ」
アンセルムは少しいじけて座り混んでみせた。彼の視界に鮮やかな紅色のきのこが見えた。
「そういやお腹が空いたな」
「アンセルム!やめろ!そのきのこは毒きのこだ!」
カンタンに制止され、彼は伸ばしかけた腕を引っ込めた。
そしてカンタンからのアンセルムに対するお小言がはじまった。
「みんなが山にきのこ採りに行っても君はサボって本ばかり読んでいたじゃないか!君は詩人きどりをやめて実社会と言うものを知ったほうがいい」
「説教かよ。うるさいな。詩集や哲学書からもあんがい学べるもんだぜ」
「詩集や哲学書がなんだ!いまの君は僕がとめなきゃ毒きのこを食べて死んでたじゃないか!」
今までアンセルムの浮わついた部分が心配で着いてきたカンタンも、がまんしきれなくなった。一連の危機、地味でも着実に生きるべきと信じるカンタンには面喰らうものであった。
アンセルムは、感情的にはならず、カンタンの怒りを受け止めていた。
「悪かったよ。俺にきのこの見分け方を教えてくれよ。お前も腹減っただろ?」
二人は黙ってきのこを採り、火を起こし、調理し、野宿の用意を済ませた。ツチラトは気を効かせて野宿用のキットまで持たせてくれたのだった。
アンセルムもカンタンも、ツチラトだけはあの一味のなかで尊敬できると思った。
翌朝、二人はフェイユ村から薪拾いに出てきたオロールと言う女性に出くわした。そこではじめて自分たちが見当ちがいな方向へ歩いてきたと知るのだった。
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